インタビュー
今回は「モルガン・スタンレー・グローバル・バリュー・エクイティ・オープン」について、モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信株式会社のポートフォリオ・スペシャリスト 吉見 旨訓(よしみ むねのり)さんにお話を伺いました。
「モルガン・スタンレー・グローバル・バリュー・エクイティ・オープン」は、国際株式型(一般型)に分類される追加型株式投信。平成10年3月に設定されました。販売は野村證券、野村ファンドネット証券、肥後銀行。インタビューは平成15年1月24日に実施。
モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信のホームページhttp://www.morganstanley.co.jp/im/
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はじめに、モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信についてご紹介ください。
モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信は、モルガン・スタンレー・グループ資産運用部門に属し、その日本のおける運用拠点です。モルガン・スタンレー・グループは、2002年11月末現在、総資本600億ドル超、世界28カ国に700以上のオフィスと約58000名のスタッフを擁するグローバル総合金融企業グループです。証券・資産運用・クレジット・サービスの3大事業を展開しており、資産運用部門では380名以上の運用プロフェッショナルが、法人並びに個人のお客様からお預かりした約4200億ドル(2002年11月末)を運用しています。ファンダメンタルズ・リサーチに力を入れたアクティブ運用を中心に、世界の幅広いアセットクラスをカバーしています。
「モルガン・スタンレー・グローバル・バリュー・エクイティ・オープン」の運用方針をお聞かせ下さい。
独自のバリュー・アプローチによって、マザーファンドを通して日本を含む世界中の株式を対象に、グローバル比較で見た割安銘柄に投資し、長期的にベンチマークを上回る成果を目指します。これはグループ全体の投資哲学でもありますが、「いかなる資産であれ、長期的には、その価格は本来の投資価値に収斂していく」という考え方で、徹底したバリュー運用を行うアクティブファンドです。ベンチマークはMSCIワールド・インデックスで、限定為替ヘッジを行うAコースと、為替ヘッジを行わないBコースがあります。
Aコースは限定為替ヘッジということですが、限定為替ヘッジとはどういう意味ですか?
ベンチマークであるMSCIワールド・インデックスの通貨配分に基づいて為替ヘッジを行うということです。したがって、Aコースの実質組入外貨建資産すべてに対して、対円での為替ヘッジが行われるわけではありません。
「徹底したバリュー運用」ということですが、他のバリュー型のファンドとどのような違いがあるのですか。
同じ「バリュー運用」をうたっているファンドでも、たとえば1998〜2000年にかけてのいわゆるTMT(テレコム・メディア・テクノロジー)相場で、バリューファンドのパフォーマンスが落ち込んだ際、投資スタイルをグロースよりにシフトさせたファンドもあったと聞きます。その結果、そういうファンドは、その後バリュー相場になったときも相場の上昇に追従できませんでした。私どものファンドはそうした時も運用スタイルを頑なに守ったことで、長期の良好な成果が得られています。
運用スタイルにブレが少ない、つまり徹底したバリュー運用が行なわれているということは、何で知ることができるのですか?
スタイルインデックスとファンドのパフォーマンスとを比較してみるとよいでしょう。代表的なスタイルインデックスとしては大型バリュー・大型グロース・小型バリュー・小型グロースといった4つのインデックスがあります。これらのインデックスのパフォーマンスに対して、個別のファンドのパフォーマンスがどれくらいの所に位置しているかを見るわけです。このファンドの場合は、常にバリュー領域に位置し、大型バリューと小型バリューの間で安定しています。
その他、ファンドの特徴としてはどのようなことがありますか?
年間30%強という銘柄売買回転率の低さです。これはおおまかに言うと3年かけて、ポートフォリオのすべての銘柄が入れ替わるということを意味しています。また、売買回転率が低いということは、売買執行コストが低いということになります。
売買回転率というのは、一般的にどれくらいなのですか?
はっきりした数字ではありませんが、50%くらいが目安ではないかと思います。グロース運用のファンドでは、80〜90%のファンドもあります。
つまり、平均すると3年くらいは各銘柄を保有しているということですか?
はい、そうです。
このファンドの運用体制はどうなっていますか。
当ファンドの運用は、ロンドンで行っています。ファンドマネージャーは3名です。当社では、ファンドマネージャーが同時にアナリストを兼任するシステムになっていて、たとえばこのファンドの運用総責任者であるフランシス・キャンピオンは、銀行や医薬品のアナリストも勤めています。リサーチチームは業種別に12に分かれていて、1人が2〜3の業種を担当しているのです。
ファンドマネージャーの運用経験はどのくらいですか。
ファンドマネージャーの平均経験年数が12.3年、アナリストは11.5年、また運用チーム全体の当社在籍年数は平均7年と、定着率が高く、経験豊富なプロフェッショナルが運用にあたっています。
ファンドマネージャーとアナリストを兼任することのメリットはどのようなことがあるのですか?
一番のメリットは、情報の共有が速いことでしょう。また3人のファンドマネージャーが別々のセクターを担当しているので、常に新しい情報に接することができます。
それでは、具体的な運用プロセスを教えてください。
個別銘柄を積み上げるボトムアップアプローチです。投資対象となるのは基本的に時価総額20億ドルを超える企業で、その中から定量的な指標によって割安な銘柄を1000社くらいに絞ります。その上でファンダメンタルズ分析および企業訪問調査の結果をもとに企業の本質的価値を分析し、株価の適正水準を評価して、100銘柄前後のポートフォリオを構築します。
スクリーニングを行う際、鍵となるバリュエーション指標は何ですか?
株価営業キャッシュフロー倍率(株価÷営業キャッシュフロー)、PBR(株価純資産倍率、株価÷調整後純資産)、企業価値/EBITDA(企業価値÷税引前利払前減価償却前利益)、株価フリーキャッシュフロー倍率(株価÷フリー・キャッシュフロー)といったものです。PERは使っていません。複数の国の株式の比較にPERは適当ではないからです。国際比較を可能にするために、定量的指標には減価償却や税率など国による計上方法の差を調整したものを使っています。
定性面で重視する要因は?
会社説明会やアナリスト・ミーティングも勿論行いますが、特に経営トップに直接お会いして行う面談調査で、経営陣の能力を見ることに力を入れています。
経営者の能力はどこで判断するのですか?
特に見ているのは経営力。具体的には、フリーキャッシュフローを有効に活用する能力を分析します。フリーキャッシュフローとは、手元にあるお金であるキャッシュフローから、企業の現状維持に必要な支出を差し引いたものです。たとえば配当にまわす、企業の広告に使う、商品開発に使う、土地や自社用飛行機を買う〜これが一番ダメですが(笑)〜といった方法があるわけですが、手元にあるお金をいかに活かしていくことができるかに、経営者としての手腕が出るのです。
財務分析や商品をはじめとするビジネスそのものの魅力についての評価も行います。単に割安であるということだけでなく、ブランド力、その企業の顔になるようなものをもっているかどうかということも大切です。
株価の適正水準とはどのようなものですか?
売る際の目安とするための目標株価のことです。往々にしてファンドマネージャーは、株価が上がればその株を好きになるし、下がると損切りが嫌で売れなくなるといった具合に、売り時を逃して失敗することが多いので、予め目標株価を設定しておくのです。
どのように算出するのですか?
そのセクターの中での平均水準を求めて、同業他社との比較を行って算出する場合や、将来得られるキャッシュフローを予想し、今の利回りで割って現在価値に引き戻す割引モデル(ディスカウントキャッシュフローモデル)を使って適正価格を算出する場合もあります。
業種によって評価の基準は異なるのですか?
景気安定銘柄か景気敏感銘柄かによって違います。食品やタバコ、生活必需品といった景気安定銘柄については、フリー・キャッシュフロー利回り(株価フリーキャッシュフロー倍率の逆数)や割引後キャッシュ・フローが高いことが重要です。自動車や素材のような景気敏感銘柄はその逆で、前述の指標が低いこと。景気敏感株は利益が上がった時に買うと、株価も既に上昇していて、そこで買ってはいけないからです。金融銘柄については、PBRが低いこと、なおかつROEが高いことが重要になってきます。
保有銘柄の売却を検討するのは、どのような時ですか?
まず、株価が上がって、はじめに設定した目標株価となった場合。もしくは経営陣が変わったとか他社を買収したといったことで適正水準を再評価した結果、株価が割高と判断された場合。また同業他社と比較してより割安な銘柄を発掘した場合にも売却を検討します。
ポートフォリオ上の制限はありますか?
各銘柄の純資産に対する組み入れ比率を10%以下に制限します。またフル・インベストメントを基本にしていますので、株式の組入れ比率は原則として高位を維持しますが、相場環境も勘案して5%前後のキャッシュ比率を目安にする場合もあります。
国や業種別の配分についてのベンチマークに対する制限は?
どの地域のものをどれくらい持とうかといったアプローチはしていません。ベンチマークとのトラッキングエラーについても毎月データはとっていますが、管理はしていません。当ファンドでは、10%くらいあって比較的大きいのですが、ベンチマークとの差が大きいから、銘柄の調整をしようといった制限は設けていないのです。よく、ベンチマークと比較的近い銘柄を持っていて、パフォーマンスもベンチマークよりちょっと良いとか悪いといったファンドが多いですが、このファンドはバリュー運用に特化しているので、スタイル分散投資をするのに、使いやすいと思います。
現在のポートフォリオの状況はどうなっていますか?
2002年12月30日現在で、マザーファンドの組入銘柄数は103銘柄です。組入株式の国別配分はアメリカが42.6%、イギリスが18.0%、日本が9.5%、次いでフランス、スイスとなっています。ベンチマークに比べて、アメリカが10ポイント以上少なく、イギリス・フランス・スイスが多くなっています。
セクター配分でみると、生活必需品が高く、情報技術が低いのが特徴です。但し、これでも最近はベンチマークに近づいていて、以前はこの差がもっと大きかったのです。これは、TMT相場の頃は、情報技術セクターは高くて買えなかったですが、今はだいぶ割安になっているためです。
生活必需品というのは、具体的にはどんな銘柄のことですか。また、どうして生活必需品セクターに割安銘柄が多いという結果になっているのでしょうか。
MSCIワールド・インデックスの生活必需品セクターに属する銘柄、つまり、薬品・小売り、食品・タバコ・飲料、家庭用品・パーソナル用品、などの銘柄です。いわゆる情報技術セクターなどは利益成長を期待して買われる傾向が強く、割高になりがちです。一方で、生活必需品セクターは大きな成長は期待できないため、株価が割安になる傾向がありますが、反面、堅実な収益が見込まれます。
2002年を通して見ると、国別配分やセクター配分に大きな変化は見られましたか。
大きな変化はありませんが、セクター配分に関しては多少の変化が見られました。具体的には、金融セクターと情報技術セクターが増加しました。生活必需品セクターの割安感が徐々に薄れる一方で、上記セクターに割安かつ魅力的な銘柄が散見されたため、組入れを増やした結果です。
組入上位銘柄は?
1位はフランスの薬品メーカーであるアベンティス、次いでスイスの食品メーカーのネスレ、3位はアメリカのタバコ会社、アルトリア(旧フィリップ・モリス)となっています。
これまでの運用実績はどうなっていますか?
2002年12月31日現在で、Aコースは、過去3年で−25.5%、過去1年で−23.9%、となっています。Bコースは、過去3年で−6.4%、過去1年で−25.3%、となっています。
同期間のベンチマークのパフォーマンスはどうなっていましたか。
2002年12月31日現在で、Aコースは、過去3年で−50.0%、過去1年で−26.9%、となっています。Bコースは、過去3年で−35.0%、過去1年で−29.0%、となっています。Aコース、Bコースとも過去1年および3年でベンチマークを上回ることができました。
パフォーマンスが良かった時と、悪かった時の原因をそれぞれ教えてください。
簡単に言うと、TMTがピークになった99年は、相対的にも絶対的にも悪かったですね。このファンドはバリュー運用ですから、当時どんどん買われて値上がりしていたTMT銘柄は買えなかったわけです。しかし、ベンチマークはそれらの銘柄にひっぱられて上がっていってしまったわけです。TMTにどんどんお金が流れていくと、このファンドが多く持っていた生活必需品銘柄から資金が逃げていきました。2001年になるとその環境が一転したのですね。
そうなると、景気があまり良くないときはバリュー銘柄、景気がぐいぐい伸びていくような時はグロース銘柄がいいということになるのですか?
私たちは、割安株を買っていくのが長期に見ると一番いいと考えています。最近の相場を見ている方はあのTMT相場を知っているので、時期や経済環境によって成長株と割安株を使い分けることが必要だと考えるかもしれませんが、定量指標で見て統計的に処理すると、当時どれくらい割高だったか、どれくらい異常な状況だったかがわかります。そのような時期が長く続くことは、通常考えずらいわけです。
また、仮にあるセクターが急に上がったとしても一般的には非常に短い期間ですので、利益を取りにいくのは難しい。ですから、様々なアセットクラスやスタイルで分散投資する機関投資家は別として、個人投資家が投資信託を買う場合は、そういう使いわけは必要ないと思います。
過去1年のパフォーマンスが20%以上のマイナスとなった要因は何だったのでしょうか。
情報技術セクターや通信セクターなどの下落がその主な要因となりましたが、ベンチマークとの比較では良好なパフォーマンスを維持しています。
純資産総額はどのくらいですか。また、どのように推移していますか?
2002年12月末現在、Aコースは6億4,700万円、Bコースは9億5,700万円となっています。2000年年初以来、比較的安定して推移しています。
ところで、アメリカによるイラク攻撃が近いと言われていますが、世界株式への影響はどのように見ていますか。
イラクについては市場が懸念しすぎていると判断しています。既に織り込み過ぎていて、特にセンチメントに影響されやすいグロース銘柄がずいぶん下がってきています。
今、買い時というわけですか?
そうですね。テクノロジーとか銀行といったセクターに割安と判断される銘柄が見出されます。危機の影響がクリアになれば、こうした銘柄は上昇すると考えています。
最後に、御社には「グローバル・バリュー・エクイティ・オープン」同様、バリュー運用で世界株式に投資する「世界株式オープン(Aコース、Bコース)」がありますが、どこが違うのですか?
為替ヘッジの仕方が多少異なるだけで、ポートフォリオについてはほぼ同じものと考えていただいて結構です。
世界株式オープンはどこで販売しているのですか?
2002年11月現在、みずほ銀行、みずほ証券、UFJ信託銀行、三井住友海上火災保険、日興ビーンズ証券、モルガン・スタンレー証券、ウツミ屋証券、エーエムピー証券にて販売しております。尚、当ファンドは確定拠出年金に対応しており、損保ジャパン・シグナ証券、東京三菱銀行、UFJ銀行が取り扱っています。詳しくは目論見書をご覧下さい。
今日はどうもありがとうございました。
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