インタビュー
今回は「マイストーリー」について、実質上の運用を担当する野村ファンド・リサーチ・アンド・テクノロジー株式会社(NFR&T)の運用部次長の南村 芳寛(なむら よしひろ)さんにお話を伺いました。
「マイストーリー」は、リスク水準が異なる5本のファンド(「株25」「株50」「株75」「株100」「日本株100」)から構成されるファンド・オブ・ファンズタイプの追加型株式投資信託。販売会社は、野村ファンドネット証券、野村證券。インタビューは3月18日に実施。
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「マイストーリー」の運用は、野村アセットマネジメントが行っているのかと思っていました。
「マイストーリー」の委託会社は野村アセットマネジメントですが、再委託という形で、実質上の運用はNFR&Tが担当しています。
NFR&Tは投資信託の評価会社ですよね。
そうです。投資信託協会に登録している投信の評価会社である一方で、その評価情報を用いて複数の投資信託に投資を行うファンド・オブ・ファンズの運用を行っています。もともとは、野村證券の中で投資信託の定性評価を実施してきた部門と、野村総合研究所の年金基金向けコンサルティング部門とを集結し、2000年6月に設立されました。グループ内だけでなく、幅広く世界のものから良いファンドを選んでお客様にアクセスしていただこうという戦略のもとにつくられた会社です。
「マイストーリー」の運用はどのような体制で行っているのですか。
ファンド分析部のファンド・アナリスト9名が行うファンドの評価・分析を基に、運用部のポートフォリオエンジニア4名がファンドの組み合わせを考えるという、計13名の体制で行っています。
「マイストーリー」の特徴を教えてください。
大きく2つの特徴があり、そのひとつは「ファンド・オブ・ファンズ」という顔、もうひとつは「ライフスタイルファンド」であるということです。
ファンド・オブ・ファンズとはどのようなものですか。
直接、株式や債券等に投資するのではなく、複数の投資信託に投資する投資信託です。一つの運用会社ではなく、複数の会社の運用する様々なファンドに投資することで、資産の分散・運用スタイルの分散・運用者の分散が可能となって、高度なリスク管理が行えるというメリットがあります。
アクティブ運用の場合、運用会社やファンドマネージャーによって投資戦略が違うので、その結果ポートフォリオにも特徴がでてきます。いわゆる運用スタイルというものですが、短期的な成果はファンドマネージャーの腕よりも、どういう戦略をとっているのかということに大きく左右されてしまいます。どういう相場つきになるかを予測するのはきわめて難しく、また運の要素に過ぎないわけです。こうした運の要素にはなるべく左右されないようにしながら、より長期的に安定した収益をとるためには、運用戦略のバランスをとることが大切だと考えているのです。
運の要素に左右されないというのは難しいですね。投信の評価で5つ星とか、4つ星とかいっても、年によって変わったりしますから・・。
短期的なリターンというのは、その後リバーサルが起こりやすいといわれますね。典型的な例としては、99年には大型成長株相場だったのですが、2000年にはその状況が全く逆転してしまったというのがあります。ですから、その時にパフォーマンスがいいと思って買ったとしても、投資した後で相場のスタイルの動向が変わってしまえば、いい成果が出ないということもあるわけです。これまでに数多くの投信の評価機関が設立されましたが、ファンドの過去のパフォーマンスに依存する評価がほとんどです。アクティブファンドはさらに複雑な特徴をもっているので、より継続的なメンテナンスが必要であると思っています。
投資した後のフォローまでは個人投資家にはなかなかできないですね。
ええ。ファンドの選定は勿論、投資をした後ファンドをモニタリングして、もしあまり良くないと判断すれば投資対象のファンドを見直すというメンテナンスサービスを提供できるのもファンド・オブ・ファンズの特徴です。いわゆるPLAN・DO・CHECKですね。こうしたことは、大規模な年金基金などでは自ら行ったり、コンサルタントに依頼して行ったりしていますが、個人投資家のマーケットではなかなか実現しませんでした。こうした資産管理機能そのものをパッケージにし、ひとつの商品として提供するということに意味があると考えています。
「ライフスタイルファンド」としての特徴というのはどのようなものですか。
「マイストーリー」ではリスク水準の異なる5つの資産配分のコースを用意しています。投資家はリスク許容度や投資期間に応じてファンドを選択し、将来のライフスタイルの変化などに応じて、ファンド間でスイッチングすることで、リスク度合いを選び直すことが可能です。
つまり、例えばリスクがとれて長期の運用が可能な若い時には、株式比率の高いファンドを選択し、あまりリスクをとりたくない時になったら、株式比率の低いファンドに乗り換えてゆくという使い方ができるわけですね。では、5つのコースは、それぞれどのような配分比率になっているのですか?
株式の比率が多いほどリスクが大きくなるのですが、株式の比率が25%、50%、75%、そして株式だけに投資をするものが2コースあります。国内株式、外国株式、内外の債券を合わせた世界債券という3つのアセットクラスから構成されるようにしています。ファンドを通じて実質的に保有する資産の割合は、概ね次のようにその基準を決めています。
| <株25> | 国内株式:17%、外国株式8%、債券75%程度 |
| <株50> | 国内株式:34%、外国株式:16%、債券50%程度 |
| <株75> | 国内株式:45%、外国株式:30%、債券25%程度 |
| <株100> | 国内株式:60%、外国株式:40%程度 |
| <日本株100> | 国内株式:95〜100%程度 |
国内株式、外国株式、国内債券、外国債券といった4資産ではなく、国内株式、外国株式、国内外の債券の3資産配分にしているのは何故ですか。
為替については全体としてリスクを軽減するためにヘッジをすることを基本にしています。為替ヘッジをした場合、国内債券と海外債券のリスク水準はほぼ似てくるので、まとめて扱うことにしています。また、外国債券市場には、日本市場にないような様々な種類の債券があるので、付加価値を追求できるチャンスが大きいということも理由のひとつです。
運用のプロセスを教えてください。
まず、世界中の多数のファンドから投資対象とするファンドを選定します。我々は何百本ものファンドを恒常的にモニターしていますし、様々なデータベースを使って候補ファンドをスクリーニングするという作業をしています。しかし、投資対象ファンドを決める際には、過去の運用実績をもとに出すいわゆるパフォーマンスランキングによる定量評価ではなく、むしろ、それが継続的に良いパフォーマンスである可能性が大きいかどうかを、様々な面から定性評価するというのが投資哲学となっています。
定性評価は具体的にはどのように行うのですか?
基本的には運用会社やファンドマネージャーに直接インタビューすることを重視しています。ただ話を聞けばいいということではなくて、事前準備をかなり入念にやっています。予めアンケート形式で、運用体制やプロセス、パフォーマンスやポートフォリオのデータなどをご提供いただきます。
中でも重視している内容は?
大きく、運用体制、運用プロセス、情報開示という3つの項目によって評価していますが、一番ウエイトが高いのはプロセスです。投資哲学や戦略、その実行方法について、一貫性があるか、合理性や独自性、効率的かといったことを評価。またポートフォリオ管理として、リスク管理からパフォーマンス評価、トレーディングといった付加価値をいかに安定的にとるかについても評価しています。
この他、運用体制については、運用機関の安全性・安定性、運用チームの層の厚さ・効率性を、また情報開示については詳しさ、わかりやすさ、速さ、正確さを見ています。こうした評価項目はおよそ200項目にものぼります。
たとえば運用プロセスの中の「独自性」は、考え方がユニークだということだと思うのですが、これはプラスに出るときとマイナスに出るときが思います。どういうところで良し悪しを判断するのですか?
「マーケットは相当程度効率的だが、完全な効率性からは多かれ少なかれ乖離しており、それが収益機会である」というのが私たちの基本的な考え方です。優秀な運用機関や運用者かどうかというのは、最後のわずかな付加価値をとるために人のやらない努力をどれだけやっているかところで決まると思っています。たとえば情報収集にあたっても、会社の発表や証券会社の情報だけではなく、実際に自分で足を運び、工場でインタビューをしたり、競争相手のヒアリングをしたりという情報収集の広さ・深さが必要でしょうし、定量的な観点から運用しているところでも、公表されているデータから、いかにノイズを取り除く工夫をしているかといったことを見るのです。たとえ短期的には収益に結びつかないとしても、そういうことをする営み自体がアクティブ運用者の存在意義だと考えています。ですから、独自性を見る一方で、それをやる努力にどれだけ合理性があるかも見ているのです。
最近は多くの運用者がそうした努力をアピールするようになっているので、定性面での違いを計るのは難しくないですか?
そうですね。それを見抜くために、より具体的なケースについて質問をしています。そのために事前情報が必要になるわけで、単なる形だけのアンケートではなく、細かいデータまで相当時間をかけてチェックします。ファンドの特徴を知る上で重要な意思決定だったと思われる投資判断については、その状況下ならその運用者がどのような投資行動をとったかという仮説をたててからインタビューにのぞむといったことを実行しています。私どもの評価会社としての強みは、こういう点にあるのです。
そうして絞り込んだ結果、いくつのファンドに投資しているのですか?
現在、投資対象となっているファンドは25本、運用会社は14社です。
選定したファンドの組み入れ比率はどのように決めるのですか?
ファンドの配分は、ベンチマークに対して、リスクあたりの期待リターンをあげるという定量的な最適化の手法を用いています。つまり、トラッキングエラー当たりのαを最大にするということです。この時、基本的には、高く評価するファンドはより高い確率で超過リターンをあげることが期待できると考えて比率を高くし、あとは全体としてリスクを小さくするような組み合わせを探します。相関関係を分析して、できるだけ分散の効くファンドを組み入れるようにするのです。
リスク管理はどのように行っていますか。
より安定的に付加価値を追求する手段として定量的なリスク管理をしています。たとえばマイストーリー・日本株100では、95%以上を実質的に株式に投資するようにしていますが、それぞれのセクターごとにTOPIXからの乖離を見て、1業種の配分が±5%を超えないことを目途に組入れファンドの比率を調整しています。
他にも重視しているポイントがありますか。
日本株の場合ですと、大型/小型、グロース/バリューの比重はどうかというスタイルリスクのバランスをとるということです。すべてのファンドを加重平均したときのスタイル特性が、TOPIXに比べてかけ離れないような微妙なバランスを保ちながら、評価の高いファンドをたくさん組み入れていくということを行っています。
外国株の場合は?
北米・欧州・アジアパシフィックの地域配分を重視しています。ファンドの中には、各地域に投資するものと、グローバルに投資するものがありますが、全体として、3地域の配分がベンチマークであるMSCIコクサイから大きくかけ離れないようにしています。
債券はどうでしょうか。
債券も、北米・欧州・日本の地域配分を重視しています。債券ファンドでは、地域間のどこをオーバーウェイトするか、金利変動への感応度を地域間に配分するのが付加価値の大きな要素です。従って、ベンチマークであるリーマン・ブラザーズ・グローバル総合インデックスの地域配分を意識しつつも、各ファンドのアクティブな判断を残す形で組入れファンドの配分をしています。
先ほど、現在、投資対象となっているファンドは25本、運用会社は14社と伺いましたが、投資対象ファンドの見直しやポートフォリオの組み換えをするのはどのような時ですか?
モニターしていて、ファンドのリスクの特性が変わった時です。あるグロースのファンドでグロース色が薄まった場合、ポートフォリオ全体としてグロースとバリューのバランスが崩れるので、それを中立に戻すような場合ですね。これはどうしても自然にぶれてきてしますので、微調整を加えていくという感じです。個別の組入れファンドで、運用のスタンスがぶれた場合は、定性評価面でファンド自体の位置づけを見直しています。つまりマイストーリーで我々は、運用というよりは、品質とリスク管理を提供しているわけです。相場観でどのファンドがあがりそうだから、これを買おうということをやっているのではありません。
これまでに組み入れ比率の変更を行った例などをお話いただけますか?
わかりやすいので、日本株ファンドを例にお話しましょう。
まず「チューリッヒ・スカダー・ザ・日本株ファンドF」。これは設定当初、定性的に高く評価して組み入れ1位でしたが、ドイチェ・アセット・マネジメントとの合併があったことや、運用担当者が退社するなど運用体制に変化があったことの影響を懸念し、比率を下げました。また「ノムラ・ジャパン・オープンF」もボトムアップ・リサーチに基づく投資プロセスの有効性が低下したと判断したことから引き下げました。
グループ会社だからという配慮はしないのですね。
信託された資産を運用するためですから、中立な立場で、厳しく評価するように心がけています。この他、リスク管理面から組入比率を調整した典型的な例としては、「フィディリティ・ジャパン・オープンF」。一時期、電気機器に相当シフトしたポートフォリオだったので、ファンド・オブ・ファンズ全体の電気機器のエクスポージャーが高くなりすぎたということから、一時的に比率を落としました。99年のハイテク相場の時には良い実績をあげたファンドですが、その当時に比べてもリスク管理の信頼性が低下したと考えました。
独自性ということにはならないのですか?
そこまでリスクをとることを想定したファンドであったかどうかということですね。それまでの局面では業種の偏りが抑えられたファンドでしたから、特定業種への傾斜が進んでいったのは投資家にもある種の混乱を与えたと考えました。本来こういう運用をしようと思っていると投資家に伝え、かつ実際にその通りにやっていることを示すことが運用会社の信頼に結びつくと思います。今は、どういう考えで業種比率を管理しているかを確認しており、個別銘柄の調査について独自性が高いというプラス面を評価して、再び組み入れを増やしています。
現在日本株ファンドで一番組み入れ比率が高いファンドは何ですか?
「シュローダー日本ファンドF」です。リサーチの手法が一貫しており、バリュエーションを重視した銘柄選択の態度が明確であるなど、情報収集・分析が一貫して行われていることを高く評価しています。現在の運用担当者の銘柄選択能力に依存するところも大きいですので、交替となれば影響は避けられないでしょうが、担当者の長年に及ぶ経験と実績はそのリスクを考慮しても高く評価できるものと考えています。
それでは、これまでのマイストーリーの運用実績を教えて下さい。
平成13年8月30日に設定されて以来、今年2月末までの累積パフォーマンスは以下のとおりです。
株25 |
株50 |
株75 |
株100 |
日本株100 |
|
| ファンド | −3.5% |
−11.5% |
−19.7% |
−25.9% |
−22.8% |
| ベンチマーク | −2.6% |
−12.7% |
−22.5% |
−31.2% |
−28.8% |
| 超過収益 | −0.9% |
1.2% |
2.8% |
5.3% |
6.0% |
設定来のベンチマーク比で見ると、株25以外は好調なようですね。好調な原因はなんですか?また株25だけ不調だったのは何故ですか?
日本株の中で設定来で大きく寄与したファンドは「シュローダー日本ファンドF」で、ここ半年は「BGIジャパン・バリュー・ファンドF」の寄与が大きくなっています。日本株ファンドはほとんどがベンチマークに比べて好調です。日本株100はこの1月、2月に初めてTOPIXに対して連敗したのですが、それまでは昨年8月から5連勝していました。株25がふるわなかったのは、特に、「クレディ・スイス・グローバル・ボンド・プラスF」のリターンが低かったのが影響しました。昨年このファンドで、社債、特に投資適格未満のハイイールド社債セクターへの投資比率が高かったのと、それら社債セクターの中で、銘柄の選択が不調であったが影響しました。
何故、この1月、2月は株式のファンドも良くなかったのですか。
投資先のファンドでボトムアップアプローチをしているものには、どうしても優良株が多くなりがちなファンドがあります。1、2月は、特に値がさの輸出関連の優良株がふるわなかったことがマイストーリーの不調の要因です。これには、年金代行返上の影響もあったと思います。
年金代行返上の影響というのは、年金資金の解約によりファンドから資金が流出したということですか。
代行返上とは、厚生年金保険の一部を代行して運用していた年金基金がその代行部分を国に返上することです。これらの基金には、アクティブ運用を行う運用機関に株式運用を任せるところも多いのですが、返上のために市場で売却されています。そのため、アクティブ運用者好みの優良株が大きく売られた傾向があるようです。でも、マイストーリーでは、アクティブ運用者の選定においても独自の銘柄選択力に注視していますし、投資スタイルやアプローチもバリューやクオンツ系のものにも幅広く分散していますので、代行返上は一過性の影響と考えています。
イラク攻撃の影響などで、比率を変えるということはありますか。
いいえ。それは投資先のファンドの仕事で、私たちのやることではありません。
現在の純資産総額はどうなっていますか?
「マイストーリー」には公募5ファンドの他、変額年金向けの私募ファンドや確定拠出年金向けのシリーズもあります。各シリーズ・各コース別の2月末時点での純資産総額は以下のとおりです。
株25 |
株50 |
株75 |
株100 |
日本株100 |
合計 |
|
| 公募 | 5,307 |
2,405 |
994 |
581 |
1,889 |
11,176 |
| 変額年金 | 7,566 |
9,620 |
1,637 |
1,555 |
10,798 |
31,176 |
| 確定拠出年金 | 401 |
768 |
688 |
7 |
2 |
1,865 |
| 合計 | 13,274 |
12,793 |
3,319 |
2,142 |
12,689 |
44,217 |
ファンド・オブ・ファンズはコストが高いという印象があるのですが・・。
ファンド・オブ・ファンズ自体の信託報酬がバランス型(株25・株50・株75)で0.6%、株式型(株100・日本株100)は0.75%となっています。これを販売会社・運用会社・受託会社で分けるわけですが、この部分がファンド・オブ・ファンズのメンテナンス機能など付加的なサービスを受けていただく分の費用とお考えください。この他に、投資先の各ファンドの信託報酬がかかってきますので、合計で1.1〜1.55%前後となっています。日本株100の場合で、最近のポートフォリオを前提とすると、実質1.53%程度という試算で、日本株アクティブファンドとしては、平均的な水準と思います。各ファンドの信託報酬については、信託報酬控除後でリターンが期待できるかどうかをしっかり見ています。販売手数料はバランス型が2%、株式型の2本が3%で、解約・スイッチング時の信託財産留保額は0.25%となっています。
各ファンド間でのスイッチングは、無料で行えるのですか?
バランス型と株式のグループ内でのスイッチング、そして株式型からバランス型へのスイッチングは無料でできます。但し、バランス型から株式型へのスイッチングには1%の手数料をいただいています。これは、当初の販売手数料が異なっているためです。
どうもありがとうございました。
【本を読もう!】

