インタビュー

 

加藤秀樹氏 (掲載日 9月6日) 

インベスコ投信投資顧問株式会社投資信託部ディレクター

「GTグローバル国際債券ファンドの運用状況について」

 

今回はインベスコ投信投資顧問株式会社の投資信託部ディレクター加藤秀樹氏(旧LGT投信・投資顧問株式会社の投資信託部長)に、GTグローバル国際債券ファンドの運用状況等について話を聞いた。GTグローバル国際債券ファンド(愛称「クレッシェンド」)は、追加型株式投資信託のバランス型に分類されるファンド。7月末時点での過去1年間の分配金込み騰落率が24.4%という高いパフォーマンスをあげている。

 

 ファンドの目的と特徴は?

 GTグローバル国際債券ファンドは、世界の先進国の公社債に分散投資し信託財産の着実な成長を図ることを目的としたファンドです。GTグローバル世界債券ファンドとまったく同じ目的、特徴を持ったファンドです。ただ、決算が世界債券ファンドは年4回あるのに対し、この国際債券ファンドは年2回です。また、信託期間が世界債券ファンドは無期限、国際債券ファンドは約10年という違いがあるだけです。

 

 世界の先進国の公社債を中心とした投資を行うということですが、具体的にはどのような公社債ですか?

 信用格付けの高い先進国の国債を中心とした債券にアクティブに投資しています。

 

 格付けにおいてどの格付け以上という決まりはあるのですか?

 特にありませんが、当然、投資適格格付、つまりBBB格以上ということです。実際にはAA格が中心となっています。

 

 受益証券説明書では株式を組み込めることになっていますが、実際には株式は入っていないのですね。

 入っていませんし、今後も入れることはありません。信託協会への届出をするうえでの定められた文言なので説明書に記入してあるだけです。

 

 債券比率を見てみると、7月末時点で77.7%とあまり高くないのですか、これはどういう理由ですか?

 特殊な要因が関係しています。このファンドは三洋証券専用ファンド(三洋証券だけで購入できるファンド)として97年7月に設定されました。三洋証券の会社更生法適用が発表されるまで、つまり97年7月から97年12月までの間この国際債券ファンドと世界債券ファンドは、まったく同じ運用が行われていました。しかし、三洋証券がこういう状況になりましたので、このファンドのクローズド期間が97年12月25日に開けた時点で、お客様が解約に動く可能性が高いだろうという判断からこのファンドの資産を一度すべて現金にしました。

 

 それが去年の12月ですか?

 12月の第一回目の分配を行った後です。分配金の支払を終えた後、すべてを現金にしたわけです。

 

 その後はどういう状況に?

 今年の4月になり、このファンドは三洋証券専用ファンドから公開販売ファンドになり、そこから投資を再開しました。公開販売となったことで、新たに加わった販売会社によりファンドの販売が行われるようになりましたが、引き続き三洋証券を通じてのファンドの解約は続きましたのである程度キャッシュ比率を高く持っている必要があったのです。

 

 純資産総額は7月末時点で約67億円ありますが、三洋証券の会社更生法の適応発表後どのくらいまで純資産総額は落ち込みましたか?

 このファンドが設定された昨年7月の時点で純資産総額は約170億円でした。その後クローズド開けまで(12月)のピークが約210億円。この210億円というのがこのファンドの現時点までのピークです。クローズド開け以降は解約が続きボトムが67億円程度です。

 

 というと、協会から発表されている7月末時点の数字がボトムということですね。

 ええ。しかし、そこからファンドの純資産総額は増加に転じており直近の数字(8月中旬時点)で約90億円となっています。8月に東京証券と高木証券が公開販売会社に加わったことなどもあり純資産総額は増加してきています。

 

 そうすると、解約が一巡し販売会社が増えたことで現金比率はもうそれほど高くしておく必要はなくなったわけですか?

 ええ、ただし三洋証券の預かり資産がまだ37億円程度あります。この中から他の証券会社への預け替えになるものと、解約になるものが出てくるでしょうから、可能性としては純資産総額が減ることもあります。

 

 そのためにまだキャッシュ比率は当面高めに維持するということですか?

 解約に備えてキャッシュ比率を高めに維持する必要というのは、現時点ではもうないと考えています。しかし、それ以外の理由で、つまり純粋に債券運用の観点から当面キャッシュ比率を高めに維持する判断でいます。

 

 どういう意味ですか?

 つまり、バーベルにしておきたいという運用担当者の判断があります。

 

 バーベル取引にしておくというのはどういう意味ですか?

 バーベルというのは、債券運用において残存期間の長い債券と短い債券の比率を高くして、残存期間の中くらいの債券の比率を低くしておくことをいいます。このファンドは現在残存期間の長い債券の比率が高くなっています。そこで、現在キャッシュで持っている部分をキャッシュや残存期間の短い債券として持っていることでバーベルの状態にしておきたいという運用判断です。

 

 つまり、三洋証券の問題とは別のところでキャッシュ比率を高めておきたいという判断があるのですね。

 そうです。ですから、当面急激にキャッシュ比率が下がるということはありません。15%程度でゆくのではないでしょうか。

 

 今後は販売会社が増えたこと、運用実績がよいことを考慮すると純資産総額は順調に増加するのではないでしょうか。

 そうですね。今年の上半期に現金で運用しているにも関わらず運用実績として過去半年で16.55%の実績がありますから、実績が好感されることは考えられます。

 

 もう少し実績の話を聞かせていただきたいのですが、協会の発表では7月末時点の過去1年間の分配金込み騰落率が24.4%、過去半年で15.2%ととても高いのですが、直近のパフォーマンスはどうなっていますか?

 8月14日現在で、過去1年間の分配金込み騰落率が30.9%、過去半年が16.55%です。

 

 かなりの数字ですね。この間のベンチマークはどう動いていますか?

 このファンドのベンチマークはJPモルガン世界国債指数ですが、この指数は8月14日現在で過去1年間で34.61%、過去半年で18.59%です。円ベースでの数字です。

 

 国際債券ファンドもベンチマークも高いパフォーマンスを示してしますが、これはどういう状況を反映していると考えればよいですか?

 円ベースで見れば為替に因るところが大きいということです。現時点における国際債券ファンドの為替のヘッジ比率は0%ですから、ドル高円安のメリットを享受した結果といえます。

 

 このファンドの為替への対応はアクティブ・ヘッジということですが、為替についてアクティブにヘッジするというのは、為替ヘッジへの対応も含めてファンドのリターンをファンドマネージャーがトータルで判断して対応するということですね。

 そうです。私どもは現在円安ドル高トレンドが中長期的に続くと予想しており、このファンドは現時点でも日本円の他通貨に対する為替ヘッジをかけていませんし、当面かけることはないと考えています。もちろん、この予想を変更すべき状況になったと判断した場合は、機動的に為替ヘッジを行うことにより、円ベースでのリターンの保全に努めます。

 

これは、決してこの国際債券ファンドについてということではなくて、弊社の運用するほかのファンドについても同じ見通しのもとに運用されています。

 日本政府が経済再建案を出すなどというニュースもありますが、そういうものが出た場合にはヘッジ比率の変更の余地はありますか?

 現時点では何も見えておりませんから、変更を検討する時期ではないと思います。

 

 為替以外の高パフォーマンスの要因は?

 ディスインフレの傾向が強まっている中で、特に長期金利が低下していますからそのメリットを受けたということです。このファンドのデュレーションは8年です。ですから、長期金利が低下するほど、このファンドのパフォーマンスはよくなるということです。同じ公社債に投資するタイプのファンドでも、3年程度の比較的短いデュレーションのものに投資しているファンドと比較してこのファンドパフォーマンスがよい要因はそこにあります。

 

 為替への対応、デユレーションを長めにとったという点が高パフォーマンスの要因ということですが、資産配分比率も要因ではなかったのですか?

 そうですね。ハイイールドを入れていないということが大きなポイントだったと思います。

 

 特に今年はハイイールドボンドに投資するファンドがかなり人気を集めていたわけですけど、このファンドは全くそういうものには投資していないということですね。

 そうです。ハイイールドというのはリスクの高い公社債であり、そういうものに投資するリスクというのが十分に認識されていないと思います。やっと最近になって少しは理解されつつあるという状況ではないでしょうか。

 

 確かにロシアの金融不安などが表面化してきて、ハイイールド債券への投資の怖さが少しずつ認識されようとしているかもしれませんね。

 ええ。このファンドでは、あくまでも格付けがよく、しかも通貨が強いところの公社債にしか投資していませんから、ハイイールドボンドファンドにあるようなクレジットリスクを伴わないのです。

 

 具体的にはどんな国へ投資しているのですか?

 OECD諸国を中心としています。具体的には、8月14日現在アメリカが38.6%、ドイツが12.4%、イギリスが9.6%、オーストラリアが5.3%という状況です。

 

 米国がもっとも多いという要因はどういうところにありますか?

 一つは、為替の面においてドルが一番強いと見ていたからです。それから、金利は米国を中心に動きますから、世界的な低金利傾向という状況においては米国の割合が高くなるわけです。

 

 次にドイツが次に高いという要因は?

 欧州の大陸全体ということで考えると債券はあまり魅力のある投資先だとは考えてはいませんが、長いところについてはまだ魅力があったわけです。それで、ドイツの債券を組み入れたのです。加えて、対円での為替の強さも要因でした。ですから、国別投資配分を見ても、円安による為替益がどの通貨についてもとれているわけです。

 

 そうするとこのファンドの高いパフォーマンスの要因では、為替による要因の方が大きかったわけですね。

 もちろんそうです。

 

 これからこのファンドへの投資を検討している投資家というのは、今後の為替の見通しとOECDを中心とした先進国の債券の見通しというのはどうなのかというのを知りたいわけですが。

 まず、欧州ということで考えるとやや不透明だと思います。

 

 不透明とは?

 EMUスタートにあたって、そのよい点というのは既に織り込み済みだと考えられます。つまり経済に与える影響、金利に与える影響など通貨統合によるメリットはすでに市場は織り込んでしまった。東西ドイツの統合の時のことを思い起こしてみるとよくわかります。ドイツの統合を控えドイツ経済が更に強くなるとの見方が増え、ドイツマルクは対円でも\100まで強くなった。でも、実際には失業率が大幅に上昇するなどドイツ経済は大変な状況になり、株式市場も下落、通貨も下落してしまった。ですから、EMUの場合も、経済統合・通貨統合のよい面についての期待が高まってはいますが、実際には統合が行われてみないとどういう状況になるのかわからないのです。イタリヤやスペインも入っているわけですから…

 

 確かに参加国の経済状況が通貨統合のための経済必要条件に向けて予想以上にスムーズに収斂してきたので、それを好感して通貨高、株高となったわけですね。

 ええ、現状はそうです。しかし、結果はまだ見えない。まず、金利の先行きが見えない。株式市場にしても、米国が修正局面に入れば当然欧州にも影響を与えるでしょうし決して楽観的にはなれないのです。

 

 99年にはユーロという通貨が流通しはじめるわけですね。

 マネーマーケットでは流通しはじめますが、個人間ではまだです。

 

 そういう具体的な動きがはじまってみないと実際の影響が見極めきれないということですね。

 ええ、そうです。

 

 となると、米国はこのままの状況として、欧州の不透明感が強いとなると、比率的には米国中心の資産配分が今後も続くということとですか?

 米国というよりドル圏と欧州通貨統合に参加していないイギリスということになるでしょう。

 

 そういう資産配分でなら、為替益だけでなく債券からの収益も期待できるということですね。

 そうです。過去10年間の国内現金、国内債券、外国債券、外国株式、国内株式のリスクとリターンの関係を検証してみると、国内株式がリスクが最も高くリターンが最も低かった(マイナス)ことがわかっています。国内現金が最もリスクが低かったのですが、リターンはプラスではあったものの2番目に低かった。次に国内債券、外国債券と続き、外国株式はリスクは国内株式の次に高かったもののリターンは最も高いという結果になっています。

 

 ここでのリスクというのはどういうものと考えればよいですか?

 価格のぶれ方、つまりボラティリティーと考えて下さい。つまり、日本の株式は過去10年において最もぶれが大きく、かつリターンもマイナスと最も低かったということです。外国株式は確かにリターンは最も高かったのですが、この10年で見るとメキシコ通貨危機やアジアの通貨危機もありリスクも高かったのです。一方、外国債券を見ると、この10年では94年の利上げ時期などもありましたからリスクは決して低くなかったが、リターンもある程度とれました。国内債券はこの10年では債券市場が堅調時期でしたのでリターンもそこそこあり、かつリスクが抑えられていました。

 

 グラフで見るとわかりやすいですね。

 そうですね。それで、問題は今後10年はどうだろうかということです。日本株式についてはリスクは過去10年と比較すれば低下するでしょうが、リターンも期待できないでしょう。外国株式については、リスクは相変わらず高いのですが、リターンは急激に低下すると予想されます。つまり、外国株式はかなり割高な状態にあり、修正が入るだろうと予想しています。

 

 そうなると自ずと投資資金は外国債券にゆくということですね。

 そうなります。国内債券については、今後10年の間にリスクは多少増え、一方でリターンが急激に減少すると考えられます。日本の現在の金利は史上最低水準なわけですから、

10年という長期で考えれば当然金利は上昇し、債券の値段は下落すると予想されます。

 

 そうすると長期投資ということを考える場合、大きなリスクはとりたくはないが、ある程度のリターンを得たいと考えると為替益ということもあり、外国債券が投資対象となってくるというシナリオですね。加えて、格付けが高い外国債券に投資することがリスクを抑えるためには必要となるということですね。

 そうです。ですから、米国の景気が悪くなったら国債の金利は下がりますが、ハイ・イールド債の金利は上がる傾向が強くなりますから、そういうことを十分理解した上でファンドは選択する必要があります。

 

 先ほどのリスクとリターンの関係の予測はよくわかりましたが、その根拠となっているものはどういうものですか?

 それはバリュエーションが今後修正された場合の債券と株式の収益率予測です。

 

 バリュエーションというのは?

 個別投資有価証券の評価価値のことです。

 

 では、その評価価値が今後どのように修正されると仮定しているのですか?

 先進国のインフレ率が平均1.84%へ低下、実質企業収益の伸び率が平均2.65%へ鈍化、株価収益率が15.5%へ低下、予想実質金利は2.8%へ低下という修正です。こういう修正が入った場合に、今後10年間で先進国の債券の収益率は年平均7.66%、株式は2.91%(円ベース)と予測しているのです。

 

 だから債券投資が有効であると考えているということですね。

 そうです。ですから、先進国を中心に投資するグローバル債券ファンドは今後も期待ができるということなのです。この国際債券ファンドは、こういうシナリオに沿って運用されているとてもオーソドックスなファンドなのです。

 

 ありがとうございました。

 


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