インタビュー
今回は来日中のインベスコ・アセット・マネジメント・リミテッドのシニアファンドマネージャーであるジョン・ナデル氏に、GTグローバル インベストメント・オープンの運用について話を聞いた。GTグローバル インベストメント・オープンは、国際株式型(一般型)に分類される追加型株式投資信託である。インタビューは2001年3月8日に実施した。
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このファンドは2月28日に第9期決算を迎えたところですが、この期の運用環境はどんな状況でしたか?
世界経済が急速に減速し始めたことが大きな特徴でした。景気減速は主に企業による設備投資の削減によるものでしたが、これが在庫、輸出、そして個人消費にまで拡大しました。
だから米国は利下げを実施するに至ったのですね。
はい、米連銀は今年1月3日に政策金利を0.5%引き下げ、更に、月末には追加利下げを実施しました。
米国の景気減速以外にはどんな特徴がありましたか。
景気減速に伴い企業業績が悪化し、設備投資、特にIT関連の設備投資が減少しました。また、ユーロが上昇しました。
確かに、北米を中心に企業業績の悪化が相次ぎましたね。
はい、インテル、アップル・コンピューター、デル、IBMといった米国の大手ハイテク企業に始まり、その後、様々なテクノロジーセクターの企業の業績も悪化が続きました。その結果、世界中の株式市場でIT関連株が大きく売られたわけです。
ファンドのパフォーマンスはどうでしたか。
ファンドの基準価額は約22%下落しました。ベンチマークであるMSCIワールド指数円フルヘッジベースは約19%下落しました。ですから約3%ベンチマークをアンダーパフォームしたことになります。
アンダーパフォーマンスの主な要因は何でしたか。
アンダーパフォーマンスの主な要因は、先ほども述べましたようにテクノロジー株を取り巻く環境が非常に悪化したということです。当ファンドでは、テクノロジーセクターをベンチマークよりオーバーウェイトとしていましたので、その影響が大きかったわけです。
世界中のテクノロジー株が下落したようですね。
そうです。多くのテクノロジー株が50%近くも値を下げました。ナスダック指数も55%から60%程度下落しています。このような環境は、当ファンドのようなグロース型のファンドにとってはとても困難な状況と言えます。
地域別ではどこが最も厳しいものとなりましたか。
欧州が顕著でした。特に、当ファンドでは、大陸ヨーロッパを重視し、その中でもテクノロジー株に注目していたためです。
北米はどうでしたか。
北米においては、銘柄選択が功を奏し2001年1月までは、ベンチマークをアウトパフォームしていました。しかし、2月に入り、JDSユニフェースやEMCに大幅な調整が入り、北米についてもテクノロジー株を重視していたために、これがファンドのパフォーマンスに打撃を与えました。
今後もこのような市場動向が続くのでしょうか。
インベスコは、市場のボラティリティは今後数ヵ月継続すると予想しています。
どうしてですか。
企業のテクノロジー設備投資や世界経済の見通しが非常に不透明なためです。この不透明感により、投資家は一層リスク回避的となるでしょう。例えば、BB格の事業債と米国財務省証券のスプレッドが過去1年においてかなりの水準にまで拡大しており、これは、投資家が先行き不透明な環境を懸念していることを表しています。
景気が更に悪化することを懸念しているのですね。
しかし、インベスコは一部の人が懸念しているように米国が景気後退に陥るリスクはないと考えています。景気減速は継続し、平均トレンドを若干下回る水準に低下する可能性はありますが、景気後退には至らないと思います。一方で、インベスコは力強い回復が見られるとは予想していませんが、穏やかな回復はあると考えています。
いつ頃ですか。
今年後半、第3四半期頃に穏やかな回復が見られると思います。
欧州はどうですか。
米国とは対照的に、経済は比較的堅調です。前半はかなり堅調となり、後半に若干減速すると考えています。欧州では現在の環境が継続し、北米の経済成長より好調が続くでしょう。最近のデータでは、ドイツでは減速していますが、フランスやイタリアでは好調が続いています。ドイツの2月の鉱工業生産の伸びは9%と1月や昨年12月よりは低下しましたが、それでも前年度比9%の伸びは強いものです。欧州の中ではバラツキが見られますが、それでも欧州全体で見ると健全な状態と言えます。マネーサプライの伸びは比較的堅調です。企業の資金調達需要も活発です。株式市場は過小評価されており、企業収益は堅調に推移しています。これが欧州株式市場のパフォーマンスを支えると考えています。
ただ、前期に関しては、当ファンドにとっては厳しい状況が見られました。それは、当ファンドが成長型のファンドであり、欧州市場を強気で見ていたためです。その背景にはユーロが過小評価されており、それが欧州企業の輸出競争力を支えていることが挙げられます。また、欧州経済が他の地域と比較して相対的に堅調が予想されるためです。その結果、バリュエーションは相対的に魅力的だと思われます。
日本については如何ですか。
日本では依然厳しい状況が続いています。ですから、日本の組入比率をベンチマークの半分程度にしています。
日本の組入れはどういう状況にありますか。
国際的競争力を持った企業を重視しています。需要が海外市場に依存している会社ということです。消費者電子機器メーカーなどです。銀行、不動産、小売については、国内経済は今後も低迷すると予想されるため組入れていません。輸出についても、今後数ヵ月はかなり減速すると思います。
そうなると、国際競争力を持った企業でも、業績は悪化するのではありませんか。
それでも内需型企業よりは好調となります。ただ、先ほども述べましたが、インベスコは日本に対して弱気であり、大幅にアンダーウェイトとしています。
そうなると、円安は続くと予想していますか。
円安傾向となるとは思いますが、確信を持つのは困難です。日本銀行の金融緩和が必要です。日銀は、景気回復のためにより積極的な量的緩和を実施する必要があります。その方向への動きは始まっています。しかし、それが実行されるかどうかはわかりません。実行されれば国内経済にとってはプラスですが、円にとってはマイナス材料になる可能性があります。そうなれば、当ファンドのヘッジ比率政策にも影響を与える可能性があります。
ヘッジ比率に関しては前期変更しましたか。
いいえ、変えていません。現在は為替益を積極的にとりにゆく運用は実施していません。ただ、通貨の中ではユーロに最も注目しています。
これまでの中で、米国経済成長は減速するが、景気後退には至らない、欧州は十分好調であるということを伺いましたが、米国と欧州ではどちらの成長が大きいということですか。
欧州です。
ファンドの国別配分状況はどうなっていますか。
2月決算時、北米が58.2%、大陸ヨーロッパが27.5%、英国が8.1%、日本が5.9%、新興諸国市場約4%、アジアや太平洋についてはほとんど組入れていません。
ベンチマークであるMSCIワールド指数円フルヘッジベースとの比較ではどういう状況なのでしょうか。
北米は約4%オーバーウェイト、大陸ヨーロッパを約5%オーバーウェイト、英国を約1.6%アンダーウェイト、日本を5−6%アンダーウェイト、アジアや太平洋についてもアンダーウェイトとなっています。
欧州を最も重視しているということですが、欧州の組入比率は前期に変化がありましたか。
前期を通して見ると、欧州の組入比率は変動しました。その理由は、市場のボラティリティが高かったからです。そのため、当社の運用モデルが利用している変数が変化し、バリュエーション要因が変化したためです。そのような状況の中、リスクを抑える運用を行いました。世界経済の減速が市場の予想以上に大きかったために、市場が動揺する中、リスク要因を削減しました。しかし、徐々によりリスクの大きいグロース重視型の運用にもどしたいと考えています。しかし、同時に、特に欧州に関しては、将来のキャッシュフローが疑問視されてきた企業や、業績見通しの不透明になった企業については削除しました。
米国についてはどうですか。
最近は、耐久消費財関連を比較的オーバーウェイトとしています。ただ、このセクターのパフォーマンスはかなり堅調だったので一部益出しを実施し、組入れは低下しています。その資金を使ってテクノロジー株を購入しています。このような動きを積極的に実施しているのではありませんが、市場の乱高下によりマイナスの影響はありました。
そのように新たに組入れたテクノロジー株というのは、経済減速が始まる前に組入れていたようなテクノロジー株とは異なる銘柄ですか。
インベスコが最も注目しているテクノロジーの分野として、データ保存が挙げられます。現在と、数ヵ月前との違いは、このセクターのバリュエーションが大きく変わったということです。
そうです。
インベスコはそれらPC関連については、それほど強気ではありません。コンパックの見通しは比較的好調だと考えています。確固たる経営力を持ち、パソコン市場の中でもより高位機種を重視しています。デルも注目しています。これらの銘柄は好調に推移すると見ています。マイクロソフトについては魅力的であり、新しいOSの成長が徐々に業績に寄与し始めると思います。市場における支配的地位も続くでしょう、Eコマース・ソリューションも成長が期待されています。また、ブッシュ政権下では、同社が分割される可能性は低下したと言えます。
携帯電話関連についてはどうでしょうか。第3世代携帯電話免許の業績への影響を懸念されていましたが。
通信事業者の支払った免許料金は過剰であったと思います。これが通信事業者の投資効率を圧迫し、業績にも影響すると考えています。また、大手以上に中小の事業者の方が痛手は大きくなりますから、セクター内においては大手事業者の方が有利になるでしょう。しかし、インベスコは通信事業者を全体としてアンダーウェイトとしており、通信機器メーカーを重視しています。事業者の設備投資においては、土地や人材などと比較すると、通信機器への投資は相対的に小さいものですが、規模で考えれば、かなりの機器投資が必要とされます。ただ、ここ数ヵ月において通信機器の組入れを削減しました。それは、長期的にはこれらの企業の業績は好調が期待されるものの、目先は不透明だと判断したためです。
どんな銘柄を削減したのですか。
ノキアを削減しました。大幅なオーバーウェイトから中立に引き下げました。しかし、長期的には徐々にオーバーウェイトとする予定です。
ファンド全体では、ITセクターをベンチマークよりオーバーウェイトとしています。これが最大のオーバーウェイトです。その中において、約半分は大陸ヨーロッパにおけるオーバーウェイトであり、次いて米国です。
公益事業です。公益事業については約4%アンダーウェイトとしています。
一般事業会社セクターです。ファンド全体で約1%オーバーウェイトしています。
具体的にはどんな銘柄ですか。
風力システムのベスタス・ウィンド・システム、リサイクル機器メーカーであるトムラなどです。トムラの缶などの回収機器については、多くの政府や地方自治体などが導入を決めています。
とはいえ、同社は市場をほぼ独占しており、環境への関心が高まる中、好調な業績が継続すると期待できます。
いいえ、北米や南米でも展開しています。
銀行というより、専門金融機関ですね。
経済の方向性によります。現在は先行きが非常に不透明であり、経済動向を注視し、その中で必要が生じれば変更を検討します。例えば、日本においては、量的緩和が実施されれば、組入れを引上げることを検討するということです。
新興諸国市場やアジアはどうですか。
新興諸国市場の組入れは引き続き4%程度組入れており、日本を除くアジア太平洋についてはほとんど組入れていません。
今年2月には大幅上昇し、ファンドにも寄与しましたが、昨年組入れを開始した以降で通して見ると、ファンドには貢献していません。
1月に米連銀が2回の利下げを実施したことで、世界的に株式市場が戻しました。それにより、リスク資産への関心が戻ったということが挙げられます。新興諸国市場は十分割安に置かれていました。
解約については一巡し、今は大きな変動は見られませんので、運用に大きな影響はありません。
いろいろありがとうございました。次回の来日時にもまた取材させて頂きたいと思います。
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