インタビュー

●岩熊淳一氏  山一證券投資信託委託株式会社株式運用第一部第一課課長

「フォーラム(ノーロード)の運用を語る」


今回は、山一投資信託のファンドマネージャーである岩熊淳一氏にフォーラムの運用方針等について話を聞いた。岩熊氏は1992年以来ファンドマネージャーとして主に日本株運用を担当しており、現在このフォーラム以外にも第一オープン、バランスオープン、JASDAQオープン、シャトルオープンの運用を担当している。

 

 この9月に運用が開始された「フォーラム」は、トピックストレンドコース、日本株アクティブコース、マネーコースから構成される選択型のファンドと言えると思いますが、フォーラムの特徴をお聞かせ下さい。

 制度上の特徴で言うと、投信会社が直接販売する手数料なしのファンドであるということです。それとファンド間のスイッチング(乗換え)が行なえます。スイッチングの場合でも手数料はかかりません。

 

 フォーラムのファンドの顧客層というのは?

 従来証券会社と取引のなかった個人投資家ということになります。

 

 あくまでも個人投資家用のファンドということですか?

 そうです。そして、我々運用会社から押し付けるような営業は一切しません。広告宣伝は行いますが、投資家が購入する場合は通信取引でということになります。我々はもともと運用会社ですから個人向けの営業体制というものは大きくありません。この営業体制を大きくするとなるとそれなりのコストが掛かってきてしまい、それでは信託報酬が通常のファンドと同じ程度のノーロードファンドというのは難しくなってしまいます。

 

 では、運用の中身についてお聞かせいただきたいのですが。

 フォーラムは、日本の株式市場をターゲットとするファンドとしてスタートしました。

 

 日本の株式市場をターゲットとした理由は?

 過去7年間日本の株式市場は低迷が続いてきたわけです。相場が今直ぐ上昇するとは言いませんが、長期低迷相場の最終局面に入っていると判断しましたので、この時点でファンドを設定するのなら日本株ファンドであると考えました。

 

 つまり、ファンドは日本株の値上り益の追求を目的としているのですね。

 そうです。

 

 フォーラムの一つの特徴は選択型であるとという点だと思うのですが・・

 そうです。日本株投資というのは大きく別けて3通りのやり方があると思います。一つは代表的な株価指数に連動させるというものです。つまり、日本の株式市場が上昇すればそのファンドの価値(価額)も上がる、相場が下がればファンドも下がるというものです。もう一つはアクティブ運用です。アクティブ運用にも大きく別けて2通りあると思います。一つは全面的にファンドマネージャーに任せてくれというものです。つまり、その場合予めどういうものに投資するということを決めずに、全てファンドマネージャーが決めるというファンドです。この場合、基本的には株価指数を上回るパフォーマンスを得るということがファンドの目的になりますが、当然株価指数を下回るリスクもあります。信用して任せていただける投資家の方には、このタイプを買って下さいというやり方です。あと今回は設定しませんでしたが、運用のコンセプトを予め決めて運用するというファンドがあります。

 

 運用のコンセプトというのは?

 例えば、そのファンドをハイテク株に投資しますとか、割安銘柄に投資する、といったように、テーマやセクターといった枠を予め決めてそれに沿った運用を行なうというものです。これは枠の決め方によって様々なファンドの設定が可能となります。ただ、今回はこのタイプをフォーラムでは設定しませんでした。

 

 というと、フォーラムは、トピックストレンドコースが株価指数連動型のファンド、日本株アクティブコースがファンドマネージャーに裁量に任せるファンドということですね。

 そうです。

 

 日本株アクティブコースの名前にもあるように、“アクティブ運用”という言葉はよく聞かれますがアクティブ運用とはどのような運用のことですか?

 アクティブ運用というのは、非常に広い意味で言うと指数連動型でないファンドは全てアクティブ運用のファンドであると言えます。ただ、この日本株アクティブコースでのアクティブ運用というのは、フリー運用ということで捉えていただいてよいと思います。

 

 つまり、ファンドマネージャーである岩熊さんの判断、裁量に全て任せるという意味でのフリー運用ですね。

 そういうことです。ですから、このファンドにおいて決まっていることというのは、日本株に投資するということだけです。

 

 そうすると、セクター毎の配分等も全て岩熊さんの判断ということに?

 そうです。例えば、運用状況を含むコメントを弊社のインターネットのホームページに毎月掲載していますが、そこにファンドの運用の仕方というのが掲載されています。これはファンドをこういう方法で運用しますと予め決められているということではなく、私がこういう方法で運用していますということを意味しています。

 

 具体的にはどのような方法ですが?

 多少専門的になりますが、このファンドは“ボトムアップとトップダウンアプローチを融合させた運用”を行なっています。具体的にどうするかというと、まずボトムアップで言うと上場銘柄の中から“注目に値する”と私が判断した銘柄をピックアップします。

 

 岩熊さんが“注目に値する”と判断する基準は何ですか?

 基本的には業績と株価の水準です。業績という面では業績の水準と業績の変化の方向の両方を考慮します。そして、それに対して株価の水準が見合うかということを判断します。

 

 このボトムアップで選択された銘柄というのは何銘柄程度ですか?

 30銘柄弱ですね。一定の条件でスクリーニングをかけた中から、あくまでボトムアップで10銘柄程度を選択し、自分が見落としていた銘柄はないかチェックしたのち、40銘柄程度でスタートしました。

 

 それからどうするのですか?

 この30銘柄弱で“仮のポートフォリオ”を組みます。これで組んでみると、自分が頭の中で描いていいたポートフォリオとの違いが現われました。セクターによる偏りというのがでていました。

 

 どのように違っていたのですか?

 具体的には、今上がっている銘柄に偏っていました。

 

 すでに上昇相場に入っている銘柄ということですね。

 ええ、そうです。

 

 セクター的には偏りはありましたか?

 ハイテクセクターに偏っていました。

 

 次にどういうステップをとったのですか?

 この段階では仮に組んだポートフォリオですが、9月の設定段階ではこのポートフォリオでファンドをスタートしました。

 

 つまりフォーラムの日本株アクティブコースは、ボトムアップで選んだ約40銘柄でスタートしたということですか?

 そうです。設定段階では最初に選んだ銘柄についてまだ上昇の余地があると判断しました。逆張りをするには時期尚早であると考えましたので。ただ、組入れ比率は引く、スタート時点で株式の組入比率は40%程度、9月中でも50%程度にしか増やしませんでした。

 

 その後はどういう運用に?

 9月の下旬くらいに、トップダウンのアプローチを始めました。この段階で、所謂“負け組”の中から銘柄を選択し始めました。

 

 “負け組”というのは市場で注目されていない銘柄ということですか、それとも下落傾向にある銘柄ということですか?

 注目されている、いないというのは見分けるのが難しいので、具体的には株価の水準と過去1年と6年の株価の下落率を判断材料としました。

 

 下落率が大きかったものと株価水準が低いものを選んだということですか?

 そうです。それに加えて、様々なファクターを組み入れた数量分析を行いました。

 

 数量分析ではどのようなファクターが使われたのですか?

 株価水準、騰落率、市場全体に対する感応度、企業の規模、利益などのフローの部分に対して株価がどうであるかなど様々なファクターを使用しました。

 

 そういう数量分析というトップダウンアプローチによって選択した銘柄と、先ほどのボトムアップにより選択した銘柄を組合わせてポートフォリオが完成したということですね。

 ええ。ですから、ファンドのスタート時点では勝ち組の銘柄のみであったものに、9月下旬になって数量分析によって選定された負け組の銘柄を加えたということです。それは、そろそろそういう負け組を入れる時期にあるという積極的な判断があったからです。この時点で、株式の組入比率は30%程度増えたことになります。

 

 今後もトップダウンアプローチとボトムダウンアプローチを組合わせた運用方法というのを続けるということですか?

 そうです。トップダウンアプローチは、基本的にファンド全体をどちらの方向に動かすかという判断がまずあって、その為には具体的にどの銘柄を売買すればよいかというのを決めるというやり方です。この場合、どちらの方向というのは時流により変化します。例えば、大型株が上昇という時流であると判断すれば、規模というファクターを中心にして数量分析を行い銘柄を選択します。ボトムアップで選ぶというのは、個別銘柄の内容だけで投資するかどうかを決めるというやり方です。

 

 ただ、トップダウンで時流に合ったものを選択するといっても、例えば今おっしゃった大型株というテーマをお決めになるのはファンドマネージャーの判断ということですね。

 そうです。

 

 では、実際に9月以降トップダウンアプローチにおいて重要視したファクターというのは何ですか?

 株価水準、利益や売上げ面からみた割安さ度合い、相対的な騰落率と業績の変化の方向です。わかり易く言うと、株価水準が低い低位株であり過去のパフォーマンスも悪いが割安感が強い銘柄というのを選び出しました。

 

 つまり、業績はそれほど変わっていないのにもかかわらず、株価が他に比べて大幅に下がった銘柄ということですか?

 そうです。それに加えて、もう一段階のスクリーニングとして直近6ケ月間に業績が上方修正されているものを、さらにこの中から選び出しました。

 

 業績の上方修正があったかどうかということがチェック項目であったのですか?

 上方修正の度合いと時期ですね。

 

 こういうプロセスを経て、ポートフォリオが今現在の形に近いものに固まったわけですね。

 そういうことです。

 

 今後の見直しというのはどういう頻度で行われますか?

 特に見直しの頻度というのは決めてありません。見直すべきことがあればいつでも見直し、修正は行います。組み入れるべき銘柄がみつかれば、いつでも買いを検討しますし、特定の銘柄にマイナス要因が発生した時にはそれに対応します。ファンドの全体的な方向についても流れが変化してきたと私が判断した場合には、その段階で動かすかどうかを検討します。

 

 流れが変わってきたというのは、相場全体の?

 そうです。全体ということです。例えば、先ほど低位株を組み入れたと言いましたが、低位株を買う条件というのは2つあると思います。それは低位株と言われるセクターが他のセクターに比べて十分に割安かどうかということ。もう一つは、景気とか、企業業績とか信用リスクというものに対してマーケットが楽観的になりつつあるかどうかということです。

 

 楽観的であるとかないというのは判断が難しいと思うのですが。

 ええ、難しいものですね。現状では、この2つの条件のうち一つしか満たしていないと思います。

 

 どちらの条件ですか?

 低位株が十分割安になったという条件です。もう一つの条件については十分には満たしてはいませんが、悲観論が蔓延してきたという判断をしました。あるいは、全く駄目な銘柄とそうでない銘柄がはっきりしてきたとも言えます。

 

 悪材料出尽くし感ということでしょうか?

 一種の悪材料出尽くし感ということですね。全てにおいて整理がつきつつあるということですね。

 

 ただ、金融業界や不動産業界などについては、これから様々な問題が露呈してくるのではないかと思われますが?マーケットに携わっている方の目には、すでに目処がついたと見えるのですか?

 目処がついたというよりも、先が見えたという言い方の方が適当ですね。これからどうなるということがわかってきたということです。それに今売られている銘柄の大半は、つまり負け組と呼んでいるところの90%というのは信用リスクのない銘柄です。

 

 ではどうして売られているのですか?

 信用リスクのある銘柄が売られ、それに連れていっしょに売られているということです。それから、バブル時代に不当な高値を付けた整理という意味でも売られています。

 

 つまり、個別の銘柄の理由はないのに売られてしまっているということですか?

 それはちょっと言い過ぎですが・・。過去の株価が不当な高値であったということです。通常、あまりに安すぎる銘柄が買われ、あまりに高すぎる銘柄が売られて修正されるまでに大よそ5年〜10年近くかかるケースが多いのですが…

 

 株価におけるバブルの修正はほとんど完了したと?

 バブルの時代には、業績が伴なわずにPER100倍以上というレベルで株が買われていました。しかも、循環的な業績の大底という時期でもなく平均レンジで見ても100倍というレンジで買われていた銘柄もありました。これが今、株価が5分の1程度になって、PERは20倍程度になっています。それがフェアなバリューです。そこまできたということです。では、いつそういう株価であったかというと、70年代、80年代前半の株価がそういうレベルだったのです。そこまで修正されたということです。

 

 そこまで戻ったというのが、買い時期であると判断された理由であるということですね。

 はい、そうです。

 

 そうなると、来年98年というのは上昇相場になるとお考えだということですね。

 ええ、来年は上昇相場に入る年だと思っています。

 

 現状のポートフォリオではブルーチップが大きな比重を占めていますが、来年に向けて注目しているセクターというのはどのようなところですか?

 方向としては、所謂ブルーチップではない製造業を注目しています。

 

 ブルーチップ以外の製造業というと?

 例えば、現状のポートフォリオの中で言いますと(日本株アクティブコースの10月の運用経過レポートの中で)低位株と括ってある銘柄のうち日商岩井と川崎汽船以外の銘柄はブルーチップ以外の製造業と言えます。

 

 業種は様々なものだと言えますね。

 業種的にはかなりばらけています。

 

 では、ブルーチップ以外の製造業に注目するという理由は何ですか?

 このあたりの銘柄(低位株で組入れている銘柄)というのは、決して“傷付いている業界ではない”ということですね。

 

 “傷付いている業界ではない”と言いますと?

 株価的には80年代にバブル的な株価を記録しましたので、その修正というのは必要ではあったのですが、実体面を見たときに何も問題が起きていない業界または銘柄ということです。

 

 問題というのは?

 例えば、資産の不良化とか、一時期かなり拡大したマーケットが縮小してしまった、というような問題です。

 

 問題のないセクターの中で、製造業を注目するのは何故ですか?

 製造業でなければいけないというわけではないのですが、上場会社の中で非製造業というのは圧倒的に金融業が多い、その他は建設業、通信業、電力・ガス、と鉄道、小売りということになります。問題が起きている業界というのは金融と、建設ですね。今問題が起こりつつあるセクターは小売り業だと思います。このあたりを除くと大半が製造業ということです。

 

 というと、来年になって景気が多少回復の兆しを示しだした時に、製造業が恩恵を受けるという理由からではないということになりますか?

 いいえ、そうではなく、そういう面ももちろん考えています。景気ということでいいますとかなり悲観論が強くなっていますね。当然、発表される数字は悪い。この中間決算や来年3月の決算においては、(業績の)減額修正が続出すると予想されます。ただ、今回(景気後退に入る前)の景気拡大というのは期間は長かったのですが、大した拡大はしていないのです。非常に角度が緩かった拡大ということになります。特に設備投資が全く盛り上がらなかった。建設投資はないに等しかった。ですから、在庫循環だけの景気拡大だったわけです。そこに消費税引き上げとか、特別減税の取りやめとかのデフレ的な政策が加わって後退局面に入ったという状況です。ですから、バブル崩壊の時のように所謂3年間の不況とか、そういう形にはならないと思います。いいとこ一年だろうと考えます。そうすると、今年の4月から後退局面に入ったとすると来年春には終わると予想されます。

 

 来年の春から景気回復期に入るという予測だということですが、その見方を変えなければいけなくなるリスクにはどのようなものがありますか?

 一番大きなものは海外リスクだと思います。つまり米国の景気が悪くなるということです。基本的にバブル崩壊後の日本の景気は外需頼みでやってきましたし、今でも内需だけで景気を引っ張る力はありません。外需のうちアジアは明らかにおかしくなってきています。しかし、日本へのインパクトで考えると、米国、アジア、欧州という順で大きいですから米国の景気が悪くなった場合には、来年春の日本経済の回復のシナリオというのも変更する必要はでてきます。

 

 現時点では、米国経済にその懸念はないと?

 当面大丈夫だろうと思います。ただ、21世紀まで大丈夫だとは思いません。とりあえず現在のアジア経済の混乱については米国は乗り切れると思います。

 

 アジア経済についてはどうご覧になっていますか?

 きつい言い方をすれば、化けの皮が剥げたと見ています。

 

 欧州については?

 景況感が強まらない好況が続いていますし、日本への影響もあまり強くはありませんので、今のところリスク要因として特に心配はしていません。

 

 リスク要因として大きなものは米国経済ということですが、為替要因というのはどうご覧になっていますか?

 為替については心地よい水準で続くのではないかと思います。

 

 心地良い水準というのは?

 120円台で緩やかな円安傾向が続くということですね。

 

 では、極端な円安というのはないだろうと?

 そのリスクがないとは言えません。

 

 どういう場合において?

 所謂“日本売り”という場合ですね。

 

 現状の円売りは、その“日本売り”とまでは言えないと?

 ええ。少なくとも債券が買われている状態では大丈夫だと思います。本当の意味で金融がシュリンクしてくると債券も売られるはずです。つまり、全てをキャッシュに換えるという動きが出ます。

 

 そこまでの最悪のシナリオは描く必要はないということですね。

 そうです。

 

 次に、このフォーラムにはトピックストレンドコース、日本株アクティブコース、資金の一時待機用のマネーコースがありますが、個人投資家がトピックストレンドコースや日本株アクティブコースからマネーコースに資金をシフトするタイミングというのは、どう判断したらよいでしょうか?

 個人投資家自身の相場観しかないと思います。特に、トピックストレンドコースの場合は、自分の相場観(つまり日本の株式市場は上昇するという)でやるしかないと思いますので、このコースに投資して相場がもういいところまできたと判断した場合に、一旦マネーコースに移すということだと思います。

 

 当然、このファンドは日本株アクティブもトピックストレンドも日本株は今買いであると考える投資家向けのものなので、その人の相場観でいいところまで上昇したと思ったらマネーコースへ移すということですね。

 そうです。あと、間違ったと判断した場合もマネーコースに移す要因ですね。

 

 では、日本株は買いであると考える個人投資家が、日本株アクティブコースとトピックストレンドコースのどちらかを選ぶという段階にあったとして、その選択はどのように決定したらよいですか?

 人に任せるか、自分の相場観でやるか、ということが判断基準になると思います。

トピックストレンドコースは、日本の株式市場が上昇する時には上昇し、相場が下落する局面では当然下落するファンドです。日本株アクティブコースについても、相場が上昇局面では大抵上昇しますし、下げ相場においては大抵下落しますが、パフォーマンス的にはトピックストレンドコースと比較してかなり差があると思います。今、ファンドの運用を開始してから2ケ月が経ったわけですが、パフォーマンスに約6%の差が出ています。

 

 そんなに違いますか?

 ええ。一つには組入比率の違いによるものです。ただ、日本株アクティブについて言えば、今後運用をしてゆく上でベンチマークであるトピックスに対して上下に年間7〜8%程度は乖離する可能性があるファンドです。

 

 ただ、ファンドのリスク・リターンレシオとしては、両方とも4ということですね。

 そうです。

 


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