インタビュー
R. トッド・ルパート氏(T.ロウ・プライス・アソシエーツ社常務取締役法人部長)
「T.RowePriceライフプラン・インカム・ファンドの運用について」(掲載日11月8日)
今回は、来日中のT.RowePrice社の常務取締役法人部長R.トッド・ルパート氏に、「T.RowePriceライフプラン・インカム・ファンド」の運用について話を聞いた。T.RowePriceライフプラン・インカム・ファンドは、米ドル建てのルクセンブルグ籍オープンエンド契約型外国投資信託。日本では証券業協会により外国投信の債券型に分類されている。代行・販売会社は明光証券。今回のインタビューはルパート氏の来日中98年10月29日に行なわれた。
T.RowePriceライフプラン・インカム・ファンドの目的は何ですか?
とてもシンプルです。ファンドは米国ドル建てのファンドで、米国の事業債に広く分散投資を行ないます。分配金は毎月支払います。このファンドの目的は高いレベルのインカム収益と、長期的なキャピタルゲインの提供です。このファンドを通して、日本の投資家は米国資産での資産運用が可能となり、毎月分配金を受け取ることが可能となります。
事業債へ投資すると言いましたが、事業債のうち、投資適格債券と投資不適格債券の両方に投資します。米国の債券は格付けにより分類されています。最も格付けの高い債券というのは米国財務省証券(国債)です。このファンドは基本的には国債には投資しません。事業債に集中して投資します。事業債というのはスタンダード・アンド・プアーズ及びムーディーズという2大格付け会社が信用力によって格付けを行なっており、信用力によって最も安全なAAAからCCCまでの格付けがあります。このファンド資産の70%以上は投資適格債券、つまり信用力の高い債券に投資されます。また、残りの30%以下は、B格を下限としたハイイールド等に投資しますが、B格への投資はファンド資産の10%に限られています。
信用力の高い債券という表現はあいまいな表現であると思います。例えば、多くのファンドの説明書などでこのファンドは信用力の高い債券を中心に投資し、投資している債券の平均格付けはAA格以上です、というような記載をよく目にします。しかし、このファンドについての運用報告書を見ると、平均格付けはBBB格となっています。
そうです。平均格付けはBBBです。
それでも、高い格付けの債券と言うのですか?
そうです。では、米国での債券の格付けの見方を説明しましょう。債券の格付けにおいて投資適格債券というのはAAA、AA、A、BBBのことです。つまり、BBB格以上の債券は全て投資適格債券であり、信用力の高い債券と言います。しかし、もし、我々がこのファンドの資産のすべてをAAA格の債券にのみ投資した場合、このファンドの投資家へのリターンというのはもっと低いものになります。我々は20人以上の債券アナリストを擁しており、彼らが投資対象の債券について分析を行っています。適切なリスク・リターンのトレードオフの関係にある会社の債券には投資できると考えています。つまり、ファンドの平均格付けがBBB格であることで、平均格付けがAAA格のファンドと比較してより高いリターンを獲得できるのです。しかも、信用リスクについてはアナリストによる分析が行われており、投資家をひどいリスクにさらしたりはしていないと思います。
高品質債券に投資するファンドと所謂ハイイールド債券ファンドの中間に位置すると理解してよいでしょうか。
まあ、それもフェアな見方でしょう。
間違っていたら指摘してください。
いいえ、間違ってはいませんね。簡単に言うと、70%以上の資産はBBB格以上の格付けの債券、つまり投資適格債券に投資し、残り30%未満は、現時点では20%だけですが、ハイイールドボンドに投資可能なファンドということです。しかし、ハイイールド債券に投資する場合の我々のアプローチは、最も質の高いハイイールド債券に投資する、というものです。最も質の高いハイイールド債券というのは、BB格またはB格のハイイールド債券ということです。
B格より低い格付けの債券は全く含んでいないのですね。
B格より低いものは全く組み入れていません。ファンドの運用ルールで組み入れられないことになっています。米国における典型的なハイイールドボンドファンドというのは、ファンド資産の25%をB格より低い格付けの債券に投資しています。このファンドの場合は、ファンド資産の70%以上が投資適格債、30%以下がBB格又はB格のハイイールド債に投資されています。また、ファンドの運用ルールでB格はファンド資産の10%以下に限定しています。これら点が他のファンドと大きく異なる点なのです。
具体的な格付構成の数字はありますか。
9月末現在の構成では、AAA格は1.7%、AA格が6.7%、A格が9.5%、BBB格が60.8%、BB格が16.9%、B格が4.4%。平均格付けはBBB格です。
現時点での平均格付けがBBB格ということですが、このファンドの平均格付けは常時BBB格またはそれ以上に維持する方針ですね。
そうです。このファンドの平均格付けは投資適格格付でなければいけませんので、BBB格以上ということになります。しかも、我々は格付け会社による格付けを頼っているだけではありません。優秀なアナリストを社内に擁しております。社内のアナリストの評価においては、格付け会社による評価が過小評価である場合があります。そういう債券を購入するのです。実際、このファンドにおいては我々が購入した債券の多くが後に格付けを引き上げられました。ですから、とっているリスク以上のリターンを獲得しているわけです。
そして、それらの債券は全て米ドル建て事業債ですね。
そうです。ですから、元本も配当もドルで支払われます。
ということは、それらの債券の発行体は米国企業ということになりますか。
そうとは限りません。発行体は世界中の企業ということになります。ドル建ての事業債を発行している企業ということです。
この場合、国別の資産配分比率というのは重要となりますか。
こういうファンドの場合において、国別の資産配分というのはあまり意味を持ちません。
全てドル建てとは言っても、発行体の業績あるいは債券のパフォーマンスというのはその企業が属する国や経済の影響を受けるのではないですか。
ええ、しかし、誤解を与えてしまうことがあります。例えば、このファンドの最大組入銘柄はピーディーヴィー・アメリカという会社の発行した債券です。この会社は、オクラホマに本社を置くシツコ・ペトロリウムという石油会社のホールディング・カンパニーです。しかし、このシツコという会社は、ベネズエラの石油会社の子会社です。しかし、ビジネスは米国だけで行なわれています。もう一つよい例は、ニューズ・アメリカという会社です。この会社はオーストラリアのルパート・マードック氏がオーナーです。ニューズ・アメリカ社はロサンジェルス・ドジャーズという野球チームを持ち、ニューヨーク・ポストという出版社も持っています。全ては米国における活動です。現在のような市場環境においては、これらの米国ドル建て債券も確かに海外市場の下落の影響により連れ安となることはあります。しかしながら、そういう海外市場の状況が我々が投資しているこれらドル建て債券の信用の質というものに影響を与えているとは考えません。これらの発行体のビジネスのほとんどは米国で行なわれているのですから。
ところで、日本でも最近は様々な債券型ファンドが販売されており、ハイ・イールド・ボンドに投資するファンドの純資産総額が大きくなってきました。そういう中において、どういう理由からこのファンドについては米国ドル建ての事業債に分散投資し、平均格付はBBB格以上のものとすることになったのですか。
たしかに、最近は日本でも多くの債券型ファンドが販売されています。しかも、人気のあるファンドはハイ・イールド・ボンドにだけ投資するタイプのファンドのようです。例えば、パトナムやアライアンスの運用するファンドなどがそうです。我々及び日本の販売会社である明光証券は、ハイ・イールド・ボンドだけに投資するファンドではリスクが高すぎると考えました。もちろん我々もハイ・イールド・ボンドに投資することの価値を認めています。ですから、ファンド資産の一部にはハイ・イールド・ボンドを組み込めるものとしましたが、大部分については投資適格債券を組み込むべきだと考えました。ですから、このファンドは現在日本で販売されているハイ・イールド・ボンド・ファンドと比較した場合、はるかに保守的なファンドであると言えます。しかも同時に、ハイ・イールド・ボンドを一部組入れることである程度高いリターンを提供することができます。我々がハイ・イールド・ボンドを組入れる際のアプローチというのは、ハイ・イールド・ボンドの中でも質の高いものを組み入れるというものです。ですから、世界のハイ・イールド市場が暴落したにもかかわらず、このファンドのハイ・イールド・ボンドの部分については、ファンドが設定されてから9月末までの間に僅かに下落したにすぎません。
では、アジア通貨危機やロシアの金融危機の影響はそれほど大きくなかったのですか。
アジアやロシアの通貨・金融危機の影響はハイ・イールド・ボンド・ファンドだけでなく、世界中のあらゆる市場に及びました。しかしながら、このファンドへの影響というのは他のファンドが受けたダメージよりも小さかったと言えます。
現在の金融市場をどうご覧になっていますか。
とてもボラティリティが高くなっています。世界的に見てリセッションに入っていますが、我々は米国経済が最も健康な経済であると見ています。米国経済においてもいくつかの懸念材料はありますが、それでも米国経済がリセッションに突入したとは考えていません。ですから、他の市場と比較において米国の債券市場に投資するというのは合理的であると思います。
日本の投資家にとっても米国に投資するというのは合理的であると言えますか。
為替が重要な要素になることは確かです。しかし、10月のドルの対円での急激な下落というのは、ヘッジファンドのドル・円のロングの巻き戻しが大きな要因でした。ですから、我々はドルの対円での下落はファンダメンタルズから考慮して行き過ぎだったと考えています。
日本の投資家が海外に投資する場合において、為替レートというのはとても大きな要素となるのですが、このファンドを購入する投資家もまずは為替レートを考えるべきであると思いますか。
為替は重要な要素ですが、第一に為替を考慮すべきだとは思いません。我々はこのファンドの運用に当ってはあくまでも長期的視野で運用を行なっています。ですから、投資家も長期的な視野で検討すべきです。投資家は短期的なイベントや短期的な為替の変動を考えがちです。だから、市場が大きく動くと質への逃避が起こります。我々は米国経済は長期的に健康であると予測しています。我々が債券を保有している企業の経営状態も長期的に健康であると予測しています。そして、長期的にはドルは対円で上昇傾向にあると予測しています。
長期的というのは5年とか10年という期間のことですか。
そうです。最近日本では、ドルが対円で急激に下落した際に多くの個人投資家が米国ドル建てMMFを購入したと聞きました。そういうドル資産への投資を検討している投資家であれば、このファンドへの投資を検討する価値はあると思います。このファンドであれば、ドル資産への投資ができ、毎月分配金が支払われ、ポートフォリオのイールドは現在平均で7%程度ありますから。
毎月分配ということですが、ファンドの設定来分配金は毎月支払われていますか。
ええ。ファンドが設定されたのが今年の3月27日ですが、5月から分配金の支払を開始し毎月支払っています。
極端な質問ですが、どういうケースにおいて分配ができなくなるのですか。
我々が保有している債券の発行体である企業がクーポンを支払わない場合です。しかし、その可能性は非常に低いのです。他のファンド同様、今年8月の世界市場の暴落によりこのファンドの純資産価格も下落しました。しかし、その下落の要因は、我々が保有している債券の発行体の信用リスクが高まったからというものではありません。純資産価格の下落は市場の混乱時において投資家が質への逃避に動いたからです。つまり、事業債より安全である国債へ資金を移動させたからです。
質への逃避の動きはまだ続いているのですか?
まだある程度存在しています。しかし、その動きも収まりつつあり、このファンドの純資産価格も回復してきています。
このファンドにおけるリスク要因を具体的に指摘していただけますか。
米国経済の成長率の鈍化による米国企業の業績の悪化が挙げられます。それにより我々が保有する債券の信用力に影響が出るリスクということがあります。しかし、我々が保有している債券の信用力は高いものであり、業績の悪化が信用力にまで影響を与える結果にはならないと考えています。その他のリスクとしては、米国におけるクレジット・クランチの悪化が挙げられます。クレジット・クランチにより企業の資金調達が困難になるような状況ということです。しかし、この点についてもこのファンドの組入債券の信用力は高いわけですから、そういう状況になるリスクは低いわけです。
つまり債券ファンドにおける共通のリスクはあるものの、ハイ・イールドと比較した場合にはそのリスクはコントロールされているということですね。
そうです。ですから、このファンドの最大のリスクは我々T.ロウ・プライス・アソシエーツ社が投資判断を誤り保有債券が債務不履行になるということです。他のケースというのは、我々がセクター毎の資産配分判断を誤った場合です。ファンドの運用においては、様々なセクターへの配分を投資判断に基づきオーバーウェイトしたり、アンダーウェイトするのですが、その判断を誤った場合ということです。例えば、リセッションになると原材料会社、化学会社、紙・パルプ会社、エネルギー会社などのような景気循環依存型の企業の業績は低迷しがちです。もし、我々がそういう企業の組み入れを避けていたとすると、リセッションに入った場合には我々のポートフォリオは他のこういう業種を多く組み入れているファンドと比較してより高い結果を出すことが可能となります。しかし、オーバーウェイトしてあった場合には逆の結果となります。
業種毎の配分はどういう状況にありますか。
かなり分散投資されています。例えば、このファンドのハイ・イールド・ボンドの部分だけをとって説明しましょう。
ファンドの20%を占めるという部分ですね。
そうです。そして、ファンドの中で最もリスクが高い部分のことです。この部分だけでも20の業種に分散投資してあります。発行体の数は35を超えています。最も組入比率の高い銘柄のポートフォリオ全体に占める割合というのは僅か1%に過ぎません。ですから、このファンドは企業別でも、業種別でもよてもよく分散投資されており、結果として下落リスクが抑えらることとなります。
ポートフォリオ全体の企業数はいくつくらいですか。
9月末時点で72社に分散投資されており、平均組入比率は1.3%です。ですから、このファンドは非常に分散されたファンドであると言えます。
発行済口数残高はどのように推移していますか。
設定時点では約1500万口でした。その後、順調に増加し7月時点では約2138万口となり、8月に世界市場の暴落などの影響により一時減少したものの、10月23日時点で2140万口を上回り過去最高の残高(口数)となっています。(当初1口は$10)ファンド資産は約2億ドルということです。
このファンドは日本の投資家だけに販売されているファンドですか。
そうです。
このファンドはまだ新しいのでモーニングスターなどの評価会社による評価はありませんね。
まだありません。しかし、T.ロウ・プライス・アソシエーツ社は、会社として高い評価を受けています。例えば、今年6月のミューチュアル・ファンド誌において、T.ロウ・プライス・アソシエーツ社は、「どのようにしてそのファンド・ファミリーは、リスク調整後のリターンで比較した場合に、業界他社より多くの一本当たりの星の数を獲得したか」というタイトルで紹介されています。我々のファンドの60%以上がモーニングスターから4つ星または5つ星の評価を受けています。
どうもありがとうございました。
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