インタビュー

 

今回は「フィデリティ・グローバル・ファンド」について、フィデリティ投信株式会社投資情報部部長のロバートL.ティリーさんにお話を伺いました。

 

「フィデリティ・グローバル・ファンド」は、日本を含む世界各国の株式に投資する追加型投資信託。国際株式型一般型に分類されています。ベンチマークはMSCIワールド・インデックス(円ベース)。

 

販売会社は、日興コーディアル証券、三井住友銀行、第一生命、プルデンシャル・ファイナンシャル・アドバイザーズ証券、住友信託銀行、アイ・エヌ・ジー生命等 計34の金融機関の他、グループ会社のフィデリティ証券でも取扱っています。インタビューは4月23日に実施。

 

フィデリティ投信株式会社のホームページは http://www.fidelity.co.jp/fij/


 

ティリーさんは投資情報部部長ということですが、どういうお立場なのですか。  

ファンドの投資家や販売会社向けに、フィデリティの投資哲学とファンドに関する情報を提供しています。  

 

まず、「フィデリティ・グローバル・ファンド」の特徴を教えてください。  

このファンドは、フィデリティらしい、非常にオーソドックスなファンドのひとつと言えます。全世界の主な株式市場に分散投資するファンドで、実際の銘柄選択は地域別にわけて実施しています。アメリカ株はボストン、ヨーロッパ株はロンドン、アジア株は香港、そして日本株については東京で銘柄選択を行なっています。これは運用者が実際に投資する企業の近くにいたほうが様々な情報が頻繁に入ってきて有利であるという考えからです。それぞれの銘柄選択は、これもフィデリティのオーソドックスなやり方ですが、企業の予想収益モデルを作り、今後成長すると思われる企業を選定します。  

 

つまり、グロース型のファンドということですか。  

一般にいわれるグロース型ではなく、現在の株価と比較して、割安な成長銘柄に投資します。一言でいえば、割安な成長銘柄に投資するということですね。また地域別の担当者がそれぞれにポートフォリオを組むので、銘柄数が多いのもこのファンドの特徴です。約400銘柄に投資していて、かなり分散がきいています。  

 

運用プロセスとそれを支える体制はどうなっていますか。  

地域別資産配分の決定と地域別ポートフォリオの構築が並行して行われます。まず、地域別資産配分ですが、各地域のCIO(最高投資責任者)、ポートフォリオ・マネージャー、資産配分担当者などが参加する「アセット・アロケーション・グループ」が、どの地域が一番魅力的かといったことを検討し、配分を決定します。

 

地域別の資産配分を決めるポイントは?  

一番重要視しているのは、ミクロ的な分析です。アナリストは個別銘柄の分析をして、5段階のレーティングをつけています。1は「強い買い」で、5は「強い売り」。たとえば日本で1000銘柄のうち、1のレーティングが100あったとします。一方、アメリカでは3000銘柄の中で同じように100銘柄が1のレーティングだったとすると、日本のほうが魅力的ということになりますよね。また全世界のポートフォリオ・マネージャーに四半期ごとにアンケートを行う中で、自分が投資している市場に魅力的な銘柄が多いのか少ないのかといったことを尋ねたりもしています。こうしたミクロ的な分析によってどの地域が比較的有利かを決めていくのです。ただし、地域別の配分がベンチマークであるMSCIワールド・インデックス(日本を含む世界主要23ケ国の株式市場の動きを示す指標)からあまり大きく乖離しないようにしていますが・・。  

 

それはどうしてですか。  

このファンドの基本コンセプトは、個別銘柄の選択で付加価値をつけることなので、あまり地域的にベンチマークとの乖離があるようだと、ベンチマークに対して大きなリスクになるからです。たとえば、現在MSCIワールド・インデックスの北米のウエイト(構成比率)は58%くらいですが、ファンドの北米のウエイトもほぼ同じ割合になっています。地域配分比では、原則としてベンチマークからの乖離を±3%以内を目安にしているのです。最終的には、この範囲内でファンドマネージャーの三津田恵子が地域別の資産配分を決めていきます。  

 

地域別ポートフォリオの運用については、どのようになっていますか。  

各地域のアナリストが個別銘柄に対するファンダメンタル調査と分析、レーティングを行います。ポートフォリオ・マネージャーは、アナリストの評価を参考にしながら、投資銘柄を選定します。勿論、マネージャー自らが行った企業の調査・分析結果、組入れ時の流動性なども勘案して、地域別ポートフォリオを構築していきます。  

 

レーティングのつけ方の基準はどうなっているのでしょうか。  

銘柄によって基準は異なります。基本的に銘柄が値上がりするかどうか、値動きの予想ですから。  

 

何社くらい調べていて、どれくらいのパーセントで1〜5がつくとかというのは?  

時期によりますよね。相対的なレーティングではありませんから。全く1が付かないときもあります。レーティングは単純にこの銘柄は値上がりするのか、値下がりするのかだけなのです。

 

でも5段階評価しているわけですし、全世界で多くのアナリストが評価するわけですから、統一の基準が必要ですよね。  

それは違います。投資というのは科学というよりは芸術ですから。  

 

芸術だとすると、アナリストの方の感性などによって違ってくるということですか。  

そうです。アナリストによっても違うし、アナリストがいいと思っても、ポートフォリオ・マネージャーが買わないこともある。またその逆もあります。 

 

ちょっと驚きました。フィデリティという会社はシステマティックで、すべてマニュアル的に対応しているのかというイメージがあったので・・。ということは、誰がアナリストか、誰がマネージャーかによって、ずいぶん結果が違ってくるわけですね。  

勿論違いますね。どうしてそういうことをやっているかというとですね。たとえば他の運用会社で、よくBUYリストを作って、こういう銘柄しか買わないということをやっています。そういうことをしていると、官僚的になって、投資委員会が集まるまでは新しい銘柄を買えないということになります。でも金融市場は常に動いていますから、機会損失になるわけです。ですから私どもでは、十分経験のある者に任せるのがよいと考えています。個人に任せたうえで、その人に責任を持ってもらうということです。結果が悪ければ、その人が責任を負うということになるわけです。十分な経験がなければポートフォリオ・マネージャーに任命されませんから、投資家のためになっていると考えています。  

 

各地域のポートフォリオ・マネージャーはどのような方ですか。  

北米は法人資産を担当するブルース・ダークス、ヨーロッパはFidelity Managed International Fundなどを担当するジェームズ・ラザーフォード 、日本を除くアジアはFidelity ASEAN Fundなどを運用するジョセフ・ツィ 、そして日本は『フィデリティ・日本優良株・ファンド』など複数のファンドを運用しているポートフォリオ・マネージャーのロバート・ローランド。それぞれのマネージャーは、各地域で別のファンドも担当していますので、売買などもまとめて行いますから、取引コストが割高になるということもありません。  

 

アナリストは全世界でどれくらいいて、どれくらいの企業が調査対象になっているのですか。  

株式のアナリストは全世界で224人(2001年12月末現在)です。

 

調査企業を選定する場合、どういったところを見るのですか。  

まずは流動性ですね。たとえば、日本の場合は450銘柄以上を調査していますが、これだけで時価総額ベースで約80%の銘柄を占めています。時価総額と流動性をみて、どういう銘柄を調査するかを決め、その上で、これは面白いから具体的に調査しようとか、投資妙味が薄いのでしばらくそのままにしよう、とか決めていきます。  

 

今後成長するだろうという会社を見極める上で、定量面や定性面で重視しているポイントは何ですか。またボトムアップアプローチは、フィデリティの得意とするところだと理解していますが、今では他の運用会社でも多くのファンドでボトムアップアプローチを基本スタイルにしているようです。他社と比べて、どこに御社の強みがあるのでしょうか。  

フィデリティでは、非常に多角的な分析をやっているのが強みです。 勿論、各企業の経営者やIRの方に会ったり、工場や研究所を訪問したりするなど、直接その企業に聞くこともしますが、その仕入先、販売先や、競合会社などから情報をとることもしています。直接聞いても、率直に話してくれないこともありますからね。たとえば世界のパソコンを作っている会社は、生産量でいうと台湾に多いのです。パソコンには半導体をたくさん使っている。ですから半導体の先行きを知りたいときは、直接、半導体を作っている会社に聞くよりも、台湾のパソコンメーカーに聞いたほうが、今後を見る上で有益な情報を得られるわけです。また需給関係を見れば、半導体の価格を知ることもできて、これも非常に重要な情報になります。  

 

そうした多角的な分析を積み上げた結果が、他の運用会社との違いを産むということですか。  

はい。それともうひとつはフィデリティ独自のグローバルな調査体制を活用できる点でしょう。私どものように全世界で株式の分析をやっている運用会社はまだ少ないと思います。いい例としては、日本の株式市場の中でホンダはかなり大きな銘柄ですが、実際にはホンダはその利益の8割をアメリカで稼いでいるのです。ですから、アメリカの情報がたくさんないとホンダの投資判断はできないということですね。私どもでは、東京とボストンの自動車のアナリストが話し合ったり、ボストンで出すリポートを東京でチェックしたりといった、全世界の情報を交換しながら運用するというのがひとつの強みだと思います。  

 

では現在のファンドの状況を見ていきたいのですが、現状では、どこの地域、あるいはどんな分野が有望だと考えているのでしょうか。  

現在オーバーウエイトしているのはアジアで、日本も少しだけオーバーウエイトとしています。成長性のわりにまだ株価が安いということですね。

アジアではどんな国のものが多いのですか。  

香港ですね。といっても中国本土も入っていますが。ただ中国で上場している銘柄ではなく、香港で上場していて中国で営業しているところが多いですね。いずれにしてもアジアは全体の3%ですから、ファンドのパフォーマンスにはあまり大きな影響を与えません。

 

そうなると、やはりアメリカの動向がポイントですね。純資産全体の50%以上を占めるアメリカ株では、どういう銘柄が上位に組み込まれているのですか。  

現在は 1位と2位、そして5位に、テクノロジー製品・機器メーカーのテラダイン、ラム・リサーチ・コーポレーション、ビシェイ・インターテクノロジーが入っています。3位と4位にはエネルギー関係でネイバーズ・インダストリーズ、ノーブル・ドリリング、6位と7位に入っているロウズ・カンパニーズとベスト・バイ・カンパニーは日曜大工の専門店を経営している小売業です。8位〜10位はバイオテクノロジー銘柄ですね。こうやって見ると、あんまりご存知の銘柄は入っていないでしょう?特にアメリカでは、大型の銘柄よりも、中型の成長銘柄が多いのです。  

 

今、イスラエル紛争の影響で原油価格が上昇し、アメリカの株式にも影響を与えていますが・・  

確かに短期的には政治的な影響やセンチメントの影響を受けますが、中長期的には、株価は利益成長で決まると考えています。また、最近の原油価格の高騰は、エネルギー関連銘柄にとってはいい状況だから、組入れ上位に入っているエネルギーサービスの企業については利益が伸びています。勿論、状況が変わってきたら、これらに投資していいのかを考えることになります。  

 

そうしたポートフォリオの見直しのきっかけになるのは、どのようなことですか。  

基本的に2点あります。一つは利益見通しが違ってきた時です。これは新しいニュースが出たり、実際に企業訪問をして経営者に対する意見が変わってきたような場合ですね。もう一つは、株価が動いたために割安あるいは割高になった時ですね。株価水準を見る上では、全体の市場との比較ではなくて、同じ業種との比較や、5年前と10年前はどうなっていたかという同じ銘柄の歴史的なバリュエーションとの比較を行っています。同じ国の銘柄だけでなくて、たとえばNTTドコモを見る場合は、イギリスのボーダーフォンはどうなっているかとか、海外の競合他社との比較も行います。  

 

過去のパフォーマンスについても伺いたいのですが、99年末頃はベンチマークを大きく上回った時期がありますが、最近は不調が続いていますが、これはどう分析されていますか。  

99年頃ベンチマークを大きく上回った時期は、成長銘柄が非常に強い時期でした。その後、2000〜2001年は、逆に割安銘柄が強い状況が続いています。もう少し細かくみていくと直近3ヶ月はベンチマークとほぼ同じくらいの実績、6ヶ月でみると、かなり実績は良いのです。この時期、昨年の9月から12月についてはテロ事件の後の反発でグロース銘柄が強かった。このファンドは成長銘柄に傾いたファンドですから、こうした割安銘柄が強い状況下ではベンチマークに対して勝ちにくいスタイルなのです。グロース・バリューの相対実績に左右される傾向があるわけです。  

 

では個人投資家のためにいくつか事例を挙げていただくとすると、このファンドにとっての好環境、つまり相対的に成長銘柄が強いというのは、たとえばどういう環境なのでしょうか。  

一概には言えないですね。ただ一般的に言うと、分散投資をおすすめするということでしょうか。1年先に、日本株が強いのかアメリカ株が強いのかはわからない。成長銘柄がいいのか割安銘柄がいいのかも同じ。どちらが強くなっているのかは、誰にもわからないですよね。わからないのであれば、両方に投資したほうがいいのではないでしょうか。このファンドは性格上、比較的成長銘柄に投資するものですから、自分の投資をリスク分散しようと持ったら、割安銘柄に投資するものを組み合せるのがいいでしょう。

 

割安銘柄に投資するファンドを持つということですね。  

それと金融市場は急に動くことが多い。新しいニュースが出てきて、それに影響を受けて買うか売るかを決めるので、投資家としてはいつそういうニュースが出るかわからないわけです。ニュースが出るのを何もしないで待っていたら、機会損失になってしまいます。ですから常に、継続的に投資しているのがいいと思います。  

 

多くの会社が週報を出していますが、フィデリティのリポートはあまり頻繁ではないですよね。中には開示が悪いと言う人もいますが、情報開示について、御社の姿勢をお聞かせください。  

ファクトシートは1ヶ月ごとに出しています。ただし上位組入れ銘柄については四半期ごとにしか出していません。勿論開示は重要なことだと考えています。但し受益者のためにどれだけの情報が必要なのかについては意見が分かれると思います。私たちはアメリカでかなり大きく、また注目されている運用会社なので、あまり頻繁に上位銘柄を開示すると、私たちの真似をする人が出たりします。そうすると、ファンドが買おうとしている株の値が動いてしまって、結果的に受益者のためにならないので、このようなスタイルをとっています。  

 

今日はどうもありがとうございました。

 


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