インタビュー
今回は、日興アセットマネジメント株式会社の投信株式運用本部、グロースチーム、ファンドマネージャー才納信行氏に、同氏の運用する「日興エコファンド」の運用について話を聞いた。インタビューは、2000年12月11日に実施した。
日興エコファンドは、国内株式型(一般型)に分類される追加型株式投資信託。ファンドの詳細に関しては日興アセットマネジメントのホームページに掲載されています。
- 日興アセットマネジメントのホームページはhttp://www.nikko-am.co.jp
「日興エコファンド」の特徴をお聞かせください。
当ファンドは、国内株式の中から@環境問題への対応が優れ、成長が期待できる企業、もしくはA環境に関連し、成長が期待できる環境ビジネスにおける優良企業を投資対象としています。 @の環境問題への対応が優れている企業とは、経営における環境リスク低減に積極的に取り組み、具体的な成果をあげている企業をいいます。そしてAの環境ビジネスにおける優良企業とは、ゴミ焼却炉や上下水道処理プラントの製造など、環境ビジネスそのものを本業としている企業のことで、環境ビジネスに積極的に取り組み、技術やサービスなどに高い競争力を有する企業をいいます。Aの環境ビジネスを本業とする企業に投資するファンドは、テーマ型ファンドとして1980年代から既にありました。当時は、今ほど投信会社は多くありませんでしたが、主な投信会社から、それぞれ設定されているほどの人気テーマだったのです。 しかし、この「日興エコファンド」では、Aの環境ビジネスを本業とする企業よりも、むしろ@の企業経営のなかに環境問題への対応を戦略的に取り入れていこうという企業のほうに、圧倒的に多く投資しています。言うなれば、企業収益を増やすことと、環境への負荷を減らすことを両立している企業を中心に、投資していこうというのが当ファンドの特徴です。
両者を分け、あえて環境ビジネスを本業としない企業をメインの投資先とするのは、何か理由があるのですか。
今後の環境問題を考えると、環境ビジネスを本業とする企業だけでなく、その他の企業も戦略的に環境問題を経営の中に取り入れていかないと、根本的な環境問題の解決にはなりえないと考えるからです。 こうして、環境ビジネスを本業としない企業を投資先のメインにすることで、一般企業の環境対応というものを促せるのではないかと期待してもいるわけです。
環境ビジネスを本業としない企業に、あえて積極的に投資することで、企業の環境対応を喚起しようというわけですね。
そうです。これからは、環境への取り組みが企業価値を左右する時代です。優れた環境対策こそ、企業の生き残りと新たな成長の条件なのです。 こうした視点から、環境への配慮が優れていて、確かな経営ビジョンと競争力を持つ「エコ・エクセレントカンパニー」に投資するのが当ファンドの特徴といえます。
次に、銘柄選定のプロセスをお聞かせください。
大きくは、「エコノミック」と「エコロジカル」の2つのスクリーニングにより、組み入れ銘柄を選定します。 プロセスとしては、まず日本の上場および公開銘柄約3400社から、当社の調査対象銘柄として約600社に絞り込まれます。この約600社がそもそもの大きなユニバースとなって、このなかから先のスクリーニングを行い「日興エコファンド」としての投資対象銘柄と候補銘柄を絞りこんでいくという形になります。この時点では、約600社から約200社に絞られます。
2つのスクリーニングについて、詳しくお聞かせください。
「エコノミック・スクリーニング」とは、売り上げや利益がどのくらい伸びているかという定量的な評価に加え、研究開発力が同業他社に比較して、あるのかないのか、販売力はどうなのかといった定性面も評価します。具体的な評価は、アナリストレーティングとして5段階の格付けをし、上位3つまでを、中長期的に成長が期待できる銘柄として残します。そして「エコロジカル・スクリーニング」が、他のファンドと比べて最も特徴的な部分だと思います。具体的な評価としては、企業の環境に対する取り組み度合いや環境ビジネスにおける競争力をA+(プラス)からC−(マイナス)までの6段階レーティングを行い、B+以上をリストアップしています。 こうして2つのスクリーニング条件を満たす企業約200社の中から、ファンドマネージャーが企業のファンダメンタルや株価の割安性等を再チェックし、リスク分析等を行い最終ポートフォリオを構築します。ここで組み入れられる企業は、100社程度になります。
環境対応度とは、どんな基準で図られるのでしょうか。
全業種共通部分35点と、業種別部分65点の100点満点で採点を行い、企業が獲得した点数に応じて格付けが決まります。全業種共通では、企業がいかに組織的に環境問題に取り組んでいるかを評価します。たとえば、環境マネジメントシステムが構築されているか、環境対策室といった専門部署が設置されているか、環境問題に対する情報開示の姿勢はどうかといったことが、評価ポイントになります。業種別では、製品・サービスに対応する配慮はどうか、省エネ・省資源への対応はどうかといったことなどがありますが、製造業や非製造業など業種によって環境対応の内容が大きく違ってくるので、業種によって異なる評価基準をそれぞれ設定しています。
非製造業のような、環境問題とは直接関わってこないような業種は、どんな評価になりますか。
製造業のような業界は、1960年代から公害対策に取り組んできましたから、環境対応という点では、歴史的経緯からして比較的高いレベルにあります。ご質問のように、非製造業というと、環境問題からは遠いところにあるようなイメージかもしれませんが、非製造業として、できることがないかというと決してそうではないのです。例えば、通常の業務のなかで再生紙を使用することは森林資源の保護になりますし、光熱費の節約や営業車両に低公害車を利用することは環境にとって大事なことです。
しかし、重要なのは、こうした地道な取り組みに加え、ビジネスのなかでいかに環境貢献をするかということす。たとえば、製造業の自動車メーカーなら低燃費の車を開発するといったことがそうですが、非製造業の銀行なら、環境対応型の設備投資には、より低金利の融資を行い、環境対応の設備投資を活発化させるといった具合です。
最近では、銀行が土地を担保にして融資を行う場合などに、土地の評価に土壌汚染のリスクも加味して資産評価をしようという動きが出始めています。欧米では、土地を取引する際の土壌汚染が大きく問題視され、土壌汚染の費用を加味した値付けというのが、きちんと制度化されている国もあります。したがって、土壌汚染のひどい土地では、評価がマイナスになることもあります。 まだ正式に決まっていませんが、日本でも環境庁が土壌汚染に関する規制の導入を検討しているようです。
そうなると、銀行の融資条件も大きく変わるということですね。
そうです。たとえば、従来の評価方法では10億円の担保価値とされたのが、土壌汚染によって5億円の価値に目減りするかもしれない。仮に、そのままの評価で企業が倒産したりすれば、融資した資金が全額回収できないことになります。銀行にとっても大きなリスクを抱えることになりますから、担保評価に環境リスクを加えようという動きが急速に進み、こうした銀行の変化が企業の環境対応を促進させています。
企業の環境対応についてのリサーチはグッドバンカーと共同で行うとされていますが、グッドバンカーとファンドマネージャーの役割分担についてお聞かせください。
グッドバンカーとは、環境配慮投資の専門コンサルタントで、1998年7月にSRI(Socially Responsible Investment−社会的責任投資)をコンセプトに、環境配慮ファンドの銘柄選択のために、企業調査サービスを提供する専門コンサルタント・投資顧問会社として設立されました。そのグッドバンカーが行うのが、「エコロジカル・スクリーニング」のレーティングです。グッドバンカーはあくまで情報提供のみで、格付け6段階のうちどこまでを投資候補として残すのか、といった投資判断はこちらで行います。
企業が収益を上げようとするとき、環境対策が足かせになるようなことはないですか。また、今のような不景気時には、どうしても環境のことは二の次になるという印象がありますが、「エコロジカル」と「エコノミック」を両立させる難しさはないですか。
私は、環境対応に優れている環境先進企業、グッドバンカーのレーティングで言うとA+がついているような企業には、環境問題に取り組むことと、収益を向上させるということをイコールで見ている企業が多いと感じています。特に、一般消費者の環境意識は高くなっていますから、こうした消費者ニーズの変化にきっちり対応していかないと、売り上げは伸びていきません。もちろん、企業対企業の取引においても同様です。かねてより欧米では、環境マネジメントシステムである「ISO14001」を取得していなければ、取引はしないとうたっている企業が多いのですが、最近の日本企業でも、そうしたマネジメントシステムが整っているところと優先的に取引をするという企業が増えています。ビジネス面においても、環境対応を積極的に進めていかないと、取引してもらえないというリスクが高まっています。それに製造業の場合は、工場におけるコストダウンがイコール環境対応に直接リンクしているものが多い。たとえば、製造工程を短くしたり、部品を少なくすることは、光熱費や材料費、人件費などのコストダウンにつながりますから、製造業はかねてよりこうした工夫に取り組んできました。このような取り組みは省エネ・省資源にも寄与することが多いのです。問題は、企業がこうした省エネ、省資源を意識してやっているか、です。
同じことをやっていても、単なるコスト削減と、環境対応のための努力なのかで、エコロジカルの評価は異なるということですか。
そうです。環境に対する意識の差が、長い目で見れば環境効率や企業収益に響いてくると考え、こうした定性的な判断を考慮して評価しています。
先ほどのお答えで、長期的に見れば収益と環境に対する意識は比例するということでしたが、ファンドに組み入れる段階で、エコノミックとエコロジカルのスクリーングでは、どういった割合になっているのでしょう。
おおむね半々のウエイトで約200社まで選んでいくという形です。
ただし、約200社から先は、主に企業の期待収益重視で通常のファンドと同じようにポートフォリオを作っていきます。もうこの約200社に絞られた段階で、環境対応面に関しては優良な会社としてふるいがかけられているわけですから、あとは株価面で期待収益の高いと思われる企業を重点的に選んでいくことになります。
パフォーマンスは、99年の11月末から2000年の11月末までの1年では、マイナス14.8%というのが当ファンドの騰落率ですが、同じ期間のTOPIXはマイナス17%です。過去1年で見れば、ベンチマークに勝っているという状況です。
組み入れ銘柄を見ると大型企業がほとんどですが、小型やベンチャー企業は環境対応の余裕がないということでしょうか。
こうした企業の評価が低くなりがちなのは、環境対応の専門セクションを設けるほどの余裕がないという、組織面の制約があること。さらに、ディスクロージャーの体制が整っていない企業も多い。環境対応の評価を行う際には、「情報開示に対する姿勢」という項目があるのですが、二部や店頭の企業は、全体的な傾向として情報開示に対しては消極的な企業が多いようです。情報を出してもらえない限り、こちらとしては判断のしようがない。つまり、評価の点数は低くなりがちというわけです。
環境に対する情報開示といっても、どんな形で開示されるのですか。
最近では「環境会計」といい、環境対策に使った費用と、その結果得られた効果を比較するというものが採用されています。しかし、財務会計と違い、この環境会計の基準というのが各社バラバラなのです。どこまでを費用と見るのか、どこから収益と見るのかというのが企業によってあいまいなため、企業同士を比較することは困難な状況です。
特に、収益の認識で、「見なし効果」をどうするかが問題になっています。「見なし効果」を環境会計上の収益として認識している企業と、認識していない企業がはっきり分かれているのです。こういう環境対策を行ったので、環境対策を行っていなければ起こったであろう環境損失を回避できた。だから、その分をプラスと見るのが、みなし効果を認識する会計処理で、実際のプラスではないので、プラスとしないというのが、みなし効果を認識しない会計処理です。
たとえば、10億円をかけて、土壌汚染の対策を行った。もし行わなければ20億円の損失が出ているところだったので、10億円の費用をかけることで20億円の損失を未然に防ぐことができた。したがって、差し引き10億を収益にするというのが見なし効果を認識した場合であり、実際に収益としてプラスにはなってはいないので、見なし効果は入れるべきではないとするのが、認識しない企業です。この「見なし効果」をどう扱うかが非常に難しい問題なのですが、未だきっちりとしたものはないのが現状です。
将来的に、環境会計の基準が設定されることはあるのですか。
環境庁がガイドラインとして出しているのですが、拘束力を持ったものではありません。きっちりと整備されるのは、もう少し先のことになると思います。
99年8月から運用されていて、企業の環境に対する感触が変化したと感じることはありますか。
大いに、あります。 まず、環境報告書を作成する企業が大幅に増えたことがあげられます。また、3カ月に1度、四半期レポートを出しているのですが、組み入れ銘柄が発表されると「環境問題に対しての取り組みを、是非聞いてもらいたい」と、環境担当セクションの人たちが当社に来られてプレゼンテーションされていくといくこともあります。
企業の意識も高まっているのですね。
急速に、高まっていると思います。
そういう意味では、「エコ・ファンド」が企業の環境対応の起爆剤になっているといえますね。
そうありたいと思っています。 これまで、いわゆる環境にやさしい商品というと、自動車だったらハイブリッドカーであったり、文房具ならリサイクルのプラスチックで作ったボールペンとか、いろいろありましたが金融商品にはありませんでした。投資信託でこうしたファンドを作り、お金の流れを変えることによって企業に環境対応を促そうというのが「日興エコファンド」です。もちろん投資信託ですから、良いパフォーマンスをあげて投資家の皆さんにお返しすることが第一の目的ではありますが、それだけではなく、企業に環境対応を促すことによって、投資家の皆様からお預かりした資金を環境保全に役立てたいと思っています。
今日は、ありがとうございました。
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