インタビュー
今回は、ドイチェ・アセット・マネジメントが運用を行う「ドイチェ・ジャパン・バランス・オープン」に投資助言を行っているドイチェ信託銀行日本株式運用部部長の千原研司(ちはらけんじ)さんにお話をうかがいました。
ファンドは、平成10年2月27日に設定された国内ハイブリッド型に分類される追加型投資信託で、千原さんは設定当初から当ファンドの助言を担当しています。インタビューは平成13年4月24日に実施しました。
まずは、ファンドの特色をお聞かせください。
「ジャパン・バランス・オープン」は、株式50%と債券50%を基本ポートフォリオとして運用するファンドで、3年前に設定されました。株式と債券の組み入れ比率を半々にしている理由は、株式と債券という相反する値動きをするもの同士を組み合わせることによって、リターンあたりのリスクを減らすことができるからです。このファンドのもう一つの特徴は円建ての投資だけで、為替リスクがないことです。
とはいえ、より効果的な運用を目指すために組み入れ比率は固定せず、ある程度(10%程度)の幅をとっているので、株価の低迷が長引くようなときには債券の組み入れ比率を増やし、株価が好調なときには株式のウエイトを増やすようアドバイスしています。
では現在は?
今はほぼ50%ずつの比率です。 平成10年当時は日本の景気が非常に悪かったため株式のウエイトは40%近くまで減らすようアドバイスしていたのですが、平成11年には景気の転換の期待から一挙にプラスのサプライズが起こりました。そのため株式のウエイトを50%にまで引き上げるようにしたのです。残念ながらその後の景気は期待されていたほどには至りませんでしたが、それほどのオーバーウエイトもしていないというのが現状です。
組み入れ比率を下げていないということは、景気回復に対してある程度の期待をお持ちということなのですか?
というより株価全般が安いので、極端にウエイトを下げないようにアドバイスしています。たとえば、PER(=1株あたり利益の何倍まで株が買われているか)を見てみると、インデックスでは5年ほど前は70倍、80倍があたりまえだったのですが、今年の3月末には約30倍ほどまでに下落してきています。かなり割安になっているということです。
債券の組み入れについてお伺いします。債券は全部で11本組み入れられていますが、すべてが「10年の利付国債」になっているのはなぜですか。また、今後は地方債とか他のものを組み入れる可能性もあるのでしょうか。
国債を採用するよう助言しているのは、流動性と信用力があるからです。社債は、会社が倒産し元本が確保されないかもしれないという信用リスクがあります。しかし信用リスクのある会社の社債は利回りが良い。景気が上昇局面にあるときは会社の倒産リスクが減りますから、プラスアルファに期待が持てるわけです。
逆に景気が悪化傾向にあるときには利回りは上昇しますが、企業の倒産リスクも上昇し債券価格も下落するので、時価で売ろうとすると損をしてしまいます。
ですから、社債など他の債券のウエイトを上げるようにアドバイスするのは、状況を判断しながらということになります。
債券の持ち方としては、満期まで持つ場合と途中で売却する場合があると思いますが、当ファンドの場合はどうなっていますか。
金利状況などを見ながら助言しています。たとえば、金利上昇局面では債券相場は下がりますから、早めに売却して単価の落ち込みが少ないうちに対策を講じるようにしていますが、一方金利の下落局面では、債券は長期的に保有するようアドバイスすることになります。
つまり常に金利動向を分析しながら債券について検討しているわけで、一度購入したらそのまま満期まで持ち続けるということはまずありません。
株式のことですが、組み入れの銘柄は76本。100本以上組み入れるファンドに比べるとやや少ない感じがしますが、そのへんはいかがでしょうか。
組み入れ銘柄数を増やすということは投資を分散するということですから、リスクを減らしていると考えられます。しかし、銘柄数が極端に多いと全部の銘柄をフォローするのが難しい。
逆に、銘柄数を減らすとフォローはたやすくなりますが、そこまで集中してしまって良いのかという問題があります。結局70〜80銘柄あたりがちょうどいい。銘柄全部が目に見える範囲に収まり、かつリスクとしてもそれほど高くない。
現在の純資産総額は23億円ですが、今後さらに大きくなった場合、組み入れ銘柄数を増やすようアドバイスするのでしょうか。それとも銘柄数は76程度に抑え、同じ銘柄を買い増していくという方向でアドバイスするのでしょうか。
20億円が500億円になったとしても、基本的には現在と同じで、76銘柄に対しての割合を大きくする方向で助言していきたいと思っています。
ベンチマークのお話ですが、株式が「TOPIX」で、公社債が「NOMURA−BPI国債総合」となっていますね。現在のリターンはベンチマークをやや下回っていますが、この点はどのようにお考えですか。
直近1年は、厳しかったです。債券は好調ですが、長期投資の中ではこういった時期もあることをご了承いただきたいと思います。
当ファンドの設定来のベンチマークとの関係を見ると、とても安定的なのがわかります。TOPIXが大きく下げたときでもファンドはそこまで下げていません。しかし逆に上げたときもそこまでの上げについていっていませんね。
投資家の皆様がバランスファンドに求めているものは、安定だと思います。例えば、株価はさまざまな動き方をします。初め100円だった株が途中で150円になり、その後80円まで下がり、出口が120円でしたという場合、100円で買って150円で売った人もいれば、150円で買って80円で売った人もいるでしょう。トータルで100円の株が120円になったから、参加者全員が20%儲かったというわけではありません。
ファンドマネジャーとしては、100円でスタートしたファンドを一時的に150円に上げたり、80円に下げたりするのでなく一直線に120円に持っていきたい。投資家の方がどこで購入し、どこで解約しても同じようなリターンを得られることが望ましいのです。同じ20%儲かるのであれば、ヒヤヒヤすることなしにリターンを取っていきましょうというのが、バランスファンドへのニーズだと思います。
ここで、銘柄を絞り込んでいく過程をうかがわせてください。基準となるものは何ですか?
専門的になりますが、私たちが銘柄を見るときは「CFROI」という指標を使います。これはドイツ銀行グループが使用している基準で「Cash
Flow Return on Investment」の略です。国や企業によって異なる会計制度を同じ基準にするためのツールで、これを用いると日本株も外国株も共通に評価することができるのです。
CFROIが高いほど効率的な会社だといえますが、低くてもそれが改善傾向であれば当然株価が反応してくれると考えています。ですからCFROIが銘柄を絞り込んでいく切り口の一つになっています。
セクターの配分を見せていただくと、かなりTOPIXの配分に近くなっていますね。
マーケットウエイトの半分は入れるようにとアドバイスしているのです。逆に、いいと思っても5割増まで。つまりTOPIXで10%のセクターウエイトがあれば、どんなに悪いと思っても5%は持つ、どんなにいいと思っても15%以上は入れないということを念頭において助言しています。
銘柄入れ替えを助言するときの基準はどこにありますか?
銘柄入れ替えを検討する基準は、ファンダメンタルズが悪くなった場合、ファンダメンタルズに変化はないが株価の方が上がって説明できなくなった場合、そしてもっとよい銘柄が出てきた場合。この3点です。
ここ数年の動向はいかがですか。
日本が一時的にせよ景気回復傾向に向かったのは外需があったからこそです。日本の輸出入の40%は対アジアですが、アジアはアメリカの影響を受け易いのです。ですから今後はアメリカの影響で総需要は下がると予測しており、かなりネガティブに考えています。現在は株の割合を減らしたり、外需の影響を受けないものに変更するなど助言内容を検討中です。
千原さんの運用歴は日本株15年ということですが、バブルやバブル崩壊、その後の10年を見てこられてどんなご感想をお持ちですか。
歴史的に見ると日本株は海外の株式より、常に高いバリエーションで買われ続けてきました。これは、高度成長期あたりまでは期待成長率が高いからある意味で正しかったわけです。ところが、90年代は完全に低成長。2〜3%成長の時代に入ったのです。この間の米国の期待成長はずっと3%近辺。ということは、80年代後半からようやく日本も先進国並みになったということです。にもかかわらず、89年のバブル時はまだまだ日本は成長すると思われていたため、非常に高いバリエーションを株価に与えてしまっていたのです。この修正がこの10年で起こったのだと認識しています。
これまで日本が割高な株価を維持できた理由は、期待成長率が高かったということですが、さらに株式の持ち合いも大きな要因のひとつです。実際に流通している株が少なかったということですから。
しかし今ではバリエーションも先進国並に下がっています。今後はこうした変化を捉えながらさらに効率的な運用ができるようアドバイスをしていきたいと思っています。
どうもありがとうございました。
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