インタビュー
今回は安田投信投資顧問株式会社の投信運用部部長坂東良太氏と法人資金運用部シニアポートフォリオマネージャー茶野宏氏に、安田オリエンタル・セレクト50(愛称「鳳凰(フォンファン)」)について話を聞いた。
安田オリエンタル・セレクト50は1999年11月26日に設定された国際株式型・一般型に分類される追加型株式投資信託。インタビューは2004年9月24日に実施。
販売会社は明治安田生命、藍澤證券、安藤証券、今村証券、協和証券、極東証券、KOBE証券、静銀ティーエム証券、センチュリー証券、東海東京証券、内藤証券、日本インベスターズ証券、前田証券、丸三証券、明和證券、ワールド日栄フロンティア証券、UFJつばさ証券、大垣共立銀行、四国銀行、泉州銀行、みずほ信託銀行。
安田投信投資顧問株式会社のホームページ http://www.yasuda-asset.com/
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鳳凰は日本とアジアの株式に投資するファンドということですが、ファンドの概要をお聞かせ下さい。
当ファンドはユニークなファンドではあるのですが、考え方は単純明快なファンドです。日本を含むアジアを投資対象として、新生(グロース)・再生(バリュー)・共生(アジアの中での相乗効果)という3つのコンセプトでポートフォリオを構築しています。基本的には日本が7割、アジアが3割という投資配分でスタートして、その後はパフォーマンスに連動した形で配分が変化し、今は日本が6割、アジアが4割という配分になっています。
なぜアジアと日本に投資するファンドにしようと考えたのですか。
中国を初めとするアジアの成長ポテンシャリティが極めて高いことは周知の事実ですが、今日も新聞に上海のユニバーサルスタジオが建設中止されるという記事が掲載されていたように(インタビューは9月24日)、アジアには様々なリスクがあることも事実です。したがって日本を含む韓国、台湾、シンガポールといったアジア全体に分散することによってリスク分散を図ることができると考えました。
ファンドの目論見書などの中に、「再生、新生、共生」を投資の視点とすると書かれていますが、これはどういう意味ですか。
3つのテーマがありますが、日本株のテーマとして「新生」と「再生」の2つのシナリオを、アジア株については、「新生」「再生」「共生」という3シナリオを採用しています。グロース株を「新生」、バリュー株を「再生」という位置付けで考えています。そして、「共生」というのはアジアの中で、例えば、中国株式ファンドにおいても、中国の企業に投資するだけでなく、中国の成長により恩恵を受ける企業にも投資するというファンドがあると思いますが、それに近い考え方、つまりアジアの中で伸びてゆく企業という意味です。
日本とアジアに投資するファンドを作ろうという考えが最初にあって、そこから新生、再生、共生というテーマが生まれたということですね。
そうです。
日本とアジアの資産配分を7対3にしたのはどういう理由からですか。
設定当初の日本の株式市場とアジア主要株式市場の時価総額比が概ね7対3であったためです。
組入銘柄については合計で50銘柄程度に絞り込んで運用するということですが、これはどうしてですか。
銘柄選択効果を前面に出そうと考えました。一方で分散効果も考える必要がありますので、有効な銘柄分散効果が期待できる銘柄数である50から60銘柄程度に決めたのです。投資銘柄数が80以上になってくると、リスクはマーケット全体のリスクと同じ程度になってしまうのです。ですから、分散効果が得られて、かつ銘柄選択効果を最大限に発揮できる銘柄数として50銘柄程度が理想的と考えました。つまり確信度の強い銘柄に絞り込んでゆこうと考えました。
アジアについては、投資対象国が香港、シンガポール、台湾、韓国、中国、フィリピン、タイ、マレーシア、インドネシア、インドということですが、アジアの投資対象国はどのように決めるのでしょうか。
鳳凰の運用では、日本株の運用は安田投信投資顧問で行っていますが、アジア株式の運用についてはベアリング・アセット・マネジメント(アジア)に一任委託しています。一般的にはベアリング・アセットマネジメントではMSCIファーイースト(除く日本)をベースにしながら国別配分を決めるのですが、鳳凰の場合はベンチマークを持たず、かつアジア株については17銘柄程度と、銘柄数をかなり絞り込んでいますので、国別に資産を配分するという発想はあまりなく、確信度の高い銘柄に厳選します。実際には香港、韓国、シンガポール、台湾の四カ国が投資の中心になります。
ベアリング・アセット・マネジメント(アジア)というのはどんな運用会社ですか。
ベアリング・アセット・マネジメント(アジア)社は、英国を本拠地とするベアリング・アセット・マネジメントの子会社で、主に香港でアジア株を中心とした運用を行っています。同社はアジア株式の運用に関しては草分け的な存在で、パフォーマンスについては極めて優れた結果を残しています。
先ほど、投資資金は日本とアジアで7対3に分けて運用しているということでしたが、日本とアジアでは、銘柄が決定されるまでのプロセスは異なるのですか。
異なります。マルチマネージャーによる運用が行われているのです。
日本株については茶野さんがファンドマネージャーで、アジアはベアリングというマルチマネージャーということですね。
そうです。
安田投信投資顧問とベアリング・アセット・マネジメントではお互いに組入銘柄について相談を行ったりするのですか。
いいえ。運用に関しては干渉しません。ただし、インベストメント・ガイドラインという投資制限は課していますので、それを逸脱しない範囲で、各ファンドマネージャーの自由度を高めた運用をしたいと考えています。ただ、密接なコンタクトやレポートの提出は受けています。
インベストメント・ガイドラインとはどんなものですか。
投資にあたっての制限です。例えば、投資対象国であるとか1銘柄当たりの組入比率が10%を超えてはいけないというように詳細に関する取り決めを行っています。
これもリスク管理の一環ですね。
そうです。
では、日本株部分についての銘柄決定までのプロセスをお聞かせ下さい。
日本株については、安田投信投資顧問のアナリストが銘柄を選定しています。アナリストが7名おりますが、彼らが日々情報を収集・分析しており、その中からこれはという銘柄をピックアップしてきて、その中から「新生」「再生」というテーマにかなった銘柄を組入れています。
投資対象ユニバースとしては日本株全てということですね。
そうです。
その中で、アナリストの方が選定した銘柄からファンドのテーマに合ったものを組入れるというのは、いわゆるボトムアップアプローチのファンドですね。
そうです。
アナリストが選択した銘柄が新生、再生というテーマに合った銘柄かどうかは、どのように判断するのですか。
新生は基本的にはグロース株で、時代の先端で挑戦している企業、ベンチャー企業、IPOを行った企業などです。再生はバリュー株ですが、バリュー株の指標だけに基づいて銘柄を選択するのではありません。オールドカンパニーと呼ばれるような既存企業が、リストラなどにより事業構造を建て直し、業績が回復すると期待される場合のように、復活してきた企業というイメージのある割安な銘柄を選択しています。
数千という日本の上場株式の中から、グロースあるいはバリュー関連の指標によって、順番にスクリーニングをかけて絞り込んでゆくという方法はとらないのですね。
とりません。
つまり、全ては7名のアナリストとファンドマネージャーの経験、知識、分析能力にかかっているのですね。
そうですね。
バリューやグロースの指標は使わないということですが、数字を使わないとなると、ある銘柄が新生であるか再生であるかは、どう判断するのですか。
スクリーニングをかけるために数字は使いませんが、例えば、新生であれば、一般的な成長力などをはかる指標については、もちろんチェックします。
再生の場合はどうですか。
単に割安に放置されているだけでなく、どん底に陥ったものの、そこからリストラを行い、事業を再編して新たな収益構造を構築して立ち直ったというシナリオに合っているかどうかを見ます。
具体的な銘柄でお話をお聞きしたいと思います。例えば、直近で上位組入銘柄である東レの場合、「再生」銘柄ということですが、これをもう少し詳しく説明して頂けますか。
東レの主要事業である繊維というのは不況産業と言われています。東レはこの繊維事業に拘ってきましたが、同時に新たな素材を見出し、電子部品や航空機の部品などに応用するといった挑戦をしてきました。更には、新素材という新しい柱を建ててきたことに加えて、既存の繊維事業についても残存者メリットがあり、今は繊維市況が回復してきて、原材料価格も高騰してきていることで業績が改善しています。
組入銘柄第2位のロームについては「新生」銘柄ということですが、これはどういう解釈なのですか。
ロームは長期的に保有している銘柄ですが、同社は電子部品の中でLSIといった半導体事業に早くから着手してきました。現在では多くの総合電機メーカーがLSIに進出していますが、ロームは昔からこの分野に参入し、顧客のニーズに合った商品を提供してきました。時代の先端に挑戦し続けているということで「新生」銘柄であると考えたのです。
先ほど、「新生」では新しい企業、あるいはIPOを行ったばかりの企業というお話がありましたが、歴史ある企業であっても、現在行っていることが先端であれば、「新生」銘柄ということになるのですね。
そうです。新しい企業だけでなく、既存の会社だけれどもベンチャー的な企業、あるいは時代の先端に挑戦している企業は「新生」として捉えています。
現在の日本株の業種別配分はどういう状況にありますか。
8月31日現在で、情報・通信が16.5%、サービスが15%、小売が10.9%、電気機器が10.2%、化学が6.4%と続いています。
これは、あくまでもボトムアップによる銘柄構築の結果であって、セクター別の配分を決めているわけではないわけですよね。
そうです。セクター配分は全く考慮していません。あくまでも銘柄を積み上げた結果として、このような配分になっているということです。ただ、相場の動きを見て、例えば、繊維が全体として強い時期であれば、繊維を増やすといった強弱感は出そうと考えています。
組入銘柄を売却する場合のルールはありますか。また、購入時に目標価格を設定していますか。
目標価格は決めていません。株価に再生や新生のシナリオが織り込まれ、割安感がなくなれば売却します。あるいは、組入れた銘柄の分野の競争が激しくなってきて、企業のメリットが少なくなってきた場合のように、ファンダメンタルズの面で、その銘柄が成長という見方にそぐわなくなってきた場合には外します。また、日本株は35銘柄前後ですので、他に組入れたい銘柄が出た場合には、既存銘柄を売却することもあります。
その判断はファンドマネージャーである茶野さんが行うのですね。
そうです。
平均保有期間はどのくらいですか。
特に算出していませんが、長期保有が基本です。例えば、現在の上位3銘柄は、いずれも2年以上保有している銘柄です。これは日本株だけでなくアジア株についても同じです。
次にアジア株についてお聞かせ下さい。アジア株については、GARP(グロース・アット・リーズナブル・プライス)という運用哲学に基づいて運用を行うということですが、GARPとはどのような運用哲学ですか。
GARPというのは、単純に訳してしまうと高成長割安銘柄ということになりますが、これまで日本株についてご説明させて頂いた運用と全く同じ考え方がベースにあります。
日本株の年金運用や一般的な日本株投信の運用においては、投資対象ユニバースからスクリーニングを行ってポートフォリオを構築する手法によってモデルポートフォリオを構築していますが、それを基本に説明させて頂きます。ベアリングでも、MSCIファーイースト(除く日本)というベンチマークを基本として、投資対象ユニバースの全銘柄をグロースの観点、バリューの観点からランギングを付けてゆき、グロース株でもバリュエーションが割高でないものを組入れようというのがGARPの運用です。成長株投資の場合には、どうしても成長性の指標だけにとらわれてしまい、割高であるのは当たり前だというような考え方もありますが、同じ成長株投資でも、GARPではバリュエーションも注視するのです。
GARPというのは、運用業界では一般的な考え方なのですか。
一般的に使われておりまして、特に欧州系のマネージャーはGARPという言葉を使いますね。通常ですと、グロースかバリューかということになりますが、グロースだけれどもバリュエーションを重視するという哲学です。
この考え方に基づいて、ベアリング・アセット・マネジメントでは鳳凰のアジア株部分の銘柄選択を行っているということですか。
いいえ違います。ベアリングでは、GARPを使ってモデルポートフォリオを構築していますが、このモデルポートフォリオは100銘柄程度で構成されており、国別配分もベンチマークに配慮したものになっています。鳳凰の場合は、アジア株の組入れは15から17銘柄に絞っています。この数に絞り込むためにハイ・アルファ(high
alpha)という考え方を応用しています。
ハイ・アルファとはどんな考え方ですか。
つまり、ベンチマークにとらわれずに、確信度の高い銘柄に絞りこんでポートフォリオを構築しようということです。鳳凰にはベンチマークはありませんので、モデルポートフォリオの中から、確信度の強い銘柄を選出し、「新生、再生、共生」というテーマに合致しているかを確認した上でポートフォリオを組みます。
GARPという投資哲学に基づいて100銘柄のモデルポートフォリオを作成し、その中からより高い超過収益が期待できて、このファンドのテーマに合っている銘柄を選択してポートフォリオができるのですね。
そうです。
では上位銘柄で具体的に説明して頂けますでしょうか。アジア株の最上位銘柄は韓国の三星電子ですね。月報を見ると、三星電子の場合は新生、再生、共生の全てのコンセプトに合致しているとなっていますね。
三星電子は世界有数の電機メーカーですが、全てのコンセプトに合致します。成長力もありますし、一方で財閥問題が残る韓国の中での再生というテーマにも合致し、かつ、アジアを含めて世界市場を対象としているという意味で共生のテーマにも合致します。
3位のスワイヤ・パシフィックと9位のヘンダーソン・ランド&デベロップメントについては、共に不動産銘柄でテーマは再生ということですが、これはどういう解釈でしょうか。
両社とも香港の不動産会社です。香港では不動産業界の低迷が続いてきましたが、今年に入ってから反転が見られています。ベアリングでは昨年から香港の不動産は底を打ったと考えていたので、積極的に組入れていたのですが、残念ながら昨年はパフォーマンスが良くありませんでした。しかし、今年に入って底打ち感が出てきて、新規の販売も増えてきたということで、不動産セクターのパフォーマンスが他のセクターと比較して高くなっています。まさに「再生」銘柄というわけです。
アジア株の場合は、大統領選挙とかバリ島のテロなど、日本と比べて政治的リスクが高いと思うのですが、そういうものへの対処はどうなっていますか。
政治リスクですとか、あるいはSARSなどの問題もありますが、このファンドは銘柄選択を重視していますので、政治リスクなどによって組入銘柄を大きく動かすことはありません。例えば、SARSが最もクローズアップしたのが昨年の1月頃ですが、その時にポートフォリオを大きく入れ替えるという対応は行っていません。むしろ、SARSが解決した際に、航空業界や旅行業界により注目したということはあります。政治的リスクにより、選択した銘柄の業績などに大きな影響が予想される場合は別ですが、そうでなければ特に対応はしません。
為替についてはヘッジしないのですね。
しません。
次にパフォーマンスについてお聞かせ下さい。設定は1999年11月ですが、設定来のパフォーマンスでは8月末現在で+1.1%ですね。
そうです。鳳凰にはベンチマークはないのですが、相対的な話をしますと、設定来では東証株価指数もMSCIインデックスもアウトパフォームしています。
設定来で見ると、同期間の東証株価指数の騰落率が−30.91%、MSCIインデックスが−18.29%ですから、鳳凰の+1.1%というのは、相対的に見るとかなり良い結果ですね。
そうなりますね。
アウトパフォーマンスの要因というのは、銘柄選択が良かったということですね。
そうです。銘柄選択効果のみです。
アジア株と日本株とではどちらの銘柄選択効果が大きかったのですか。
アジア株ですね。しかし、超過収益という点では、日本株の部分についても、設定来で見ると東証株価指数をアウトパフォームしています。7月末までの鳳凰の騰落率は−4.6%程度で、東証株価指数は−30.9%程度ですので、超過収益は26%程出ています。絶対リターンではマイナスになりますが、東証株価指数と比べると極めて高い超過収益が出ているのです。アジアの部分についても、2003年のパフォーマンスは不冴えとなりましたが8月末現在で設定来では鳳凰は+36.5%程度で、MSCIアジアは−17.7%程度ですから、MSCIアジアに対して54%程度の超過収益が出ています。
アジアのパフォーマンスが2003年に悪かった理由は何ですか。
SARSや不動産不況の影響です。しかし、2003年には日本株が好調でした。また、日本株が苦戦した2001年にはアジア株が好調でした。
上手く分散効果が発揮されたのですね。
そうです。設定来という長い目で見ると、日本についてもマーケットはあまり良くはなかったのですが、日本もアジアも超過収益が出ていますので、銘柄選択効果が現れていると考えています。これはマネージャーの分散と地域の分散が有効に働いて来たということだと思います。
過去1年のパフォーマンスは如何ですか。
特に今年に入ってからアジア株部分も日本株部分も好調で、過去1年ではファンド全体のパフォーマンスは+13.84%(8月末現在)となっています。
どの銘柄が貢献していますか。
日本株では東レやフルキャストなどが寄与しました。既に売却しましたが東京製鐵も寄与し、中小型株が好調でした。アジア株についても今年の夏に向けて不動産株が急騰し、それがファンドのパフォーマンスに貢献しました。三星電子についても、組入比率が大きいので、ファンドへの貢献度も大きくなるのですが、世界経済の回復に応じて株価が値上がりしましたね。
純資産総額は約28億円ですね。現在は安定していますが、設定直後には大きく減少しているのですが、これはどんな要因だったのですか。
設定当初にファンドのパフォーマンスがかなり良かったために利食いが入ったと理解しています。
確かに、設定直後にファンドの基準価額が12000円近くに上昇する局面と純資産総額が減少している時期が重なっていますね。
そうです。
他のファンドでも銘柄選択効果をうたっているものがありますが、鳳凰の場合は、銘柄数が少ない分だけ、銘柄選択効果がより大きく現れると思います。その分、ファンドマネージャーやアナリストの力量への依存度が大きいと思いますが、7名のアナリストとファンドマネージャーは長くチームに在籍しているのですか。
全員が長く在籍しているのではありませんが、ヘッド的役割を果たしているアナリストは10年以上のキャリアがあります。それと、安田投信投資顧問が特金や年金運用などで養ってきた伝統、リサーチ経験やノウハウが継承されています。鳳凰は銘柄を絞り込んでいて、かつファンドマネージャーの自由度が高いファンドであるため、経験やノウハウが上手くこのファンドで発揮できていると思いますね。
本日はありがとうございました。
【本を読もう!】

