インタビュー

須川宏之氏 (旭川大学経済学部助教授)

「ラテン・アメリカの経済及び投資について」


ラテンアメリカと言うと、日本人にはあまり馴染みのない国が多いとはいうものの、最近ではこの地域に的を絞って投資する投資信託も販売されています。現時点で中南米型と言われる投資信託が4本あります。今後期待される高い成長から投資を検討している個人投資家もいるでしょう。今回は旭川大学経済学部須川助教授に、ラテンアメリカの経済状況、投資の際の注意点等を聞いた。

 

 1994年末に始まったメキシコの通貨危機を発端にして、ラテンアメリカ経済全体が様々な影響を受けた記憶がまだあるのですが、実際には投資信託の中南米型投資信託の基準価額は、この1年の間に急激に上昇しています。中にはこの1年で50%も上昇した投信もあります。投信の価額の上昇には様々な理由があるでしょうが、ある程度は中南米経済を反映した動きだと理解してよいのでしょうか?また、中南米経済の現状というのを教えて頂けますか?

 ,アジア経済と反比例、つまり、失われた10年、1980年代のラテンアメリカは累積債務問題で世界中を震撼させました。簡単に述べれば、米国から春に金を借りて、種を買い、秋に収穫を米国に売り、借金を返済する仕組みでした。しかし、米国の不況と高金利政策により、物は売れない、高利の借金は返済できづ、モラトリアム宣言をだしました。

 

一方、アジアNIESは日本という、安定市場をもち商品は日本に必ず引き取られ、順調に成長を遂げていました。それは無論米ソの対立の緊張のおかげであったともいえましょう。従って、1991年以降、米国はソビエトを意識せず、その経済政策の舵取りができるようになった、しかも、”やじろべい”の片方の錘を失い、バランスを欠いた状態、つまり、米国のワンサイドゲームが始まったのです。

 

1992年米国は米国内の日本研究者を召集し、日本との経済戦争に勝つための方法を考えます。その第一弾が日本の経済力以上の円高(1993年ー4年)ではないでしょうか。じわじわと日本は経済力を落としていきます。加えて日本の政治家はリーダーシップをとれません。一方、ソビエトとの競争から解放された米国はラテンアメリカに民政を奨め経済的な後援をしてラテンアメリカ諸国との共同を強めます。なぜなら冷戦から解放されたヨーロッパはEUを強化し共通通貨まで創るところまで来ました。いざとなれば、かつてのモンロー大統領のようにヨーロッパから離れてもラテンアメリカ諸国があれば世界的地位は維持できます。その証拠に今、ラテンアメリカで軍事政権、独裁政権はキューバを除いて一つもないでしょう。かつては支配の道具としてワシントンの命令に服従する軍事独裁政権が沢山存在しました。

 

今や、米国の経済は順調です、したがって、ラテンアメリカ諸国も安泰です。問題はキューバがいつ完全な自由化に踏切るかです。スペイン、イタリア、ポルトガルの資本はかつての景気のいい日本、米国などに売買することを目的にカストロ政権から、利権を買い取っています。先頃のカナダ政府との収用資産の保証問題の妥結などはその一環でしょう。ラ米全体が米国の掌中に入るのは時間の問題で、残るは、ワシントンとハバナの面子の問題だけです。実質的にキューバ経済も米国の支配下です。

 

したがって、今般の世界情勢を見る限り、ラテンアメリカに投資が向くのは必然的でしょう。スペインもかつての宗主国として、その経済の主導権を取りたいわけですが、米国にとって、アジアの日本ほどではありません。要するに、スペイン、イタリア、カナダの動きなど米国にとって、恐ろしくありません。米国の経済が順風=ラテンアメリカ経済も順風でしょう。

 

 今後数年の経済見通しはいかがでしょうか?

 米国の主導で経済圏が創られようとしています。ラテンアメリカ諸国の人々の暮らしはともかくとしても安定した成長を続けるでしょう。EUが米国の驚異になった今、米国の生命線はラテンアメリカとの経済圏を構築することしかありません。ハイチなども政治的にも経済的にも遅れた国でしたが、今後は民主化が進み発展するでしょう。

 

 対円でみる中南米通貨の動向はどうなっていますか?

 , ラテンアメリカでは日本はブラジル、ペルーなどの一部の国を除いて、それほど信用がありません。それは今まで、日本の投資家たちが省みなかった所だからでしょう。それに自国通貨より米ドルの信用が高い所ですし、ご存じのように、パナマなどは、公務員の給料が自国通貨ではなく米ドルで支払われていますから、円との関係はおしてしるべしです。

 

 一般的に中南米への投資を検討する際の注意点は何ですか?

 投資と言われても、あまりよく分かりませんが、国際取引と同様に考えるとすれば、その政権の安定度でしょう。たとえば、様々なことがありましたが、コスタリカなどは白人政権で米国議会も民主主義の先輩として認めています。クーデターや紛争はありません。その国の人種比率を見てください。ボリビアなどインデオの多い国は安定していません。白人、メステイーソのおおい国は安定した国といえましょう。それと、スペインの統治よりもイギリスの影響を強く受けた、アルゼンチン、チリなども安定していましょう。人種の人口比、独立の経緯、政権の安定度、資源の有無などがバロメーターでしょうか。

 

 個人レベルでも簡単に可能な中南米経済の情報収集方法はありますか?

  最も簡単に手に入るものは「ラテンアメリカ時報」(ラテンアメリカ協会)。 「ラテンアメリカレポート」(アジア経済研究所)などでしょう。

 

 ニュースや新聞の報道では、どういう点を注意して見ていたらよいですか?

 , 日本のニュースはなにも役に立ちません。というのは特派員もろくな情報をつかんでおらず。偶々乗ったタクシーの運転手の言った事などを記事にするからです。したがって、CNNニュースをその時の米国の世界戦略を頭に入れて見ましょう。なにしろ米国は気に入らなければ、その政権を取り替える事までするのですから。大体、政治がらみの事件はワシントンの動向を見れば理解できましょう。

 


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