インタビュー

今回は、シティバンク プライベート バンク 日本地域本部本部長 北出高一郎氏に「これからの個人投資家の資産運用・保全の基本的考え方」について話を聞いた。

(取材記事は2回に別けて掲載します。後半の掲載は1月中旬頃を予定しています)

 

 金融機関の破綻、金融ビッグバンなど、我々個人投資家を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。超低金利にも変化の兆しが見えません。こういう環境の中、個人投資家は自分の資産管理・資産運用の考え方を根本的に考え直すべき時期に来ていると思うのですが、では、どのように考え直したらよいかというと、あまりにもそういう教育を受けていない、または勉強、経験不足ということもあり、よくわからないというのが現実です。そこで、資産運用・管理についての考え方のヒントを何か聞かせていただけませんでしょうか?

 一番大事なのは、今教育という話がありましたけど、自分の資産は自分が守る、自分が責任を持つ、という気持ちを持つということです。そこから出発するのだと思います。今まではどちらかというと、周りを見て、皆がやっているならいっしょにやろうという姿勢が多かった。しかし、これからは自分の資産は自分で守り、自分が管理するという、そういう癖をつけなければいけません。

 

 最近のように金融機関の破綻等が相次ぐと、ある程度癖というか、意識は高まりますが・・

 そうですね。ですから、例えば銀行預金でさえも安全かどうかということを考えなければいけない時代です。今のところ銀行が破綻しても国が守るということを言っていますけど、ではあと2つ、3つ破綻した時に、それでも国が守れるかというと、そうとは限らない。ですから、銀行と言えども常に安全ではない。銀行預金というのは、今までは一番安全なものだったわけで、銀行預金は、銀行に預かってもらっているという気持ちが多分強かったと思います。しかし、銀行預金というのは、実際には銀行にお金を貸しているのと同じことなのです。例えば、自分の回りでも友人を含めてお金の貸し借りというのは、そう簡単にはしないわけですよね。

 

 ええ、しませんね。

 同じことが銀行預金にも言えるわけです。自分は預かってもらっているのではなくて、貸してやっているという気持ちを持つことで、だいぶ考え方が違ってくるでしょう。

 

 そうですね。そういう考え方は日本にはありませんでした。

 もちろん小額の場合には、預金保険がありますから、本来ある程度の金額までの銀行預金の場合は保険でカバーされることにはなっています。だからと言って、自分が貸しているという気持ちを忘れていいということにはならない。自分のお金をどこかに預けるということは、自分の手元を離れるのですから、そのお金が戻ってくるかということを、利回りがいくらということを考える前に、常に考慮しなければいけない。それはさっき言ったように、友人にお金を貸す時にも、そのお金が戻ってくるかどうかを真剣に考えるわけですから、それと同じことを銀行預金の場合も考える必要はあります。

 

 意識・考え方を変えるということですね。

 そうです。

 

 では、ある程度意識は高まったと仮定して、次の段階として、銀行に預ける(貸す)のか、証券を買うのかなど、個人レベルでも様々な選択肢がありますが、その決定は何を基本にしたらよいでしょうか。

 一つは元本が保証されているかどうかということが非常に大きな点であると思います。基本的には銀行預金というのは元本が一定金額まで保証されるという前提になっています。ところが株式の場合は利回りは高いかもしれないが、元本を割ることもあるかもしれない。あるいは、投資信託についても、よい利回りを求められるかもしれないが、元本が割れる可能性もあります。要するに、自分が何を目的としているのかということをきちっと考えてから行動すべきだということです。例えば、利回りがよいことだけを追求するのか、それとも安全性を追求するのかをはっきりさせることです。利回りがよくて安全なものがよい、という気持ちはわかりますが、それは普通はあり得ないことです。

 

 そこをまずはっきりさせなければいけないわけですね。

 ええ。ですから、今まで悪かったのは、例えばですが、同じ銀行の中でも預金の金利を必要以上に高くつけている銀行があると、マスコミの取り上げ方も、どの銀行はこんなにいいレートで預金を募集していますよ、という表現をしている。しかし、見方を変えると、そういう銀行は高い利息を払わなければお金を集められないからそうしているのです。

 

 つまり、預金金利は各銀行のコストを反映していると考える必要があるということですか。

 というか、もっとわかりやすく言うと、金利を必要以上に高くしている銀行は、安くお金を集められないということです。要するに、財務内容が悪いから、高い金利を払わないとお金が集まってこないということです。欧米では、金融機関の財務内容が良いか悪いかということを一般の人が知ることができるチャンスが非常に多いので、必ずしも金利が高ければお金が集まるということにはなりません。安全性を求めている人は、安全性の高いところへお金を持ってゆく。今、ジャパンプレミアムなどということが言われています。日本が何でもない時でしたら、日本の銀行も信用力がかつてはあったわけで、欧米の大きな銀行と同じように、同じ金利を払えば、お金を借りることができた。それが今では日本に対する信用がなくなっているから、日本の銀行は欧米の銀行より余分な金利、即ちジャパンプレミアムを払わないとお金を借りられない状況になっているわけです。中身がよくないから、余分な金利を払わなければいけない。これは一般の預金にも言えることです。金利を余分に払っているということは、一見、一般個人から見ると利回りがよくていい銀行だなと思うかもしれませんが、もう一つ踏み込んで考えれば、何故そんな高い金利を払わなければいけないのだろうということに繋がってくる。そうすると、払わないと他にお金を集める方法がないからというところに行き着いてくると思うのです。

 

 そうすると、個人もそういう金利情報を読む際にも、意識も高めて情報を読み取るということが必要になるわけですね。

 そうですね。簡単に言えば、おいしい話というのはないということです。安全で高い利回りというのはないですから。

 

 リスクとリターンと関係だということをしっかり覚えておくことですね。

 お金を預けたり運用する場合に、元本を守るということが一番大事なのか、それとも多少はリスクはあるけれども増える可能性が高いものを求めるのか、まず、自分が何のために投資をするのか、何のためにお金を預けるのかということがはっきりさせないといけない。安全に有利にというものはないですから。あれば、プロは皆なやっていますね。

 

 普通の会社員やOLは大切なお金をこつこつと貯めているわけですが、これまでは銀行一個所に預けてきたという人が多いと思いますが、これからは金融商品が多様化する時代ですが…

 そうですね。いろんな金融商品が出て来ます。これまで、日本では個人のお客様に対する金融サービスというものが遅れていましたが、金融ビッグバンを機会に、これからは個人のお客様に対してどういう金融サービスができるかという競争になってくると思います。それは、個人にとってはとてもよいことだと思います。しかし同時に、自分の責任において行動しなければいけないという時代になってきましたから、最初に言ったように自分の目的が何かということをしっかり認識すること、その目的の中で、どういう銀行を選んだらよいか、どういう証券会社を選んだらよいかということを考えなければいけない。目的なしに行動するというのが、一番危ないことです。

 

 それはお金の目的であり、人生の目的であり、それをきちんと把握するということですね。

 そうです。ですから、自分がまだ若い世代で、これから、結婚、子供を設けるということであれば、そういう費用や養育費を含めて考え、家を買うのであれば、その費用を貯めるという目的を中心に考えるでしょう。また、ある程度子供も大きくなっているのであれば、老後などに備えるという目的を中心に考えるべきです。自分の立場の中で、自分のやりたいことの順位を付ける必要がありますね。それをはっきりさせた上で、それに最も合った金融機関なり、金融商品を選ぶことです。

 

 では、人生設計を基に、どういう時期にどういうお金が必要であるということがはっきりしたとして、次に金融機関を選ぶわけですが、個人には金融機関を選ぶという意識がこれまではなかったと思うのですが、金利という目安があるというのはわかりましたが、個人の立場では金融機関の財務状況というのを知るというのは難しいのですが、どういうふうにして、判断したらよいのでしょうか?

 そうですね。情報の公開が少ないので、難しいことだと思います。これまで情報公開というとプロ向けばかりで、個人向けは少なかったですね。ですから、一番手っ取り早いのは、株価情報ですね。金融機関の株価というのは日経新聞などに掲載されていますから、まずは株価を調べることです。それからマスコミをチェックする。私はマスコミを全ては信じてはいけないと思いますが、全く火の無いところに煙がでないというここと同じで、どちらかというとスキャンダルが出て来たり、マスコミに取り上げられるということは何か原因があります。情報源がかなり限られている個人の立場から見たら、株価とマスコミにどのくらい出てくるかということぐらいなら、ちょっと気を付けて見ていればすぐわかることです。ですから、株価を見た時に、どうしてこちらの株価は他の株価に比べて安いのだろうというとを考えることです。当然、財務内容がよいか悪いかが株価にも反映されるわけですから、それは一つの会社を選ぶ際の目安になります。米国などの企業ですと、株主によい会社だと見てもらうために、経営者は株価を上げる努力をしています。それは情報公開をして、財務内容もきちっとして、それによって投資家が自分の会社の株を買ってくれるようにと、そういう努力を経営者がしています。ですから、努力をしていい結果を出している会社の株価は高いし、そうでない会社の株価は安い。それは当然のことです。

 

 そうすると、株価がおかしいなと気が付いたら、自分で調べる、確認してみるという努力は個人投資家にも必要なわけですね。そして、おかしいと判断したらそういう金融機関から自分のお金を引き出すということも必要になることもあるわけですね。

 それくらいはできることです。株価はすぐにわかりますから。これは少し過激な発言かもしれません。今言ったのは、要するに、株価の低い銀行は潰れてしまうではないか、預金がなくなるではないかということになりますが、経営者として魅力のある会社にする努力をしてないから、そうなってしまうのであって、こういうことをきっかけに経営者が自分の会社をよくする努力をしてゆけば、結果的に株価も上昇してくるでしょうし、そうすると、預金者も安心してそういう金融機関にお金を預けるようになる。今まではそういう発想がなかったのです。

 

 株価、マスコミの報道など、個人でも集めようと思えばかなりの情報が集められるということですね。

 そうですね。ですから、おかしな噂が出て来たら、気を付けるという習慣を身に付けなければいけません。

 

 あと、地方ですと、都市銀行よりも地方銀行や信用金庫と取引している個人というのが多いと思います。そして、地銀や信金などは、あまり大きなマスコミは取り上げないと思うのですが、そういう場合はどのように情報収集したらよいでしょうか?

 地方銀行の場合は株が上場されていますから、株価は確認することができますし、そうする必要があります。地方銀行の中には都市銀行と比べてずっと財務内容のよい銀行も多くあります。銀行の大きさだけで判断してはいけません。確かに、マスコミでの取り上げ方については、通常ですと都市銀行に関するニュースの方が多いでしょうが、最近の信用金庫の破綻のケースを見てみると、そういう場合、地方銀行であってもマスコミには情報として出て来ました。ですから、噂にでてきていなければ多分大丈夫ではないでしょうか。

 

 ここにきて、金融機関や保険会社の格付けというのが随分注目されていますが、個人投資家も金融機関の格付けを調べる必要はありますか?

 格付けはもっと簡単に手に入るようになると思います。今まで日本は格付けを嫌ったり、格付け機関は、人の懐を勝手に覗いてけしからん、というような風潮がありましたが、それはとんでもない誤認です。格付け機関が権力を翳すようになるのは絶対よくないことですが、プロというのは自分の投資先の審査能力はありますから、いろんなところにお金を貸す場合には必ず審査を行ないます。一般の人はそういう審査能力を持っていない。ですから、格付け機関の役割というのは、一般の人にかわって、それぞれの会社の健全性をチェックするという役割を持っているわけです。ですから、その格付け機関が下した判断に対して、当該企業がおかしいと言うこと自体がおかしいのであって、もし、おかしいと言うのであれば、財務内容をきちんと公開して、議論をすべきであって、それを出さずにおかしい、あなたは私を過小評価していると言うのは間違いです。

 

 外資系の格付け会社の格付けについて、マスコミ等に遺憾である、というようなコメントが掲載されることがありますが…・

 そうですね。それは何のプラスにもなりません。

 

 グローバルスタンダードということが良く言われていますが、海外ではこういう格付け会社の格付けについて反論する、遺憾を表明するということはないことですか?

 あり得ないことです。日本の会社、特に大きな会社に言えることですが、これだけ日本というのは世界の中に浸透してきているのに、都合のいいことはグローバルだと言い、都合の悪いところは隠すということはもう通用しないわけです。企業への投資家というのは日本だけでなく、世界中にいるわけです。格付け機関というのは、世界中の投資家に対して、あなたが投資しようとしている会社はこうなんですよということを、第三者として、情報提供してあげてるわけです。例えば、私が米国の会社の株式を買おうとしていたら、個人では米国企業の財務内容はわからない。だから、格付け会社が米国の会社の格付けの一覧表を提供して、この会社はこんな格付けだということを公表しているのです。それにより、私は自分が興味のある会社というのは一般的にみてこういう状態であるということが、その格付けだけでわかるのです。

 

 日本でも最近ではムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズという格付け会社の名前をよく目にしますが、これら2社というのは、個人にとっては馴染みのない名前かもしれませんが、世界の投資家の間では、深く、広く、そして権威のある機関として認められているわけですね。

 そうです。とても権威があります。そして、さっき指摘がありましたように、グローバルスタンダードにのっとって格付けを行なっている機関です。日本人には日本人の尺度とか、アメリカ人にはアメリカ人のというのではなくて、世界中の一般の投資家の立場から見て、この会社が投資する際にどのくらいの安全性があるかということを客観的に判断しているわけですから、その尺度というのはとても重要ですし、日本の企業の人たちが、あなたの判断はいくらおかしいと言っても、それは日本型の主張であって、グローバルスタンダードではないわけです。むしろ、堂々と、そういうインタビューを受けて、会社の内容を公表して、自分たちの会社が、いかにいいのか、あるいは弱い所があるけれど、こういう努力をしているということをきちっと伝えてゆくべきだと思います。

 

 それが企業の責任でもあるわけですね。

 そうです。特に株式会社であり、株を一般に公開しているからには株主に情報を提供するという義務があるわけですから。

 

 株価、マスコミ、格付け、実際の商品の金利で金融機関の情報を収集できるということを伺いましたが、それ以外には何かありますでしょうか?

 これからは、銀行と言っても、投資信託なども販売するようになってきます。比較的小口の預金であれば預金保険があり、元本は保証されるというルールがありますし、銀行は元本保証のあるものしか売ることができなかった。買う側も、つまり預金者側もお金はなくならないというという期待はあったわけです。しかし、来年からは銀行の窓口でも元本保証のない商品を売ることが可能となりますから、それに対する説明、つまり預金以外の商品、預金に類似したものも出てくると思いますが、それがどういう商品なのかをしっかり理解するということです。その商品が預金保険でカバーされるものなのか、カバーされないものなのかは聞けばわかりますから、確認を怠らないということです。投資しようとしている先である商品の性格がどういうものなのかというのを、銀行預金で元本が保証されているものなのか、高い利回りは期待できるけど、元本が保証されないものなのかと等ということを確認し、判断する必要があります。

 

 銀行で販売しているからと言って元本保証だと思い込んでしまっている人は、きちんとそのへんを理解する必要がありますね。

 銀行にはもちろん説明の義務があります。しかし、後で損をしてから、説明してくれなかったではないか、と言ってもどうにもなりません。自分で自分のお金は守るということが重要です。基本的な質問というのは、きちんと店頭でしなければいけない。ある意味ではマスコミにも、元本保証でなく、リスクのあるものなのだから自分でそのリスクを確認する癖を付けなさい、ということを広く皆に言ってゆく義務もあると思います。もちろん金融機関の責任ではありますが、まだそういう点を理解していない人が多いわけなので、特に銀行の窓口で買えることになると、今までと同じ元本保証商品であると思い込みやすいので、気を付ける必要がある。

 

 当然売る側はわかっていても、買う側は、これまで何十年も銀行を利用してきて、元本保証物しかそこではなかったのですから、誤解しているかもしれないというリスクはありますね。

 ですから、当局からも売る側はそういう点を徹底して説明するようにという指示もありますが、実際に窓口で誰かが対応した場合、ではどこまで話したか、説明したかというのは把握できません。だから、銀行の責任ばかりにできないわけで、自分で自分のお金を守るという癖は付けなければいけない。

 

 リスクという言葉がいろんなところで出ていますが、株式投資をやってきた人にはリスクという概念があるとは思いますが、そういう経験のない人にはリスクとは何だと考えればよいでしょうか?どのようなリスクが実際に存在しますか?

 一つは、商品そのものの価格が変わってしまうというリスク、それともう一つはこれからも増えると思われる外国に投資するタイプの商品における為替の変動リスクがあります。大きく分けると、商品そのものの価格が上がるか、下がるかというリスクと、為替変動リスクですね。もう一つは信用リスクというものです。これは、要するに貸し倒れリスクと同じです。つまり、貸したお金が返ってこないかもしれないというリスクですね。多分、個人で信用リスクが関連する商品を購入するというのはあまりないケースだと思います。米国などではジャンクボンドというものがあります。格付け会社から極めてリスクの高い債券であると格付けされているものです。それをあえて集めてきたファンドというものがあります。これは、上手く当れば大きな利回りが出ますが、もともと明らかに危ないというものを集めているわけですから、運用先そのものがなくなってしまうリスクがあるというものです。

 

 ジャンクボンドを集めたファンドというのは、日本にはまだないにしても、そういうふうにこれまではなかったタイプの商品が続々と登場してくる可能性があるということですね。

 そうです。ですからビッグバンというのは、個人にとってはいろな選択肢が広がるということでは、とてもよいことですが、逆に、自己責任の重要性は増してきます。ですから、ある程度の勉強はする必要が当然あります。おいしい話はありませんから、何かが他と違っていたら、何故違うのかということをきちっと考えてみる癖をつけなければいけない。そうすることが、自分を守ることになるのです。

 

 今為替リスクというお話がありましたが、これまでもいろんな通貨建てでの外貨預金というものが紹介されてきました。外債投資もあります。また、投資信託を利用すれば、世界中に投資することが可能な時代です。ここに来て、外貨建ての投資信託(外国投資信託)というのも、注目を浴びています。こういう時、個人レベルで、外物投資をする際には、どんな点に注意したらよいでしょうか?

 投資信託で考えると、高利回り商品と言っても、それは過去の実績であって将来を保証するものではないということを理解することが必要です。それは、受益証券説明書等にもはっきり書いてありますね。ただ、投資信託の歴史というものは長いですから、あるファンドが長期間にわたってある程度の実績をあげていれば、それも選択の際の判断材料とはなるでしょう。特に欧米では、投資信託の運用成績が悪ければ、投資家はすぐに離れていってしまいます。そういう意味で、ファンドマネージャーというのは、競争も激しいですし、いい実績をあげていれば人気も出るし、悪ければ淘汰されるという厳しい世界ですから、或る程度歴史的によい結果を持っているところはまあまあ安全だとは言えます。

 

 選択の時の目安にはなりますね。

 日本の投資信託が人気がないのは、過去に株式市場が上昇している時はファンドの成績もよかったものの、市場が下落しファンドの成績が悪くなってしまった点にあります。そして、親会社である証券会社を儲けさせるためにあったという側面も以前はありましたから、それが個人の投資家の信頼を失う原因になった。しかし、そういった投信はもう売れませんし、日本でも本当のプロのファンドマネージャーがお客様から預かった資産をなるべくよい成績で運用するという競争の時代になります。特に外国の投資信託会社の参入により、そういう競争は激しくなるから、今までよりはよくなってくると思いますね。

 

 過去の実績は将来を保証はしないものの、過去の成績は選択の上での重要な判断材料ではあるわけですね。

 そうですね。それと、投資信託というのはよく見るとそれぞれ特徴があります。ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターン、株を中心に運用するもの、債券を中心に運用するものなど、本当に様々なファンドがあります。ですから、それぞれの特徴をよく見る必要がある。同じように過去3年間に年率10%のリターンを上げたファンドがあったとしても、投信の目的はそれぞれ違いますから、結果オーライで10%のリターンを上げたのか、本来の目的に従った結果10%のリターンを上げたのかをきちんと把握する必要がある。

 

 つまり、そのファンドの特徴、目的が自分のお金の目的、シナリオに合っているかどうかを知る必要があるわけですね。

 そうです。慣れてくれば、金融機関に行って自分は投資信託に興味がある、自分はこういうことを目的にしているということを、例えばそれほど高利回りでなく、インフレ率程度に回ればよいけどリスクはとりたくないとか、損してもいいけど、出来るだけ高い利回りを狙いたいとか、為替リスクをとってもよいという好みを窓口で言って、それにあった投資信託にはどんなものがあるのかということを聞けばよいのです。

 

 売る側もそういう条件をはっきり提示されれば、ファンドを選択しやすいですね。ただ、窓販が始まりましたが、そういう条件を個人投資家が窓口の人に言った時、窓口の人はそれに合ったファンドを選べるのでしょうか?

 選べるようになるでしょう。もし、選べないような人が窓口にいたら、それは止めた方がよいでしょう。

 

 それも窓口、そして将来は銀行を選ぶ目安にもなるわけですね。

 ええ。自分のお金なのだから、自分の目的がはっきりしていて、それを伝えて、その時に、そうはおっしゃるけど、こちらにもっと良いものがありますよ、というような対応をしたら、それは嘘だと思った方がいい。それは、売り側の理論となってしまう。自分の目的を持って金融機関にゆく、それをきちんと伝える必要がある。

 

 目的に合ったものを選ぶことですね。

 個人のレベルでこれからどんどん増えてくる投資信託を全部判断するというのはほとんど不可能です。私などでも、外国投資信託を見ても種類が多すぎて、シティコープで売っている投信だけみても何千とありますから全ては把握できない。

 

 そこで、専門家である担当者に自分の目的を伝えて、それに合ったものを選択、紹介してもらうことになるわけですね。

 そうです。選択、紹介してもらったら、それらを自分で理解、判断する。

 

 そうなると、銀行や証券会社との付き合い方も、これまでとはがらりと変わってきますね。

 そうですね。恐らく金融機関というのは、自分のところの商品だけを売らんかな、というのではなくて、お客様にとって良いものを紹介できる体制に変わらなければいけないでしょう。特に投資ということに関してはですね。

 

 海外ではそういう役割を専門にするファイナンシャルプランナーという人たちが多いし、その役割も大きいと聞きますが…

 銀行預金の場合は画一的であったから、誰でも対応できた。しかし、投資信託ということになると、リスクを伴なうことなので、投資家の要望にあったものをいくつか種類を持っていて、投資家の希望するものを提供できなければいけない。

 


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