インタビュー
今回は、興銀第一ライフ・アセットマネジメント株式会社の外国株式運用グループシニアポートフォリオマネージャー須河内 浩二氏に同氏の運用する「DLグローバル・ハイブリッド・オープン」について話を聞いた。「DLグローバル・ハイブリッド・オープン」は平成10年12月15日に設定された国際株式型(一般型)に分類される追加型株式投資信託。インタービューは平成12年2月23日に実施した。
ファンドは世界中の株式に分散投資するファンドということですが、ファンドの特徴をお聞かせ下さい。
通常のグローバルファンドと同じなのですが、ベンチマークがMSCI国際インデックスであるということです。ただ、インデックスをアウトパフォームするに有効と想定される場合は、MSCIの非採用国も組入れます。ですから、基本的にはエマージングであっても上場している株式は投資対象としています。しかし、リスクの観点から、MSCIの非採用国の銘柄については組入れの上限を5%としています。
投資対象としている銘柄のユニバースはどの程度になるのですか。
日本株については東証1部の大型・中型株約500社とその他小型株などの約100社の計約600社です。外国株については、MSCI国際インデックス銘柄の約1200銘柄から大型、中型株約450社と小型株、MSCI非採用銘柄約200社の計650社です。
つまり世界約1250社というユニバースから組入れ銘柄を徐々に絞り込むということですね。
そうです。その中から絞り込み日本株で約60社、外国株で約150銘柄を現在保有しています。全体で200銘柄程度です。前提としては250銘柄程度のファンドとして考えています。日本株は50から70銘柄くらい、外国株が150銘柄から200銘柄程度ですね。
それでは、実際の銘柄選定のプロセスをお聞かせいただきたいのですが、受益証券説明書にはボトムアップとトップダウンを組み合わせいるということですね。
基本になっているのは、ボトムアップアプローチです。全ての企業に会うということです。企業に会う場合には、二つの意味合いがあります。一つは、個別の企業の情報を得たり、将来性や経営の質を判断することです。もう一つは、企業から判断する景況感、つまりマクロ状況を聞くということです。
企業経営者の景況感というのは、どのようにファンドに生かされるのでしょうか。
一つは、各地域のファンド担当者が担当地域のマクロがどういう状況にあるのかを経営者などから話を聞くことで判断します。マーケットは常にコンセンサスに近いとことで動きますが、コンセンサスというのは間違いが多くて、その間違いと実体との乖離を我々は超過収益の源泉と考えており、この実体の部分を企業を訪問することで把握するのです。
具体的にはどういうことですか。
例えば、エコノミストは各種統計から見て小売業界は強いと判断しているとしましょう。一方、小売業界の経営者や担当者と会って、彼らから商品が売れなくなってきたという話を聞いたとします。経営者は実体に近いところで仕事をしているわけですから、小売業界の実体をもっとよく知っているわけです。そういう話を様々な経営者から聞くことによって、今の市場のコンセンサスは間違っているという判断ができるのです。
そういえば、日銀の短観だけでなく、経済企画庁でもタクシーの運転手さんやスナックの経営者などから景況感の聞き取り調査を始めたというニュースがありましたね。まさにそういうことを御社はこのファンドにおいて実施してきていたということですね。
日銀の場合は大企業を対象としていますから、中小企業の状況は異なるはずです。日本では中小企業の割合が大きいですから、そこも自分達で掴んでいかなければ先を読むことは出来ないと考えています。そういう意味で企業に会うことは、個別の企業の情報とともに、マクロや環境判断情報を得る上でとても重要です。ここが他の会社訪問をしている運用会社と違う点です。
そうですね。ある程度はそういう話も聞くのでしょうが、景況感やマクロ状況を聞くことを目的として会社訪問を行っているというのとは異なりますね。
例えば、ある大手鉄鋼メーカーを訪問しても、アナリストは常にかなりの情報を収集、フォローしているので、新たに収集できる情報はそれほど多くはないかもしれません。しかし、大手鉄鋼メーカーに行くことが重要なのは、鉄は国家ですし、鉄鋼メーカーは自動車、住宅、建設など様々な業界に対して製品を販売していますから、提供先の業界について多くを聞くことができます。その中から、様々な業界の変化を捉えてゆくのです。
運用プロセスの話の中で、会社訪問が基本だと伺いましたが、会社訪問の前段階、つまり訪問する会社を決定する段階はどうなっていますか。
カバーするのはMSCI国際インデックスでウェイトが0.04%以上の会社、これが450社あり、これがマーケットの8割を占めていますが、それらをカバーするとことからスタートします。
カバーするというのは会社訪問を行うということですか。
そうです。450社以外については、話題に上がった企業についてその時々会社訪問を行いますが、450社については常にフォローしています。
国内の銘柄はともかく、海外の銘柄についてもアナリストやファンドマネージャーが訪問するのですか。
当社の海外拠点にもアナリストがおりますが、ベースになるのは国内にいる11名のファンドマネージャーによる会社訪問です。この11名で年間1000社を訪問しています。
Q.3日に1度はどこかの会社を訪問しているのですね。
そうですね。
ファンドマネージャーが直接海外の企業も訪問するのですね。
最低でも年に2回は出張で海外の企業を回ります。1回海外に行けば、30社や40社は回ってきます。加えて、今は海外の企業が日本に来ます。
それは海外の上場企業が、IRというか情報公開のためにわざわざ来日するということですか。
そうです。
そういう時代なのですね。
先週はアップルの副社長が来日しましたし、今度はエンノーという光ファイバーケーブルの会社の役員が来日します。週に1社や2社程度の海外企業の経営陣の話を聞く機会が日本においてもあります。
投資プロセスの話に戻りますが、会社訪問の次のステップは何ですか。
会社訪問で得た業界環境やマクロ情報を持ち寄って週に一回ミーティングを開きます。企業訪問でどんな話が聞けたか、どういう決算発表があったかなどを各地域の担当者が発表します。それに対して、他の地域の担当者が自分の担当地域ではどういう状況にあるかを発表します。つまり、ある地域においては当たり前のことになっている事実でも、グローバルに他の地域から見た判断を加えて議論するのです。
最近は、企業の合併などもグローバルな動きが多いので、そういう見方が大切なのですね。
そうです。例えば、欧州の企業経営者が欧州経済はかなり良くなってきている、海外も良くなりそうだと判断していても、実際にそうかはわからない。アジアの担当者が今欧州の企業がアジアにどんどん入ってきて業績を伸ばしていると言えば、裏付けがとれるのです。逆に、アジアの担当者が欧州企業はアジアでは競争力が弱くて、業績は伸びそうにないと見ていれば、欧州企業の業績等を修正する必要があるわけです。グローバルな競争力や、グローバルに展開している企業が各地域で実際にどう活動しているかを、他の地域の担当者も加わった上でコンセンサスをとれるように議論をするのです。
このミーティングでは銘柄選択まで決定するのではなく、アセットアロケーションを決定するのですか。
そうです。各地域の担当者の意見を聞いて、自分の景況感を加えた上で、次に「運用環境判断」を行います。つまり、各地域がどのようにリターンを生み出すのかを考えるのです。地域とかセクター毎の方向性を判断します。個別企業については、この議論を通して各地域の担当者が銘柄を選んでいきます。
地域の担当者が組入れ銘柄を選択するということですか。
そうです。運用環境判断が進む一方で、個別銘柄の選定も同時に進行してゆきます。
国別資産配分において、独自の手法であるMOAを利用するということですが、このMOAというのはどういう手法なのですか。
MOAというのは、マネー・オリエンテッド・アロケーションを略したものです。このMOAを地域配分の決定と、セクター配分の決定に利用します。各地域を、景気、インフレ、財政、政治、通貨、長期金利、国内資金余剰などという項目毎に、それをA、A/B、B、B/C、Cにランク付けします。A/Bというのは、市場が考えている以上に良い状態になるという意味です。Bは市場が考えている通りである、Cというのは市場が考えているより悪くなるという判断です。つまり、コンセンサスと今後3カ月を考えた時の実体との乖離がどの程度あるのかを考えるのです。
この作業はどのくらいの頻度で行うのですか。
毎週行います。
そこから次に何を行いますか。
次に地域別のリターンを予測します。ボトムアップにおいて銘柄を積み上げると、セクター毎のアロケーションが出来ます。そのセクター毎のものを積み上げると地域のアロケーションになります。その時に、トップダウンから検討したものと、ボトムアップで積み上げたものが大きく乖離していたらおかしいわけです。例えば、セクターではハイテクが、国別ではアメリカが大きくオーバーウェイトとなったとします。一方、トップダウンでみた時、金利上昇局面に入ってマーケットに圧力がかかってくるのに、これでよいのだろうかということを検討する必要がでてきます。ただ単にボトムアップで積み上げてポートフォリオを作るというのではなく、同時にトップダウンアプローチにおいて導き出したものと比較した上で調整するのです。
ボトムアップの結果と、トップダウンの結果にはかなり乖離が生じるものですか。
生じます。ただし、それは議論の中で収束してゆきますので、最終的には大きな乖離にはなりません。各地域毎に今後3カ月毎に株式市場がどう動いているかを判断するわけですが、ウェイト加重したものに為替レートを含めて見ると、外国株式は2000年3月で1.1%のリターン、9月ではフラット、2001年3月でも3.7%程度のリターンしか期待できません。一方、日経で考えると2000年3月では3%程度ですが、9月には8.3%、来年3月には13.5%のリターンが期待できるという予測をしています。この場合、外国株式と日本の株式のどちらを多く持つかを考えると日本ということになります。日本株の中でも、景況感が強いのであれば景気敏感銘柄を買うということになります。そうすることで、ボトムアップとトップダウンの結果の整合性がとれるのです。乖離している時はどうして乖離しているかをどこまでも追求します。それを中途半端で放置すると、どこかで問題が生じることになります。
それが毎週行われているわけですね。
そうです。ファンドマネージャーには、毎日絶え間無く情報が入ってきます。それを積み上げてゆく中で、一週間というところで一旦区切りを付けるのです。市場や経済は本当に世界的規模で動いていますから、このようなミーティングが非常に効果的なのです。
確かに、合併は世界規模で行われていますし、企業がどこの国の企業だから、という発想ではなく、もっと広い視野が必要ですね。
そうです。近い将来には、この国の会社というのは問題ではなくなるでしょう。投資家にとって国というのはその株を購入する際に、どこで買えるという程度のものでしかなくなるでしょう。米国の会社だから買おうとか、日本の会社だから買おうという考え方はなくなってくると思います。
対象が日本株だけならともかく、全世界を投資対象としているのですからファンドマネージャーのアンテナは世界中に向いているわけですね。
そうです。
気の休む時がありませんね。
そうですね。
今、MOAという手法をお伺いしてきましたが、フレキシブルという銘柄選択手法にいついてお聞かせ下さい。
フレキシブルというのは、銘柄を選択する時に地域やセクターによって選択の基準は変わるべきであるという基本に立っています。例えば、アジアや小型株というのは成熟していない市場や銘柄が多いものです。そういう銘柄を中長期の業績だけで単純に選択してはいけないと考えています。PERで判断しようとすると割高になってしまいます。しかし、成長力は高いわけです。アジアですと、業績以外の例えば、政府に対する対応力ということも検討材料として重要です。一方、大型株や米国株は成熟した銘柄が多い。業績を見ていても、ここ3カ月という予測の中で株価は動きます。欧州はこの中間にありますね。これらの違いのあるものを同じ基準で銘柄を選択するのはおかしいと考えています。
地域、セクター、銘柄の規模により基準をフレキシブルに変えて、銘柄を選定するということですね。
そうです。例えば、米国では3カ月から1年程度先の収益の修正ですとかバリュエーションを重視します。欧州の市場参加者は、もっと先、2年程度先の見通しを重視します。その上で、我々の見通しと、市場参加者の見通しがどの程度乖離しているかを判断します。
フレキシブルはどの時点で利用されるのですか?
会社訪問時点からですね。注目されているセクターはどこかというのはMOAにおいて判断しますが、市場を動かす様々なファクターの中で何を注目すべきかというのはフレキシブルにおいて判断します。我々は環境と需給で市場は動くと考えています。市場が動いた時には、PERの拡大や縮小として現れます。前提にあるのは、EPSは同じということです。PERの拡大が生じるにあたって、その度合いがマイナス3%からプラス3%は無視しても大丈夫だと考えています。5%前後の拡大はA/B、B/Cの間とランク付けます。7%以上拡大、または、7%以上縮小するのはそれぞれAまたはCとランク付けます。例えば、金利がこれから動く、マーケットはそれに対してあまり反応していない、金利が上昇する事で結果、バリュエーションが7%以上縮小していく。その場合の判断はCとなります。それをファクター毎に検討してゆきます。
このマーケットはそれを無視するだろうという判断はファンドマネージャーが行うのですね。
そうです。市場は様々な投資家の考え方が集まった場所です。私は、市場は多数決で決まると思っています。マーケットがどう考えているのかを認識していることが大切です。自分達が正しいと思っていても、市場参加者がそれに賛同しないと市場は動きません。市場がどのように考えているのかを判断できることがファンドマネージャーが成功する秘訣だと思います。
ボトムアップにフレキシブルという手法を加えて、個別銘柄を選択、トップダウンにMOAを加えて、セクター、地域配分を決定、この両者の乖離を絶えず調整しながらポートフォリオが出来るということですね。
そうです。ボトムアップとトップダウンの結果の間で調整を絶えず行ってゆくことが重要です。そして、それで選択された銘柄の中でベンチマークであるMSCI国際インデックスに勝つ銘柄はどれなのかという議論を行います。各担当者が銘柄を上げてきますが、それをエクセル上に落として、3カ月タームでインデックスに勝つ銘柄を絞り込みます。
そういうプロセスを経て、ポートフォリオができるということですが、1月末現在で見ると、北米がほぼニュートラル、アジア・オセアニアがオーバーウェイト、欧州がアンダーウェイトになっています。アジアについては、どの国のオーバーウェイトの割合が高いのですか。
日本です。シンガポールや香港もオーバーウェイトにはなっていますが、日本のオーバーウェイトの割合が高いです。
欧州は全体ではアンダーウェイトですが、どんな内訳ですか。
全体的にアンダーウェイトとしていますが、特にユーロのアンダーウェイトが大きいです。
ユーロ参加国の株式ということですね。
ユーロ参加11カ国の株式です。ユーロに関しては、参加国を個別に考えるということはしていません。ユーロは一つの通貨でして、市場は分かれていると言っても、ユーロ圏内でビジネスを展開しているわけですから、国別というよりもセクター別に検討します。イタリアだから、フランスだからという発想はありません。
そうすると欧州はユーロと英国という別け方ですか。
ユーロ、英国、スイス、スウェーデンと大別しています。
1月時点で日本がオーバーウェイト、欧州がアンダーウェイトになっていますが、その背景、要因は何ですか。
先程のMOAと今後3カ月後の収益予想からの判断です。そこから今後3カ月毎のリターンの予測を出した結果、ユーロは金利上昇に対して市場がかなり楽観的に捉えている、そうすると市場の下げ幅は他と比べて大きく、今年3月及び9月時点でマイナスが予想されます。一方、日本については、3月で3.1%、9月で8.3%の株式市場のリターンを予想していますから、ボラタイルな為替の変動を捉えるよりも、株式で保有した方がよいと判断しました。
セクター別に見ると、ベンチマーク比ではどういう状況にありますか。
オーバーウェイトになっているのがテクノロジー、アンダーウェイトになっているのが電力やガスという公益です。それ以外はニュートラルに近い状態です。以前はテクノロジーのオーバーウェイトの割合は相当大きかったのですが、12月からオーバーウェイトの割合を削減しています。それでもテクノロジーセクターというのが世界の中核となると見ていますので、まだオーバーウェイトの状況にしてあります。
どのくらいオーバーウェイトなのですか。
2.5%程度です。一時は6%近くオーバーウェイトとしていました。
オーバーウェイトを削減したというのは、バリュエーションが高くなりすぎたからですか。
バリュエーションもそうですが、金利が上昇する局面を市場は楽観的に捉えているという判断があったからです。ここ1年間のテクノロジー銘柄の動きを見ると、銘柄がかなり集約されてきました。つまり、下がった時に戻ってくる銘柄が減ってきたのです。去年は下がった銘柄が非常に多くあり、一部の銘柄で市場を支えてきたと言えます。ですから、そういう銘柄に資金が集中しています。オーバーウェイトの割合は削減しましたが、全ての銘柄を削減したのではなく、半導体や通信関連についてはかなりオーバーウェイトとしたままで、ソフトウェアやコンピューターはアンダーウェイトにしました。テクノロジーをオーバーウェイトとしてはいますが、中身はかなり変化してきました。
この数ヶ月の間に変化した要因は何ですか。
金利と、市場の過大な期待です。テクノロジーセクターについては、PERは100倍を越えているわけですが、業績が30%、40%伸びるのだから、それでもよいと市場は考えていました。しかし、過去の5年間と今後5年間は状況が変わると考えたのです。好業績を続けられるのは一部の会社に限られると思います。
その一部については、オーバーウェイトを維持しているのですね。
そうです。市場全体がPERで30倍に置かれている時、60倍の会社を買えるのは、マーケットの倍のスピードで成長しているから60倍払ってもよいと考えるのであって、それが納得できなくなれば、大きく売られることになるでしょう。特に今年は米国の金利は更に上昇する可能性があり、成長鈍化も予想されますから、より慎重に考える必要があるのです。そういう判断をしたのが去年の12月でした。
予想通りに進展していますか。
需給の面から米国の長期金利が下落する局面がありましたが、米国が金利上昇局面に入ったという意味では予想の範囲で進んでいますね。
パフォーマンスについてお伺いしたいと思います。設定来ずっとベンチマークを上回る運用が続いています。特に昨年11月頃からベンチマークをかなり大幅に上回ってきていますが、その要因はどこにありましたか。
常にテクノロジー銘柄に対して強気の見方をしてきたことが功を奏しています。テクノロジーセクターで競争力のある企業は米国に集中しており、この傾向は長期的に続くと考えておりましたので、当初からこのセクターを強気で見てきました。
それが一つの要因ですね。昨年11月からの大幅なオーバーパフォーマンスの要因はどこにあったのでしょう。
シスコやオラクルというナスダック銘柄で、半年間で数十パーセント上昇した銘柄を大きく組入れていたからです。
このファンドは為替については基本的にはヘッジしないという方針なのですが、為替の寄与はどの程度ありましたか。
設定来で見ると、為替はマイナス要因でした。設定時のドル・円レートは116円程度でした。今111円程度ですから、マイナス要因です。この1年で見るとプラスマイナスゼロ。つまり為替の効果はほとんどなかったということです。
海外に投資するファンドの場合、為替の要因というのがかなり大きな割合を占めるものですが、その点はどうお考えですか。
ボックス圏で動く場合には、それほど短期的にヘッジをする必要はないと思います。しかし、以前のように90円を越えて大きく円高に進むようなケースでは何か対応を考える必要があります。
為替ヘッジをするということですか。
そうではなく、組入比率で対応します。つまり、為替リスクの発生する外国株式を削減して、為替リスクのない日本株の割合を増やすことで対応できるわけです。
最近、グローバルな規模での企業再編が進んでいますが、この動きはこのファンドにとってはフォローの風でしょうか。
そうですね。
それは何故でしょうか。
このファンドのコンセプトは世界的に競争力のある銘柄を選ぶことです。米国、あるいは欧州という特定の国や地域だけで分散投資するファンドというのがありますが、現在は企業の活動はボーダーレスに行われています。生産、マーケット、本社機能もどこに決まっているというものでもない。世界で競争力の最もある会社はどこだというのを探すことが大切です。ですから、ボーターレスになってゆけばゆくほどそういう銘柄に集中投資しているファンドですからフォローとなるのです。
世界的に金利上昇局面に入ってきましたが、これは株式市場にとってマイナス要因とはなりませんか。
過去5年を見ると、ドルが強い時代であり、世界中の物がアメリカに集まってきていました。同時に物価がどんどん下がってゆきました。しかし時代は変わりつつあります。原油を含めて物価が上昇してきています。ドル高だったものが、ドルのボラティリティが高くなってきている。金利の上昇について、市場は楽観的になりすぎていてはいけないと考えている。金利が上昇しても業績はしっかりしているという安心感というのは崩れつつあります。そういう意味でこれからの金利の上昇は景気に影響してくると思います。景気が弱い、あるいは鈍化する中、金利が上昇するということは企業業績に影響を与えるということです。金利が上昇しても企業業績が株式市場を支えてきたという時代は終焉を迎えると思います。
そうなると、このファンドのような株式にだけ投資するファンドにとってはネガティブではないのですか。
米国の景気が鈍化、あるいは調整時には日本を含めて世界中の株式だけでなく、債券市場にも影響を与えます。ですから、外国株式にだけ影響を与えるという状況ではありません。
そういう時代だからこそ、銘柄選択のノウハウというか能力が益々重要視されるわけですね。金利低下局面で、どの銘柄を買ってもとりあえず株式市場が全体的に上昇するのであれば、それほど銘柄選定能力は問われない。しかし、金利上昇局面だからこそ、銘柄選定の力の差がファンドの価額に大きく影響を与える。その時、このファンドのボトムアップアプローチおよび定量分析を含めた分析能力が功を奏するということですね。
世界的に競争力のある企業に皆が集中して投資してくるわけですから、下げ局面でも、そういう銘柄は買い戻されます。中長期的にみるとリターンは非常に大きくなる。
このファンドのパフォーマンスはかなりよいのですが、確かにシステマティックな部分もありますが、ボトムアップを基本としているということはファンドマネージャーの能力が優れていると言えると思いますが、それはどういう理由からでしょうか。
現在11名のファンドマネージャーがおりますが、全員が海外での運用経験があるということです。アナリストの経験も豊富です。そういう経験が支えているのだと思います。会社訪問についても、行くだけなら誰でも行けますが、その量よりも質が大切です。
アクティブ型のファンドにおいては、最も重要なことはどれだけ優秀なアナリスト、ファンドマネージャーを有することができ、ファンドマネージャーがどれだけ適確な判断を下せるかということですね。
そうですね。
ところで、須河内さんの運用経験をお聞かせ下さい。
入社以来クレジット関連に6年、株式関連の運用に9年携わってきました。どちらかというと今のファンドマネージャーには決算書でいうと利益、つまり損益計算書だけは読めるという人が多く、バランスシートをあまり気にしない人が多いと思います。米国の場合に優秀と言われるファンドマネージャーはバランスシートから見てゆきます。企業の体力がどうなのかを見て、それを利用してどれだけの利益が生み出せるかを判断します。借金しかなくてどんどん拡大してゆき、それで利益も拡大できるかというとそうはいかない。バランスシートをしっかり分析して投資する投資家が増えています。
そうすると、このクレジット関連の経験がかなり役立つのですね。
クレジットと株式では見る観点、期間も違いますが、ベースになるのは企業の根本の体力ですから、クレジットの経験は役立ちますね。
確かに個人投資家としては、最近はこの会社が10年後も存在しているのかどうかとわからないですからね。
そうですね。私がクレジットの仕事をしていた当時、この会社は10年後には危ないのではないかと言っていた会社が今潰れていっていますね。
そうなのですね。株式分析と合せてそういう分析結果も情報公開されるといいですね。クレジット分析の部分も重要な時代ですから。
そうですね。特にアジア株についてはそう言えますね。アジア通貨危機の前、タイの株式についてはタイが暴落する前にほとんど売却しました。
何が見えたのですか。
その当時、アジアの様々な国を回っていると、例えば自動車業界などでは積極的に製造設備を増やしていました。何故なのかと尋ねると、自分の国は小さいが周りの国が買ってくれるからだと言うのです。どの国に言っても同じ答えが返ってきました。どの国も同じことを考えていた。つまり、完全なオーバーサプライの状況にあったのです。自動車だけでなく、電気製品も化学もそうだった。それがわかったのが暴落前の半年とか1年前だった。それならここで株を売っておこうと考えました。
ところで須河内さんの趣味は家庭菜園ということですが、
そうです。気分転換にはとてもいいですね。ずーと同じことばかり考えてはいけないと思いますので、気分転換は必要です。
他に動物の観察もお好きだということですが。
サファリパークは国内全てを制覇しました。時間があれば子供といっしょに動物園にも行きますね。学生の頃の組織心理学を勉強したのですが、マーケットがこれからどう動いてゆくのかを考えるのは心理学ですね。動物を見ていても、動物が何を考えているのかを観察するのはおもしろいですね。
投資哲学は何ですか。
大学の専門が組織心理学、集団心理、組織行動といった組織論でした。そんな事もあってか、運用で成功するのは、銘柄の正しい評価をすると同時に市場の参加者がどのように考えるかを先読みする事だと思っています。相場は、正解・不正解ではなく多数決で決まるものです。自分でシナリオを持つと同時に、多数決がどのようになるのかが重要だと思います。
いくら良い銘柄でも皆が見向きもしないと放置されるし、自分ではたいした事が無いと思っても市場が大きく評価すると株価は上昇します。誤った評価は修正されることになりますが、波に乗る、流れに乗る事は大事だと思います。逆張りで道路の反対斜線ばかり走っていては危ないし正面衝突してしまうと一巻の終わりです。体を張ってずっと風に逆らい続けることも無理なことです。電車に乗るときも常に先頭の列車に乗り続けることは難しく、乗っていたとしてもぶつかってしまった時のダメージは大きくなります。乗るのも下りるのも最後では失格です。当然、一番の人はその時その時で変わってしまうのでしょうが、2番目に乗って、2番目に下りることがずっと出来たら良いと思います。基本に従って真面目に運用することが重要と信じています。
本日は貴重がお時間を頂きましてありがとうございました。また、 フォローにお伺いさせて頂きます。
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