インタビュー
今回は「東京三菱/メロン グローバルボンド」(6月6日、「東京三菱/ドレイファス グローバルボンド」より名称変更。運用内容に変更なし)について、98年10月に設定後、2001年1月から運用を担当している東京三菱投信投資顧問の国際運用部部長、後藤田朋伸(ごとうだとものぶ)さんにお話を伺いました。
「メロン グローバルボンド」は、(社)投資信託協会の定めるバランス型に分類される追加型投資信託。販売会社は、東京三菱銀行、東京三菱パーソナル証券(9月より三菱証券)、東京三菱TDウォーターハウス証券、日興コーディアル証券など。インタビューは5月23日に実施。
早速ですが、このファンドの特徴を教えてください。
オーソドックスな債券ファンドで、日本を除く世界主要国の国債や短期金融商品を中心に分散投資し、国内外の金利差と為替差益によって中長期的な成長を目指すものです。
今、欧米先進国の国債などに投資するファンドは非常に人気がありますが、このファンドも先進国の高格付け債に投資するものなのですね。
そうです。今日本は格付けのダウングレードの話が出ていますが、投資しているのはいずれも日本と同じかそれ以上の国ばかりです。しかも国債を買っていますので、信用リスク等はほとんど発生しないと言っていいでしょう。
他の外債ファンドとどこが違うのですか?
このファンドの一番の特徴は、「助言ファンド」というのでしょうか。ロンドンにあるメロン銀行グループの資産運用会社「パレート パートナーズ」から、債券と為替の運用について助言を受け、それに基づいて運用を行っています。
助言というのはどういう形で受けるのですか?
パレート パートナーズには、「KBS(knowledge based system)」という人工知能システムがありまして、大量のデータとこれまでの各運用者の経験則などが全部入れこんであるのです。これに日々のマクロ・ミクロの経済データを入れますと、コンピュータがいろいろなケースを想定して分析を行い、最適な国や通貨の組合せを出してきます。いわゆるクオンツ運用ですね。債券については、どの銘柄をどれくらい買えばいいかというポートフォリオの案が提示されます。一方、通貨についてはKBSによって導き出された為替アロケーションに、リスクを低減させるための「CRM(為替リスク管理)」を組み合わせて最終的な為替のポジションが決められます。我々はこの結果に基づいて、忠実に売買を実行していくわけです。
KBSが運用の鍵になるわけですね。基本的な考え方はどのようになっていますか。
外債ファンドの場合、リターンの源泉は主に3つあります。まず、どこの国のマーケットが有利かというカントリーアロケーション。無論、金利が高いほうが良いわけですが、インフレ率が高ければ意味がないので、将来的に実質金利の高いと判断される国に投資しています。次に、どの投資年限が有利かというデュレーション戦略。一般的に投資の年限が長いほうが利回りは高くなりますが、そうなると利回りと価格の逆相関が起きる。つまり利回りが高い分、値動きも大きくなってリスクが高くなるので、そのあたりを考えた分析が必要になります。3つめは、通貨アロケーション。通貨としてもつ場合どれが魅力的かは、債券のカントリーアロケーションとは独立して考えています。
KBSではこれらの考え方をどのように実現していくのですか。
債券や通貨の予測をする場合、各市場に影響度の高い要因=ファクターというものがあります。全部で20くらいあるのですが、たとえば債券価格分析のファクターとしては、実質金利や財政・経常収支、インフレ予測、投資家心理などがあげられます。こうした中心となるファクターをもとにして、調整後の将来的な金利はどうなるかを予想するのです。そしてこの予想をベースにして考えた場合、最適なカントリーアロケーションやデュレーション、通貨の配分がどうなるかを機械の中で判断する仕組みになっています。為替についても同様で、インフレ率や経常収支、金利差といった関連する様々な要因に基づいて機械の中で予想を行い、アロケーションを出してくるという形になります。分析をかけるときの判断には、ルール化した過去の経験則も活かれています。
過去の経験則というのは、具体的にはどういうものですか?
パレート パートナーズは1991年に設立された会社ですが、以前、英国中央銀行やFRB(米国連銀)に勤務経験のあるクリスティン ダンタン博士が創設以来つい最近まで投資のチーフオフィサーになっていました。(現在は副社長)。この人が職歴の中で取得した経験則を中心に3000くらいのルールが体系化して人工知能の中に入れてあるのです。
クオンツって、もっと機械的なものかと思っていたのですが、おおもとになるのは「個人」なのですか。
データそのものは各種経済指標などを入れていきますし、経済理論も入っていますが、データを分析し判断するにあたって、市場の動向に応じた経験則の部分についてはエキスパートシステムを使っているということです。勿論、ダンタン博士以外の人の経験則も取り入れていますし、この経験則は常にアップデートされています。人に任せておくと再現性に問題がありますが、個人的なノウハウをパターン化することによって、たとえその人がいなくなっても、いわば職人芸を伝承できるようにしているわけですね。この債券の経験則は何かというところが、アクティブ運用の付加価値の源泉となるわけです。
カリスマファンドマネージャーがいなくなって運用が不安定になるといった懸念がないわけですね(笑)。ところで、金利については変動する期間が長めなので予測もできると思うのですが、為替は動きが大きいですよね。これも予測ができるのですか。
CRMでは、長期と短期の2つの期間で見ています。ベースになっているのは、長期のモデルで、2年くらいのタイムスパンを見て、今どうするかというヘッジ比率をコントロールします。ただ、ご指摘のように為替は価格変動が大きいですから、約3ヶ月単位の短期モデルも同時に走らせて、あまりに大きく動いている場合は、こちらのほうから抑制をかけるようになっています。
為替のヘッジはどのように行われているのですか。
パレート社の通貨に対する考え方のベースは、為替は非常に変動性が大きくランダムな動きをするので、予測は基本的に困難という立場です。だから為替に振り回されてバタバタすることがないように、ヘッジを基本方針としてリスクをおさえましょうと。それで為替差損は年間でマイナス3%程度に抑えるように決められています。ただ為替の場合面白いのは、ある程度どちらかの方向性が見えると、そちらの方向にマーケットが走る特性があることです。ですから、為替の方向性が明確でないときはフルヘッジですが、方向性がはっきりしている、一時的に発生した相場の歪みを見つけたと機械が判断した時だけは、ポジションを少し操作することでメリットを享受することができるという仕組みになっています。これまでもヘッジ比率を最大60%くらいまで下げたことがあります。非常に短期間で引上げていますけれどね。通貨は1週間に1〜2回くらいの割合で細かい調整をしています。
現在の組入れ状況はどのようになっていますか。
今は全部で13カ国の国債に投資しています。一番多いのがアメリカで約27%、次いでフランスとカナダで、それぞれ約17%と約15%、以下、イギリス、イタリア、ベルギーと続きます。
アメリカは、今、微妙ですよね。現状をどう見ているのでしょうか。
去年9月のテロ以来、アメリカは政策金利を意図的に下げてきて、今の金利は40年来の低水準です。危機だったので金利を下げたわけですが、それが7ヶ月以上も続いている。この影響で将来的にインフレ懸念が出やすい状況です。つまりインフレ調整後の実質金利はあまり高くないということで、アメリカには魅力を感じられないということになりますね。インデックス(ソロモン・スミスバーニー世界国債インデックス)に比べても、アメリカはずいぶんアンダーウエイトになっています。債券アロケーションの見直しは月にl〜2回行っているのですが、今週に入ってさらにウエイトを減らしたりもしています。逆にカナダ、フランス、イギリスはオーバーウエイトですね。カナダは政策金利が上がり始めていますが、経済のファンダメンタルズも良好ですし、物価も落ち着いているので、相対的に魅力的ではないかということです。
通貨についてはどのような状況ですか。
ヘッジ比率は87%。ユーロで10%くらいポジションを持っていますが、他の通貨はほとんどヘッジしている状況です。
ドルについてもネガティブな見方ですね。
これは経常赤字が名目GDPの約4%の水準に達していて、海外からお金をひっぱってこないと国の経済が回らないような状況になっているためです。そのような状況は長くは続かないと見ています。それに対してユーロのほうが相対的に良いと考えているわけです。
ただ、過去の実績を見ると、ちょっと苦戦しているようですね。
このファンドは98年9月に設定されたのですが、基準価額は99年まで下がって、その後は堅調に上がっているという感じです。当初大きく下がったのは、各国の金利が上昇期にあたっていたことと、円高が急激に進んだ時期だったことが原因です。でも、2000年と2001年で、ずいぶん取り返しているんですよ。
金利の上昇が響くのは仕方ないとしても、通貨はヘッジしているのに円高が響くというのは納得がいかないのですけど・・。
為替による損失は年間3%以内におさまっているのですが、金利の上昇(価格の下落)が著しかったということですね。
金利の下落に対してはアロケーションでなんとかならないのでしょうか。グローバル化が進んでいる今、幅広く分散したとしても、対象が先進国だけとなると効果が出にくいということがあるのでしょうか。
そうですね。株式もそうですが、各国の相関性は以前より高まっていると言えますね。
となると、経験則の基になっているダンタン博士が現役だった時代に比べ、市場環境もずいぶん変化しているのではないかと思います。こうした変化に対するフォローは行われているのでしょうか。
勿論やっています。パレート社の中にリサーチチームがありまして、このテクノロジーの中に入っている経験則に対して効果はどうだったか、それが本当に今正しいのかといったことを常に検証して、システムの改良を行っています。
反省もしているのですね。そうすると、設定当初成績が悪かった時も、反省があったのでしょうか。
この時は、私どもも疑問を伝えました。いったいどういうことなのか、このシステムは大丈夫かといったことを。我々の後ろでお客様がそう感じているわけですからね。
それによって具体的に何か変わったのですか。
為替ポジションをとるタイミングが遅いのではないかということで、為替の感応度を変えるとか、分析のファクター自体がこれでいいのだろうかといったことについて見直しが行われたはずです。その後の成績が回復しているのも、こうしたことが反映されているからだと思います。
管理や売買実務の他にも、そうやって、フィードバックをして先方に改善を促すのもファンドマネージャーである後藤田さんのお仕事にうちなのですね。それにしても、そもそも何故、東京三菱投信投資顧問はこのシステムを選んだのでしょうか。
今のご質問は、何故メロングループかということになると思います。このファンドは99年の銀行窓販解禁に向けて設定されたのですが、どんなファンドを作るかという時には、運用と同時に販売のことも視野に入れて考えます。私たちのお客様の多くは、銀行で預金を持っている方たちです。このお客様にアプローチにするにあたって、モデルとなるところはないかと探したわけです。ミューチャルファンドの分野で先行するアメリカでは、実は銀行系でない運用会社が多く成功していたのですが、そんな中でメロン銀行は銀行系の運用会社としては一番大きく、また個人に対する資産運用に特化して業務を行っていました。こうしたところの運用手法や販売ノウハウは我々としても吸収できるのではないかと考えたわけです。勿論、パフォーマンスについての他社比較も行いました。またパレート社は外債の運用で鍵になる為替リスク管理(CRM)において契約資産総額が317億ドル(2002年4月末)と世界最大であるということも大きな選択理由です。
ところで、もう一本、後藤田さんが直接運用していらっしゃる外債ファンドがありますね。
「東京三菱 外国債券オープン」というもので、投資対象はやはり日本を除く世界の先進国の債券で、現在117カ国の国債で構成されています。ソロモン・スミスバーニー世界国債インデックスに連動することを目指すインデックスファンドです。こちらは為替ヘッジを一切していないので、円安局面ではそのままメリットを享受できます。
インデックスファンドは連動率がポイントだと思いますが、どのようなところにご苦労がありますか。
時差があるので、同じ債券を同じように買ったとしても、組入れ時価が違ってしまう場合があるということですね。それと、全部買おうすると490銘柄も買わなければなりませんが、それはできないので、私の場合は150銘柄くらいで運用しています。約3分の1の銘柄でうまくフィッティングさせていかなければならず、これがノウハウになるわけです。
3分の1の銘柄数で、どのようにフィッティングさせるのですか。
要は発行金額の大きい債券を中心に、上位銘柄から入れていくのです。下位銘柄はある程度均等に入れるという感じでしょうか。インデックスの構成国は18カ国ですが、現在の組入れ11カ国150銘柄で、時価ベースで約9割方をカバーできるのですよ。
後藤田さんは、普段どういうことに気をつけて運用されているのですか。
インデックスファンドの場合、敗者のゲームというか、変なミスをしないということが一番大切です。変なところで債券を買うとか、本当は買わなければならないものを買っていないとか、金額を間違えるとか、そういう細かいミスをしないということですね。長期的に人のお金をお預かりしている仕事ですから、奇を衒わず、平常心を保つようにすることを心がけています。
どうもありがとうございました。
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