インタビュー
今回は「マネックス・日本成長株ファンド(ザ・ファンド@マネックス)」について、2002年3月から運用を担当している第一勧業アセットマネジメント株式会社のファンドマネージャー、新井 剛(あらい ごう)さんにお話を伺いました。
「マネックス・日本成長株ファンド」は、国内株式型(一般型)に分類される追加型株式投資信託。マネックス証券の専用ファンドとして2000年7月に設定されました。インタビューは8月21日に実施。
第一勧業アセットマネジメントのホームページ http://www.dka.co.jp/
まず、ファンドの特徴からご紹介ください。
「ザ・ファンド@マネックス」の「@」からもわかるように、インターネットに関連した企業の株式を中心に投資するファンドです。基本的には、国内の上場および店頭登録している企業のうち、インターネットのインフラを構築して伸びる企業と、インターネットをビジネスのインフラとして活用することで伸びる企業に投資するというコンセプトです。また、日本初のインターネット証券専用ファンドということで作られた経緯があります。
ネット証券だけで販売することによってのメリット、デメリットはありますか?
様々なメリット・デメリットがあると思います。そのうち、ファンドマネージャーとして認識できることは、投資家層が個人で、小口に分散されている状況なので、たとえば設定・解約などで大口の資金が一気に移動することがないため、非常に安定したファンドになっています。 設定当初から受益者とのインタラクティブな関係を重視するということをあげていることも特徴です。たとえば年1回、受益者の方を直接お呼びして運用報告をしていますが、こうしたことは、公募型のファンドでは通常行われません。また適宜オンラインで質問を受け付けていて、これにはマーケティングサイドの他、直接ファンドマネージャーが答えるケースもあります。一個人の方が質問してきた内容を、全受益者にフィードバックする形をとっているので、情報の公平性も高められると思います。デメリットというか、ファンドマネージャーにとっては、それだけ負担は大きくなりますけどね(笑)。
販売の面でいえば、このファンドはノーロードファンドであり、インターネットによるローコストオペレーションのメリットを受益者に還元できたことが上げられます。
インターネット関連の企業に投資するということですが、具体的にはどういうものが対象になるのですか。
設定当初から、いわゆるドットコム関連企業を中心として投資するファンドではないというのが認識としてありました。たとえばネットを使って売り買いするといった単純なビジネスモデルの企業に投資するのではなく、インターネットの発展そのもので、コストが削減されたり、事業が効率化されることによって収益が上がる企業を捉えていこうとしたことです。また、インターネットが進展してトラフィックが増えることによって、当然それに関わる投資が必要になり、関連の機器が増えたり、インフラ部分に対する需要が増していきますし、光ファイバーが敷設されることで恩恵を受ける企業などもあります。このようにインターネットのインフラ構築の需要拡大によって伸びる企業も対象になります。
インターネットを使って伸びた企業というと、どんな会社があるのですか。
たとえば、アメリカのウォルマート。ここは物流や商品の調達において、インターネットを使ったシステム投資をやった効果によって、同業他社に比べて高い利益率をあげています。
今の時代、ほとんどの企業がネットを使って事業を効率化しているわけですから、「IT関連」と聞いて想像するよりは、かなり幅広い企業が対象になるわけですね。
そうです。これには、設定来の環境変化といったことがあると思います。設定当初は、ネットバブルは崩壊したけれど、インターネットに関するインフラの部分ではまだかなり見込みがありました。ただ、その後の過剰投資問題などで、今はIT関連全体の魅力が薄れているため、ファンドの特色が出しにくくなっているという側面があります。こうしたものの展望が良くなってくれば、ファンドの特色をもっと出せるようになると思いますが・・。
運用プロセスはどうなっていますか?
当社では、常時フォローしている銘柄が300くらいあります。これにファンドマネージャーの考え方などに基づいて独自に取材した銘柄を加えます。そうしたものの中から、このファンドのコンセプトに合うものを選んで、完全なボトムアップアプローチによってポートフォリオを構築していきます。何銘柄くらいに投資するといった数字的なしばりは弱いファンドと言えるでしょう。ネット関連企業のリストのようなものがあってそれに加えたり外したりしているわけではありませんし、スクリーニングで抽出するようなこともしていません。
銘柄選定で、特に重視していることは何ですか。
所属している産業とか市場自体の成長性を非常に重視しています。そうした中で、その企業がどれだけ競争優位性があるかを見て、企業の成長性をはかります。バリュエーションは、単純にある指標をひとつとってきて何倍かという形はとっておらず、複数の指標を総合的に使って判断しています。
会社訪問は、どのくらいのペースで行っているのですか。
時期にもよりますが、平均で週2、3件でしょうか。定量面でも外から見ただけではわからないことがありますから、今後の業績動向のイメージをある程度つかめるようにするのが目的です。定性面では、どういった手段を使ってどう業績を伸ばそうとしているのか経営の方向性を聞いています。
経営者個人の資質を重視するファンドマネージャーも多いようですが・・。
個人の人間性は簡単に判断できないと思っていますし、過去の実績を見ても、優れた経営者だと言われていたのに株価は崩壊したという例もありますから、私の場合は逆に、経営者個人の資質的なものを判断しすぎないように注意しています。
会社の成長性はどのように判断するのですか。
業績のイメージとしては通常2〜3年タームで、売上、営業利益、経常利益、償却前のキャッシュフローを注意して見ています。キャッシュフローの成長力に持続性があるかどうかは資産効率に関わってくる問題なので、現在どういったROA(総資本利益率)を得ていて、今後はどういったROAを実現できるかということを分析します。成長性の問題と絡んで、事業を拡大していく上で必要なキャッシュや投資戦略の部分をその企業がどう考えているかといったことを見ています。また、こうした成長性は同業他社とか、他国との比較をする中で判断するようにしています。
具体例としては?
たとえば、先日100円ショップを展開している企業への投資を検討しました。この会社は、今、営業利益率が3%台。これに対してアメリカには、「ダラーショップ」という同様の業種があって、大手4社で1兆円くらいの規模、中には10%くらいの営業利益率を達成している企業もあるのです。この差をどう見るかということですが、規模を拡大することによって大きくしていけるのか、日本独特の流通過程が問題になっているのかといったことを分析してみるわけです。この企業の場合、原価がかなり高いものを100円で売ることで、消費者に驚きを与えることをコンセプトにしているので、アメリカのように10%の利益率にはなかなかならないだろうと考えるのが合理的。結局投資は見送りました。
新井さんは2002年3月からこのファンドの運用のご担当ですが、ITバブルが崩壊する中で、これまではかなり厳しい状況が続いていますが、どう分析していますか。
設定当初、すでにITバブルは崩壊しつつありましたが、そうしたものに投資するものではないということでスタートしています。但し、当時アメリカ経済はまだ好調で、その背景には盛んなIT投資がありました。ビジネスモデルが脆弱なドットコム企業は崩壊しているものの、活発なIT投資に支えられた産業の発展は続くと考えていたわけです。中でも、インターネット拡大に伴って恩恵を受ける企業はまだまだ有望だという認識でした。
しかしその後、ネット関連企業の株価下落は止まらず、IT関連企業全般の業績が急速に悪化しました。景気循環的なものとITバブルの崩壊とが重なるような形で、全産業の業績悪化が起こり、それに先立つ形で株価も下落していきました。絶対ベースの基準価額はそうした株価下落の影響を受ける形になっています。
ベンチマークはTOPIXなのですか?
いえ、約款上、ベンチマークは設けていません。但し、参考指標としてTOPIXを使っています。
参考指標ということですが、TOPIXと比べるとどのような状況でしょう。
過去1年より前のところでアンダーパフォームした影響が大きく出ています。当初の時点で有望視していた電機セクターのウエイトをかなり大きくしていたことが主因ですね。
但し、過去1年で見るとTOPIXをアウトパフォームしています。これはテロ後の反発の影響と、2002年2月以降、信用リスクに対する不安が大きくなる中でTOPIXが安値をつけたものの、当ファンドはそうした信用不安によって株価が下落した銘柄を入れていなかったことが幸いしています。
信用不安の影響を受けなかった要因は何ですか?
先行き積極的に投資をして成長できる会社、つまりキャッシュをかなり持っている企業やバランスシート上優良な銘柄を多く保有していたことが大きく寄与したと思います。
組み入れ銘柄はどうなっていますか?
現在は国内65、国外1銘柄の計66銘柄に投資しています。1位は富士写真フィルム、2位はクレディセゾン、3位はKDDIと続きます。
日本株中心ということですが、外国株も入れられるのですね。
はい。基本的には日本株を中心としていますが、日本でビジネスを展開している海外企業も投資の対象です。現状保有しているのは、IBM
1社です。
どうしてIBMなのですか。
IBMはソフトサービス会社の代表的なもので、日本でも売上が1兆円を超えています。インターネットが進展していく過程で、システムインテグレーションを非常にうまく取り入れているのが魅力ですね。日本のメーカでも同様のものがありますが、収益面などで圧倒的に強いものがあります。
外国株のウエイト制限は30%なのに、現在1社しか入れてないのは何故ですか?
現在、ITバブルの崩壊が負のスパイラルとなり、企業会計疑惑などの形で非常に悪い状況が出ているので、もともと日本株中心のファンドに、無理やり外国株を入れる状況ではないという判断です。
新井さんが担当されてから入れ替えた銘柄はありますか?
はい。組入れ3位のKDDIは私になってから入れました。携帯電話が飽和状態になるなど世界的にも厳しい環境の中で、KDDIは資産効率を良くすることでキャッシュフローが改善しうる企業で、バリュエーションを考えても非常に安いと判断しました。一方、某大手印刷会社は、会社としての業績見通しが不透明なので外しました。
保有している銘柄を外すのはどんな場合なのでしょう。
自分が考えていたストーリーと違ってきた時ですね。また、限られた資産で運用するので、それ自体が悪くなくても、それ以上に成長しそうな企業がある場合は入れ替えます。
お話を伺っていると、このファンドはファンドマネージャーの裁量に委ねられている部分がかなり大きいと思うのですが、前任の佐久間康郎さんからの交代でファンドに出ている影響はありませんか。
確かに定量基準でしばっているファンドではないので、ファンドマネージャー交代の影響が全くないというわけではありません。ただし、ファンドの商品性まで変わって、違うファンドになってしまったというような変化はありません。チーム制ではありませんが、前任者とは同じグループでずっと仕事をしてきて、調査なども一緒にやってきた中で引き継いでいるので、突然他社から別の人がきて担当したというのとは違うと思います。またポートフォリオを構築していく上での組織のバックアップがあるので、――たとえばインハウスのアナリストなどもいて、一人でやってきているわけではないので、そうした意味での継続性はあると言えます。
交代によって純資産総額が減ったりはしていませんか?
市況動向による純資産の変動はあるものの、FM交代による大きな資金の出入りはありません。
日本株全体の今後の動きをどうみていますか。特にIT関連は、どうでしょうか。
年初来からの景気のボトムからのリバウンド局面が一巡した中で、企業収益全般というものは前年比で改善しつつあるものの、不透明感はかなり高まっていると思います。年後半も上昇過程に入るかと言えば、それはかなり厳しいでしょう。ただ、暴落を見込んでいるわけではありません。IT関連についで言えば、アメリカやヨーロッパの企業は過剰設備やバランスシートの大幅な悪化などの問題を抱えていますが、日本企業はITバブルという意味ではそれほど傷んではいません。インターネットの環境を考えても、ADSLの普及率が世界でトップの水準になり、ブロードバンド化がかなりの速度で進展しているなど、プラスの面もかなりあります。このブロードバンド化を企業としてどう活かして、成長に結びつけるかが問題なわけです。現状では、たとえば、ブロードバンドに絡んで画像処理をする会社など、小粒ながらも面白い会社も出てきているので、そうした規模の小さな会社も含めて探していきたいと思っています。
運用の哲学というか、常に意識していることは何ですか。
私はフィリップ・フィッシャーに強い影響を受けていて、やはり企業の成長に投資するのが基本と考えています。常に気をつけているのは、コンセンサスに惑わされないこと。エキスパートの意見は参考にはしますが、鵜呑みにはしません。他の人と同じことをやっていては、他の人と同じパフォーマンスになってしまう。それではこの業界で生き残っていけません。
フィリップ・フィッシャー氏というのは、米国の投資家であり大富豪のウォーレン・バフェット氏の師と言われている方ですね。フィッシャー氏のどのような点に強い影響を受けられたのですか。
企業の中・長期的な成長を付加価値の源泉としてファンダメンタルズを徹底的に調査、研究する姿勢です。投資スタイルにはその時代に応じて流行がありますが、そういった時流の変化に流されない基本的な投資哲学として重要視しています。
今日はありがとうございました。
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