インタビュー

高田穣氏(4月15日)

山一證券投資信託委託株式会社アクティブ運用部課長

「J オープンの運用方針を語る」


今回は山一證券投資信託委託のアクティブ運用部課長高田穣氏に、今年1月より高田氏が担当ファンドマネージャーとなった「J オープン」の運用方針、運用状況について話を聞いた。

 

「J オープン」は、国内株式型中小株式型に分類される追加型株式投資信託。高田氏は、この「J オープン」以外にも「ダイナミック94−06」、「山一アクティブ96−12」、「山一フォーカス97−09」、「ジャスダックオープン」の運用を担当するファンド・マネージャーである。


 

 J オープンは、国内の中小型株に投資するファンドということですが、もう少し詳しくファンドの目的、投資対象を教えていただけますか。

 J オープンは、小型株式に特化したファンドで、多少リスクをとってもリターンを狙ってゆこうというファンドです。狙いは、これから先日本経済も成熟してきており、そんなに大きなリターンというのは全体としては見込みずらいという状況にあると思います。現在、投資の流れとして海外に向かっている資金というものがありますが、それは為替リスクをとってでも高いリターンを狙ってゆこうということで、日本においてもやっとそういう流れが出てきたというのが現在の状況だと思います。小型株投資というのもそういう流れに入ると思います。当然、それはお客様の資産の一部においてということになるとは思いますが。

 

 小型株ということですが、個人投資家には具体的にどういうものが小型株かというのがわかりにくいのですが、このファンドの場合、どう定義していますか。

 小型株というのは、会社やファンドによって、定義が違ってきますが、このJオープンの場合は、東証1部上場の発行済株式数が6000万株未満の株式、2部上場株式および店頭登録株式を小型株と定義しており、それがこのファンドの投資対象です。

 

 運用はアクティブ運用ということですが、そのプロセスを説明していただけますか。

 基本的にはボトムアップアプローチを採用しています。小型株のうち継続して情報の入手できる400銘柄程度の中から、それを個別に調査することにより投資銘柄を選択します。

 

 具体的な選択のクライテリア(条件)はどういうものですか?

 まず、事業環境を重要視します。特に小型株というのは一部上場銘柄等と違って、事業環境自体が流れに乗って伸びてゆくところでないと、大きく成長できないということがあります。ですから、事業環境自体にフォローの風が吹いているということが大切になります。

 

 事業環境というのは、業界、業種ということですか。

 小型株というのは、一部上場のように既存の業種にはっきりと分類される会社ばかりではありませんので、業種、業界というより、もう少し狭い意味での事業環境ということになります。

 

 では、その400銘柄の中から業界にフォローの風が吹いているところをピックアップするということですね。その次のステップはどうなりますか。

 最近やっと小型株についてもバリュエーションが効くようになってきました。

 

 バリュエーションが効くというのは、様々な投資判断指標が有効に働くようになったということですか?

 ええ。特に店頭銘柄は長い間情緒的な性格が強い市場でした。個人の投資家の市場という側面が強かったのです。それが、機関投資家や外国人投資家の比率が個人投資家の比率を上回るようになったことで、かなりファンダメンタルズを重視する市場になってきたということです。

 

 個人投資家の市場というと、仕手ということですか。

 そうですね、仕手とかテーマ性が重要視され、あまり業績の内容が重要視されていなかったということです。そのため、プレミアム部分が非常に厚かったのです。つまり、ハンドルでいうと“遊び”が多すぎた市場と言えます。業績とは関係ないところで、株価が動いてしまっていました。それが、今これまでの下げでなくなってきて、むしろ業績以上に売られてしまった銘柄も出てきました。PBRが1倍割れの銘柄というのが6割くらいあります。これからは、成長性に加えてバリュエーションを重要視してゆこうと思います。

 

 使用するバリュエーションというのは、ファンドにより、またはファンドマネージャーにより様々だと思いますが、このファンドにおいて重要視するバリュエーションは何ですか。

 一般的な指標に加えて、バランスシートの中身です。これは安全性の分析ということです。店頭株というのは、成長性が重視されてきましたので、バランスシートの中身というのが軽視されてきた面があります。しかし、これだけ倒産する企業が増えてきた環境においては、安全性という条件をクリアした中から成長が期待できる企業を選択することが大切となります。

 

 安全性というふるいにかけて、次にキーワードである成長性を考慮するこということですね。

 成長性に秀でている銘柄の場合に、安全性が欠けているところが多々ありますから、必ずしもこの順で選択するとは限りませんが、原則としてそういうことになります。

 

 ここから先の組入個別銘柄の選択については、ファンドマネージャーである高田さんの裁量ということですね。

 そうです。

 

 成長性を重視するあまりの危険性という指摘がありましたが、小型株投資全般ということを考えた時、小型株投資ゆえのリスクにはどんなものがありますか。

 業績の変化率が大きいというリスクがあります。それと、今回のように金融不安という局面になるとパニック売りのような状態になり、流動性のリスクが露呈します。売りが大量に市場に出て、売りに行っても売れないという状況が生じます。

 

 そういう場面では、流動性のリスクというのは、小型株の方が大型株に比べて大きいということですね。

 そうです。

 

 その他には?

 ディスクロージャーということが挙げられます。公開企業が公開直後に業績の下方修正をするとか、赤字を出すということがあり、日本企業のディスクロージャーに対する不信ということもあります。

 

 つまり、企業が公開企業となった時点で、その企業のディスクロージャーに対する認識が不足しているということですね。

 そうです。最近では、多くのファンドマネージャーがきちんとしたディスクロージャーがない銘柄についてはポートフォリオに組み入れないようになっていますので、ある程度改善されてはきています。

 

 リスクをとるよりは、ディスクロージャーが十分ではないところは、たとえ高い成長が期待できそうでも組み入れないということですか。

 そういう傾向にあります。きちんとしたディスクロージャーがなければ投資対象外ということになります。ただ、店頭企業でも意識は変わりつつあります。実際、公開前の企業が機関投資家やファンドマネージャーに対して、公開前からきちんとしたディスクロージャーをするところもあります。

 

 Jオープンの運用状況についてお伺いしたいのですが、株式の組入比率はどの程度ですか?

 83%程度です。

 

 株式の組入比率が高いファンドということですね。

 積極姿勢を基本としています。一時的に山一証券の自主廃業に伴なう解約の増加に備えて70%程度に落としたことがありましたが、基本的には株式の比率を高位に保つファンドです。

 

 小型株市場全体が大きく売り圧力を浴びるような状況があった場合には、こういう株式の比率を高位に保つファンドにおいては、キャッシュ比率を高めるような対応をとりますか?

 もちろんあります。このファンドのようにオープン型のファンドにおいては、ファンドの基準価額が上昇している時に新規の資金が入ってきて、下落局面では解約が発生するという傾向があります。ですから、相場の下げ局面では、解約に備えてキャッシュ比率を高める対応を取ります。特に、店頭銘柄の場合、すぐに売る必要があっても市場が小さいので急には大量の売りがさばけないことがあるからです。

 

 株式市場全体が下げ局面になってきた場合なども、キャッシュ比率を下げて、影響を抑えるという対応をするのですか。

 このJオープンについては、あくまでも長期的な投資スタンスですから極端にキャッシュ比率を高めるということはありません。

 

 市場全体が下げ局面に入ったという場合には、そこでキャッシュ比率を下げた方がダメージが少なくてすむのではないかと考えるのですが。

 もちろんそうです。ただ、技術的には急激に対応することはむずかしい。売りにでても、非常に時間がかかります。このファンドについても、株式組入比率を70%から現状に戻すためにも時間がかかっているわけです。相場が反発した時点での対応にも時間がかかりますから、買いのタイミングを逃しかねません。流動性が小さいわけですから、何万株かを一度に買いに出ると、自分で自分の購入する株式の値段を上げてしまうというジレンマに陥ってしまうリスクがあるのです。

 

 一般のファンドと比較した場合に、そういう難しさが小型株ファンドにはあるわけですね。

 ですから、ボラティリティは高くはなりますが、銘柄選択が正しければ全体のトレンドというのは悪くはないと思います。

 

 全体のトレンドというのは?

 長期的なパフォーマンスということです。運用も長期的視野で行っていますから、目先1カ月に下がるからといって、売りに出るというようなスタンスではありません。

 

 組入上位10銘柄は、伊藤園、マツモトキヨシ、シチズン電子、ジャフコ、理想科学、ロックフィルド、大明、ソニーケミカル、キーエンス、三信電機となっていますが、これは今後も大きくは変わりませんか?

 現在、過渡期であり、見直しがあります。

 

 過渡期というのは?

 私がこのJオープンを担当しはじめたのがこの1月ですので、現在見直し作業を行っているところです。

 

 現時点で業種別内訳を見ると、サービス業が14.7%、電気機器が13.4%、卸売業が12.6%という状況ですが、見直しにともないどのような変化が考えられますか。

 基本的には業種別の割合というところにこだわってはいません。ただ、今回の景気の悪さについて、市場はほぼ織り込み込んだと考えています。むしろ、実体以上に売られすぎた銘柄が6割程度あると見ています。その中には、バリューだけでなく、成長性の面で買える銘柄があります。そのあたりを買いたいと思います。

 

 景気の悪さは織り込み済みと見ているということですが、その判断はどこからきていますか?

 まずは、政策がはっきり変わったということです。実体経済は確かに厳しい状況にあり、株価もまだ下値がある可能性もあります。しかし、小型株は買いに出ても、買うのに時間がかかりますから、ここから買い下がってゆくというスタンスです。すぐに小型株市場が反騰するとは予想はしていませんが、所得税減税等の効果がでてきた時の相場の反騰に備えるということです。小型株の場合、反騰が始まってから買いに出るのでは遅いのです。

 

 今回の政府の対応策を一応は評価しているということですか?

 必ずしもそういう意味ではありません。内外からの圧力等を考慮すれば、更に政府は手を打たざるを得ないと考えており、そうなればある程度の効果が期待できると考えるのです。

 

 継続的な政策が出され、そうなった時に夏以降の株価にプラスの影響が出るだろうということですね。

 そうです。あとは、見方上の問題かもしれませんが、消費の場合は、昨年は消費税の導入にともない消費が低迷したため、今年は発射台が低いということもあり、株価がプラスに動く可能性があります。

 

 発射台が低いというのは、前年同月比で見た場合にということですね。

 そうです。下落率が下がったということになると、株価は好感するのではと思います。

 

 ただ、自動車などは低迷状況に変化の兆しが見られませんが。

 自動車や住宅のような重いものについては、もう少し時間がかかるでしょう。

 

 もう少し身近な消費財については、自動車や住宅より早いということですか。

 そうです。そういう消費関連銘柄の一部については、他より速く株価が回復しはじめるものが出てくると考えます。消費関連の中にも業績もよく株価もそれを反映しているものもあります。高値を更新してきている銘柄もあります。

 

 そういう銘柄は素直に業績を反映しているのですね。

 それに加えて、他が買えないので、そういう銘柄に集中して資金が集まるという傾向もあります。ですから、一部消費については二局化してきています。

 

 そうなるとそういう高値を今追っている銘柄については反動が恐いのではないですか?

 可能性はあります。しかし、今買われている銘柄というのは内容がかなり良いですから、反動といってもそれほど大きくはないでしょう。店頭市場も機関投資家の相場になってきていますから、業績のよくないものは買われていませんから、現在買われている銘柄が急に売られるということにはならないと思います。

 

 機関投資家の相場というと、生保、信託銀行、年金の資金が入ってくる相場というイメージですが、つまり長期で持つ相場ということですか?

 実際には長期で保有する場合ばかりではありませんが、よりファンダメンタルズを重視する相場ということです。

 

 現在は、ファンドマネージャーの交代に伴なう銘柄の見直し時期ということですが、通常の場合においては、銘柄の入替えというのはどの程度の頻度で行われますか。

 個別対応なので、どの程度とは言えません。組入銘柄は常時モニターしており、モメンタムの変化に注意しています。

 

 そのモニターというのは、高田さんが行うのですか?

 個別のモニターについては、わたくしを含めて、弊社のアナリスト、社外の専門会社との連携で行っています。

 

 投資家としては、山一證券の自主廃業に伴ない、調査部門が手薄になったのではとの不安もあるかと思いますが、それば社外の専門会社との連携によって調査部門が強化されているのですね。

 はい、社内の調査部門の充実とともに、社外の専門機関との連携を強めています。最近では小型株に特化した調査機関やアナリストが出てきています。

 

 J オープンは94年の6月に設定されたわけですが、設定来の運用実績はどうなっていますか。

 社内のファンド評価システムにおいて採用している指数があり、これを基準としているのですが、それは東証小型株指数40%、東証2部株価指数が30%、ジャスダックシステムが30%での合成指数です。ファンドのパフォーマンスは、昨年の前半まではこの指数程度でした。それ以降は、この指数を上回るパフォーマンスをしています。

 

 要因は?

 昨年の春以降投資先を時価総額の大きなものに絞っていったことが功を奏したということです。

 

 去年の後半からは、東証2部指数、日経店頭平均、小型株指数の全てをアウトパフォームしているのですね。

 そうです。

 

 今後のこのファンドのパフォーマンスは、店頭小型株の相場に大きく依ると思いますが、ファンドマネージャーとして、今後の店頭小型株市場をどのように見通していらっしゃいますか。

 店頭・小型株の場合、先ほども申し上げましたように早めに出る必要があり、その意味でも今がチャンスではないと思います。特に、店頭市場は実体の株式の価値以上に既に売り込まれている状況にあり、株式市場全体が大きく売られる局面においても、比較的値持ちがよくなりつつあります。基本的にここから店頭株、小型株は二極化してくると思います。今まで、店頭銘柄、小型銘柄においては差別化というのが極端にはありませんでしたが、これからは機関投資家の相場になり、ファンダメンタルズが重視されるようになってきたことで二極化の動きが出てくると見ています。流動性が不可欠ですし、また、説明のつく銘柄でなければ買わないという態度が明確になってくるでしょう。一方で、実体の業績等の悪さが更に露呈してくる銘柄が出てくると思います。きちんど説明のつく銘柄に買いが集中し、そうでないところが売られるという流れがはっきりしてくるのです。

 

 二極化する中で、説明のつく銘柄を選択して投資することで、店頭・小型株ファンドについても長期的なパフォーマンスが期待できるということですか。

 そうです。ただ、例えば店頭銘柄の場合、上位10銘柄で時価総額の26%を占めており、この銘柄である程度の連動性が出てきますから、このあたりの銘柄はある程度組入れていかなければならないでしょう。しかし、そういう銘柄だけでは、他のファンドに対して差別化ができませんし、本当の投資のチャンスというのは、そういう銘柄以外にあると考えています。

 

 他にこのファンドの特徴はありますか?

 外資系に多いのですが、時価総額が少ない銘柄について最初から投資しないというスタンスをとり、30から40という少ない銘柄に集中して投資するファンドマネージャーがいますが、このファンドについてはそういうスタンスはとりません。つまり、銘柄分散をさせるということです。

 

 今どの程度の銘柄数を組入れていますか?

 72銘柄ですが、流動性が少ない銘柄を外している時期なので、今後一時的に銘柄数が減る可能性があります。

 

 それと同時に流動性のある銘柄から組み入れるのですか?

 そうです、結果として70〜80銘柄程度に落ち着くと思います。

 

 純資産総額はどういう状況ですか?

 設定時に180億円くらいありましたが、その後相場の動向に連動する形で減少し、また、山一證券の自主廃業に伴ないかなりの解約が出ました。しかし、ここにきて25億円程度で落ち着いています。

 

 この時点で解約しなかった投資家というのは、長期的な店頭・小型株市場の成長を期待する投資家ともいえるわけですね。

 そうだと思います。山一の自主廃業の混乱からも落ち着き、社内体制も整い、このファンドは我々の今後の重点ファンドの一つでもあります。

 

 高田さんは、日本証券アナリスト協会の検定委員でもありますが、ファンドマネージャー歴はどのくらいですか。

 2年半程度です。

 

 その前は?

 以前は、山一證券におりました。そこで、社内試験を受け、その後ファンドマネージャー養成コースを8ケ月ほど受け、その後山一投信に配属となりました。

 

 Jオープン以外の担当ファンドは?

 主なものは、スポット投信のダイナミック94−06、山一アクティブ96−12、山一フォーカス97−09などです。追加型では、ジャスダックオープンを運用しています。今回の機構改革により、ファンドマネージャーもより特化した形をとることとなり、わたくしは基本的には小型株の専門でやってゆくことになりました。

 

 運用とは関係ありませんが、ご趣味は?

 そうですね、淡彩画を描くことでしょうか。スケッチに色を薄く塗るようなものなのですが・・。あとは、バードウォッチングです。

 


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