インタビュー

 

加藤秀樹氏(2月19日)  LGT投信・投資顧問株式会社投資信託部長

「GT グローバル 世界債券ファンド」の運用方針と運用実績について

 

今回は、LGT投信・投資顧問株式会社の投資信託部長加藤秀樹氏に、「GTグローバル 世界債券ファンド」の運用方針、運用実績等について話を聞いた。「GT グローバル 世債券ファンド」は、昨年4月に設定されたグローバルボンドファンドで、設定来の分配金込み騰落率は8.24%(2月6日現在)。


 GTグローバル 世界債券ファンドの特徴、目的は何ですか?

 OECD諸国の国債を中心に投資し、信託財産の着実な成長を目標に積極的に運用するファンドです。厳密に言うと必ずしもOECD加盟国でなければいけないというファンドではありません。資産配分表を見るとわかりますが、例えば南アフリカの資産が3.6%入っています。総資産の10%以内であれば、トリプルB格(BBB)の債券も組み込み可能です。ただ、そういうものの比率は低いです。

 

 全て債券で運用しているわけですね。

 はい、そうです。しかし、分類でいうと「公社債ファンド」ではなく、「株式投資信託」のバランス型(証券投資信託協会の分類)に分類されています。理由は、債券に投資するファンドでもリスクがあるためです。投資先が債券だからリスクがないというものではありません。リスク・リターン分類でも「3」の値上り益・利回り追求型に分類してあります。

 

 具体的にどのようなリスクと考えればよいですか?

 2つあります。1つは為替リスク。そして債券の金利リスク。公社債投資信託に分類することによって、元本保証されているような誤解を受けたくないという意味でも、株式投資信託に分類してあります。

 

 債券型ファンド、しかもファンド名が「世界債券ファンド」となっていて、株式投資信託に分類されていると不思議に思う投資家もいるかもしれませんね。

 そうですね。確かに、約款上は株式組入限度70%未満となっていますが、実際には株式は組み入れていませんし、今後も組み込みません。いわゆる商品分類上の形式にすぎません。

 

 世界的に言う、グローバル・ボンド・ファンドということですね。

 そうです。

 

 現時点での債券ファンドの強みというのはどういうところにありますか?

 株式のインデックスであるMSCIインデックスと債券のインデックスであるJPモルガンインデックスを見ると明らかなのですが、過去7〜8年の間ずっと債券の方が株式よりずっとよいパフォーマンスをしてきました。それは、世界的に見て、インフレがなくなってきているからです。インフレ率が下がれば、名目金利は下がり、債券は上昇するということです。

 

 その状況に変化はなく、世界債券ファンドのようなグローバルボンドファンドにとっては好機ということになるわけですね。

 そうです。確かに、国別の市場環境の差はある程度はありますが、世界全体で見ると、債券投資の妙味は続くということです。

 

 現状の国別のアセット・アロケーションはどうなっていますか?

 米国44.7%、イギリス14.1%、ドイツ12.7%、以下カナダ、南アフリカ、イタリア、オーストラリア、スウェーデン、ニュージーランドと続きます。

 

 どういう要因でこの資産配分となっているわけですか?

 基本的に各国ディスインフレ、すなわちインフレが低下するという過程の中で、実質金利が高いとことを狙い、かつ為替益の狙えるところということです。そうなると、必然的にドルブロック、つまり米国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドということになります。

 

 英国も、やはり対円での為替益が狙えるということですか?

 基本的に我々は円が最も弱い通貨であると見ています。ですから、当然英ポンドも対円では上昇すると見ています。英国の場合、昨年の末くらいから金融緩和の話が出てきましたが、それでも対円ではポンドの方が強いと予想はしています。これまでは、金融引き締めがあり、ポンドが強かったこともあり、このファンドはポンド高の恩恵を受けてきました。ただ、金融緩和の話がでてきて、ポンド安傾向となっても、実質金利が高いため、魅力のある国であると考えています。

 

 国別配分で、その他の変化はありますか?

 米国の割合が徐々に増えています。

 

 要因は?

 米国の金利の低下が期待できるということです。デュレーションも長めにしてあります。

 

 ニュージーランドやオーストラリアへの配分については如何ですか?

 特に大きな変化はありませんが、若干の方向転換をするタイミングというのは検討しています。昨年、金融緩和が継続的に行われてきて、景気も回復してきましたし、財政赤字も削減されてきました。これまでは、金融緩和の流れに沿って、資産配分を増やしてきましたが、どうやら金利の底打ちした感がでてきました。ですから、配分という面では現状維持か、やや減少傾向ということになると思います。

 

 欧州への配分はどうですか?

 債券については弱気で見ています。確かに、長期金利については欧州全体において欧州通貨統合の目標値に収斂してきていますから、欧州通貨統合が上手くゆく可能性はありますが、欧州通貨統合に向けて、短期金利の変動による金利リスクと為替市場の混乱も考えられます。そうなると、あまり欧州への配分を増やす状況にはないと考えています。

 

英国は、年末くらいからポンドがやや弱くなりそうですが、実質金利は高いですし、引き締めも最終段階にありますから、債券を買うタイミングとしてはよい時期だと見ています。ですから、米国と英国が今年の中心となる市場と考えています。

 

 日本への配分はありませんね。

 もちろん組み入れは可能なファンドですが、組入れていません。

 

 どうしてですか?

 日本の金利は上昇すると見ています。たとえ、金利が上がらないとしてもこの低金利では既に債券投資の妙味は日本の債券市場にはありません。

 

 今年日本の金利が上昇すると予想されていますか?

 今年の後半から金利は徐々に上昇してゆくと予想しています。

 

 南アフリカが3.6%組み込まれていますが、南アフリカの債券市場というと日本人にはまり馴染みがありませんが、この組み入れの要因というのはどこにあるのですか?

 南アフリカランド(南アフリカの通貨)が3年程前の政権交代時の混乱の際に売られ、かなり割安感が出たということ。それと、南アフリカの債券がGDRという形でロンドンに上場されるようになり、南アフリカ国債の流通量が増えたことが挙げられます。加えて、実質金利が高いというメリットもありました。ですから、政権が安定していれば、インカムゲインを十分狙っていけると判断しました。

 

 その他、このファンドの特徴はありますか?

 ええ、この世界債券ファンドは昨年4月に設定されたファンドで、日本では新しいファンドですが、このファンドも 「GTグローバル インベストメント オープン」 がそうであるように、当ファンドと同じ内容のファンド「GT BOND」というファンドが海外でドル建てで運用されており、こちらは1977年に設定され今でも運用が続いています。

 

 ずいぶん長い歴史を持つファンドですね。この「GT BOND」が「GT 世界債券ファンド」と全く同じ運用方針、内容ということですか?

 はい、そうです。同じ方針で、同じファンドマネージャーが運用しています。違いは、日本からの場合、円建てのファンドであるため、為替の変動の影響を受けるということだけです。

 

  GT BONDは1977年から運用されているということですが、運用実績はどういう状況にありますか?

 1977年の設定来の騰落率は922%です。平均で年率11.8%のパフォーマンス(ドルベース)です。

 

 かなり運用成績がよいファンドですね。

 ええ、債券ファンドとしてはよい結果だと思います。

 

 世界債券ファンドについては、ベンチマークをJPモルガン世界国債指数をベンチマークとしているということですが、この指数について教えて頂けますか?

 これは、債券の場合は、JPモルガン指数が世界中で広くベンチマークとして利用されています。このJPモルガン世界国債指数というのは、国債を対象とした指数です。

 

 この指数の資産配分と「世界債券ファンド」の資産配分はかなり違いますか?

 かなり違います。そして、ベンチマークの資産配分にこだわらない点はLGTの特色のひとつということです。

 

 ベンチマークをアウトパフォームはしていない状況ということになりますか?

 設定来というと、そうなります。これは、為替の要因です。指数はドル建てですが、世界債券ファンドの場合は、もとの資金が円ですから、為替の変動の影響を受けています。昨年5月の円高の影響があります。

 

昨年7月に設定された三洋証券専用ファンドのクレッシェントというファンドがありますが、これは、内容的には世界債券ファンドと同様のファンドです。です。ただ、設定時期が昨年7月、つまり5月に円が急騰した後に設定されたファンドです。こちらは、昨年12月末に配当を行なったのですが、配当額は1687円、年率換算すると32%の上昇ということになります。ですから、世界債券ファンドも7月以降の上昇率は32%程度となります。

 

 世界債券ファンドの為替ヘッジについては、アクティブにヘッジするということになっていますが、現状の為替ヘッジ比率は0%になっています。これはどうしてですか?

 これは、我々が円安を予想しているからです。

 

 ドル・円は130円台まで上昇した後、今125円程度までもどしていますが、今後再びドル高円安に動いてくると予想されているのですか?

 短期的に円高局面がある可能性はいつでも考えられますが、中・長期的には円安傾向が続くと見ています。基本的には日米の金利差、日本の貿易収支の減少が要因です。加えて、確固たる景気対策の欠如ということになります。現在の景気対策というのは、選挙対策、そして株価対策の発言の域を出ていないと見ています。今後、景気対策がきちんと履行されるかを見極める必要があります。特に3月の年度末あるいは、選挙以降の不透明感は払拭されていません。

 

基本的にPKOがそうであったように、口先介入で株価を支えるよりも、株価は市場にまかせ、企業の大幅なリストラ、不良債権の処理等を思い切って行なってしまう必要があると思います。現時点でわかっている不良債権に加えて日本の銀行がアジアに対して持っている債権が約30兆円あると試算しています。そのうちの25%相当の8兆円が回収不能と言われています。それが更に加わってくる可能性があります。

 

 これは、これまでに発表された不良債権には含まれていない分ということですか?

 そうです。今後連結ベース等で明らかになってくると思います。こういうものの膿を公的資金等により助けるというのは一つの方法かもしれませんが、我々は思い切った不良債権処理やリストラがなければ日本を買うのは難しいと考えています。

 

 株を含めてということですね。

 ええ、株式も円も含めてということです。もう一つ円を買えないという理由は、公定歩合が史上最低レベルにある現在において、金融当局は景気刺激のための金融政策をとる余地がありません。そうなると、打てる手は円安を進めるということだけなのです。

 

ですから、円安が大幅に進んだ場合、株価が下がってリストラが行われた場合、きちんとした景気対策がとられた場合、この3つの条件が揃わなければ日本を買うということはできないということです。

 

 つまり、それまでは、この世界債券ファンドの為替ヘッジについてもヘッジをかけることはないということですね。

 ええ。ヘッジをかけるには、金利差分のコストがかかります。そのコストはファンドの基準価額のマイナス要因となりますから、コストをかけてまで為替ヘッジをする要因がないと判断しています。

 

 配当についてはどういう状況ですか?

 年4回(1月、4月、7月、10月)決算があり、配当が支払われます。

 

 すでに配当があったのですか?

 昨年4月に設定して、同年10月に6ケ月のクローズド期間開けとともに、239円の配当を支払いました。その後、今年1月に470円の分配を支払いました。

 

 ファンドの分配金込み騰落率で見ると、過去6ケ月で15%を超える上昇を見せています。これはかなりよいパフォーマンスと言えると思いますが、この要因は何でしょうか?

 基本的には、債券が株式と比較してアウトパフォームするという環境の中で、このファンドの資産配分が上手くいったということです。特に、ドルブロックとイギリスの債券市場が我々の予想したように堅調に推移したということです。加えて、円安という見通しが正しかったというのもよいパフォーマンスの要因でしょう。

 

 アジアの債券が入っていなかったこともよいパフォーマンスの要因ということでは?

 確かにそうですが、アジアは債券市場というのが限られています。短期債はある程度の市場がありますが、それを組み込むメリットはないと判断しています。

 

 その他に要因は?

 当社では、株式を対象とするファンドの場合は、トップダウンでアセットアロケーションを決め、ボトムアップで銘柄を選択しますが、債券を対象とするファンドの場合、各国のファンダメンタル分析、リターンとリスクの判断と資産配分の決定、そしてそれをモニターするというのが基本的な投資決定の流れがあります。この3つのプロセスを絶えず行なうことにより、投資機会をいち早く見つけるという体制が確立されている点が大きいと思います。

 

 各国のファンダメンタル分析というのはどういうものですか?

 例えば、先進国の場合、各国について、実質成長、インフレ、財政政策、金融政策、経常収支、イールドカーブ、実質利回り、政治、相場環境を分析し、スコアを付けるという手法です。もちろん、エマージングカントリーについても、同様の項目毎に分析を行ないます。

 

 その分析が優れており、それを基にした資産配分が功を奏しているというわけでうね。

 そういうことになります。

 


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