インタビュー

マーク・ファリントン氏 バンカース・トラスト投信投資顧問

VAINTAGE(追加型公社債投信)の運用について語る(取材日8月14日)


今回は、バンカース・トラストのファンドマネージャー マーク・ファリントン氏に、同氏の運用するファンド「VINTAGE」(追加型公社債投信)の運用について話を聞いた。

 

 ファンドの目標は何ですか?

 当ファンドの運用目標は、2年以上の投資期間で3ヶ月円LIBORを200ベーシス・ポイント以上アウトパフォーム(信託報酬控除後)することです。加えて、マーケットのボラティリティ(為替市場+外債市場)よりも、低いボラティリティでリターンを獲得することです。

 

 このファンドの特徴は何ですか?

 当ファンドの運用方法は、信用力の高い(AA以上)外国の公社債に投資をする一方で、ヘッジ目的や収益獲得目的で通貨配分のマネジメントを行います。ポートフォリオのデュレーションは2年以下に制限されているために、当ファンドの主たる収益は為替マネジメントから得られます。

 

 国別の資産配分はどういう状況ですか?

 当ファンドは、機会選好型の投資戦略を行います。つまり、最も投資魅力が高いと判断される投資戦略に集中して投資を行い、幅広い分散投資を行うことはいたしません。従って、国別の投資配分は、市場見通しに対する確信度のみによって決定されることになります。当ファンドの設定来の運用においては、米国の通貨と債券マーケットに対して強気のスタンスであったために、米国への投資配分が最も高くなりました。次いで、英国、ドイツの順に投資配分が高くなりました。現在の国別の投資配分は、米国33%、ドイツ8%、スペイン2%、日本57%(すべてコール運用)となっております。

 

 今年に入ってからこの国別資産配分に大きな変更はありましたか?

 今年の大きな変化は、英国ポンドのポジションを引き下げたことです。これは、英国経済が急激に落ち込むと判断したためです。現状では、英国ポンドのリスクを採りたくないと考えています。英国債券に対しては、強気の見通しを持っていますが、ヘッジ・コストが高すぎることが障害となっています。

 

 金融市場別の資産配分はどういう状況ですか?

 株式への投資はいたしません。現在の通貨配分は米ドル42%、独マルク10%、円48%となっております。

 

 このファンドは公社債投信に分類されていますが、公社債への資産配分が18〜19%と低いのは何故ですか?

 恒常的に、債券の組入れ率は低くなります。これは、ポートフォリオ全体のデュレーションが2年以内という制限があるためです。つまり、10年債のような長期債であれば、比較的小さなポジションであってもポートフォリオ全体のデュレーションが2年を超えてしまうことがあるからです。世界的にイールド・カーブのフラットニングがさらに進むと判断していますので、主に長期債投資を行っております。一部例外は、スペインです。

 

 どのような状況下であれば債券への投資比率を引き上げますか?

 仮に、各国中央銀行が公定歩合を一斉に引き下げれば、債券の組入れ率を引き上げることになるでしょう。しかし、現状ではそのようなことが起こる可能性は低いと判断しております。イングランド銀行は来年には公定歩合の引き下げを迫られる可能性があり、FEDでさえも若干の金融緩和を実施する可能性があると考えています。さもなくば、現在の環境下では、イタリアおよびスペインなどの欧州周辺国がドイツ金利に合わせるために来年に金利引下げを行わねばならない以外は、ほとんどの中央銀行は金利を据え置きするでしょう。

 

 VINTAGEには決算期の違う6本のファンドがありますが、これまでのパフォーマンスはどうなっていますか?

 設定来の分配金込基準価額騰落率は以下の通りです。

 

1998/8/14現在

ファンド名 1/7月型 2/8月型 3/9月型 4/10月型 5/11月型 6/12月型
設定日 97.7.25 97.8.22 97.4.25 97.10.24 97.5.23 97.6.27
第1期決算日 486.54円

(98.1.20)

713.78円

(98.2.23)

0円

(97.9.24)

459.21円

(98.4.20)

498.07円

(97.11.20)

551.59円

(97.12.24)

第2期決算日 779.00円

(98.7.21)

-

(98.8.20)

486.03円

(98.3.23)

-

(98.10.20)

131.95円

(98.5.20)

321.72円

(98.6.22)

基準価額(8月14日現在) 10,192円 10,421円 10,316円 10,448円 10,272円 10,223円
設定来経過日数 386日 358日 477日 295日 449日 414日
分配込設定来騰落率 14.6% 11.3% 8.0% 9.1% 9.0% 11.0%

 

 

 他の公社債ファンドに比較して高いパフォーマンスをあげていますが、その要因はどこにあったと考えていますか?

 当ファンドの高パフォーマンスは、主に米ドルおよび英ポンドへの投資に起因するものです。当ファンドは、昨年の英ポンドの急激な上昇や、すべての通貨、とりわけ米ドルに対する構造的円安を的確に捉えました。また、日銀の為替介入による2度の円高局面においても事前に外貨のポジションを引き下げ、基準価額の下落を最小限度に押さえ、その後再び安価なレートで外貨ポジションを再構築する事ができました。一方で、債券投資においても良いパフォーマンスを達成しております。米国債で最も大きなキャピタル・ゲインを獲得しましたが、独国債、スペイン国債、豪州国債においてもキャピタル・ゲインを獲得しました。

 

 このファンドでは為替ヘッジというのはどう考えればよいのでしょうか?

 当ファンドにおいて、為替ヘッジは余り重要な戦略ではありません。当ファンドは、外債および為替のトータル・リターンとして魅力的なマーケットに投資をすることが基本です。ヘッジをする事例としては、ヘッジをすることによって収益がアップする場合などが挙げられます。例えば、今年、ドイツ債券を購入し米ドル/独マルクでヘッジを行いました。これは、ヘッジをした方が、収益が高かったためです。その他の例としては、日銀による為替介入のようなイベント・リスクを回避するために、ヘッジを行うことがあります。

 

 米ドルについてですが、年末に向けどのように動くと考えていますか?

 米ドルに関しては、今年いっぱいは、部分的には来年も安定的に強含むと予想します。また、日本経済のターニング・ポイントは1999年の9月頃になるのではと見ています。米ドル/円は、その時期よりも早く反転する可能がありますが、当面のレンジは155円から170円を見ています。独マルク/円に関しては85円程度を予想します。グローバルな経済環境は日本を中心として悪化の一途をたどっており、早期回復は見込めないでしょう。米国は、少なくとも1999年は最強通貨および最もパフォーマンスの良いマーケットになると予想します。

 

 日本の投資家へ何か伝えたいことは?

 日本の投資家に対して最も言いたいことは、外株や外債に投資する際に最も大きなリスクは為替リスクであることを理解してほしいということです。過去2〜3年の為替のボラティリティは、外株や外債のボラティリティよりも大きかったのです。従って、外株や外債の投資経験を持つだけではなく為替の、特に円から見た為替の優れたマネジメントの経験をもつファンド・マネージャが運用するファンドに、投資家は投資すべきなのです。リターンのボラティリティによってそのようなファンドを見極めることが可能です。当社は、優れたリスク・マネージメント能力によりマーケットよりも低いボラティリティのリターンを継続して達成しております。

 

 最後に、あなたのファンドマネージャーとしての経歴をお話頂けますか?

 私自身のファンド・マネージャーの経験で非常に特徴的なことは、9年間の日本在住の経験があり円資産に対する長い運用経験をもつということです。従って、私が日本人投資家のファンドを運用する時は、日本人投資家の観点で投資を行います。最近、日本では、外債ファンドブームになっており、各外資系運用会社は外債に対する運用能力をアピールしております。しかしながら、外国資産の運用と為替マネージメントの両方の運用能力を兼ね備えている外資系運用会社は、余り多くありません。もし、ポートフォリオの中で為替リスクが最も大きなリスクだとすれば、外株や外債の運用の善し悪しは余り関係なく、為替リスクによって損失を被る可能性があります。

 

どうもありがとうございました。

 


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