インタビュー
渡辺鉱一氏
ピムコ・グローバル・アドバイザーズ・リミテッド副社長
「ピムコの債券運用について」
この対談は衛星放送チャンネル ビジネス・ブレークスルー「Meet the Fund Manager」で放送されたものです。撮影日は1999年1月29日。
鶴田:皆さんこんにちは。今回からこの番組のキャスターを勤めさせていただきます、鶴田真理子です。どうぞよろしくお願いします。私と一緒にこの番組を進めてくださいますのは財務コンサルタントの村藤功さんです。どうぞよろしくお願いします。
村藤:よろしくお願いします。
鶴田:私はファンドに関しては初心者なので、この番組を通して勉強していきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。そして今回のゲストをご紹介しましょう。ピムコ・グローバル・アドバイザーズ・リミテッドの副社長でいらっしゃいます、渡辺鉱一さんです。どうぞよろしくお願いします。
渡辺:よろしくお願いします。
村瀬:ピムコっていう会社のお名前なのですけれども、これはなんかの略なのですか?
渡辺:ええ。これはパシフィック・インベスメント・マネジメント・カンパニーの頭文字を採ったものです。だからかつてはパシフィック・インベスメント・マネジメント・カンパニーと言っていたのですがピムコの方が有名になってしまったものですからこちらが正式になったと。
村瀬:設立はどういう経緯ですか?
渡辺:もともと1971年にパシフィック・ミューチュアル・ライフ・インシューランスに努めておりましたビル・グロースと他2名の男がスピンオフのような形で設立いたしまして、もちろんある時期まではパシフィック・ミューチュアルとの関係が続いたのですが、その後1994年に独立したマネジメント・カンパニーになりまして、その後ニューヨークの証券取引所にも上場しました。その後1997年に、まあピムコは本来的に債券運用の専門家としてスタートしていますので、株式のオッペンハイマーを買収して債券と株の両方の体制にしたと。
鶴田:割合は債券と株ではどれぐらいなのですか?
渡辺:だいたい債券が3分2ぐらいで、株が3分1という具合です。だから債券運用では世界一大きい規模のマネジメント会社だと思います。
村瀬:ピムコさんの本社というのはどこにあるのですか? 渡辺:ロサンゼルスから車で1時間ぐらいいったところにあるニューポートビーチというところです。
村瀬:南のあたりで。
渡辺:そうです。
村瀬:じゃあすばらしいあたりですよね。南の。
渡辺:オレンジ・カウンティーという非常にリッチなところです。
村瀬:まあそういうリッチなところで運用をなされているわけですけれど、運用額というのはどれくらいなのですか?
渡辺:日本円で大雑把に言って約30兆円。
村藤:30兆円。30兆円って想像つきます?
鶴田:全然付かないですね。普段兆なんて使わないですからね。
村瀬:日本の家計の貯蓄が、これ世界でも有名ですけれど約30−40兆円ですからね。それに匹敵するような額をピムコさんで運用されていると。で、ピムコの業務ラインなのですけれどこれは先ほどアセットマネジメントとおっしゃいましたけれど、投資銀行さんだとか他の資金調達はされてないのですか?
渡辺:これはぜんぜんやっておりません。そもそも機関投資家のために資産を運用するという、投資顧問業からスタートしておりますからそれが基本で今も変わっておりません。ですからピムコの本社で見ますと約8割弱が機関投資家、年金だとか銀行、生保、信託銀行の資産を運用しています。その他2割強が個人を対象とした投資信託です。
村瀬:これはやはり401kの導入と?
渡辺:そうですね。アメリカで401kが導入されて、個人が自分で投資先・運用先を見つけないといけなくなった段階で、どうも機関投資家が一任しているピムコというのがいい運用をしていると、これが買いたいということで、その時点で初めてピムコが投資信託に進出したと。日本に進出している外資系さんなどと比べましても形態的に違うと、いうのは投資信託から入ったのでなくて機関投資家の一任に置かれているということですね。
村藤:鶴田さん。だいたい生命保険だとか、信託だとかにお金を預けると、通常その生命保険の会社、信託がお金を運用してくれるのだと思いますよね?
鶴田:通常はそうじゃないのですか?
村藤:まあだいたいはそうなんですが、中にはピムコさんとかにお預けすると。
渡辺:もちろん全額でなくて、一部を任せると。そうなりますともともとピムコは債券運用の専門家としてやっておりますし、外部の評価、格付けも高いものをもらっておりますので、そういう意味では正当性がありますね。
鶴田:安心だとと?
渡辺:その通りです。
村瀬:でも例えばランデバーっていうフルラインの投資銀行とかもアセットマネジメントをよくやっているのではないかとか誤解しがちですけれど、格付けを見てみるとそうでもないというのがわかるのですよね。
渡辺:そうです。まあピムコはモーニングスターのファミリー格付けで言いますと数少ないファイブスター、これはファンドマネージャー全体としてのファイブスターなのですけれど、日本に来ておられる外資系のファンドマネージャーの中ではスリースターとかツースターのケースが多いですからね。
村瀬:有名な投資銀行の人が軒並みツースターやスリースターだったりしますよね。
渡辺:ですからピムコはファンド運用の専門家である、ということを投資家に訴えているわけです。
村瀬:本社はニューポートビーチということなのですが、ニューポートビーチで全てのグローバルな運用をしているわけではないと思うのですが、やはりグローバルなネットワークみたいなものはあるのですか?
渡辺:はい。まあ債券運用についてはニューポートビーチ一カ所に絞っています。債券運用はものすごく高度な運用を必要としますので、グローバルにあっちこっちファンドマネージメントのチームを置いておくのはコスト的にも人材的にも無駄が多い。第一有名なファンドマネージャーはそれだけコストも高いですからあっちこっちに置かないで集中させるというのがピムコの基本スタイルです。
村瀬:これは例えばロンドン、香港やシンガポールあたりにはチームを置いておかなくてもいんですか?
渡辺:それはファンド運用の会社で言いますと例えばオッペンハイマーはニューヨーク、シアトル、ダラスだとかイギリスのエジンバラというところに個別の、専門のファンド運用会社はあります。それはそこにあった会社をピムコが買収したからそこにあるわけです。しかしそれを一体にしようという発想はピムコにはないわけです。それらはあくまで独自に経営をしてもらう。ただし、販売というかお客様の層を広げるという意味ではグローバル化を図っておりまして、日本にできたのもその動きの一つです。これはロサンゼルスの近くのニューポートビーチ、ニューヨーク、ロンドン、東京を4つの核にしてやっていこうということです。
村瀬:はい。では会社の概要についておはなししてもらったところで、この番組ではいつもご登場なさった方のご経歴を伺っているのですが、渡辺さんは今までどういったことをやってらしたんですか?
渡辺:私はもちろん証券会社でブローカー的なこともやっておりましたし、いわゆるファンドマネージメントの営業、お客様を獲得してくるみたいなこともやっておりましたし、長い経歴ではいわゆるインベスメントバンキングをやっておりましたし。
村瀬:調達サイドのほうですか?
渡辺:そうです。それにバンキング、コマーシャルバンキングのようなものを中心にやってきております。
鶴田:で現在は副社長でいらっしゃる?
渡辺:そうですね。ピムコで副社長をやっております。
村藤;日本でのオペレーションはだいたいいつ頃からなんですか?
渡辺:もちろん東京に会社がないころからも、ニューポートビーチからの働きかけがあったんですが、具体的には去年のはじめの2月からここで営業を開始いたしまして、実際のオフィスができて本格的な営業が始まったのが8月ですね。
村瀬:じゃあまだまだこれからと。家計の1200兆円を狙って(笑)。
渡辺:そういうことです(笑)。
鶴田:では、ここでピムコの実績をVTRにまとめてありますのでご覧下さい。
ハリス:Hello. Welcome to PIMCO and Newport Beach, California I'm Brant Harris, managing director and chairman of our PIMCO Stanley and Mutal Funds. PIMCO is often called the most respected company of the fixed income management industry today. PIMCO beg operation in 1971, and focused on fixed income management for 27 years By outperforming the market consistently during our history, and making good return for our clients, PIMCO h become the largest active fixed income money management in the United States, with 127 billion in bonds in our management. Most of our clients h been with us for years, in satisfying investment relationships. We manage money for 39 of the top 100 US corporations, and for hundreds of pension fund, foundations, endowments, including the US subsidiaries of Toyota Motors, Sony, and Matsushita Electronics. We also manage money for individual investors around the world, and this interest is increasing. PIMCO's investment services h been highly rated by well-known agencies. Let me tell you what they have said about PIMCO. Morning Star, the premier rating agency in the United States, h rated our complete funds in the Family ratings their highest, five stars, which is a distinction only given to few managers world wide. With in our fund family, many individual portfolios have received their five stars. We focus on investment performance, our portfolios often rate highly compared to the competitors'. PIMCO's most well-known approach is the Tot Return Style of Bond Management. PIMCO's Tot Return Style of Bond Management utilizes all sector of bond market. Buying bonds for example, US Treasuries and mortgages, when they are cheap and traded high yields, selling out when they reach fair value. This style primarily invests in intermediate term fixed income securities of investment grade bonds. The philosophy behind Tot Return Style w developed by one of the most established and well-known bond experts in the world, Mr. Wailliam Gross. Now I like to introduce PIMCO's founding partner, Mr. Wailliam Gross.
グロース:Hello. I'm Bill Gross, founding member of PIMCO and chief investment officer in charge of our fixed income portfolio management team. I also directly manage PIMCO Tot Return Fund, the largest active bond mutal fund in the United States, with over 21 billion dollars in assets. Over our 27 years history,
PIMCO has generated consistently superior returns, with our long-term conservative investment approach. Expertise investing in different types of US and glob fixed income securities. We are pleased to offer Japanese investors the same time-tested investment management that we have provided to the investors in the United States, and worldwide for nearly 3 decades. Over our 27 years history,
PIMCO has managed portfolios through both up and down markets. We have over valued the market, due to are long-term conservative investment approach, our expertise investing in many different types of fixed income securities. PIMCO invests in the entire fixed income market place, such glob government and agency bonds, US Mortgage bonds, glob corporate bonds, and emerging market bonds. Because PIMCO has the experience and skill investing in varied instruments, we have multiple ways to increase the performance of our portfolio in all environments.
PIMCO has also been in the front-line of utilizing new and valuable instruments they have entered the market place. New securities arise, we use our experience and expertise to understand and value these securities. And our long term record shows our results. Most importantly, this record w generated using our long-term conservative investment approach. PIMCO's philosophy h lived over 27 years. It has lived over various interest rate markets in which we h dramatic changes, in the form of high interest rates, well in the form of low interest rates, dramatic changes in both bare and bull markets. Through out those markets, we have used a consistent investment philosophy that tends to annualize secular trends. Long term factors that vary over 3-4 years time periods such demography, fiscal policy, monetary policy, and secular relationships in markets in one w or another. Having managed money for over 27 years, I c tell you that the bond market h changed dramatically over the time.
PIMCO has been in the for-front of innovation of the market. For instance, since early 1970's, we were the first to introduce the mortgage-backed securities. In the early 1980's we were one of the first ones to innovate with financial futures, which gave substantial returns to our clients. Later in the late 1980's we introduced international securities well high yield bonds. All of these have measured to PIMCO's bottom-line tot returns. PIMCO's philosophy is to utilize all aspects of the bond market. Whether it will be duration, yield curve, or changing sector relationships. For instance, we alter the duration of portfolio to take advantage of interest rate swings, over a long-term basis. Bare and bull markets in terms of interest rates. Secondly we analyze the yield curve to figure out the most opportunistic point to add value. We also look relationships between sectors. Between corporate bonds, mortgage bonds, government bonds, those most attractive in the point in time. Combinations, by using multi-sector approach in the bond market we've added value over time. Finally, proof of any investment philosophy is in its performance. PIMCO's performance h been outstanding. What we have tried to do through out the years is to provide average of 100-150 over the basis points of out performance every year.
PIMCO has been able to do that. And 33 out of 33 periods in the 1990's, PIMCO has outperformed the market by average of 150 basis points. And that is the proof of the philosophy, and hopefully the returns for the future. By this type of performance numbers and points that I've mentioned before, PIMCO h been the innovator and leader in the bond market, and we recommend the Tot Return Fund to our clients.
鶴田:はい。ピムコの実績は相当なものだと思うのですが、村藤さんいかがでしたか?
村藤:アメリカでは豊田さんも松下さんもソニーさんもお世話になっているというのはすごいですね。あのTot Return Style という考え方はおもしろいですね。国債だけでなくて、コーポレットもモーゲージボンドもなんでも買って、イールドカーブだとかを使って、債券のいいところを考えながら投資されると。
渡辺:そうですね。それにピムコの場合運用哲学が一つ、これはビル・グロースが作り上げてきたものなんですが、これを簡単に言うと人間誰でも誤りを犯すと。あるいは見通しを間違うかもしれないと。ただし、その間違ったときでも大きな破綻をきたすような運用はしてはいけないと。従って非常に自己規制をかけて、まあ調子に乗らないということですかね、それを保守的な運用と言っておりますけれども非常に保守的な運用をしなければいけないと。で、そのためには長期的な視野でものを見なければいけないと。まあ今ビル・グロースも言っておりましたけれども、そのためには人口動態学などをしっかり研究して、人口がベビーブームが来るとどうなるか、そういう長い目で見ると経済はどうなるかということを見る。例えば今の日本はベビーバスト、つまり人口が減っていくプロセスに入っているわけですね。そうするとそういう部分で簡単に景気は良くならないとかですね、そういう長期的なものの見方で全体の運用の仕方を決めていくと。
村藤:普通は金利がちょっと上がって、為替が逆に行って損をしてしまうと頭が真っ白になってどんどんどんどん損をしてしまう。でもこのような大きな流れで見ているからそうはならないと?
渡辺:そうですね。大きな流れで見ていますから、目先のものは判断はしますけれどもそれで大きな変更はしないわけですね。それがトータル・リターンの考え方につながっているわけです。金利とキャピタルゲインだけでなくて、大きな流れで分散投資をするから安定しているんです。
村瀬:それをすればインデックスに勝つと。まあこれは結果が示していますよね。
鶴田:一番のポイントは長期的に見るということですね。
渡辺:それと運用スタイルというものがありまして、いわゆるチーム方式。ピムコはチームで運用を行うと。確かにビル・グロースという偉大なファンドマネージャーがいましたけれど、チーム制というのを取り入れているのですね。あとは社員のレベルアップ。ですからピムコでは会社の都合で首を切るということは絶対ないわけです。あとは三者一体経営。ファンドマネージャーとアカウントマネージャーが一体になって運用をすると。
村藤:先ほどのトータル・リターンの話をもう少し詳しく伺いたいのですが、トータル・リターンというのはまあインカムの部分とキャピタルゲインの部分、というのが最初のイメージだったのですが、どうもそれだけではないと。いろんなものにいろんな意味で、フィクスド・インカムというか債券というかあらゆる局面に投資することによってリターンを取るというお話だったのですが、ボンド・ファンドといいますと国債だけしかやらないだとかいうのが多いのですが、それだけじゃなくて社債もモーゲージもやるわけですね?
渡辺:はい。いわゆるセクター、国債だとか、社債、モーゲージ、ハイイールドボンドだとかをセクターと呼んでおりますが、セクターに広く分散投資をしてキャピタルゲインを集めてくると。それが大きなテクニックの部分になっているわけですね。長期に持っているようなイメージがありますが実はこれらのセクターのなかで絶えずオバーバリューになっているかアンダーバリューになっているか、価値以上に買われているのか、価値以上に売られているのかを見てキャピタルゲインを取るということをします。
村瀬:まず社債をやるということはクレジットリスクを取っているということですよね。これはだいたい格付けでこれまでとかいうのはあるんですか?
渡辺:これはだいたいAAないしAぐらいまでですね。まあピムコのトータルの格付けというのはハイイールドだとか一部を除きますと、平均がAAの格付けなのです。だからピムコは非常に格の低いリスキーなものに投資していると思われがちですが平均で言うとAA。クオリティーの高いものにしか投資してないのです。
村瀬:そもそも日本の国債がAA+にされちゃいましたからね(笑)。 渡辺:だからそういうものに投資をしてリターンを増やしていることが専門家としてのピムコの強みになっているわけですね。それにモーゲージも買うとなると期前償還リスクなども入ってきますよね?
渡辺:本来は、1970年代にピムコがモーゲージというものを最初に取り入れたわけですが、それまではモーゲージというのは利回りはいいけれど運用の対象にはならないと。あまりにも事前リスクなどがあってですね、いわばほっとかれた世界だったわけです。そこにピムコがモーゲージをやり始めた。あるいは1980年代にフューチャーズだとかデリバティブに最初に手を付けたのもピムコなのです。
村藤:鶴田さん、モーゲージってなんだか知っています?
鶴田:分からないです。
村瀬:住宅とかありますよね?住宅とかは相当長期の借り入れをしないと買えないじゃないですか。そういう住宅ローンをまとめてモーゲージ・バック・セキュリティというわけです。住宅ローンをまとめてそれを担保に社債を発行すると。それが期前召還リスクというのがありまして、お金がいっぱいあるから早く返してしまうということをやられるともともと予定していた金利が取れなくなるというちょっと変わったリスクがあるのですよ。まあピムコさんは、先ほどビデオにも出ていましたけれどもモーゲージのパススルーあたりの発展によく投資をするということですよね。
渡辺:ピムコが扱っているのはアメリカ政府が保証している、あるいは発行体になっているAAAのモーゲージなのですね。やはりそういうものをうまく運用してリターンを得るのがピムコの生き方なのです。
村瀬:これもリスクはあるけれども熟知していると。熟知しているから上げ下げで場合によっては短期的なトレーディングを得ながら長期的な見通しの下に儲けるということですね。
渡辺:そういう意味ではピムコのような国債専門家にとっては非常に魅力のあるものでもあるのですね。
村藤:外債みたいなものも買っているのですか?
渡辺:はい。トータル・リターンのパターンによって、まあこれはいろいろなファンドのパターンがあるわけですが、トータル・リターンの場合はトータルアセットの2割までは海外投資をしてもいいということで、その中のまた5割まではエマージングマーケットに投資してもいいと。従ってアジア発の経済危機のときもトータル・リターンは全体の3%ぐらいしか入ってなかったわけです。インドネシアもタイも入ってなかったわけですね。ましてやロシアなどはピムコの自社の基準からいくと投資対象に入ってこないのですよ。ですからピムコはロシアにはいっさい投資しておりません。まあ世界中の有名な金融機関が投資したのですが、リターンがいいですから。でもそういう一流の金融機関が投資してもピムコは投資しない。自己規制ですね。ですからロシア危機でもピムコのファンドはほとんど影響を受けておりません。そういうところがピムコが機関投資家から信頼される強みの部分なのです。
鶴田:そういうのを伺うと安心できますよね。
渡辺:そうです。ロシアの場合でも世界中の金融機関がいってもピムコは行かないわけです。
村藤:まあ有名な金融機関がみんなやられましたからね。
渡辺:ロシアはピムコの自社投資基準に入ってこなかったです。エマージングマーケットでもリスクの高いところに入っていましたから。
村藤:そういう保守性に基づいて過去20年間の内17年間はリーマンのインデックスに勝っているわけですね。大変な神業ですね。
村藤:先ほどビデオのなかでビル・グロースさんのご尊顔を見ましたが。
鶴田:債券運用の神様と言われている方ですよね?
渡辺:そうですね。まあ毎週のようにマスコミにも出ていますからなにかあるとすぐ意見を求められるのですが、彼は独特の、ピムコを作った事自体もそうですが独自の経済予測だとかものの見方をもっておりまして、非常に意見が重宝されるわけですね。
村藤:アメリカのアナリスト協会の名誉殿堂入りなんて話ですがこの殿堂っていうのはどういったものなんですか?野球の殿堂みたいなものですか?
渡辺:そうです。まあアナリスト協会に貢献のあった人を、野球と同じように名誉殿堂入りにして歴史に残すということなのですが、ファンドマネージャーで名誉の殿堂入りした人はいないのです。
村藤:普通はどんな方が入るのですか?
渡辺:普通は協会に貢献した人だとか、アナリストが多いです。これはファンドマネージャーで20年間も高いパフォーマンスを続けてきた人なんていうのはほとんどいないですね。ノーベル学者ですらひっくり返るわけですから。そこでビル・グロースがファンドマネージャーとして初めて過去25年間の実績を下に入ったわけなのです。非常に珍しいケースと。
村瀬:じゃあファンドマネージャーとして名誉殿堂入りしたのは彼一人というわけですか?
渡辺:そうです。 村藤:それはすごいですね。
鶴田:そうですね。ではここでCD−ROMをお持ちいただいたということなので少し見てみましょう。
グロース:Hi, this is Bill Gross talking to you from New Port beach, California in late may 1998. We've just had our secular form a few weeks ago and I'd like to tell you in a few minutes results of what we've talked and what we have decided. We've talked about the bond market, the economy, and the glob environment, and have came to a conclusion that interest rates in the United States will move between 4.5-6.5% percent range for the next few years. That's the essence of our secular outlook, 3-4 years look on the glob economy.
Our outlook suggested that long-term interest rates will move within a range, but a declining range in the United States and will still be a part of this on going bull market that we've h for the last 17 years. The basis of the argument suggested the globalization, which promotes high productivity and low wages, visualizes which the company in globalization promotes fiscal discipline and monitory discipline, demographics favorable in which it promotes higher savings rates opposed to consumption, are still in sink and are promoting lower disinflation. In addition this year, we have talked about Asia a significant factor going forward in terms of strength or weakness of the US Economy. Significant problems in Asia depressionary economy in South Korea Thailand and alike. Significant problems in Japan, in terms of their financial structure and currency markets, and suggest that their weakness will basically allow our economy to slow down over the next few years and promote continued low inflation and declining interest rates. That's the outlook briefly, for further details and reports, we're going to fill you in a later date.
鶴田:神様のお言葉という感じでしたか?
村藤:ちょっとびっくりしたのですけれどこのビデオを撮ったのが去年の5月ですよね?これでいくとアジアのトラブル、特に日本の金融セクターを中心としたトラブルがアメリカの景気をスローダウンさせるのではないかと。で、アメリカの金利が少し下がるのではないかということですが、言ったとおりのことが起こっているということですよね。
渡辺:ですからピムコは去年のはじめから年末にかけてはアメリカの金利を下げなければならない局面が表れると言っていまして、それがこのフォーラムでも全会一致の結論となったわけですけれども、ピムコは去年のはじめの段階でそのようになるだろうというポートフォリオの構成をしてるわけですよね。従ってそのメリットを受けると。長期的な予測は年に一回のフォーラム、まあ戦略会議といってますけれども、いわゆる経営者、社長以下と、ファンドマネージャーと、アカウンティングマネージャー、まあ私も入っておりますけれどいわゆる営業部隊が人数的にもちょうど3分の1づつぐらい入ってそこで一週間ぐらい講師も呼んで本格的に猛烈な議論をやってこれから3年間の経済見通しはこうだ、と決めるわけですね。投票で決めるわけです。だから社長がこういったから、ビル・グロースがこういったからというのは、意見には出ますけれど最終的にはみんなの投票で決まるわけです。それに名前も呼ばれます。
鶴田:記名ということは責任を持って判断するということですね?
渡辺:そうです。記名投票ですから名前を呼ばれて、そのなかで絶対多数を取ったシナリオが決まるわけです。そこからファンドマネージャーがそれに基づいたポートフォリオ構成をするわけです。大きな枠は越えられないわけです。ですからファンドマネージャーの独走も防いでいます。それにアカウントマネージャーもお客様からの様々な意見を代表をして一票を入れますからね。
村瀬:経営者と、ファンドマネージャーとお客さんの意向を反映するアカウントマネージャーとの三位一体というわけですね。
渡辺:ピムコの体制は基本的にこのようなチーム制をとっているわけです。
鶴田:これが去年(98年)5月のフォーラムということで、今年の5月にもフォーラムがあったわけですね?
渡辺:そうです。それにこれはおもしろいんですがね、過去27年間同じ事をやってまいりましたが、当然いろいろな事件が起きるわけですね。それで過去1回だけ長期見通しを変えるかどうかで緊急の戦略会議をやったのです。でも結果は変える必要なしということで、様々な事件が起きましたけれど1回も変えてないのです。それぐらい長期一貫した運用スタンスを採っているわけですね。
鶴田:さてここで一旦お知らせを挟みまして、後半は実際に一般投資家が投資をする際のポイントなどを伺ってまいります。さて、ここに債券運用の神様といわれたビル・グロースさんがお書きになった『発想の大転換』という本があるのですが、これは大変好評ということなのですが、その内容は?
渡辺:これはビル・グロースがいわゆるアメリカの好景気が終わって、21世紀では低成長期に入るというときに運用をどうすればいいのか、というのが一つ。ピムコの運用哲学や運用スタイルをかなり説明していますので、専門家が読んでもおもしろい、というのが一つ。あと一つがいわゆるグローバル経済のなかで世の中がどう変わるのかとか、資本論理が支配するようになった世界の経済がどのようになっていくのかということで、一般の経済書としても独特の見方が書いてあっておもしろいということですね。従って例えばこの資本の論理というものが今日の日本の金融問題を含めてある意味ひっくり返してしまっているわけですね。資本の論理、資本主義のグローバルマネーが圧力をかけてしまっている。
村瀬:アジアなどもそうですよね?
渡辺:はい。ロシアもそうですし、インドネシアもそうですよね。このグローバル化の動きというものを明快に解説してます。
村藤:低成長になってしまうと?
渡辺:そうです。ですからこれはこれからの3年間ぐらいをみてるわけです。従ってこういうなかでどうやっていけばいけないのかということを扱っているわけです。
村瀬:低成長の中でどう儲けるのかというのも当然書いてありますよね?(笑)
渡辺:そうですね(笑)。ですからインフレが落ち着いて金利が下がるわけですかデュレーションを下げるとか、日本で考えますと海外にも投資していかなければいけないと。そういうことも考えられますし、多少の召還リスクを伴っても先ほどのモーゲージ債を買って高い利回りを狙うとかですね。
村藤:デュレーションをとるということは当然ある程度のリスクをとるということですよね。それに海外のマーケットに投資するということは、これはある意味で為替リスクを取るということですよね。まあ低成長になると当然ある程度考えながらリスクを取らないとリターンもとれないと?
渡辺:そうですね。あるいはアメリカでも出ています、インフレーション・プロテクション・ボンドを買うとかですね。いわゆるインフレとともに金利も変動するものです。
村藤:これはインフレになるといいことあるんですか?
渡辺:これはCPI、Consumer Price Indexが上がると、その上がった分にプラス金利が付くと。またインフレが下がればその分だけ金利も下がると。
村藤:インフレになれば買っておいた社債の金利が上がるから損をしないと。分かり易いですね。
鶴田:これはアメリカだけなんですか?
渡辺:いや、世界各国で出ております。
村瀬:日本ではあまり聞きませんけどね?
渡辺:そうですね。これはもともと1987年にアメリカでできたものなのですが。もちろんピムコは相当買っておりますが。
村藤:そろそろ出てくるかもしれませんからね(笑)。
渡辺:そうですね(笑)。 村藤:でもプロテクトするのもないんですがね。
渡辺:それともう一つは株式が常に債券よりいいことばかりでないということですよね。低成長になるわけですから株が常に儲かる時代でなくなる可能性があると言っています。同時に債券でもハイイールドのもの、言い換えればジャンクという言葉と置き換えることができるわけですが、今までは言い名前をもらってきましたが、それがいずれまたジャンクに戻るかもしれないと。株と同じようにリスクのあることを認識しないといけないと彼は言っています。ボンドでも株と同じように高いリスクの世界もあるのだということを彼は言っているわけですね。
村瀬:高いリターンの世界もあると?
渡辺:高いリターンの世界もあると。高いリターンの世界があれば当然高いリスクの世界もあるわけですね。ですからよく考えないといけないと。
村藤;日本などではバブル崩壊以降、国債よりリスクが高いんだけどリターンは低いという状況なんでその話はすごく分かりやすい気がしますね(笑)。債券を買った方が得かもしれない。
渡辺:この本の中ではこれから6%の時代が来ると。債権利回りでいうと6%。
村瀬:アメリカの利回りですよね?
渡辺:そうです。それに比べて株式はそれに2%プラスして8%の世界になるのではないかと言っています。
村瀬:具体的な数字を出しているわけですか。日本については特になにか数字は出ていませんか?
渡辺:いえ出ていませんが、ただ一つ言えることはこれから3年ぐらいの長いスパンで見た場合には景気が良くなるという見方を取っているわけですね。そうすると当然金利があがるわけですから国債のマーケットは下がっていくと。このリスクをどうやってカバーするかと。日本の債券運用はほとんど国債になってますからね。それをファンドマネージャーさん達がどうやってやっていくのかというのが課題になると。
村藤:方法なさそうですね。
渡辺:景気が良くなれば国債の値段が下がってきますからこのキャピタルロスの部分を含めトータルリターンをどうするのかと。
村瀬:景気が良くなったら単純に株に乗り換えた方がいいような気がしますけれどね。日本のピムコですけれど、このトータル・リターン・ファンドというのは日本でも買えるのですか?
渡辺:買えます。日興証券さんで売っていただいております。うちは販売はいたしませんので販売は金融機関さんにお任せして、私たちはあくまで運用に徹するというスタイルを取っておりますので。トータル・リターンは発売したのが去年の7月ですので、約6ヶ月ですが800億円ぐらい投資家に買われております。で、ピムコの場合宣伝広告というのはいっさいやりませんので実績だけで買っていただいているというわけです。
村藤:資産がもうそんなになっているのですか。800億ですか。すごいですね。
渡辺:おそらくピムコがトータル・リターンの宣伝をしているのを見た人はいないと思いますが、われわれはあくまで実績のみで売っております。
村藤:これは個人だけでなくて機関投資家でも買えるんですか?
渡辺:ええ。
村藤:じゃこの800億というのの大半は機関投資家が買ったものですか?
渡辺:いや、大半が個人です。そういう意味で日本でもいい評価をいただいていると。先ほどもモーニングスターの評価もありましたが、高い評価をいただいていますね。
村藤:先ほどのトータル・リターンをそのまま日本に持ってくるということは為替の問題がありますが、オープンですか?
渡辺:オープンです。為替に付きましては円にして0.何%がいいのか、ドルで10%近くがいいのか。トータル・リターンは去年9.5%で回っておりましたけれども、100万円を手に入れるために1000万払うのか、100万を手に入れるのに1億払うのかと。そういうことを考えていけば為替リスクをとっても十分対応できるはずです。
村瀬:そういう意味で円とドルを交換していると損をする場合があるけど、むしろ資産の一部をドルで持っておくと。
渡辺:そういう事です。今日本のお客様にもだんだんとご理解が得られまして、要は円にこだわらないということですよね。これはグローバル化してくれば当然そうなってくるわけですからね。
鶴田:そうですね。日本版ビッグバンのあとは海外に旅行に行ったときはおいておいたドルを使うというのがだんだん浸透してきてますからね。
渡辺:ですから息子さんが海外に留学していた場合にはそっちの収益から出すとか、ちょっと視点をグローバルにすると変わってきますよね。
鶴田:これはドルだけなんですか?ユーロとかはないのですか?
渡辺:今ピムコではそういうのを作る計画もありますけれども、それはユーロを中心とした運用をするということで、ピムコの場合はある一定のセクターに固定するという運用はあり得ないんですね。よくアメリカのAAAの国債だけで運用するファンドを作ってくれないかとかユーロのAAAの債券だけで運用するファンドを作ってくれないかとか希望は来るんですが、セクター間の移動を重視することによってリターンを取るというやりかたですから、セクターを固定してしまうとその運用の妙技が発揮できなくなってしまうんですね。
村瀬:御社ではいくつもの債券のファンドがあると思うのですが、これ全体の中でもあまり特化型のファンドというのはないんですか?
渡辺:業種を限定するとか、そういうものはありません。むしろ年限の区分けですね。
村瀬:これは日本で買えるのはトータル・リターン・ファンドだけですか? 渡辺:今はトータル・リターン・ファンドと、やはり日興証券さんでlow-durationというこれは3年ぐらいの短いファンドですね、これは日本で作った投資信託なのですが、これを売っていただいております。これもこれからどんどん売れてくると思いますけれども。
鶴田:あくまでもピムコさんは運用面だけでということで、グループ化ということにはしないんですか?
渡辺:グループ化という問題については、今日本でもビッグバンで投信業務というものが注目されておりますし、投信業務は今後拡大すると思います。しかし、今までの証券会社系の顧問会社がグループ化のなかで実績が上がらなかったと。その反省でこんどは外国系の投信顧問会社を導入しようと。しかしそうはいってもそこに実績という部分が抜け落ちているんですね。ブランドネームだとか、インベスメントバンクだとかバンクだとかは有名ですが、じゃあファンドマネージャーはどうかというとこれは危ぶまれている。しかし401k、今金融機関さんが力を入れている401kなんかは実績が投資家にとって大事になってくる。
村瀬:そうすると自分の発行したものを、自分の投資信託に買わせてしまう、グループのなかで全部やってしまうようなことではパフォーマンスは上がらないだろうと?
渡辺:それがこれからの反省の一つとして出て来るんだと思います。アメリカでもそういう問題が出てきて、ピムコの運用能力というものが評価されたわけですよね。
村瀬:どっかの金融機関さんとくっついてグループ化の中に入るんではなくて、むしろニュートラルに一番にいいものを買うと。
渡辺:そしてピムコの商品はいいといってくれるところには是非販売していただくということですね。これはファンドマネージャーの会社としてはグループ化は運用能力の低下と出る場合が多いのです。だからピムコはやってないし、これからもやる気はあまりありません。
鶴田:あくまで実績でということですね。
渡辺:そうです。これから日本でも評価会社ができてくると思いますが、投信の評価というものはあくまで実績によるべきなのです。
鶴田:わかりました。今回はピムコ・グローバル・アドバイザーズ・リミテッドの副社長でいらっしゃいます、渡辺鉱一さんにお話を伺いました。渡辺さんどうもありがとうございました。
渡辺:ありがとうございました。
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