インタビュー
今回はメリルリンチ・インベストメント・マネジャーズ株式会社運用部株式チームのヴァイス・プレジデントである杉浦信吾氏に、同氏の所属する日本株式スペシャリストチームが運用する「メリルリンチ日本小型株オープン」について話を聞いた。
「メリルリンチ日本小型株オープン」は1998年7月1日に運用が開始された日本の小型株を主な投資対象とする追加型株式投資信託。2003年10月末現在において、設定来の騰落率が+194.0%、過去5年の騰落率が+219.0%という高いパフォーマンスを達成している。販売会社は伊予銀行、岩手銀行、静岡ティーエム証券、SMBCフレンド証券、十六銀行、メリルリンチ日本証券、ソニー銀行、日興コーディアル証券、広島銀行、UFJつばさ証券。インタビューは2003年11月26日に実施した。
メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズ株式会社のホームページ http://www.mlim.co.jp/
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「メリルリンチ日本小型株オープン」は、ファンド名から日本の小型株に投資するファンドであることはわかりますが、もう少し詳しくファンドの概要についてお聞かせ下さい。
最初に、最も重要であるファンドのコンセプトからご説明しましょう。これは我々の哲学とも重なっているものです。
会社の投資哲学ということですか。
いいえ、運用チームの運用哲学です。このファンドは、運用部の中の「日本株式スペシャリストチーム」が運用しています。このチームは国内の中小型株式の調査・分析や運用を担当しており、このチーム独自の運用哲学と重なるという意味です。
わかりました。
ファンドのコンセプトは、中長期的に日本で起きている構造的変化から恩恵を受ける企業に投資を行うというものです。この構造的変化には、社会的、あるいは経済的などあらゆる構造的変化が含まれます。我々はこれを「新しい日本の誕生」と呼んでおり、これが運用のコンセプトとなっています。こういった明確なコンセプトを持っていることが我々の強みであると考えています。つまり、ファンドの投資対象は小型株ですが、小型株であれば何でも投資してよいというのではなく、このコンセプトに沿った銘柄への投資を徹底することで、長期的にはより良いパフォーマンスを達成できると考えているのです。
このコンセプトは「メリルリンチ日本小型株オープン」だけのものですか。
「メリルリンチ日本小型株オープン」については、1998年の設定時からこのコンセプトに従って運用してきましたが、実は、同じコンセプトで別のファンドを海外の投資家向けに運用しています。こちらは、既に15年以上の運用実績があります。したがって、「新しい日本の誕生」に投資するというコンセプトは、マーケティングトークとして新たに創り上げたものではなく、これまで実際に小型株の運用の中核としてきたコンセプトであるのです。
ファンドの投資対象は小型株ということですが、このファンドにおいて小型株とはどういう株式を指していますか。
時価総額が概ね300億円から3000億円の銘柄を中心としてとらえています。もちろんこの幅から外れることもありますが、これを基本にしています。
投資スタイルとして、成長株か割安株かという分け方があると思いますが、このファンドはどうですか。
あくまでも構造的な変化の恩恵を受ける企業、すなわち、利益成長が期待できる企業に投資することが目的です。
「日本の構造的変化から恩恵を受ける小型成長株に投資する」というコンセプトは明確ですが、コンセプトというのは概念的であり、それが実際の運用、あるいは運用プロセスにどう反映されてゆくのかお聞かせ頂けますか。
運用プロセスの話をする前に、ファンドの投資哲学についてご説明しましょう。
先ほどお伺いしたのは「コンセプト」であり、それを基本としたファンドの投資哲学ということですね。
そうです。まず、大前提となっているのは、中小型株市場には非効率性が存在しているということです。中小型株市場に含まれる銘柄の数は非常に多く、その中には、アナリストや市場が見落としている銘柄があります。そのために、ミス・プライシングが起こる。そういう銘柄を見出し、独自の徹底した分析を行うことによって、ベンチマークを上回る超過収益を得ることが可能となるということです。
この大前提があって、具体的な投資方針はどういうものですか。
この前提をより具体的にしたものが投資方針です。具体的には@中長期的な投資テーマを大きな枠組みとする、A質の高い調査に基づいた個別銘柄選択を重視する、B力強い利益成長が見込まれる銘柄に重点を置く、C経営者の資質および株主価値を重要視するというものです。
最初の「中長期的な投資テーマを大きな枠組みとする」というのはどういう意味なのですか。
投資テーマを枠組みとするというのは、他社の運用とは異なる点であり、我々の強みでもあるのです。この投資テーマが、先ほどお話した「構造変化から恩恵を受ける」企業群をより具体的に定義したものです。これについては、後ほど詳しく説明させてもらいます。
はい、わかりました。
「質の高い調査に基づいた個別銘柄選択を重視する」というのは、ボトムアップアプローチによる個別銘柄選択により超過収益を求めるということです。トップダウンで投資配分を決めて、それを大きく変えるような運用は行いません。「力強い成長が見込まれる銘柄に重点を置く」というのは、投資スタイルとしてはグロース、つまり成長株重視であるということです。そして「経営者の資質および株主価値を重要視する」というのは、我々は投資する上で、経営者の資質を最も重要視しているということです。
投資哲学の実際の運用や銘柄選択への応用については、後ほど詳しくお伺いしたいと思いますが、次に運用プロセスについてご説明いただけますか。
時価総額300億円から3000億円の小型株は東証第一部、二部、東証マザーズ、JASDAQ、その他の市場で約820銘柄存在しています。これ以外の銘柄も投資対象として考えていますので、1000から1500銘柄程度が投資対象ユニバースとして存在していることになります。これらから銘柄を絞り込んで最終的には50〜80銘柄程度のポートフォリオを構築しています。
ファンドはボトムアップアプローチということですが、もう少し具体的に銘柄選択までのプロセスをお聞かせ頂けますか。
運用プロセスにおいて重要になるのが先ほどからお話している投資テーマと個別銘柄選択です。ボトムアップアプローチによる個別銘柄選択と世界的なトレンド、つまり、グローバル化、少子高齢化、情報化・知識社会化といったトレンドに基づいた投資テーマを組み合わせて組入銘柄を決定することにより、より高い超過収益を獲得できると考えています。
この投資テーマというのは、このファンドを設定するにあたって、運用チームが創り上げた、あるいは見出したテーマということですね。
そうです。「新しい日本の誕生」というコンセプトがあって、そのコンセプトにそった投資テーマとして定義したものです。
それでは、世界的なトレンドに基づいた投資テーマとはどんなものですか。
現在6つの投資テーマを基本としています。情報ネットワーク産業、新メディア産業、新金融サービス産業、新健康サービス産業、アウトソーシング産業、新成長ニッチ(隙間)産業というものです。
1つずつもう少し詳しくご説明頂けますか。
情報ネットワーク産業というのは、端末のデジタル化やインターネットの普及により誕生するネットワーク関連機器やサービス産業のことです。端末がデジタル化され、90年代後半にインターネットが生まれ、そこにあらゆるものが繋がり、ネットワークが構築されました。これは非常に大きな変化でした。新しいハードの需要、サービスの需要が生まれ、そこに企業の成長機会が生まれると考えたのです。
新メディア産業というのは?
インターネットなどによりネットワークが構築されることによって、そこに流すコンテンツが生まれ、エンターテイメントだけでなく、教育などありとあらゆるコンテンツ及びコンテンツサービスが生まれます。つまり、全く新しい業界が生まれると考えたのです。今でこそ、コンテンツ産業というのは当たり前のものになりましたが、5年前は、IT革命とは言われていたものの、どういう企業群に投資するべきかというアイデアは明確ではありませんでした。コンテンツサービスを成長分野と考える人は少なかったのです。最近では地上波デジタル放送が開始されますが、これによっても新しい業態や産業が生まれますので、そういう分野の企業も情報ネットワーク、あるいは新メディア産業の投資機会としてとらえることができます。
新金融サービスというのはどういうものですか。
日本においては個人の金融資産がたまっているものの、一方で、不良債権問題や規制の問題もあって、お金の行き場がありません。しかし、欧米では、魅力的な金融商品やサービスが既に存在しています。ですから、今後は、日本においても新しい金融商品やサービスが生まれてくると考えました。そこに投資機会があるはずだと考えたのです。
新健康サービスはどういう分野ですか。
これは、先ほどお話した人口動態のシフト、つまり少子高齢化というトレンドが、この新健康サービスという産業を推し進めているわけです。戦後日本はずっと高度成長を続けてきましたが、今では成熟期にあります。国民が求めているのは、ひたすら働くことではなく、豊かな生活である、これが変化を後押ししているのです。そして、この少子高齢化がヘルスケア産業を支えているのです。ただ、日本には投資できるヘルスケア関連銘柄というのがほとんど存在していません。あるのは伝統的な薬品メーカーであるとか、医療機器のデバイスを製造している企業だけなのです。一方で、欧米を見ると、例えば、病院経営に特化した企業であるとか、病院に対してコンサルティングを提供している企業など、日本では考えられないようなサービスを提供している企業が上場しています。しかし、日本でも競争原理や規制緩和によって、こういうサービスが生まれてくると期待できるわけです。
確かに、そういう分野のサービスについては、日本では、今まさに多くのベンチャーが生まれつつあるという状態ですよね。まだ、上場という段階には入っていない企業がほとんどですね。
そうですね。ただ、我々は長期で見ていますから、今、そういう企業を見出しておいて、上場などにより投資機会が生まれれば、直ぐに投資ができるわけですね。こういう企業はIPOしたばかりの段階ではビジネスモデルが確立されていませんが、そういう企業の持つ可能性というのをきちんと捉えられるよう、絶えず議論を重ねているのです。
将来、まさに長期的に期待できるというわけですね。
そうですね。ただ、新健康サービス産業には、他のサービスも対象として考えています。
どういう分野ですか。
豊かなライフスタイルを求めるという傾向において、例えば、お金を持っている高齢者を対象としたレジャー産業やサラリーマンが資格を取得するといった生涯教育関連の銘柄ですね。競争激化や終身雇用の終焉により、自分の価値を高める必要性が生じており、そういう構造的変化がこの分野の成長を後押ししているのです。
アウトソーシングは?
これは世界的な傾向として顕著に現れていました。アウトソーシングを活用することで企業が収益性を向上させる、もしくは、アウトソーシングを提供する企業群が生まれると考えました。日本は、90年代の前半までは、大企業の場合は子会社を利用して全てを企業グループ内で行ってしまうというのがほとんどでした。しかし90年代後半からノン・コアなビジネスをアウトソーシングするという動きが始まりました。欧米を見ていれば、これがトレンドであることはわかりました。そして、それが日本でもトレンドとして生まれることは明らかであると考えたのです。
新成長ニッチ産業というのはどういうものですか。
これは一つの大きな成長分野ではなく、小さな成長分野群です。まだ独立させて一つの投資テーマになる前のものです。
将来格上げされて、一つの投資テーマとして台頭してくる可能性をもった分野の集合体ということですね。
そうですね。
これらのテーマは設定当時から変わらないものですか。
新健康サービス産業というテーマは、2000年に新たに加えたものです。投資テーマが大きく変わることはありませんが、時代の変化に伴い、必要と判断すれば新たなテーマを追加することもあります。
これらの投資テーマが、御社が考える「新しい日本」において中長期的に成長が期待できる分野であるということですね。
そうです。そして、この投資テーマはあくまでも5年10年といった中長期的な投資テーマであり、頻繁に変更するものではありません。ただ、新健康サービス産業については、2000年に新たに加えたテーマです。他のテーマについては、ファンド設定時より一貫しています。
世界的なトレンドが存在し、そこから、ではこれらの投資テーマを基本として運用しようということになったのはどういう背景があったのですか。
我々が世の中を眺めて、また、企業訪問を行ってゆく中において、背景にある流れ、つまりこういう分野の成長が期待できると考えるに至ったのです。
投資テーマについてお伺いしてきましたが、運用プロセスに戻ると、投資対象ユニバースに含まれる銘柄について、最初に投資テーマに合っているかどうかというスクリーニングを行うのですか。
いいえ、そういう数値的、あるいは機械的なスクリーニングは行いません。あくまでも、個別銘柄ベースで考えます。テーマが力を発揮するのは、個別銘柄を見る際ですね。小型株投資において最もリスクがあるのは、経営者と面談をするときに、当然、皆さん社長様ですから、素晴らしいお話を聞かせてくれるわけです。すると、その社長、あるいは企業に惚れ込んでしまうことが多々あります。一歩引いてみると、例えば、この業界は縮小傾向にあるのだから・・ということが見えてくる。ですから、投資テーマを常に認識していることで、一歩引いて物事を大きな目で見ることが可能になるのです。それを運用プロセスで行っています。
もう少し具体的に説明して頂けますか。
例えば、投資テーマの一つのアウトソーシングで考えてみましょう。運用チーム内で、定期的に会議を開いて、アウトソーシングは日本においてどんな影響を企業に与えるか、どう活用されてゆくかを議論します。企業訪問を行い経営者に会う際に、アウトソーシングという角度からのみインタビューを行うわけではないのですが、話の中で経営者がアウトソーシング絡みの話をした場合には、我々は、そこにすっと入ってゆくことができるわけです。あくまでも大きな枠組みがあるということであって、そこからフィルターをかけるわけではないのです。
ところで、投資対象ユニバースが1000から1500銘柄あるということでしたが、それをアナリストが絶えずモニターしているわけですか。
モニターはしていますが、全ての銘柄の会社訪問を常時行っているわけではありません。組入銘柄を含めて細かくフォローしている銘柄は約150銘柄です。
その150銘柄はどのように選択するのですか。
ボトムアップアプローチですので、機械的なスクリーニングは行っていません。あくまでも様々な情報の分析によって、運用チームが独自に投資候補として汲み上げた銘柄ということになります。証券会社からおもしろい銘柄だとして聞いた銘柄を調査してみた結果、投資候補として含めるべきだと判断する場合もありますし、投資テーマを議論する中で上がってくるもの、会社訪問によって新しいアイデアが生まれる、様々なメディアや記事、ニュースなどから銘柄が浮かぶことがあります。機械的なフィルターをかけるのではないのです。あらゆる形で情報を収集し、その中から投資候補として銘柄を選択するのです。
ただ、当然、候補の150銘柄に含めるのは投資テーマに合致したものだけですね。
もちろんです。こういった大きな波をとらえていって徹底してそこに投資することによって短期的な動きにぶらされることなく、大きな成長を捉えてゆきましょうという考えなのです。その根本には、日本では構造的な大きな変化が社会的にも経済的にも起こっているという確信があるのです。しかも、例えば、四半期ベースの業績の予測や成長率といった短期的な変化を予測するよりも、日本の長期的な大きな構造的変化というのは比較的予測しやすい変化であるので、それに後押しされている投資テーマというのは、長期的な成長が期待できるのです。
確かに、大きな変化の方が予測しやすいのかもしれませんね。しかし、そこまで長期的な見方をすると、おのずとファンドにおける個別銘柄の保有も長期になるということですよね。
そうです。このファンドでは、最低3年間成長が期待できる銘柄しか保有しません。短期的な売買は行いません。多少の株価のぶれについては無視して、あくまで長期保有のスタンスです。これは他社のファンドとは異なる点だと考えています。
では、次に、運用プロセスの中で、投資テーマと共に重要視されている個別銘柄選択についてお聞かせ下さい。
個別銘柄においては、あらゆる角度から見るというのが大前提ですが、特に着目している点は2点あります。1つは成長力と競争力です。まず、ビジネスモデルを徹底的に検証します。ビジネスモデルを理解する、会社の商品・サービスの中身、同業他社の状況などを徹底して調査します。その中で、コア・コンピタンスがあるかどうか、つまり、競争相手に真似のできない商品・サービスであるか、プライシング・パワーがあるかどうか、つまり、市場価格を決定できる強い商品・サービスを持っているかをチェックするのです。
しかし、先ほどの投資テーマの中の、情報ネットワーク産業や新メディア産業に該当するような企業、例えば、携帯電話やIP電話、インターネット関連というのは、最近では価格競争が激しく、一瞬市場シェアを獲得できても、直ぐに追いつかれてしまうというケースが多く、プライシング・パワーを持つ企業というのはないのではないですか。あまりに変化の激しい分野をどうとらえるのでしょうか。
捉えるどころか、そういうところには投資しません。
いくらファンドの投資テーマに合致していて、新しい成長分野といっても、あまりに激しい競争が起こっているところには投資しないのですね。
そうです。競争が激しすぎ、供給過剰であり、何がビジネスモデルなのかわからない、いつ事業が行き詰まるのかわからないようなところには投資しません。たとえば、一般的に価格下落が激しいテクノロジー分野では、高い市場シェアが3割4割あるを有する、あるいは特定のニッチの部分では他社には絶対負けないという企業にのみ投資します。あるいは、あまりにも業界の成長が大きいので、価格競争を相殺できるという場合、または、企業が意図的に価格を下げても、ビジネスモデルが確固たるもので、利益率が悪化しないという場合には投資します。それほど、我々の投資基準というのは厳しいのです。
構造的な変化であって、投資テーマとしてはファンドの趣旨に合致しても、個別銘柄の選択基準をクリアしていなければ投資しないのですね。
そうです。
ファーストリテイリングについては、一時的に株価が大きく上昇し、その後また大きく下げるという局面を向かえましたが・・・
流通業界、特にアパレル業界というのはかなり非効率な業界です。これを破壊し、高い利益率を確保し、良い商品をより安く提供できるというのは、優れたビジネスモデルなのです。これが本来のファーストリテイリングのコンセプトなのです。野菜という分野に参入しましたが、この農業という分野も非常に非効率な業界で、それを破壊するという試みは、これこそが我々の考える新しい日本の姿なのです。フリースのブームと反動のような一時的な現象はあったとしても、高い利益率とキャッシュフローを生み出すビジネスモデルはすばらしいものだと思います。
あくまでも長期的視野で見るということですね。
企業が何をしようとしているか、という根本的なところを見極めるのです。短期的なぶれではなく、長期で何が起きているかを大切にしたいのです。
では、個別銘柄選択において重視しているというもう一つの点は何ですか。
経営者の資質です。これは我々にとっては最も重要な点なのです。
どうしてですか。
過去数年を見ると明らかなのですが、日本経済や海外の経済を含め短期的な外部環境は大きく変化します。ですから、今現在のビジネスモデルを細かくチェックしても、外部環境が変化することで、そのビジネスモデルは全く通用しなくなる可能性もあります。我々は経営者の資質というのを、「外部環境の変化に機敏に適応する能力」と考えています。こういう経営者がいれば、外部環境がどんなに変化しても、ビジネスモデルを変えて、変化に対応した経営が可能になるのです。すなわち、長期的に安心してその株式を保有していられるのです。
でも、資質を見抜くのは非常に難しいのではないですか。
おっしゃる通り非常に難しいことです。ここが我々のノウハウの凝縮された部分でもあるのです。資質に関しては、企業家精神、つまりリスクをとってでも経営する意欲があるか、株主の利益を重視しているかどうか、そして、利益だけでなくキャッシュフローを生み出しているかという点を見極めます。
経営者と面談する場合に、資質を見抜くためにはどんなことを聞くのですか。
例えば、経営者の過去の経歴、社長就任前および就任後の成功体験や失敗体験、どういうことをこれまで成し遂げてきたかを過去に遡ってお聞きします。
何度もお会いしたり、あるいは講演会や著書を読んだりもするのですか。
はい、その経営者に関するあらゆる出版物や新聞・雑誌記事、講演会の資料全てを読みこなします。もちろん面談も何度も行います。実際に経営者に会ったときには、本人にしか答えられないような質問をします。例えば、夢のような個人的な話をすることによって、そういうものは数値には落とし込めませんが、経営者の資質に確信を持つことができるわけです。
具体的に、優れた経営者だと見ている方はどんな方ですか。
大勢いらっしゃいます。保有している銘柄については全て該当します。具体的には、例えば、上位組入銘柄を見ていただければよいでしょう。
上位組入銘柄のトップ10を見ると、ユニデン、ゴールドクレスト、ニッセン、第一興商、ケンウッド、太平洋セメント、ファーストリテイリング、ファンケル、ユナイテッドアローズ、有沢製作所と続いていますね。
業界構造を破壊していく意欲、新しいものにチャレンジする、自分の信念を貫いているという点において、それぞれの経営者を高く評価しています。例えば、ユニデンについて言うと、同社はコードレス電話の会社ですが、外部環境の変化への対応が非常に早いですね。9月11日のテロの直後に、在庫調整を実施して、減産するという判断を大胆に下しましたが、その判断は他社よりずっと早かった。また、商品開発・新規事業への参入のスピードも早い、そのスピードを高く評価しています。
太平洋セメントというのは少し意外な感じがしますが。
確かにセメント会社というと、古い業界のように聞こえるでしょうが、それだけではありません。厳しい外部環境の中でも、あらゆる手を打ってきた。リストラ、合理化、そしてエコセメントといった新しい商品・ビジネスを開発している。後向きのことと前向きのことをバランスよく両方とも手がけてきたのです。
経営者の資質を重視していることはわかりましたが、そうなると、経営者が交代すると、保有についても見直しを実施するのですか。
見直します。しかし、必ずしも、経営者が交代したから、保有銘柄を売却するということにはなりません。それは、会社をきちんとフォローしていれば、予想外の経営者に交代されるということにはなりません。また、保有銘柄については頻繁に会社訪問をしていますので、経営者だけでなく、後継者候補の方ともお会いしていることが多いのです。
これまで、お伺いした点は、数値にはできない部分であると思いますが、例えば、成長力を判断する場合に重視している数値というのはどういうものですか。
これは極めて一般的なものです。3年間の業績予想、バランス・シート、キャッシュフロー、PER、PCFRなど、バリュエーション等。投資候補については一通りの数値は全てフォローしています。
ただ、数値による機械的なスクリーニングは行わないのですね。
行いません。
これまでのお話から、投資テーマが明確に存在していて、それに合致しており、かつ、経営者の資質が優れ、成長力・競争力を持った企業を投資先として選択するということですね。そういう銘柄をアナリストが見出し、最終的にはファンドマネージャーが組入銘柄を選択してポートフォリオを構築するのですね。
いえ、違います。我々のチームのメンバーは全員がファンドマネージャーです。
いわゆるチーム運用という形態ですか。
そうです。
このファンドの運用チーム、すなわち、日本株スペシャリストチームの6名の方は全員がファンドマネージャーだということですね。
そうです。そして、チーム全員が、それぞれ投資テーマを担当しています。投資候補となる約150銘柄について、投資テーマごとに担当者が常にフォローしています。何か変化があれば、常にチーム全体に報告して、全員で議論を行います。ここが一番重要なのですが、担当者は置いているものの、我々は全ての投資判断について全員で議論します。そして、チームとして判断を下します。
その議論というのは定期的に行うものですか。
定期的というよりも毎日行います。朝会を毎日行いますし、同じ部屋にいるわけですから、朝会以外の場でも、常に議論が行うのです。これとは別に週次の会議も月次の会議も行っています。また、担当者が報告して、他が賛成するという形ではなく、全員での議論です。会社訪問についても、担当者が一人で行うのではなく、少なくても二人、また、全員で経営者の話を聞くことも多くあります。経営者の方が来社して下さる場合も多いので、全員で話を聞く機会が多いのです。
組入れる場合と同様に、売却するという判断もチームで行うのですね。
もちろんそうです。表面的には非効率かもしれませんが、これにより、間違った判断を下すというリスクを軽減できるのです。
では、ファンドの実際の運用状況についてお伺いしたいと思います。ファンドは1998年7月1日に設定されたわけですが、設定来のパフォーマンスはどういう状況ですか。
設定来では+194.0%、過去5年では+219.6%、過去1年では+39.1%です。その結果、10月末時点の基準価額は29,300円となっています。
10,000円で設定されたファンドが5年で29,300円になったというのは素晴らしいパフォーマンスですね。ベンチマークとの比較で見ても、設定来のファンドのパフォーマンスが+194.0%で、ベンチマークである東証株価指数がが+71.6%ですから、大幅にアウトパフォームしています。チャートを見ると、99年の後半から2000年にかけて大きくベンチマークを引き離したように見えます。この要因はどこにあったのでしょうか。
1999年頃というのは、ITバブルの頃でして、この時期は投資テーマでいうと、情報ネットワークと新メディア産業の銘柄を重視したポートフォリオになっていました。両者を合わせてポートフォリオの半分近くを占めていました。これが功を奏してベンチマークを大きく上回るパフォーマンスを達成できました。
ただ、投資テーマごとに配分を決めているわけではないですよね。あくまでも、個別銘柄を積み上げた結果、こういう配分になったということですね。
そうです。
その後、ITバブルは崩壊しましたが、その時点でポートフォリオも変更したのですか。
2000年の初めにバブルが崩壊し、世界経済が後退しました。この時期から、テクノロジー関連銘柄を引き下げ、ディフェンシブ銘柄を増やすという変更を実施しました。この時期、相場が下がったために、このファンドの基準価額も下がりましたが、ポートフォリオのシフトにより、ファンドの基準価額の下げを限られたものとすることができたのです。しかし、ポートフォリオのシフトは、投資テーマに合致している、成長株であるという原則の範囲内で行ったものです。
過去1年、過去3年、つまり、2000年初めから2002年後半については、ベンチマークと同程度のパフォーマンスだったものの、過去6カ月から直近の過去1カ月という期間で見ると、再びベンチマークをアウトパフォームしていますが、これはどういう要因だったのですか。
2003年4月頃、我々運用チームは、日本経済は長期的な回復傾向に入ったと判断しました。これは、マクロ経済のデータからの判断というよりも、企業訪問を実施している中で、そう判断するに至ったのです。それで、より景気敏感銘柄を増やすというシフトを実施しました。
景気敏感銘柄というのはどういう銘柄ですか。
素材、テクノロジー、機械などです。この判断が功を奏したということです。
それで、結果的に業種別配分が大きく変化したのですね。今年はじめには、小売への配分が17.4%と最も多く、次いで電気機器、化学と続いていましたが、今では電気機器が21%、次いで小売と順位が変わっていますね。
そうです。投資テーマ別の保有比率で見ても、ポートフォリオがシフトしたことがよくわかります。2002年末には、新成長ニッチ産業が最も多く、次いで新健康サービス産業、アウトソーシングと続いていたのですが、では、新成長ニッチ産業や情報ネットワーク産業が大きく増えています。
2003年9月のポートフォリオを見ると、新成長ニッチ産業が半分近くにまで増えていますが、これはどうしてですか。
これは先ほどもご説明しましたように、様々な小さな投資テーマが含まれています。そのために、大きくなってしまっているのです。加えて、いわゆるリバイバル銘柄がたくさん出てきており、そういう銘柄がここに含まれています。
リバイバル銘柄というと、日産自動車のような企業ということですか。
そうですね。一度駄目になったものの、経営者が変わることにより、再生された企業ということです。単純にリストラして利益率が改善したというのではなく、売上げが伸び始めた企業ですね。そういう銘柄に積極的に投資しています。例えば、上位組入10位に入っているニッセンですね。同社は、社長が変わり、完全が成熟していた通販業界という中において、ビジネスモデルを建て直し、利益率が改善し、売上げも伸び、完全に再生した企業です。そういう企業がこの新成長ニッチというところに入っています。
純資産総額はどの程度ですか。
現在約160億円です。比較的安定して推移しています。日本株に投資するファンドでは、相場が上昇すると利食いのために解約されるファンドが多いのですが、幸いこのファンドではそういう傾向は見られません。
投資家に対してメッセージはありますか。
我々は今後、日本経済はよくなってゆくと考えています。これは循環的なものではなく、長期的なものであると考えています。総選挙が終わり、構造改革が本番を迎える中で企業業績が回復傾向に入り、このファンドが主張している構造変化の中で生まれる新しい日本が現実化しているということです。本日お話させて頂いたファンドのコンセプト、哲学を是非理解して欲しいと思います。また、このファンドと同じファンドを海外の投資家向けにも販売していますが、こちらのファンドは既に800億円規模に拡大して、利益をあげています。海外の投資家は日本で起きている大きな流れを敏感に感じ取っているのです。このファンドは投資信託の中ではシンプルなものであり、長期的に絶対リターンの獲得を狙うファンドです。長期で考えて頂きたいと思います。
パフォーマンスが優れているということが重要ではありますが、その他の点において、他の小型株ファンドと比較した場合の強みはどこにありますか。
当社はグローバル企業であり、日本の小型株の動向を世界的な視野から見ることが可能であるということです。しかも、米国と欧州には、このファンドと全く同じ投資哲学と運用プロセスを持つファンドの運用チームが存在しており、彼らと常に情報・意見交換しながら世界的なトレンドをつかむことができるのです。この中において、アイデアが生まれます。これは他社にはできないことだと考えています。他社においては、投資テーマを共有した運用チームが国内外にあるというケースはないでしょう。
小型株ファンドは、大型株ファンドと比較してリスクが大きいと言われますが、このファンドのリスクについてはどうお考えですか。
確かに、小型株ファンドには一般的にそういう特徴があります。しかし、このファンドのパフォーマンスを見ていただければわかると思いますが、大型株ファンドと比較して標準偏差は高くありません。確固たる投資哲学を実行することで、そして長期保有することで、リスクを軽減できます。また、小型株ファンドには、新しい日本の魅力をとらえることが可能であり、それだけ大きなリターンを期待できるわけです。
どうもありがとうございました。
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