インタビュー
北出高一郎氏(シティバンクプライベートバンク日本地域本部本部長)
「これからの個人投資家の資産運用・保全の基本的考え方(後半)」(掲載1月16日)
投資信託以外のものでは、外貨預金や外債投資が人気ですが、こういうものを始めることを考えた場合には何に注意したらよいでしょうか。
外貨預金の場合は、基本的には預金保険の対象外ですから、どの銀行に預けるかということがとても重要になります。ですから、銀行の財務内容がわからない場合は格付けを見ることです。格付けの高いところに預ければ、それだけ安全性は高いわけです。保険機構がいくらついていても銀行が潰れてしまえばどうにもなりません。保険というのは万が一に備えたものでしかないです。自分がつきあっている銀行がどういう銀行かということを調べる必要はあります。
国内の銀行、外資系銀行の両方について格付けは調べられるわけですね。
調べられます。それは、ムーディーズやS&Pという格付け会社は、日本の銀行でも外国の銀行でも同じ尺度で格付けを行ないますから、比較が可能です。
金利ということで見ると、外貨預金の方が、国内預金以上に銀行間で差がありますが、これはどうしてでしょうか?
日本から見ると、ドルでもポンドでも外国のお金です。当然日本の国内では流通していません。ですから、銀行は預金として預かっても、それをどうやって使うかというのにはいろんな問題がでてくる。円で預かったものなら、日本国内で様々な使い方が可能です。外貨の場合は、お客様から預かっても、それをどこか外国で使わなければいけない。特別の使い方をみつけなければいけない。ですから、それができるノウハウの程度により差がでます。要するに、小口のお金を沢山集めて大きな資金にして、銀行はどこか他へ預けるわけです。小口のお金を沢山集めるというのは、時間も手間もかかります。そして、そのお金を金融機関同士の取引のできる単位までに大きく集めなければならない。その為に、相当のコストがかかるので、そういう場合は外貨預金の金利が安くなってしまいます。あるいは、小口のお金とはいえ、たくさん集める能力を持っていると、集める時間もそれほどかからない、つまりコストがそれほどかからないということで、金利がやや高くなるなどいろんな事情があると思います。
そうすると、先ほどお話していただいた、円金利の預金の場合の銀行による金利の差の出る理由とはかなり違った理由で差がでるわけですね。
そうです。
円金利の預金の場合は、他の銀行より高い金利を提示している場合は疑問に思う必要があるということでしたが、外貨預金の場合、他の銀行より高い金利であっても、銀行の財務体質の問題点が高い金利として現われるのではないということですね。
外貨預金でも極端に違ったら、おかしいと思わなければいけません。外貨預金を取り扱っているところはそれほど多くはありませんから、外貨預金をやるのでしたら、格付けくらいはチェックした方がいいですね。格付けがよければ預けてよいのではないでしょうか。
ただ、外貨預金の場合は当然為替リスクがあります。個人のレベルでは為替の見通しなど立てられませんが…
為替という問題は難しい問題です。為替レートがいくらになるというのを予測するのは、プロでも難しい。ですから外貨預金をやる場合には、為替リスクはあるものだということを前提に考えることです。恐らく今外貨預金が人気なのは、金利の差が大きいからだと思います。ですから、ある一定期間について見れば金利は多くとれるけれど、為替リスクがあるということを理解したうえで始めるべきです。
為替リスクを知っていて、それでも外貨預金をやるというのはどういう方に適しているのでしょうか。単純に海外で使う用途がある場合というのはわかりますが…
それはもちろんありますね。例えば、海外に家族が住んでいて定期的に送金する人、ドルでの使い道がはっきりしている人が最も適しています。そういうものが全くない人の場合、生活の全てを外貨預金にかけるというのはよくない。これは株でも投信でも同じことが言えます。しかし、これだけ円安になっている場合には、外貨預金をやっていないと結果的に損をしたような気持ちになってしまいますから、そういう気持ちがある人は多少は外貨預金をしてみるというのもよいでしょう。
つまり、ドル資金に対する目的がある人、余裕資金のある人には適しているということですね。
ええ。分散投資として考えるべきでしょう。ですから、例えば100のお金を持っていて70%を円資産に、30%を外貨預金に入れてあった人がいたとしましょう。円高に振れてしまった時、自分の資産のうち30%を外貨預金に入れたのは失敗だったと考える人なのか、あるいはむしろ70%は円で持っていたのだから良かったではないかと考える人なのかの違いです。両方よい話はありませんから。分散投資をしているからそういう事が言えるわけです。一ヶ月後にある金額が必要なのに賭けに出るというような考え方で外貨預金をするのは間違っています。自分のライフプランに合わせて、或る程度余裕のある資金を分散して運用しようという考えの中で、外貨預金を行なえるならば、外貨預金はとてもよい商品になりうるのです。
分散投資というのは日本人にはあまりなかった考え方なのですが、外国の金融商品も含めて、今後は分散投資を考えるということが必要になってくるし、可能性がでてくるのですね。
ええ。
外貨預金の場合、通貨がいろいろあるのですが、通貨の選び方はどう考えればよいですか?
これは個人的な意見ですが、私は、通貨の違いによる利回りの違いに飛びつくよりは、自分が親しみを持っている通貨に限定すべきだと思います。
親しみを持った通貨?
つまり、もし、自分はアメリカが好きだし、ある程度のことはわかっている、旅行にも何度か行っている、ニュースで情報を得ることもできるという通貨で考えるということです。つまり、親しみがある通貨というのは、判断材料として自分の入手可能な情報がある程度ある通貨ということです。例えば、ものすごく金利が高い外貨預金があったとして、その国のことをまったく知らない、ニュースでもほとんど情報を得ることがない、という場合にはどうかと思います。株でも自分の全く知らない会社の株を買うかというと、そういうことはしないでしょう。
そうですね。つまり、どんな金融関連商品でも同じですね。金融機関でも、その先にある市場、個別銘柄、ファンド、預金でも自分の知らない、理解できないものとはつきあわない、投資しないということですね。
上手い話は絶対ないわけですから、自分が何に投資しているのかということはきちんとわかっていなければいけないのです。金利で選ぶというよりも、外貨預金の場合には、自分が関心がある、親しみがある、というのはそれだけ自分に情報があるということですから、そういう通貨を選ぶのがよいのではと私は思います。
最近の金融商品の中には、為替ヘッジ付き、為替ヘッジなし、の両方があるのですが、どのような基準で選択したらよいでしょうか。
それは、自分の投資・運用の姿勢の中で、ハイリスク・ハイリターンを追求するのか、リスクは全くとりたくないのか、ということが基準になります。ハイリスク・ハイリターンという姿勢ならば、為替ヘッジなしを選べばよいし、リスクを限定して、その分利回りが低くなってもよいというなら為替ヘッジ付きの商品を選べばよいのです。全ては、自分の投資の姿勢次第なのです。チャンスを100%活かしたければヘッジなしとなるわけです。
為替ヘッジのあるものには、それだけコストが掛かっているということですか?
それが結局利回りの差に現われるのです。
為替ヘッジでも、原則としてヘッジします、フルヘッジします、ヘッジしません、というものがありますが、原則としてヘッジするというのはどういうことだと考えればよいですか?こういう点も運用会社に問い合わせるべきですか?
ケースバイケースでヘッジするというのは、為替の場合、相手は市場なのですから、例えば、何時にヘッジするかによっても違いが生じますので、そこまでテクニカルな問題について問い合わせて議論してもあまり意味はないかもしれない。フルヘッジか、ヘッジをしないのかという大きな分け方でよいのではないでしょうか。
その他に、外物投資の際に注意すべき点はありますか?
基本的には自己責任です。ただ、外国に投資する商品の場合は、個人レベルでは細かく市場や個別企業を調べられませんから、少なくとも販売する会社、それが銀行であれ、証券会社であれ、そこときちっと話をしてから決定することです。自分がどういうものに興味があるかということを伝えれば、いくつかの商品を紹介されるでしょうから、その時に自分が投資しようとしているものに対していろんな質問をすることです。そして、それに応えられるようなところから購入することです。例えば、知らないお店に入って、ワインリストを見てよくわからない場合には、自分の予算はこれくらいで、こういうものが好きだということをソムリエに伝えて選んでもらうでしょう。それとある意味では似ていると思います。そういうことをせずにワインを注文して飲んでみたらまずかったとしても、飲んでしまった後ではどうにもならないのですから。金融機関に要望を言って、選んでもらう、そしてそういう対応ができる金融機関とつきあうことです。今は、日本中が投信だとか、外国投信だとかと言って大騒ぎしていますが、はたして、日本の金融機関の全てが外国投信を売れるわけがないでしょう。それほどの情報を全てが持っているわけではないと思います。とりあえず投信を売っているというのは、投資家を馬鹿にした話です。そういう会社があればいづれは淘汰されるでしょう。外国ものでも、自信を持って売れる会社と、失敗して消えてゆく会社というのは出てくるでしょう。最初の段階では誰もが投信の販売に参入してくるでしょうが、その全てにそれに必要な能力があるとは思えないですね。安心して買える金融機関を選び、そこで話をしながら、投信を選ぶことが必要です。投信は元本保証されていない、これをしっかり頭に入れておくことです。
今年は外為法の改正が随分ニュースで取り上げられました。海外に口座が開けるようになるなど、規制緩和上では、いろんな可能性が出てくるのではと期待はされています。少しずつ、まず機関投資家向け、そして事業法人向けのサービス等は発表されるのですが、個人レベルでの商品・サービスが見えてきません。何か変わるのでしょうか?
あまり小口であれば、海外に口座を開いてもあまり意味はないと思います。しかし、実際には海外に口座を持てるようにはなってきます。
それは、日本で誰かが個人の海外口座開設の対応をしてくれるということですか?
対応できる金融機関があればということです。例えば、我々の銀行でしたらシティバンクのニューヨークや香港に口座を開くということは可能です。
そういう銀行が他にも出てくる可能性があるのですか?
大手の銀行で、ニューヨークなど海外に支店を持っているところでは可能になってくるでしょう。
でも、誰にでもそれが適しているとは限らないということですか?
目的がなくて海外に預金口座を開いても、そこにお金が眠ってしまうだけですから。もし、外貨預金というのが目的であるなら、日本においても外貨預金はできるので、海外に口座を開く必要はないわけです。それでしたら、今でも外貨預金はできるわけですから。
そうですね。では、コスト的にはどうでしょうか?国内で外貨預金をするのと、海外で預金口座を開くのとでは、コスト的にも利回り的にもあまり差はないわけですか?
それはあまり変わらないですね。そして、気を付けなければいけないのは、口座を開いた国の税制が様々ですので、どういう税金を払わなければいけないというのも違ってきます。口座を開けるからと言って、開けばよいというのではありません。
開設できても、そのメリット、デメリット、法律、税金、目的等、総合的に考慮しなければいけないわけですね。
そうですね。ですから、よく外国に行くような人ならば、そこに口座を開いて預金をして、そこで投信などを購入して、旅行した時にはその口座からお金を引き出す、あるいは将来海外に家を買って、そこに住みたいとか、老後は海外に住みたいというのであれば、そのための一つの基地としておいておくことはあるでしょう。
ただ、目的がなければ意味はないということですね。
そうです。外貨預金に限らず、いろんな銀行に口座を持つというのは非常に無駄です。それは分散投資とは言いません。
それでは、ただの無駄使いになってしまいますね。
あちこちに預金を持っていても仕方ない。それよりも、預金というのでなら集中させた方がよい。相手が潰れるのではリスクは高いですが、しっかりした銀行を選んでいれば、まとめて運用した方が利回りもよくなるし、無駄なお金も減ってきます。
海外に口座を開く以外で、この金融ビッグバンによって我々個人に関係する変化があるとしたらどんなものですか?
個人のお客さんに対して初めて金融機関からすると競争の原理が導入されます。金融機関側にすれば潰れるところがでるリスクなど、いろんな問題もありますが、結果的に個人に対しての様々な金融サービスのアイデアが出てくるでしょう。そうしないと金融機関は生き残れない。ですから、そういう意味では個人は今までより金融機関から大事にされる時代になるでしょう。
これまでは、銀行というのは、まず機関投資家、事業法人、そして富裕層という順で大切にしてきたというイメージがあります。普通の会社員・OLが大切にされる時代になるのですか?
そうです。そして、そうしない金融機関は残れないでしょう。ただ、大事にするというのは、ティッシュペーパーをお客さんに配るというのではないのです。金融サービスの質を高めるということが顧客を大事にするということなのです。
情報ですか?
ええ、情報であったり、金融商品の説明をきちっとするということであったり、お客様の運用の要望にどれだけ応えられるかということも含まれます。個人に対して、お金を借りる時でも、運用する時でもその両方の段階でのあらゆるサービスを提供できるかということです。笑顔で応えるとかいうことでは決してないのです。
サービスの内容ですね。
これまで個人はどこへ行っても同じだと思って気にしなかったでしょうけど、これからは違いがもっと出て来ます。ですから、選ばれる側の金融機関もすごく大変ですが、個人の方から見ればこれはとてもよい機会です。自分のお金を自分で運用するチャンスが来たのですから、或る程度勉強しながら、銀行や証券会社を選別してゆくこべきです。これは保険についても同じです。
他に個人にアドバイスはありませんでしょうか?
個人としての自己責任には限界があるかもしれませんが、金額が大きくても、小さくても、最後は自分しか自分のお金は守れないという気持ちをしっかり持つことです。その意識が大切です。
【本を読もう!】

