インタビュー
サイモン・ドブソン氏
インベスコ・アセット・マネジメントのシニア・ファンドマネージャー
「GTグローバル インベストメント・オープンの運用について」
今回は9月下旬に来日したインベスコ・アセット・マネジメントのシニア・ファンドマネージャーであるサイモン・ドブソン氏にGTグローバル インベストメント・オープンの運用について話を聞いた。ドブソン氏は9月よりインベスコ投信投資顧問の主力ファンドであるGTグローバル インベストメント・オープンの運用責任者に就任した。
GTグローバル インベストメント・オープンは国際株式一般型に分類される追加型株式投資信託。販売会社は野村證券、野村ファンドネット証券、木証券、石川銀行、第三銀行。
本日は、GTグローバル インベストメント・オープンの運用についてお話をお伺いしたいと思います。よろしくお願い致します。ドブソンさんは最近このファンドの運用責任者に就任されたということですが、具体的にはいつからですか。
今月(9月)からです。それ以前はマイケル・リンゼルが担当していました。運用担当者が変更になった理由はファンドのパフォーマンスが満足ゆくものではなかったためです。そのため当社はファンドの運用方法を変更することを決定しました。9月に入ってからは資産配分、銘柄選択について大幅な変更を行っています。
ファンドのパフォーマンスが満足ゆくものでなかったということですが、要因はどこにあったのですか。
いくつかの要因がありました。第一に債券の組入比率が高かったことです。債券のパフォーマンスは株式をかなり下回りました。もう一つの要因は日本株をほとんど組み入れなかったことです。最後の要因は為替ヘッジを行わなかったことです。
そこで、ドブソンさんがファンドを担当することになったわけですね。
そうです。
具体的にはファンドの資産配分をどのようにもってゆく予定ですか。
株式に80%、債券に15%、現金等に5%と考えています。
株式の組入を80%に引き上げる理由は何ですか?
このファンドのベンチマークはMSCIグローバル・エクイティ・インデックスであり、これは100%株式運用のベンチマークです。ですから、当社が考えているのは対ベンチマークでのリスクを軽減するということです。このファンドのパフォーマンスがベンチマークを大幅に下回った要因の一つがベンチマークとの比較で見た場合の組入比率の乖離にあり、そこから生じるリスクを軽減するために株式の組入比率を引き上げるのです。
確かにベンチマーク比で考えればそうなりますが、このファンドは世界中の株式と債券に投資するというグローバルファンドという位置付けで、それほどベンチマークとの組入の違いを意識してはこなかったと思うのですが?
そうですね。前のファンドマネージャーはベンチマークとの比較においてリスクを採ることにより積極的でした。今後はベンチマーク比であまりリスクを採らない方針で運用を行います。
ベンチマークを意識する一方で株式比率を80%、つまり90%や95%でなくて80%にするというのはどういう理由ですか?
それにお答えするには、まずこのファンドの新しい運用体制から説明しましょう。
ええ、お願いします。
新しい運用体制においてはクオンツ(量的分析)を重視します。まず、クオンツ・モデルを作ります。これにより今後6カ月間の各株式市場の期待収益率を予測します。そして、それを最適化することで最適な資産配分を決定します。モデルからは米国株式などについて割高であることが示されています。ですから、株式100%というのではなく、債券や現金を合計で20%という比較的高めに保有しています。
株式を80%組入れるということですが、地域別配分はどのようにする予定ですか。
現在目標としている株式の地域別配分は北米33.5%、英国を除く欧州11.2%、英国15.6%、日本18.2%、日本を除く環太平洋地域1.5%です。
インデックス比で見るとどういう状況ですか?
インデックスの配分比率は米国が52.1%、欧州が22.5%、英国が10.4%、日本が12.1%、日本を除く環太平洋地域が2.9%となっています。ですから、当ファンドは米国についてはアンダーウェイト、欧州もアンダーウェイト、英国はオーバーウェイト、アジア地域は若干アンダーウェイトという状況です。
米国のアンダーウェイトが目立つのですが、この要因は何ですか?
当社のクオンツ・モデルでは適正価値(フェア・バリュー)と比較して米国市場は約20%程度割高であることが示されています。ですから、このギャップが近い将来には解消されると見ています。
どのくらいの期間でですか?
解消にかかる時間を予測するのは難しいのですが、それほど急速には解消されないかもしれません。なぜなら、現時点でも米国経済は堅調であり、企業収益の伸びは予想を上回っています。ですから、短期的に見れば米国経済のファンダメンタルズは良好です。しかし、市場が割高であることに変わりはありません。決して相場が崩れると言っているのではありません。ただ、パフォーマンスは他の市場と比較してそれほどよくはならないかもしれないということです。
以前御社はレポートの中で企業収益の成長予測を上方修正していたと思いますが、それでも米国市場は割高なのですか?
確かに上方修正しました。それでも、米国市場はまだ割高なのです。
欧州を対インデックスでかなりアンダーウェイトとしている要因は何ですか?
こちらも、クオンツ・モデルにおいて適正価値(フェア・バリュー)より割高であることがわかっています。経済は回復しています。企業収益の伸びは0%成長程度まで鈍化していますが、再び回復に転じると予想されます。ですから、ファンダメンタルズ的には決して悪くはないのですが、市場は割高に置かれているのです。状況的には米国と似ていますね。
英国は?
英国も経済は回復していますし、企業収益の伸びは加速すると予想されます。ただ、市場は適正価値(フェア・バリュー)レベル付近に置かれています。ですから、英国についてはオーバーウェイトとしているのです。
日本は?
日本が唯一割安に置かれている市場ですね。経済は好調とは言えませんが、以前と比較して改善しています。
いつ頃との比較において?
年初と比較してです。
御社はこれまで日本経済の中でも特に巨額の財政赤字をかなり懸念していましたが、この点はどうですか?
それは長期的懸念材料です。日本は今でも構造問題、財政赤字など様々な問題を抱えています。しかし、これらが短期的に株式市場に影を投げかけることはないでしょう。
短期的というのは?
今後6カ月程度のことです。ここで当ファンドの運用方針の変更にについてもう一点指摘しておきたいと思います。これまでは、当ファンドはかなり長期的な視点で運用されてきました。2〜3年後を見据えた運用です。しかし、今後は6カ月程度を見据えて、よりダイナミクスなアプローチでファンドを運用してゆきます。
どうしてですか?
投資家はあまり長期的な見通しにたった運用を望んでいないからです。
それは日本の投資家だけのことですか?
いいえ、世界中の個人投資家に共通の特徴です。機関投資家の一部は長期的な視点の運用を好みます。しかし、個人投資家は違います。ですから、よりダイナミクスな運用が必要であり、そういう方針に変更したのです。
わかりました。そういうダイナミクスな運用ということで、日本については様々な問題は抱えていても株式は割安であり、短期的には期待できるということですね。
そうです。加えて、企業レベルでは様々な変革が見られますしね。
企業レベルと言いますと?
企業レベルにおいて構造的改革、リストラが進んでいます。
どういう業種において顕著ですか?
テクノロジーや金融サービスセクターです。
では、アジア地域についてですが、アジアについては若干アンダーウェイトとなっていますね。過去半年程度で見るとアジア経済の回復は目覚しく、株価もかなり上昇しているのですが、どうしてアンダーウェイトなのですか?
確かに東南アジア経済は急速に回復しています。しかし、それに伴って相場も急激に回復し、アジア株につてはフェア・バリューに対して割安感がなくなっています。組入比率は多少引き上げますが、当面はアンダーウェイトを維持します。今後は調整が入れば押し目を拾おうと考えていますが、現状のレベルでは投資妙味があるとは言えません。
各地域における銘柄選択についてお話を伺いたいと思います。組入銘柄も大幅に変更する予定ですか?
多少は変更します。その前に、組入銘柄選択のプロセスも変更していますので、それを説明しましょう。
ええ、お願いします。
当社には各地域毎に銘柄選択のスペシャリストがいます。彼等はわたくしのようなファンドマネージャーの下で働いています。以前の当ファンドのファンドマネージャーは銘柄選択についても主導的役割を果たしていました。しかし、今後は各地域の銘柄選択スペシャリストが主導的役割を果たすことになります。わたくしは各地域のスペシャリストの考え方を尊重します。
そのスペシャリストもクオンツ手法を用いるのですか?
いいえ、彼等はボトムアップアプローチを用います。当社の個別銘柄選択プロセスはファンダメンタルズを重視しています。典型的なボトムアップアプローチにより銘柄を選定します。
そうすると業種別投資比率も決めないのですね。
ええ、予め業種別の投資比率を決めるアプローチはとりません。基本的に各国の投資チームが戦略を考えます。わたくしはその中から最適なものを採用するのです。
ボトムアップの結果として出てきている配分にはどのような傾向がありますか?
現時点では各国の投資チームも成長重視です。テクノロジー銘柄や金融サービス等の銘柄が多いようです。
テクノロジー銘柄というのは、通信やコンピューター、インターネットなどということですか。
そうです。
具体的には業種別配分はどのようになりそうですか?
現時点では組入の変更を行っていする最中なので、もう暫く待っていただいた方が当社の目指す組入についてより正確な配分をお話できると思います。ただ、成長銘柄を中心としたものになります。
為替ヘッジについては、これまではドル高円安を予測してヘッジをしないできたわけですが、今後についてはどうですか?
為替についてもクオンツを採用することにしました。当社の為替についてのクオンツ・モデルでは1ドル=103円というのがドル円の適正価値(フェア・バリュー)であるという結果がでています。
現在の為替レベルに近いですね。
そうです。ですから、現時点においては為替ヘッジをする予定はありません。しかし、ドル・円が更に下落した場合には為替ヘッジを行う可能性もあります。
つまり先ほどもお話があったように今後6カ月という期間で見ると、現時点ではドル円についてはヘッジの必要はないものの、フェア・バリューとの乖離によっては機動的にヘッジを行うということですね。
そうです。以前のファンドマネージャーは為替ヘッジについても3年という長期的見通しに立って運用していましたが、これからはよりダイナミクスなアプローチを採ります。
クオンツ・モデルというのは為替のヘッジのタイミングについてもシグナルを出すのですか?
いいえ、クオンツ・モデルの提供するのは適正価値(フェア・バリュー)です。為替、株式、債券についても共通です。この適正価値(フェア・バリュー)と市場価格を比較するのです。また、クオンツ・モデルは市場と適正価値(フェア・バリュー)が乖離していた場合には、その乖離の解消にどのくらいの時間がかかるかも計算します。例えば、米国を例にしてみましょう。現在、クオンツ・モデルからは米国株式は割高であることがわかっています。米国経済は成長しており、企業収益の伸びも加速しており、インフレ懸念も生まれています。更に、モデルはこの割高の解消、すなわち、適正価値への回帰には時間がかかることを示しています。ですから、当社は米国をアンダーウェイトとしているのです。
為替相場についても、適正価値(フェア・バリュー)よりドル安円高の状態にあっても、その乖離が短期的に解消されることが示されていればヘッジは行いませんし、逆に乖離が更に拡大し、当面解消されないというのであればヘッジを行うことになります。
ただ、為替管理はヘッジ目的に限定するという点はこれまでと同じですね。
そうです。
ところでこのファンドではクオンツが重要な役割を果たしているのですが、クオンツ・モデルにはどの程度頻繁に必要な経済指標等のインプットが行われるのですか?
毎月行います。これは各国、株式、債券、為替に共通です。
最後にドブソンさんのご経歴についてお話をお伺いさせて下さい。
85年から運用の世界に身を置いております。
具体的にお伺いできますか。
ええ、1985年にGTマネジメント(英国)に入社し、直に香港に赴任しました。ここで東南アジア株のファンドの運用を7年担当しました。88年から92年までは主に資産配分を担当し、東南アジア株式運用チームの責任者をしていました。
その後は?
92年に来日して、環太平洋地域の株式ファンドの運用を担当し、その後95年から98年までは日本の株式の専門家として日本株ファンドの運用を行ってきました。99年にはグローバル株式運用を担当するようになりました。
この間にGTマネジメントはLGTに社名が変更となったのですね。
そうです。1997年に社名が変更になりました。
それからずっと日本にいらして、英国にはいつお戻りになったのですか。
ええ、99年の3月までは日本に駐在しており、その後ロンドンに赴任しました。
今もロンドンですか。
ええ、そうです。
本日はありがとうございました。次回の来日の際にまたお会いするのを楽しみにしております。
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