インタビュー
今回は「フィデリティ・日本優良株・ファンド」について、フィデリティ投信株式会社投資情報部部長のロバートL.ティリーさんにお話を伺いました。
「フィデリティ・日本優良株・ファンド」は、国内株式型(一般型)に分類される追加型投資信託。販売会社は、東海東京証券、コスモ証券、丸三証券、岡三証券、明光ナショナル証券等 計33の金融機関の他、グループ会社のフィデリティ証券でも取り扱っています。インタビューは9月19日に実施。
フィデリティのホームページ http://www.fidelity.co.jp/
「フィデリティ・日本優良株・ファンド」は、その名前から主に国内の優良株に投資するファンドだとわかりますが、優良株の定義はどのようなものなのでしょうか。
ブランド力や商品開発力などいろんな面でみて優良、または将来優良になるであろう企業の株式です。競争力のある、規模の大きい企業ですね。将来的に優良株になるであろう銘柄にも投資できるので、中型株も少しは投資していますが、基本的には大型株が多い。6月末で時価総額の1兆円以上の銘柄がファンドの60%くらいを占めています。
収益性や市場占有率などに明確な基準はあるのですか。
はっきりした基準は持っていません。余り細かい規程を設けると、機動的な運用を阻害することにもなりかねません。
それでは、御社が運用しているフィデリティ・ジャパン・オープンとの違いはどんな点にありますか。投資家がどちらのファンドを選択しようかと考えた時、どういう点を見てファンドの違いを判断すればよいでしょうか。
基本的な銘柄選定手法は似ています。いずれのファンドも、高い利益成長性が見込める銘柄の中から、比較的割安な銘柄を選定します。一言でいえば、「割安な成長株」へ投資する、ということでしょうか。その一方で、フィデリティ・ジャパン・オープンとの対比という点では、フィデリティ・日本優良株・ファンドは、成長株の「割安」性を一層重視します。また、同ファンドはTOPIX100をベンチマークとし、主に大型で比較的知名度の高い企業を投資対象とします。
運用のスタンスといったものはありますか。
これは、このファンドに限ったことではありませんが、当社は基本的に「企業の利益が上がれば、株価は上がる」という考えのもとに運用を行っています。いろいろな証券会社のアナリストによる収益予想と私たち内部の収益予想の両方を見ていますが、一番魅力的なのは内部と外部の予想が異なっている場合、要するに、一般の投資家と考えが違っているときがチャンスだと考えています。それこそが、フィデリティが顧客へ提供する付加価値といえましょう。
そうした外部と内部のギャップによって組み入れた銘柄や利益を上げたシーンというのは、ありますか。
このファンドは昨年の9月のテロ以降、9ヶ月くらいかなり良い実績を残しています。
その時期に半導体関連の銘柄をかなりたくさん組み入れていました。結果的には、他の運用会社が思うよりも半導体の収益見通しが良いと判断して買ったわけです。これが成功しました。
この9ケ月については、ベンチマークをどの程度アウトパフォームしたのですか。
フィデリティ・日本優良株・ファンドは2002年6月末時点で、9ヶ月間で約15%上昇していますが、その間、ベンチマークであるTOPIX100は多少下がっています。つまり、9ヶ月間でファンドの実績がベンチマークを15%以上、上回ったことになります。
何故、内部の判断は半導体関連に積極的だったのでしょう。
あの時点で世界的な経済が回復に向かいつつあると判断したのです。今はパソコンだけでなく、自動車や電気製品など様々な品物に半導体が入っていますから、経済が回復すれば半導体需要が伸び、2〜3年後の収益も伸びると判断したわけです。ただし、その後は状況が変わってきたので、少しずつ割合を減らしました
(2002年7月末現在)。
運用のプロセスはどうなっていますか?
勿論、このファンドにおいても、フィデリティの基本方針である個別企業分析によるボトムアップ・アプローチを採用しています。現在は国内500銘柄について、株式アナリストが3ヶ月ごとの定期的な収益予想を出して、内部のレーティングをつけています。この500銘柄で国内株式市場の時価総額の8割以上にあたります。
銘柄の絞りこみは、どのように行われるのですか?
これは、担当者次第です。当社では、投資判断についてはそれぞれのファンド担当者(ポートフォリオ・マネージャー)に一任する方式です。フィデリティでは、最初はみんな株式アナリストとして仕事をしていて、そこで評価されなければポートフォリオ・マネージャーにはなれません。ですからファンドの担当者になれば、比較的自由に運用できるようになっています。もちろん、ベンチマークや運用方針はありますが、担当者にできるだけ自由を与え、その代わりにそれ相応の責任を負っています。
なかなか厳しいのですね。日本優良株ファンドのポートフォリオ・マネージャーはロバート・ローランドさんですが、プロフィールを教えてください。
バークレイズ証券の株式アナリスト等を経て、1995年にフィデリティ投信に入社しました。アナリスト時代は半導体関連、自動車や精密機器などを担当し、その後2000年にポートフォリオ・マネージャーに昇格、同年6月より、フィデリティ・日本優良株・ファンドの運用を担当しています。また、ローランド氏はグローバル・ファンドの日本株部分の運用も複数担当しています。その意味では、常にグローバルな視点で運用を心がけているといえましょう。
ローランドさんが銘柄選択で重視している点は何ですか。
特に重視しているのは、割安な成長銘柄を選ぶこと。つまり、バリュエーションです。毎日統計を見ていて、今の株価と歴史的な平均のバリュエーションとを比較して、歴史的な平均より2標準偏差安ければ、詳しく調べてみるといったことをしています。
バリュエーションで、特に注目しているのは?
業種によって違ってくるので一概に言えませんし、いろいろ参考にしていると思いますが、基本的に重視するのはPERとキャッシュフロー倍率ですね。
他に重視していることは?
競争力を重視します。競争相手が簡単に新しい商品を開発できるかといった参入障壁の高さや、企業の積み上げてきた技術がどれだけあるのかといったことですね。また少なくとも2〜3年後に利益が30%以上上昇する、という予想でなければ投資候補には入ってきません。
株式の流動性が十分あるということも重要です。つまり大型株ということですね。それから必ず同業種の海外の銘柄とも比較しています。このファンドは主に日本株に投資するファンドですが、もし明らかに日本の銘柄よりも海外の銘柄のほうが魅力的だと判断した場合は、海外の銘柄に投資するのです。
海外の銘柄は何パーセントまで組み入れていいのですか。
外貨建て資産への投資割合は、目論見書では30%までとなっています。でも実際にはこれまで、上限5%まではいっていません。
たとえばどんな銘柄が入っているのですか。
4月末で1銘柄だけ。アメリカの医薬品の会社でメルク。商品も良いし、医薬品は今、世界的に割安なのです。
組み入れ銘柄を外すのはどんな時ですか?
売却は買い入れの反対ですからね、これも歴史的な平均のバリュエーションと比較しながら、かなり割高になったというときは減らします。もちろん、利益見通しが変わった場合にも手放します。
現在の業種ごとの組入状況はどうなっていますか。
7月末時点でベンチマークと比較してオーバーウエイトなのは、電気機器、化学、サービスです。
特に化学をこれだけオーバーウエイトしているファンドは珍しいのではないでしょうか。化学は驚くほど収益が伸びる業種というわけではないのですが、今非常に割安になっているので、多くを組入れています。今後株価が上がってくるにつれて、ウエイトを減らしていくと思います。銀行はベンチマーク並かそれより低い状況ですね。
組入上位の銘柄は?
6月末の時点で、トップは富士写真フィルム。技術が優れているし、マーケットシェアは世界的に高い、その上でとても割安です。2位は武田薬品工業ですが、今一般的に薬品業種が割安です。NTTドコモは上位銘柄に入っていますが、ベンチマークよりはかなり低いウエイトなので、それほど良いと判断しているわけではありません。ベンチマークと比べてかなりウエイトは高いのは、オムロンとか東京放送です。
設定来の騰落率はどういう状況にありますか。また、対ベンチマークではどうなっていますか。
日本優良株ファンドは2000年4月20日に設定されました。残念ながら2002年9月末現在でみると、設定以来、日本の株式市場自体がかなり下落しています。そのためこの期間中、同ファンドのベンチマークであるTOPIX100は
50%以上下がったことになります。その間、幸いにもファンドの下落率は43.8%に止まりましたので、6%以上ベンチマークの実績を上回ることになりました。ファンドがかなり下がっているため、決して芳しい運用成果ではないと思われる方もいらっしゃるでしょうが、このファンドが上げ相場においても、同程度にベンチマークを上回ることが出来ると仮定すれば、長期的にはかなり魅力のある投資となるはずです。
過去の実績を見ると、昨年9月からはベンチマークを上回っています。先ほど半導体のお話がありましたが、その他具体的な利益の源泉をどう分析していますか。
6月末時点で、過去3ヶ月を見ると、サービス業と通信、輸送用機器が貢献しています。通信と輸送用機器がベンチマークよりかなりアンダーウエイトしていますが、アンダーウエイトしたこと自体、貢献したわけです。1年間さかのぼってみると、電気機器以外では、三井化学等の化学、サムソンやノキアといった外国銘柄も貢献しています。
テロ以降、アメリカの会計監査の問題などがあって株価がずいぶん下がりましたが、ファンドへのアメリカ経済の影響はどうでしょうか。
もちろん影響はあります。 特に日本の大型の銘柄は、アメリカの影響を受けやすいです。ただし、これは短期的なことで、長期的には、その銘柄の収益力で株価が決まると考えています。
今年の2月くらいからの下げ場面では、一時的に何か対応したのですか。それとも長期的に見れば影響は少ないということで、あまり手を打たなかったのですか。
もちろん、毎日市場を見ていろいろ売り買いをしているわけですが、3月末と6月末を比較した場合、多少の動きはあるものの、大きなポートフォリオのウエイトは変わっていません。私たちは、常にフルインベストメントが原則ですから、仮に運用担当者が、相場が悪くなると判断したとしても、投資を続けます。
確かに、目論見書上はフルインベストメントが原則とされていますが、現在のように株価が断続的に下落する局面においてはキャッシュポジションを高めた方がよいという判断がなされることはないのでしょうか。
何故フルインベストメントの方針を採用しているかというと、そもそも私たちはマクロ経済や相場は正確に予測できるものではないと考えているからです。エコノミストやストラテジストの経済予測や相場予測などは、なかなか的中するものではありません。仮に現金比率を上げて、その後相場が急上昇したとしたら、機会損失が生じます。フィデリティは、個別企業を詳細に調査・分析し、精度の高い収益予想を立てることに注力しています。
フィデリティは情報開示の仕方に特徴がありますが、これはどういう考え方からなのでしょうか。開示が悪いという声もありますが・・。
これは投資家利益を守るために実行しているフィデリティの世界的なポリシーです。当社は特にアメリカで運用資産額がかなり大きく、場合によってはアメリカ株式市場全体の、1日の取引高の数パーセントを占めることもあります。それだけ大きくなると、フィデリティという'ゴリラ'がどう動くかを、機関投資家も個人投資家も注目します(笑)。たとえば私たちがある銘柄を売っているとわかって、他の人たちが先に売ってくれば、大きく株価が下がってしまう。そうすると損失が出ます。そうしたことから、ファンドのためには、あまり頻繁な開示はしないほうがよいと考えているのです。ただし投資家のための最低限の情報開示は絶対に必要だと考えていますので、年4回上位銘柄の開示をしていますし、全銘柄は年2回開示しています。
ファンドの今後の展望は?
日本優良株ファンドは大型株の指数であるTOPIX100をベンチマークにしています。日本の相場がいつ回復するかはわかりませんが、回復する時にはこのファンドは比較的良い動きをするはずです。何故なら、指数的に言うと、TOPIXとTOPIX100の歴史実績を比較した場合、下げ相場ではTOPIX100のほうがTOPIXよりも下がり、上げ相場では、TOPIX100のほうがTOPIXより上がる傾向があります。ですから、このファンドのように主に大型株に投資するファンドの場合、今後、相場が上がってくれば相場の平均より上がるはずだと考えます。
では、今は苦しい時期?
まあ、厳しい時期ですが、運用担当者がバリュエーションを重視しているので、下げ相場の局面でも、比較的値持ちがいい場合が多く、良い実績を残していると思います。歴史的なファンドのリスクを検証する場合に標準偏差で見ることが多いのですが、このファンドは設定されて2年強ですけれども、これまでに達成した超過収益率の割には標準偏差が低い、つまりブレが小さいファンドだと思います。
本日はありがとうございました。
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