インタビュー

今回は、パートナーズ投信株式会社のシニアファンドマネージャー安井陽一郎氏に同氏の運用する「パートナーズNASDAQオープン」について話を聞いた。当ファンドは、1996年8月1日に設定された国際株式型(北米型)に分類される追加型投資信託。インタビューは、2000年9月22日に実施した。


 

  まず、ファンドの特徴をお聞かせください。

  ファンドの投資対象は、ファンド名からもわかるように、アメリカのナスダック市場です。市場の性格を生かして、ハイテク、バイオ、半導体といったテクノロジー企業全般の成長性に注目して銘柄選定を行う特徴をもっています。

 

  ファンド名に「ナスダック」がついていれば、わかりやすいですね。

  「ナスダック」が名前についているファンドは、唯一これだけで、名前と投資対象とファンドの性格がマッチして、非常にわかりやすいというのも特徴です。

 

  海外株式に投資する場合、為替リスクが気になるところですが、どのように対応されていますか。

  当ファンドには、Aコース、Bコースの二つのコースがあります。Aコースは、フルヘッジで為替リスクは全くとらないもの。対して、Bコースはヘッジをせずに、為替も含めてトータルにキャピタルゲインを狙うというものです。いずれも、非常にいいパフォーマンスを残させていただきまして、モーニングスターという格付け機関ではAコース、Bコースとも5つ星という形になっております。

 

  設定来4年間、運用はずっと安井さんが担当されてきたのですか。

  はいそうです。ファンドの企画から、参加しています。 設定当初、私はニューヨークに駐在していまして、アメリカの上昇相場の勢いを肌で感じておりました。現在の強いアメリカ相場は95年初頭から始まったのですが、当ファンドが企画された96年中頃というと、ニューヨークダウが5000ドルとか6000ドル、ナスダックが1200ドルといった頃で、日本から見ると米国市況は、かなり割高感が高かった。 

 

しかし、当時、現地で企業調査する中で、この上昇相場は、技術革新や産業構造の変遷に支えられている本格的なものであると確信していました。単なる相場の反発とか、短期的な上昇ではなく、10年ぐらい続くトレンドの中での上昇だという判断がありましたから、当ファンドの設定に踏み切ったわけです。 当時の日本では、まだ「ナスダック」という言葉も現在のようにポピュラーではありませんでしたが、ナスダックの可能性に96年の段階で気づいたことが、結果的にいいパフォーマンスを残せた原因だと思います。運用がうまい下手というより、ナスダック市場に特化した商品性が優れていたのだと思います。

 

  今は、日本で運用されているのですね。

   そうです。96年から98年の暮れまではニューヨークに滞在しておりまして、現在は東京ベースで活動し、四半期に1度アメリカの現場を見てきます。

 

  安井さんご自身として、やっぱり現地でナスダックを見ているのと、日本で見ているのとでは距離感に違いがありますか。

  日本にいても、距離のハンデは感じません。現在は、インターネットや放送網などが発達していますから、どこにいてもだいたい同じ情報が取得できます。 もし、シリコンバレーで運用するなら別でしょうが、ニューヨークと東京ならほとんど同じです。ニューヨークにいた頃、投資対象の企業は、ほとんどがシリコンバレーにありましたが、現地に出張する場合の移動時間は飛行機で5時間ぐらい。東京からでも、だいたい8時間〜9時間ぐらいですから、それほど不便はないと感じています。

 

  では、現場で感じる肌感みたいなものはどうでしょう。

  情報の距離感みたいなものは、東京にいてもカバーできます。特に私の場合は、過去にアメリカにいた経験がありますから、東京に戻ってきても9割はカバーできるのです。 ただ、残りの1割というのが肌で感じる部分で、景気動向の兆候とか、どういう商品が最近のアメリカ人に受け入れられているか、といった部分が日本にいるとつかみきれない。こうした肌感のようなものは、いくら情報網が発展しても捉えらえにくいので、当ファンドのアドバイザーとして、グローバル・パートナーズ・アセットマネジメント・アメリカ・インクなどからの情報でフォローするようにしています。

 

  銘柄選定までのポートフォリオ構築のプロセスを順にお聞かせください。

  まず、私自身の情報収集や、当社のニューヨーク事務所の情報収集、あるいは証券会社のアナリスト、政府サイド、マスコミなどなど、さまざまなところからの情報で500銘柄くらいの第一次投資対象ユニバースを作ります。 この段階ではあまり詳しい調査はしないのですが、ざっくりとした数字や、そのストーリーをみて、だいたい250銘柄ぐらいまで絞りこみます。この250銘柄については、財務内容、業績、事業内容などを詳細に調査し、100銘柄くらいに絞込み、最終的に投資するポートフォリオが設定されます。 もちろん、その後もアメリカの企業は、四半期ごとに決算発表をしますので、四半期ごとの決算をチェックしてポートフォリオの入れ替え等は随時おこなっていくという形です。

 

  各プロセスで注視されている点などをお聞かせください。

   500から250に絞り込む時点でのポイントは、定性面とストーリーです。企業のビジネスモデルが成りたち得るかどうか、このビジネスモデルが相場のテーマになるかどうかを含めたストーリーを、自分の中で定性的に判断します。 次の250から100に絞る段階は、より定量的な評価です。収益予想をし、自分なりの収益モデルを作ります。そこでフェアバリュー(適正価格、適正価値)をはじき出し、今の株価の中で割安であり、なおかつファンドのバランスとしてファンドの何割まで組み込めるかという、より定量的な評価をするわけです。

 

  最初の段階が定性面というのは、成長すべき企業のシナリオやストーリーを見逃さないためですか。

  ポートフォリオの骨格を決める際、私のスタイルは定性面に重きをおきます。数字の詰めや、定量面はその次の段階でいいと思っているからです。 例えば、今朝、下方修正を出したインテルを見た場合、アメリカの投資家は、日本より次の四半期の予想に命をかけますから、下方修正は短期的な株価に大きく影響するでしょう。 しかし、ファンドにとって問題なのは、今後もインテルが成長産業であり続けられるかどうかです。これは、ポートフォリオに組み入れるかどうかの決定に関係してきます。次のEPS(1株当たり収益)はそのあとの問題で、少し下回るならポジション減らせばいいといったような、その程度のレベルの話だと思っています。

 

  現在のアセットアロケーションを確認させてください。

  ナスダックには6つのサブ指数があるのですが、それが全く機能していないといえまして、たとえば、インダストリー(industry)というカテゴリーがあるのですが、コンピュータということで半導体メーカーも小売りもひとくくりにされ、全体の5割近くの銘柄をカバーする指数になっているのです。いわゆるS&P500種とか、東証の業種別指数といったものがないのです。 そこで、自分なりに業種分けを行い、たとえば、半導体とインターネットのなかでも、「インフラ」「eビジネス」「機器類」とか、「バイオ」「その他」といった具合に分けてまして、それで常に自分のポートフォリオとナスダック指数との関係、ポジションをはかっています。 現在は、半導体を非常にアンダーウェイトにし、バイオテクノロジーを非常にオーバーウェイト、インターネットはだいたいマーケットウェイト並みというのが業種面での特徴です。

 

  上位組み入れ銘柄の傾向と最近の変更とその理由はいかがですか。

   アメリカの上昇相場は95年から始まりまして、今年で6年ぐらい続いています。その間の変化としては、前半の3年と、直近の2年で非常に大きな質的変化をみせていると思っています。 前半の3年は、単純にインターネットが伸びました。インテル、マイクロソフト、デルコンピューターといったインターネットの成長を捉えることができた企業が、株価を上昇させてき。したがって、95年から97年は、インテル、マイクロソフト、デル、シスコを、いかに当ファンドに組み入れるかがポイントでした。とはいえ、当ファンドは、1銘柄の組み入れ比率の上限を10%としていましたから、どんなに組み入れたくてもそこまででしたが・・・。

 

それがここ1年半くらいは、インターネットが進化したことによって、さまざまなサブセクターが出てきました。多種多様な技術が派生的に出てきたことによって、非常にたくさんの中小型の成長企業が出てきたのです。もうインテル、マイクロソフト、デルコンピューターといったかつての勝組が、彼らだけですべての技術成長をとることができなくなりました。インデックスに連動させるために、こうした銘柄を持ちながらも、いかにドラスティックにポートフォリオを変えるかがポイントになりました。こうして、中小型中心のポートフォリオへと変わってきたのが、最近の特徴といえます。

 

  ナスダックを日本から見ていると、上場も簡単だけれど、比較的、廃止も早い。また、新しい企業が多いので、競争原理も厳しく働いていると思いますが、その中で投資する難しさは感じていますか。

  そうですね。ニューヨーク市場の投資よりは、常にリスクがつきまといます。変化が非常に激しいですから、上がるときにはぐんぐん上がりますが、下がるときにもいっきに下がってしまいます。そこで、銘柄選定の過程では、あまりアーリーステージ(初期段階)の銘柄には投資しないことにしています。技術がすごいとか、すばらしい新商品を出すといっても、その情報自体を、ファンドマネージャー(私だけでなくて他のファンドマネージャーも含めてです)だけでは、最終的に判断することはできないからです。

 

科学者やエンジニア、ベンチャーキャピタリストでさえもないわけですから、いわゆる投信のファンドマネージャーは、その段階・技術だけで投資判断をしてはいけないと思うのです。ある程度売り上げが出てきたところで買うのが、私は原則だと思っています。 もちろん、売り上げが出た時点での株価は、すでに10倍になっていたりする。しかしそこで買っても、そこから3倍、5倍と伸びていけば、リスクリターンの面では十分に安定した投資になります。 日本円ベースのイメージでお話ししますと、時価総額で100億円から1000億円になるところをとらなくても、1000億円の小型株から3000億円とか5000億円の中型株になる過程でちゃんと保有できれば、それは非常に安定的なパフォーマンスにつながります。

 

  ナスダックというと、業績が出ていなくても、期待値によって株価が何倍にもあがるという銘柄が数多くありますが、そうした銘柄には投資しないということですね。

   そうですね。ケースによっては小さいポジションをとることもありますが、期待値だけの銘柄に本格的に投資することはありません。

 

  ベンチマークと、対パフォーマンスを教えてください。

  ナスダック・コンポジット・インデックスといわれている、いわゆるナスダック指数をベンチマークにしています。 パフォーマンスは、分配金込みでAコース、Bコースとも常に指数に勝っています。

 

  先ほどのお話で、アーリーステージの銘柄には投資しないとありましたが、比較的安定的な投資対象に絞っても、期待値で動きやすいナスダック指数に負けないというのは、すごいですね。

  確かに、安定銘柄ばかりですと、ナスダックの場合は指数に負けやすいという面があるのですが、それにのってやられるというケースも非常に多い。 しかし、最近は、先ほども申し上げたように、銘柄組み入れの傾向を変えています。マイクロソフト、シスコ、インテル、デルといった銘柄を非常アンダーウェイトしており、マイクロソフトやデルは、ほとんど持っていません。代わりに指数に連動しない中小型株を入れていますから、どちらかというとボラティリティ(変動率)は指数より高くなっています。

 

  銘柄選定するときの投資スタンスは、基本は長期でしょうか。

  将来的には、3年とか5年くらい持てるような銘柄を選んでいるのですが、40%下がったかと思うと30%上がり、また20%下がるといったような変動下では、どうしても売り買いが激しくなってしまいます。そうしないと、逆にファンドのボラティリティが高くなってしまうからです。上がったら利益を確定して逃げておき、下がったら再び買い戻すというようにした方が、ファンド自体のボラティリティは下がるからです。

 

  99年から2000年にかけて、ニューエコノミーとか史上最強の経済とか言われていたのが、春先に相場が荒れ、米国株はやはりバブルだったのだという人たちもいます。そんな中で、安井さんは今後のナスダックをどう予測され、運用に反映されるおつもりですか。

   95年〜98年の4年間のナスダックの上場率は、年平均30%ぐらいでした。この頃は、毎年安定的に3割ぐらい上がっていくというような相場展開だったのですが、昨年はいっきに86%も上がっています。99年、1年だけで倍にもなっているのです。しかも、その上げのほとんどは、10月の後半以降の2ヵ月半で達成されています。 

 

株でいう理想買いで、要するにコンセプトさえよければ、バリエーションは全然考えなくていいといった傾向が顕著に見られました。あのときの急上昇は、確かに、バブルといっていいような行き過ぎ感があったと思います。 しかし、下がるときはとことん下がりましたが、今年のナスダックも、3200から3800ぐらいまで戻っています。これは理想買いではなく、確かな現実買いです。 

 

実際、ナスダック企業の増益率は、日本企業やヨーロッパの企業に比べてものすごく高い。バイオもインターネットも光ファイバーも、新しい技術はすべてアメリカから出てきています。その上で出た利益を確かめながら買い上がっていく現在の相場は、地に足をつけたような買い方といえます。 これからは、去年のような短期間で倍になるような相場はないでしょう。そういう意味では夢が少なくなっているのですが、その代わり、これからは着実に年に3割は上がるといった、より長期的、安定的な相場が来るだろうと予測しています。現実の投資対象としては、決して悪いものではないと思います。

 

  アメリカの金利の動向は、ナスダックにどんな影響があるでしょうか。

  いまの環境が、この3月と決定的に違うのは、好材料と悪材料が正反対になったという点です。 いまの好材料は金利の低下で、アメリカの景気は、はっきり減速の兆候がでてきています。一方で、悪材料が、インテルの下方修正に象徴されるような、企業業績の不安。 

 

こうしたことが、3月には全く逆で、景気は絶好調、企業業績も絶好調。しかし、その一方で金利上昇懸念がある、といった具合でした。 どちらのストーリーがよりナスダックにとって危険かというと、私は3月のときのストーリーだと思っています。今のストーリーは、根本的にはナスダックにとって非常にいい環境です。 

 

実際、97年、98年の香港アジア危機やロシア危機といった世界的デフレ環境のときに、ナスダックは年率3割とか4割上がっているのです。 たとえば、単純なケースとして債券の話をしてみましょう。 ここに、償還日2005年に5ドルがもらえる債券と、2005年までに毎年1ドルずつもらえる債券があったとします。金利が下がると価値が上がる債券は、より遠い将来にまとまって現金が入る前者なのです。金利が下がったとき、それだけ割引される部分の現在価値が増えますから、前者の方が価値が上がるというわけです。 

 

ナスダック企業というのは、このように将来に利益とキャッシュフローをだす形になっている企業が多いのです。ヤフーとかバイオ企業というのは、目先の利益は出ないけれど、5年後にすごい企業になっているとか、すばらしい新薬を出すとかいうことを約束しています。逆に、後者のタイプは、マクドナルドやコカコーラといった老舗企業。いずれも成熟産業なので、毎年1ドルずつでも利益を出さなければ、投資家に許してもらえない。 こうした構造になっているので、成長企業は金利上昇局面では弱いのですが、低下局面では非常に強いということになるわけです。 

あたり前の話なのですが、こうしたことをやはり忘れてはいけないと思います。 さらに、バイオ企業のような新興企業は、企業業績の下方修正懸念がでても、下方修正される利益自体、もともとないという強みを持っています。よく下方修正されるから、米国株式いわくナスダックも大暴落すると、ナスダック弱気論を語る人がいるのですが、そういう議論でいうと、なぜ97年や98年に、ヤフーやライコスがあれだけ上がったのか、過去のナスダックの動きは説明できないのです。

 

  当ファンドの償還は2006年で、ファンドとしてはちょうど中盤あたりといったところですが、投資家としてはどんなポジションで持ったらいいのでしょうか。

   いま、持っていただいてもこの先5年ぐらいは、年3割平均のパフォーマンスはいけると思います。 昨年は、日本株が3倍近くに上がり、日本株ブームといった感じでしたが、その前も今年もマイナスです。ナスダックはイメージ的に変動が大きいように言われていますが、安定的に、ある程度少ないリスクでパフォーマンスを上げています。そういう意味で、ナスダック市場というのは5つ星になると思うのです。長期の安定的な投資にどの市場が向いているかと考えると、答えはおのずと出てくると思います。

 

ありがとうございました。

 


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