インタビュー
今回は、安田投信投資顧問株式会社の株式運用部シニアポートフォリオマネージャーの伏見文彦氏に、同氏が運用する「安田日本株バリューアップ・セレクト100(愛称「雷(いかずち)」)について話を聞いた。
同ファンドは、2000年7月26日に設定された追加型株式投資信託で、国内株式型一般型に分類されている。2004年6月末現在の設定来パフォーマンスが+7.23%と、同期間のトピックス(東証株価指数)の−20.82%を大きくアウトパフォームしている。インタビューは2004年7月8日に実施した。
安田投信投資顧問株式会社のホームページ http://www.yasuda-asset.com
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「安田日本株バリューアップ・セレクト100(雷)」の特徴をお聞かせ下さい。
「雷」はバリューファンドで、割安な銘柄を購入し、その割安さが解消される過程で株価のパフォーマンスを獲得することを目的としています。今後、日本で注目されるであろうM&Aに着目して、M&A的な側面から企業価値を評価します。このために、森山事務所と提携して、M&Aレシオ、サルベージレシオといった独自の企業評価尺度を用いてバリュエーションを評価するという大きな特徴があります。
一般的な割安株ファンドであれば、PERであるとかPBRであるといった尺度を使いますが、このファンドが使うM&Aレシオとサルベージレシオとはどのような数値で、それによってどのように割安かどうかが判断できるのか説明して頂けますか。
では、具体的なイメージをつかんでいただくために、尺度の説明をしましょう。
M&Aレシオ=(株式時価総額×50%−手元流動性)/連結キャッシュフロー(年) |
M&Aレシオというのは、実質的に経営を支配するのに必要なコストを、毎年の企業のキャッシュフローで割ったものです。つまり、企業を買収した場合に、買収に要した資金を何年で回収できるかを表した数字です。
その年数が長いほど、割高ということですか。
そうです。買収資金の回収に要する期間が長いということですから、それだけ割高ということになります。計算式の分子(株式時価総額×50%−手元流動性)については、買収の対象となる企業の株式を半分入手すれば、経営権を獲得できるということから時価総額×50%としておりまして、買収先にキャッシュがある場合には、それ(手元流動性)を控除します。キャッシュリッチな企業ですと、このM&Aレシオはマイナスになる可能性があるわけです。マイナスになるというのは、買収してお釣りがくるということです。まさに、それはM&A的側面で見た非常に割安な企業ということになります。通常のPERであれば、企業がどんなキャッシュを持っていようと、それはあまり反映されません。M&Aレシオであれば、キャッシュリッチな企業は割安ということになります。PERですと、レバレッジを効かせて、借金を増やすことで利益的には増えて、その結果として割安だと評価される可能性もありますが、M&Aレシオでは、より財務の安定性というかキャッシュリッチな企業に着目した割安企業を選び出しているという特徴があります。
この数値ともう一つのサルベージレシオという尺度がありましたが、これはどういうものですか。
サルベージレシオは、企業を買収して清算した場合の解散価値といいますか、清算価値を計算したものです。特徴としては、単純に資産の時価を見るのではなく、ブランド価値というバランスシート上にはでてこない無形資産も企業の価値として評価する点にあります。それと、清算する場合に、借金がある場合には有利子負債、退職給付債務がある場合にはそれも控除して、実質的に本当に清算したら、その企業にいくらの価値があるかを時価総額対比で見たものです。
| サルベージレシオ =(総資産+ブランド価値−有利子負債−リストラ費用−清算所得税)/株式時価総額(倍 |
このブランド価値という言葉は目論見書にも出てきますが、どのように数字にするのですか。
色々な計算の方法があるのですが、森山事務所の計算式に基づいて計算しています。
計算式が存在するのですね。
そうです。その計算式に従って、対象とする企業のブランド価値を算出します。簡単に言いますとブランド利益は、資本コストを上回る利益に対して、ブランドの強度に応じた倍数を掛けて計算しています。
通常のビジネスや企業買収の世界においては、ブランド価値は、こういう計算式で算出するのが一般的なのですか。
どの会社の計算式が使われるかはわかりませんが、買収した場合には、暖簾代として計上するのですが、この暖簾代を買収する前から計算しようという試みです。
M&Aレシオとサルベージレシオを割安な企業を見出すために使うということですが、今まで、割安株ファンドといわれるファンドにおいて、これらの数値を利用するファンドはなかったと思うのですが、このファンドを設定した2000年において、これらの尺度を使ってファンドを運用しようとお考えになった背景などをお聞かせ下さい。
2000年の時点で、既にM&Aの件数はかなり増えていました。ITバブルが崩壊した2000年以降にこのファンドは設定されたのですが、IT全盛の時に、割高すぎる銘柄が単なる需給だけで値上がりしていたのですが、それには違和感がありました。一方であまりにも割安に放置されていた銘柄が続出しましたので、まず、バリューファンドを始めようということになりました。バリューファンドにおいて、バリュエーションを評価する方法にはPERやPBRがありますが、もっとファンドの特徴を出そうということになり、森山事務所をはじめ色々なところと相談して、日本にもM&Aの時代が到来するだろうと考えるようになりました。
90年代以降、企業も儲からない事業があまりにも増えてきましたので、選択と集中という時代のキーワードにありますように、事業の選別を行なって、より儲かる事業に集中していこうという事業再編の流れが加速してきたわけですけど、その手段としてM&Aが注目されてくるだろうと考えたのです。実際に、法整備の面でも90年代以降独禁法の改正、商法改正、民事再生法の公布と改正等々の施行により、M&Aがより容易になってきて、実際にM&Aの件数が増加してきていました。そのため、M&Aという切り口で、企業価値を評価する必要があるのではないかと考えたのです。
このファンドはM&Aとサルベージレシオを基準に組入銘柄を決めるということですが、組み入れた銘柄が実際にM&Aの対象となって、買収されることになって、利益を追求するわけではないのですか。
そうなれば、リターンも上がりますが、実際に買収される企業を事前に見出すというのは不可能ですね。しかし、選択した銘柄は割安なわけですから、M&Aの対象になる可能性は充分高い銘柄ではあると思います。ただ、それだけではなく、M&Aをかけられるほど割安な企業であり、かつ、企業として変化してきている、あるいはこれまでずっと収益が冴えなかったけれど、事業再編など企業自身の改革により、収益構造が変わってきて、利益が増えてくるという収益改善ステージにあるような銘柄をピックアップして、リターンを狙うというのもこのファンドのコンセプトです。もちろん買収の対象になれば、それもハッピーなのですが、それだけでなくて、企業価値の増大が期待できる企業を選ぶということが基本です。
このファンドを設定する前に、M&Aレシオやサルベージレシオを基準に銘柄を選択することで、より高いリターンが得られるという実証はあったのですか。
米国においては、そういう歴史が長かったので、M&Aと株価のリターンに関するデータはあったと思いますが、日本においてはありませんでした。そうなるであろうという予測の基に運用を開始しました。
それが、ファンドの運用が4年近く経過した今、結果的に実証されたということですね。
そうですね。
先ほどから森山事務所というのが登場しますが、この会社はどんな会社なのですか。
森山事務所は平成10年に森山弘和氏が設立した会社です。森山氏は山一證券の経済研究所にいらした方で、経営調査部長などを歴任された後、森山事務所を設立しました。企業財務のスペシャリストでして、民間や政府の研究会などにも所属し、ブランド価値の研究においては経済産業省の嘱託委員をやっていた時期もあった方です。会社としては、経営コンサルタントがメインですが、投資顧問としても登録されており、助言ができる体制になっています。
それで、森山事務所のもっているノウハウと御社の調査分析能力を利用して、銘柄が選択されるのですね。
そうです。
先ほども企業価値の増大が期待できる銘柄を選択するというお話がありましたが、この「企業価値」という言葉はどうも掴み所がないような気がするのですが、具体的には何を持って「企業価値」とするのですか。例えば、Aという企業の企業価値が上がったとか下がったというのは株価を見ればよいのですか。
それも一つですが、将来の収益の拡大や資産の増大が背景にあります。
会社の収益が増えたら、その会社の企業価値は上がったということになるのですが、投資家の立場からすると、企業価値というと株価か配当というように考えるのですが。
そうですね。株価や配当も企業価値の一つと言えますが、収益が上がっていないのに、株価が上昇することもありますので、株価だけで企業価値が上がったとは言い切れないですね。
収益=企業価値ということですが、あえて、「収益が上がることが期待できる銘柄に投資する」と言わずに、「企業価値の増大が期待される銘柄・・・」と言う理由は何ですか。
企業としての価値というのは、収益で見る場合と、資産の価値として見る場合の二つの見方があります。このファンドの場合のM&Aレシオとサルベージレシオという二つの切り口を利用しますが、利益が増えるということはキャッシュフローが増えてくるということですので、M&Aレシオの分母が増えてくることにもなります。逆に、資産価値が増えるというのは、サルベージレシオの分子の方が増えていくということになります。例えば、持っている株式が上がったりとか、年金債務が減ったりですとか、そういった外部環境の変化によってその企業の資産の価値が高まることもありますし、実際に物が売れて収益が高まって、キャッシュフローが増えてくることもあります。
そうすると、どこかの会社を見て、この会社の企業価値はと聞かれた場合、どれか一つの数値で応えることはできますか。
そうですね、時価総額ですね。エンタープライズバリューと呼ばれる時価総額にキャッシュ控除後の有利子負債を足したものが、一般的に言われる企業価値です。例えば、このファンドが利用するM&Aレシオの算出にも使う株式時価総額は、市場で認識された企業価値ですが、分母の方は、企業の価値は将来のキャッシュフローを生み出す力ですから、これが増大するということは、実際の企業価値というのは、上がっているにもかかわらず、市場の評価がついてきていない、つまりアンダーバリュエーションにある銘柄であるということを意味します。したがって、M&Aレシオの小さいところにスポットを当てて、いずれ、キャッシュフローが上がって、実際の企業価値が上がっていけば、どこかの時点で市場の認識する企業価値も上がるであろうという前提の考え方です。
企業価値には二つあるということですね。
顕在化している企業価値と潜在的企業価値という言い方はできると思いますね。
その潜在的企業価値が割安に置かれている銘柄を、この数値を用いて見るということですか。
潜在的な企業価値に対して、顕在化している企業価値がまだ不十分にしか認識されていない銘柄が、このファンドに組み入れる銘柄となります。
では、ファンドにおける銘柄選択までのプロセスをご説明いただけますか。
まず、上場している日本の株式が約3,500銘柄ありますが、これらについて、森山事務所からM&Aレシオとサルベージレシオを提供してもらいます。加えて、森山事務所では推計格付というものを算出しているのですが、これは財務格付けで、財務格付けは、普通は債券を発行していないと付かないのですが、債券を発行していない企業に対しても、森山事務所では推計していまして、これで信用リスクを評価しています。 3,500社についてこれらのデータを入手し、最初に、M&Aレシオにおいて割高な上位10%の銘柄とサルベージレシオにおいて割高な上位10%の銘柄を排除します。
この段階で、どのくらいの企業が排除されるのですか。
約700社から800社が排除されます。時価総額で言うと3割くらいですね。その後で、割安な企業の中には、財務状態の悪い企業も含まれることがあるので、財務格付の推計格付において投資適格となる、つまりBBB以上の銘柄に絞り込みます。
これで、更に何社くらいが排除されますか。
1,000社ほどが排除されます。更に、このファンドは公募投信ですので、キャッシュフローも重視して、あまり売買できないような銘柄は、実際の運用という点では支障がでますので、時価総額250億円未満の銘柄を排除します。また、1日あたりの取引高が2,000万円に達しない銘柄も排除します。これで、流動性の基準に満たない銘柄として1,200社程度が排除され、最終的に700社程度の投資ユニバースというのを毎月作成しています。
毎月ということは、M&Aレシオやサルベージレシオは毎月森山事務所から提供されるのですね。
そうです。株価も日々変動しますから、割高かそうでないかということも、常に変化していますから。
では、この700社からは、どのように絞り込んでゆくのですか。
700社の中から、更に、アナリストの定性評価とバリュエーションから銘柄を絞り込んで、最終的には100銘柄程度のポートフォリオにしてゆきます。
この段階での割安な銘柄の絞り込みというのは、一般的なPERやPBRというのを使うのですか。
いいえ、M&Aレシオとサルベージレシオを使います。
最初の段階に加え、最後の絞り込みの段階でもM&Aレシオとサルベージレシオを使うのですね。
そうです。最初は、大雑把に割高な銘柄を排除するために利用し、最後に、定性評価の高い銘柄において、より割安な銘柄を絞り込むために利用します。
ここでいう定性評価というのは、アナリストが会社訪問等により行なう評価ですか。
そうです。
最後の段階で最も重視するものは、やはりM&Aレシオとサルベージレシオですか。
なるべくこれらの指標で、割安な順番に入れたいと考えています。ただ、企業が変わっていないとか、問題があるような企業は排除しています。
M&Aレシオとサルベージレシオのどちらを最終的に重視しているのですか。
どちらを重視するということはしません。両方の指標において割安なものを採用しています。具体的には、M&Aレシオを縦軸に、サルベージレシオを横軸にとり、銘柄をプロットします。そうして、両者において割安な銘柄を組入れることになります。他の項目を一切考慮せず、この両尺度において割安な銘柄だけに投資した場合をシミュレーションしてみると、設定来では既に60%以上の値上がりになっています。
今後は、この二つだけで銘柄を選択するという方針に切り替えないのですか。
今は、既に、新しく銘柄を組み込む場合には、この両者において割安である銘柄しか組入れていません。
目論見書には業種配分も考慮して・・というような記載がありますが、業種配分はあらかじめある程度の目処はたてているのですか。
特に業種配分については、決めた配分はありませんが、投資ユニバースにおける割安銘柄の業種構成を考慮しています。
どういう意味ですか。
先程申し上げたM&Aレシオ、サルベージレシオとも割安な銘柄群を重視して、それと同じような業種配分となるように実際のポートフォリオを組んでいるということです。
では、それらの銘柄群における業種分布というのはどんな分布を見せていますか。
建設、化学、鉄鋼、機械、卸売といった業種が、TOPIXと比較して多くなっています。配分としては電気機器や輸送機器も多いのですが、これはTOPIXでも多くなっていますので、違いにはなりませんね。
つまり、建設、化学、鉄鋼、機械、卸売には、割安な銘柄が多いということでもあるのですね。
そうです。割安な銘柄を組み込もうとすると、当然、これらの業種への配分が多くなるわけです。業種の構成比は、絞り込みの結果、こういう業種が高くなったということです。
結果であって、業種配分を決めているというわけではないということですね。
そうです。実際のポートフォリオの時価構成を見ると、繊維、化学、鉄鋼、ガラス、機械、卸売の時価総額の割合がTOPIXやラッセル・ノムラ・バリュー・インデックスと比較して高くなっています。一方で、銀行、情報・通信が低くなっています。割安な銘柄を入れてゆくと、必然的にこういう配分になるということです。
確かに、TOPIXなどとは異なりますね。また、このファンドの上位組入銘柄を見ると、他のファンドの上位銘柄とはかなり違うので、おもしろいというか、独自性のあるファンドであることがわかりますね。
そうですね。かなりユニークだと思います。
100銘柄に絞り込むまでのプロセスをお聞きしましたが、ファンド名の「安田日本株バリューアップ・セレクト100」の100というのは100銘柄という意味ですよね。
そうです。
どうして100銘柄のポートフォリオにしようとお考えになったのでしょうか。
投資哲学にも通じるところがあるのですが、割安ファンドというと20から30銘柄に集中投資するファンドというのがよくあるのですが、割安な銘柄も、いずれは適正価値に収斂すると予想できるのですが、それが一ヵ月後なのか、半年後なのか、一年後になるのかというタイミングを予測することは難しいので、極端に銘柄を絞り込むと、突然パフォーマンスが上がって、また、突然パフォーマンスが悪化するといったことも起こりうるわけです。100銘柄程度に分散することによって、時間的分散が図れ、値動きが比較的安定すると考えたのです。
100銘柄というと、平均組入比率は1%ということになるのですね。
そうです。ただ、アナリストの確信度とか、割安の度合いなどにより、もっと高い組入比率のものも、また、低いものもあります。
上位銘柄では2.6%程度が最も高い比率ですね。
そうですね。
組み入れる段階で、どのくらいの期間保有するという目処は立てるのですか。
どのくらいの期間で適正価格に収斂するかというのは組入時点ではわかりませんので、保有期間の目処もありません。あくまで割安さが解消されたら売却するというスタンスです。
見直しは毎月行なうということでしたが、回転率というのはどの程度になっていますか。
平均的な割安株のポートフォリオですと年間70%から80%程度ですが、このファンドもそれくらいですね。一般的なバイ・アンド・ホールドを行なっているファンドと比較すると高いでしょうね。
では、次にパフォーマンスについてお聞かせ下さい。このファンドは2000年7月26日に設定されて、約4年弱運用されているのですが、設定来のパフォーマンスはどうなっていますか。
2004年6月末現在で、設定来で7.23%上昇しています。
同期間のトピックスのパフォーマンスが−20.82%ですから、約28%もアウトパフォームしているということですね。
そうですね。
この要因はどんなところにあったのでしょうか。
設定してから、概ねコンスタントにTOPIXをアウトパフォームしてきていますが、要因としては、投資対象ユニバースの選択が良かったことが挙げられます。なお、雷はベンチマークを設定しておりませんので、TOPIXとの比較は「参考インデックス」との比較という位置付けになります。
つまり、M&Aレシオとサルベージレシオを利用した割安な銘柄選択という運用が正しかったということですね。
そうです。組入銘柄でなく、投資対象ユニバースのパフォーマンスで見ても、設定来のパフォーマンスが+10%程度となっており、TOPIXの−20%超を大幅にアウトパフォームしています。「雷」の方は、信託報酬などが毎年引かれますので、投資対象ユニバースのパフォーマンスよりは落ちてしまいますが、やはり投資対象ユニバースの選択効果は大きかったと思いますね。
その他の要因としては何がありますか。
相場下落時における組入れ銘柄の低ベータ効果が挙げられます。
どういう意味ですか。
ベータ値というのは、市場全体の動きに対する感応度でして、ベータ値が大きい程、市場全体をあらわすTOPIXなどへの感応度が高くなります。ベータ値が1より低いというのは、相場が上昇しても、ファンドは値上がりしにくく、相場が下落しても、ファンドは値下がりしにくい、つまり感応度が鈍いことを意味しています。このファンドのベータ値は、2000年7月の設定から2001年の初め頃まで、ちょうどITバブルが崩壊した後ですが、ベータ値が1より低く、更に低下傾向にありました。
つまり、バブルが崩壊して、相場全体は下落していたものの、このファンドはベータ値が低かったので、相場全体ほど下落しなくて済んだということですか。
そうです。加えて、銘柄の変動性もマイナスになっていました。
銘柄の変動性というのは何ですか。
銘柄変動性もファンドのボラティリティを示す指標なのですが、この数値がプラスであれば、市場よりも値動きが激しくなる傾向があるということを示しています。
このファンドの場合は、設定当初の銘柄変動性はマイナスですね。
そうです。そのため、当時相場が下落傾向にあったものの、TOPIXほど値下がりしないですんだのではないかと思います。ただ、最近は相場が回復してきて、銘柄もかなり入れ替えましたので、ベータ値は1に近づいていますし、銘柄変動性もTOPIX並になっています。従って、TOPIXの上げ下げにはそれほど影響を受けないファンドにはなっています。
結局、このファンドのパフォーマンスの良さは、着眼点であるM&Aレシオとサルベージレシオによる割安銘柄の選択という基準が正しかったことが実証されたということですね。
そうですね。
TOPIXとの乖離(アウトパフォーマンス)という点においては、じりじりと乖離が拡がってきていて、直近が最も大きいようですが、この要因はどこにありましたか。
素材系の銘柄パフォーマンスがよかったためですね。
素材系の銘柄というのはどういう銘柄ですか。
化学、繊維、鉄鋼などですね。
パフォーマンスを期別に見ると、1期と2期はトピックスをアウトパフォームしていますが、3期は若干アンダーパフォームしていますが、これはどうしてですか。
銀行株があまり入っていなかったためですね。この時期、銀行の戻りといいますか、金融関連の戻りが大きかったのですが、このファンドでは金融株の組入れが少なかったために、結果としてTOPIXを若干アンダーパフォームしました。
4期に入ってからのパフォーマンスは好調ですか。
そうですね。参考インデックスとなるTOPIXに対して10%程度アウトパフォームしていますね。
純資産総額についてお聞きしたいのですが、パフォーマンスはよいものの、純資産総額は減少傾向にあるのですが、これは解約によるものですか。
そうですね。特に、1万円を回復してからは徐々に増えてきましたね。
運用への影響はありませんか。
最近は特にありませんね。
上位組入銘柄はどんな銘柄ですか。
2004年6月末現在で、一位が積水化学、二位がマキタ、三位がアマダ、四位が東レ、五位がニッセイ同和損害保険です。
例えば、一位の積水化学ですが、企業価値的に、同社はどういう会社だという判断ですか。
積水化学は、組入以前、住宅と塩ビ管という双子の赤字を抱えていたことなどから、非常に割安になっていました。また、同社は積水ハウスの大株主だったり資産的にも割安でした。しかし、ここ1年から2年において状況が変わってきました。住宅市場も回復してきましたし、積水化学の光熱費ゼロという太陽熱を利用した住宅が受けまして、住宅部門の収益が回復してきました。更に、塩ビ管の事業も、需要の増加と価格転嫁が進んできたので、赤字も止まってきて、収益が大分改善してきました。同社は昨年の4月から5月に組み入れ始めまして、かなり成功しましたね。
これまでに他に成功した銘柄の代表的なものをお聞かせ下さい。
例えば、最も成功した銘柄としては、川崎汽船ですね。組み入れてから売却するまでに3倍くらいになりましたね。その他、三菱ガス化学、積水化学、同和鉱業、日本ゼオン、UFJ、日本製粉、住友不動産などは倍以上になった銘柄ですね。
冴えなかった銘柄というのはどんなところですか。
電機関係ですね。半導体部門が赤字に転落したり、韓国などの競合が激しくなったり、ITバブルの崩壊により通信関連の業績が悪化したことが要因ですね。
これまで色々お話を伺ってきましたが、他に、投資家に伝えたい点はありますか。
そうですね。このファンドはバリューファンドですが、特徴としては、中小型のバリューファンドであるということですね。大型バリューではないということです。それと、M&Aは今後も日本市場で注目されるテーマであり、当ファンドで組入れている銘柄も話題になる機会が多くなると考えています。
販売会社はどちらですか。
2004年1月現在、藍澤證券、今村証券、ウツミ屋証券、岡三証券、沖縄証券、極東証券、コスモ証券、新光証券、センチュリー証券、中央証券、東海東京証券、内藤証券、日本インベスターズ証券、前田証券、丸三証券、みずほインベスターズ証券、明和證券、ワールド日栄フロンティア証券、UFJつばさ証券、SMBCフレンド証券、愛知銀行、明治安田生命です。
本日はありがとうございました。
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