インタビュー
加藤秀樹氏(インベスコ投信投資顧問株式会社投資信託部ディレクター)
「GTグローバル世界株式ファンドについて」(掲載日9月14日)
インベスコ投信投資顧問株式会社の投資信託部ディレクター加藤秀樹氏(旧LGT投信・投資顧問株式会社の投資信託部長)に、GTグローバル世界株式ファンドの運用方針や運用状況について話を聞いた。GTグローバル世界株式ファンドは、国際株式型一般型に分類される追加型株式投資信託。販売会社は明光証券。
世界株式ファンドというのは、名前からもわかるように世界中の株式に分散投資するファンドということですね。
そうです。世界各国の株式を主な投資対象として信託財産の長期的な成長を目指すファンドです。トップダウンアプローチで独自の経済予測に基づいた資産配分を行い、また銘柄選択についてはボトムアップ・アプローチで行います。
最もオーソドックスなグローバル・エクイティファンドと考えればよいでしょうか。
そうですね。ただ、先進国の株式だけでなく、新興国の株式も含めて世界各国の株式に投資します。ベンチマークはMSCI世界株式指数です。
為替のヘッジについては、他のGTグローバル・ブランドのファンドと同様にアクティブ・ヘッジということですか?
はい、GTグローバル世界債券ファンド、GTグローバル国際債券ファンド、GTグローバルインベストメント・オープンなどと同様に、為替の運用も含めてファンドマネージャーに任せていただくタイプのファンドです。
ということは、このファンドについても現状では為替のヘッジ比率はゼロということですか?
そうです。現在日本円に対する外貨資産の為替ヘッジはしておりません。
現状の国別資産配分状況はどうなっていますか?
7月31日現在で、米国が32.5%、イギリスが17.7、日本が4.2%、オランダが4.0%、オーストラリアが4.0%、以下スウェーデン、ブラジル、ニュージーランド、イタリア、チェコ、ドイツ、ポルトガルと続きます。
ベンチマーク比のパフォーマンスはどのようになっていますか?
過去1年で見ると、世界株式ファンドの騰落率が30.82%、ベンチマークは37.40%です。
ベンチマークも世界株式ファンドも30%を超す高いパフォーマンスを示していますが、為替の影響が最も大きいと考えてよいでしょうか。
そうです。大雑把に言って、当ファンドの場合は為替メリットが6割、株式の上昇に因るところが4割というところです。
世界株式ファンドがベンチマークを約7%下回っている要因は?
過去1年という短い期間で見ると、世界株式ファンドのパフォーマンスがベンチマークを下回ってはいますが、そろそろこの関係は逆転すると予想されます。
どういうことですか?
この点をよく理解していただきたいのです。つまり、ベンチマークとは何かというと、ベンチマークが対象とする株式市場の時価総額を加重平均したものです。このファンドのベンチマークであるMSCI世界株式指数は、世界23カ国を対象としていますが、現在米国の時価総額が全体の51%を占めているわけです。日本が10%程度です。
この世界株式ファンドの場合は米国への配分比率が約32%です。ですから、これまでのように米国の株式市場が活況の場合はベンチマークのパフォーマンスの方がよいわけですが、現在のように米国の株式相場が調整局面に入ると、MSCIは急激に下落し、世界株式ファンドはMSCIほどは下落しないわけです。
ベンチマークと比較して米国の比率をアンダーウェイトしている分だけ、米国株式市場の下落の影響が小さいのですね。
そうです。ですから、過去1年間という短期間においてはベンチマークと比較してそれを若干下回るとか上回るというのはあまり重要なことではないのです。あくまでも当ファンドは中長期的な信託財産の成長を目指しているのですから、長期的なパフォーマンスが重要になります。
つまり、米国の株式市場はオーバーシューティングであり、調整が入ることを見越して世界株式ファンドの米国の比率はベンチマークより下げてあるということですか?
そういうことです。
英国への資産配分が17.7%と米国に次いで高いのですね。
イギリスへの資産配分はベンチマークをオーバーウェイトしています。また、日本についてはアンダーウェイトしています。つまり、イギリスは欧州通貨統合に参加していないので、通貨統合の不透明要因の影響を受けないということ等を理由に多めの資産配分をしてあります。日本の場合は、日本株に対する弊社の考え方がより悲観的であるということです。加えて、円安が継続すると考えていますから一般的に日本株への影響はマイナスであるわけです。
世界株式ファンドの上位2カ国(米国と英国)を除く資産配分を見ると、残りの各国への資産配分というのはかなり低く分散投資されているのですね。
そうですね。総じて欧州(除くイギリス)への資産配分は通貨統合の結果が不透明であるため低く抑えられています。
では、業種別の資産配分比率はどのようになっていますか?
中長期的な企業成長が見込める業種、つまり通信、テクノロジー、医薬品、ヘルスケアという業種やブランド・ネームの強い消費関連業種を合わせて60%程度、もう一つのグループとしては金利の低下によって恩恵を受ける企業、つまり銀行、生命保険、運用会社、消費者金融など、これが40%程度という配分です。
弊社では、世界的なディスインフレ、つまりそれによる金利低下傾向が続くと予想しております。ですから、債券と株式市場という枠組みの中では債券へ投資した場合のパフォーマンスが今後中長期的にはよいと期待しています。ですが、株式投資ということを考えた場合でもこのディスインフレによって恩恵を受ける企業というのがあるわけですから、株式ファンドではそういう企業に重点投資するのです。
このファンドの上位組入銘柄を見るとわかるのですが、(上位10まではの銘柄の業種はヘルス・ケア、フィナンシャル・サービス、医薬品、フィナンシャル・サービス、銀行、保険、電子部品・計器、サービス、ヘルス・ケア、コンピュータとなっている)、こういう業種に特化して投資しなければ株式ファンドでパフォーマンスを出すことはできない時代なのです。投資できる銘柄というのが世界的に見ても限られてきているということです。
米国の株式市場も長いこと活況が続き、欧州の株式市場も通貨統合に向けて活況であったので世界株式投資ということでは選択肢が多いのかと思っていましたが、そうではないのですね。
私どもの調査からは、中長期的には投資できる業態が限られてきているという結果がでています。
それはどういうことなのでしょうか?
ディスインフレという状況の中では、企業は値上げをして儲けるということができにくくなります。値下げをしないと物が売れない。デフレという状況では物価も下がるが給料も下がる。だから、値下げしないと物は売れない。企業としては収益を上げるためにはリストラを行いコストを落とし、製品の能力を上げて、値下げをしながら収益を上げるしかないのです。そういう状況の中で生き残れる業種というのは何かということを調査するとこの二つの条件に合った企業しかないということです。
先ほどの、中長期的な成長が見込め、ブランド・ネームの強い消費関連業種と金利の低下によって恩恵を受ける企業という二つですね。
そうです。例えば、中長期的な成長企業ということで通信会社をあげていますが、それがフィンランドでも、ブラジルでも、スウェーデンでも、国営の電信電話会社が民営化され始めています。こういう企業は現状でも強い価格決定力を持っています。民営化直後のNTTのようなものです。今でこそ新規参入が相次ぎ競争が厳しくなっていますが、民営化直後はそうではなかった。価格決定力があるということは、市場占有率が高いということでもあります。そうなるとキャッシュフローがだんだん膨らみ、収益も大きく伸びるのです。
ということは、米国や先進国はあまり投資対象とはならないのですか?
いいえ、そうではありません。今のは通信という分野の中の一例に過ぎません。例えば医薬品というのを見ると、高齢化社会というのはどの国でも同じような状況にありますから、新興国、先進国を含めて投資対象となります。
このファンドの重点投資対象である医薬品、通信という分野は、世界的な合併の話がニュースを賑わすなど世界規模での再編の動きがある業種だと思いますが、そういう動きはどう理解したらよいのですか?
合併することによりリストラが図られ、コストが大きく削減されてゆき、経営効率が向上し競争力が強まるということです。
つまりそういうところが投資対象銘柄となってくるわけですね。
そうです。ですから、こういう業種の場合は国別の資産配分であまり考えるべき業種ではありません。
そうなると、将来的には株式投資全体において国別の資産配分の重要性というのはなくなってくるのですか。
恐らくそういう傾向にはあると思いますが、必ずしもそう言いきれない部分があります。例えば、世界的な金利低下傾向ということで各国の銀行株が買われている状況にあっても、決して日本の銀行株は投資対象にはなってこないわけですから、その国独自の要因は引き続き重要になります。生命保険会社株も米国や欧州では買われていますが、日本では株式公開していないので投資対象にはなりません。
世界株式ファンド組入銘柄数はいくつくらいですか?
現在は65銘柄程度です。
65銘柄というのは少ないように思いますが?
つまり、先ほど申し上げた2つの条件に適合する銘柄が少ないということです。当社では他の株式を含むファンドについても同様のことが言えます。経済成長率が下がってゆく過程においては企業の収益率の伸びも下がるわけです。そういう状況の中では、成長を見込める業種あるいは銘柄を絞り込んでいかないと中長期的にパフォーマンスをとることはできないのです。
そうなると、運用機関のお金というのは世界的に見てもある一部の銘柄に集中する傾向にあると言えるのですか?
そうなってきていると思います。
日本の場合は、景気が低迷しており、金融業界も混乱しているため、ソニーやトヨタといった超優良銘柄に投資資金が集中しているという状況にあると思いますが、それと似たような状況が世界の株式市場でも起こっているのですね。
そうです。世界全体として景気が鈍化してくると、ソニーやトヨタとは申し上げませんが投資銘柄が限られてくるのです。ですから、運用会社としては困難な時期が続くと考えています。私どもの調査では、今後10年間の株式市場の平均リターンは2.91%という予測数字が出ています。そういう中で高いパフォーマンスを上げようとするとかなり選別された銘柄に投資しなければ実現できないわけです。現金の場合、同じ10年間の平均リターン4.5%と予測しています。
現金の方が株式市場からの予測リターンより高いということは、預金しておいた方がよいということになるのですか?
この場合の預金というのは外貨預金のことですが、私どもの仮定条件を基にした今後10年間の世界平均で考えるとそうなります。ですから、現金比率もこのファンドでは17.0%と高くしてあります。つまり、為替益をより直接的にとる部分ということで高めにとっています。
現金というのはドルなのですね。
ドルだけでなくポンドなどを含めた外貨ということです。これは国際債券ファンドなど他のファンドの現金の部分についても同じです。現金比率が高い要因はもう一つあります。それは、株式市場が適正水準まで調整された時に速やかに買いを入れるための待機資金として高めにして持っているということです。
ファンドの条件には合っているものの、現状株価が高すぎるものについて、修正が入った時に買いを入れるためということですね。
そういうことです。
アジアや東欧の組入れ状況はどうなっていますか?
アジアやロシア、東欧は限定的な組入れにしており、現在はほとんど組入れがありません。
今回のロシアの金融不安が顕著化する前からですか?
そうです。入っていませんから、もちろんダメージもありませんでした。
そうすると新興国は入っていないのですか?
いいえ、そういうことではありません。このファンドは新興国の株式についても投資対象となっています。ただ、アジアやロシアなどは組み入れなかっただけです。アジアやロシア、東欧にはこのファンドの2つの条件に合った企業というのは存在していないのです。また、そういう国の為替についての懸念もありましたので入れてないのです。加えて、ロシアの金融不安というのはある程度予想できたものです。
確か、グローバルインベストメントオープンのお話をファンドの運用担当者に伺ったときも、アジアの経済・金融危機は予想できていたので組入れておらず、また日本株も入れていなかった。結果としてアジア通貨危機の影響も日本株の低迷の影響もなかったという話を聞いたのですが、今回のロシア・東欧でも同様にリスクは回避できていたわけですね。
結果としてそうなりました。運用部門と調査部門が全く独立して活動しているので、エコノミストチームの調査結果を基に運用者がそれを反映させているということです。
今後も、先ほどの2つの条件にあった銘柄を選択するということと、米国を中心とした配分というのに大きな変化はないのでしょうか?
欧州を若干増やす方向ではあります。
欧州については通貨統合の不透明感から組入れは少ないというお話でしたが?
ええ、そうです。ただ、これまで欧州を低めにしすぎてあった部分を多少調整するということです。通貨統合の不透明さから欧州の比率をかなり下げてきました。結果、ベンチマークと比較してかなりアンダーウェイトになってきたので多少上げる方向にあるということです。
日本については?
今のところ日本への配分を増やす予定はありません。
どうもありがとうございました。
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