インタビュー
今回は、トヨタアセットマネジメント株式会社の営業企画部副部長北村邦男氏と同社運用部チーフファンドマネージャーの大塚治夫氏に、「トヨタグループ株式ファンド」について話を聞いた。
大塚氏は、日本株のパッシブ運用を専門とするファンドマネージャーであり、「トヨタグループ株式ファンド」の運用責任者を務める。インタビューは2005年10月12日(水)に実施した。
「トヨタグループ株式ファンド」は、トヨタ自動車のグループ会社の株式に投資するというユニークな特徴を持つ株式投資信託。確定拠出年金向けに単一企業の株式に投資するというファンドは、この数年見られるようになったが、一つの企業グループの株式に投資するというコンセプトのファンドは、他にはない。
「トヨタグループ株式ファンド」は2003年11月14日に設定され、2005年9月末現在純資産総額457.0億円の大型のファンドに育っている。販売会社は、2005年9月末現在、トヨタファイナンシャルサービス証券、名古屋銀行、愛知銀行、百五銀行、中京銀行、十六銀行、豊田信用金庫、大垣共立銀行、三井生命保険、信金中央金庫。
トヨタアセットマネジメント株式会社のホームページ http://www.tamco.co.jp
インタビューのPDF版はこちらからどうぞ。
ファンドは、トヨタ自動車という日本を代表する企業のグループの株式に投資するという極めてユニークなファンドですが、こういうファンドを設定しようと考えた背景をお聞かせ下さい。
トヨタアセットマネジメントは、トヨタグループ企業の年金等の運用を中心に据えた形で業務をスタートしている会社ですが、このトヨタグループの中にトヨタファイナンシャルサービス証券(以下トヨタFS証券)という証券会社がありまして、同社が、オンライン証券として平成12年7月19日に設立される際に、中核となるユニークな投資信託を打ち出したいと考えました。それで、トヨタFS証券と商品開発についての協議を始めました。
このファンドの設定は2003年ですが、すると協議はずいぶん前から始まっていたのですね。どうしてトヨタのグループ株式に投資するファンドということになったのですか。
私どもはトヨタの運用会社ですし、トヨタFS証券もトヨタの証券会社です。加えて、トヨタFS証券のお客様も、当初は名古屋を中心とした中京地区のお客様が多く、トヨタ自動車で働いている、携わっている、あるいはトヨタの車を持っている方など、トヨタ自動車に関心の高いお客様が対象となると考えました。そうであれば、トヨタ自動車並びにトヨタグループの株式をパッケージにした投資信託をご提供してはどうだろうかと考えたのです。
とはいえ、前例のないタイプのファンドですから、設定までにご苦労された点などありませんでしたか。
紆余曲折はありました。特定の企業、あるいはグループ企業に投資するファンドは存在していませんでしたので、コンプライアンスの部分も含めて、かなりの協議を重ねました。
どんな点が最も問題でしたか。
私どもが最も気になったのはインサイダーの問題ですね。
運用会社と投資対象企業が同じグループであるということですね。
同じグループ会社といっても、情報は完全に遮断されていますから、両社間では何ら問題はなかったのですが、外部から見たときに不透明に見えてしまうのではないかという懸念がありました。
どのように解決したのですか。
ファンドをあらかじめ定めた一定のルールに従って運用するパッシブ運用にすることで、この問題を解決しました。運用面においてアクティブ色を排除したのです。
長い期間の協議等の結果、名古屋を中心とした中京地区のお客様にユニークなファンドを提供したいということで、このファンドが誕生したのですね。
ファンドの販売を中京地区に限定しているわけではありませんが、当初は中京地区の投資家の方の関心が最も高いと考えて、このようなファンドとなりました。
トヨタグループ株式ファンドの概要をお聞かせ下さい。
ファンド名にもありますように、トヨタグループの株式に投資するファンドです。ただ、トヨタグループといったときに、どのような会社が含まれているのかわかりにくいという問題もありますので、有価証券報告書等の公開情報に記載されている連結対象及び持分法適用会社の中で東証一部に上場している企業というルールを設けて、当ファンドにおけるグループ会社の定義としています。
トヨタ自動車の場合は、連結子会社、あるいは持分法適用会社といっても、かなりの数になるのではないですか。
現在、上場・未上場あわせて500社以上あります。しかし、このファンドが投資対象としているのは、その中でも東京証券取引所の一部市場に上場している企業のみです。つまり、2005年9月末現在では、月報などに組入銘柄として公表している21社のみです。
具体的にはどんな会社ですか。
デンソー、豊田自動織機、アイシン精機、豊田通商、あいおい損害保険、日野自動車、ダイハツ工業、トヨタ紡織、光洋精工、豊田合成、トヨタ車体、小糸製作所、東海理化電機製作所、豊田工機、愛知製鋼、関東自動車工業、愛三工業、大豊工業、中央発條、共和レザーです。
子会社やグループ会社の中には、東証一部だけでなく、二部市場などに上場している企業もあると思いますが、そういう企業には投資していないのですね。どうしてですか。
流動性を考慮したからです。東証一部銘柄でも、現状の下位組入銘柄については、かなり組入比率が低い状態にあります。したがって、これ以上小さい規模の銘柄を組み入れても、ファンド全体のパフォーマンスを考えたときに、費用対効果が得られないと考えました。
では、どのように配分比率を決めるのですか。
まず、運用については、あらかじめ決められた一定のルールによりシステマティックな運用を行っています。組入れ銘柄の配分については、最も一般的と考える各社の時価総額に応じた配分を行っています。ただし、トヨタ自動車の時価総額があまりに大きいので、トヨタ自動車を含めて時価総額で配分すると、トヨタの組入比率が大きくなりすぎてしまいます。それでは、トヨタ自動車の株を直接買うのと違いがでませんし、ファンドとして偏りが出すぎてしまいます。そこで、トヨタ自動車の組入れは最大でもファンド資産の半分にとどめようということになりました。
どうして半分、つまり上限50%ということになったのですか。
トヨタ自動車は、売上げで見るとグループ全体の約50%、営業利益では約42%を占めています。そこで、過去の株価の動きについてのシミュレーションも重ねまして、ファンドの目的である、トヨタ自動車とグループの株価の動きをとらえるために、バランスを考慮して50%という上限を設けました。
株価の変動により、この配分がずれてきた場合にはどうするのですか。
トヨタ自動車の株価が上昇して、あるいは、グループ会社の株価が下落するなどして、トヨタ自動車の組入比率が5割を超えた場合には、5割まで引き下げます。
では、逆にトヨタ自動車の組入比率が5割から低下した場合は、どうするのですか。
その場合は、そのまま維持して、子会社の組入については時価総額に応じた配分を継続します。ただ、現時点では、トヨタ自動車の時価総額が7割程度となっていますので、トヨタ自動車の組入比率は上限の5割としており、残りを20社の時価総額に応じた配分としています。
昨年時点では、トヨタ自動車を除く組み入れグループ会社数は21社でしたが、変動があったのですか。
トヨタ紡織が加わりました。同社は、昨年までは社名が豊田紡織だったのですが、昨年3月のトヨタ自動車の有価証券報告書において記載がなくなりましたので、一旦、ファンドの組み入れから外しました。しかし、トヨタグループ内で合併が行われ、同時にトヨタ紡織と社名変更されて、再び、トヨタ自動車の有価証券報告書に連結対象子会社として記載されました。それで、ファンドに再び組み入れたというわけです。
ファンドが設定された2003年11月には、当時の豊田紡織を含めた21社でスタートして、一旦、組み入れから外れて、今年、再びトヨタ紡織として、ファンドの組入銘柄となったのですね。
そうです。少し複雑に聞こえるかもしれませんが、あくまでも、ファンドの運用ルールに則って変更を実施した結果です。
このようなケースを含め、組入れ銘柄の見直しの頻度はどのくらいですか。
6ヵ月ごとです。
運用ルールがトヨタ自動車を5割、残りをグループ会社に時価総額に応じて配分し、リバランスはあらかじめ決められたとおり四半期ごとに、システマティックに行うということは、ベンチマークは存在しないものの、特殊な形のシステム運用のインデックスファンドと捉えることができますね。
投資信託協会の分類では、ファンドは国内株式型一般型に分類されていますが、実際には、あくまでもパッシブ運用です。
業種別の配分については、当然ながら自動車を含む輸送用機器が圧倒的に大きいわけですね。
そうです。9月末では、輸送用機器が89%程度、卸売業、機械、保険が各々3%程度と続きます。
この比率が大きく変化することはないわけですね。
これまでも概ねこの割合でしたし、今後についても大きく変化することはないと思います。
ファンドの約款を見ると、約款上は外貨建資産を20%まで組入れることが可能となっていますが、外貨建資産が組入れられる可能性があるのですか。
原則的にはありません。ただ、最近は企業間での合併・買収などが頻繁に行われる時世ですので、万が一、外貨建ての権利が発生するなどといった可能性も皆無ではありません。そのような特殊な事態にも柔軟に対応できるよう、約款では一応、組入可能としています。
次にパフォーマンスについてお聞かせ下さい。設定来のパフォーマンスを見ると、2005年9月末現在、+60.60%と、同期間の東証株価指数の+38.66%を大きく上回っていますね。
そうですね。好調に推移してきました。設定当初のみ、一時的に設定価格である10,000円を割る局面もありましたが、それ以降は若干の上下はありましたが、ほぼ一貫して上昇が続いています。
要因はどんなところにありましたか。トヨタ自動車の株価の上昇ですか。
確かにトヨタ自動車の株価は好調でした。特に、ここ数ヶ月についてはそうでした。ただ、設定来のパフォーマンスをトヨタ自動車の寄与とその他のグループ会社の寄与に分けて分析してみると、設定後2004年8月頃までは、トヨタ自動車の株価上昇の寄与がより大きく、それ以降については、グループ株式の寄与が大きくなりました。そして、直近の数ヶ月については、再びトヨタ自動車株がかなり上昇してきたために、トヨタ自動車とグループ株式の寄与が概ね同じくらいになってきています。
つまり、トヨタ自動車一社の株価を保有するよりも、ファンドとしてグループの株価を保有した方が、分散効果により高いパフォーマンスが達成できたということですか。
そうですね。結果としては、トヨタ自動車とグループ株式に分散した効果が上手くパフォーマンスで現れたことになりました。また、トヨタ自動車のグループ会社といっても、内容はそれぞれ異なりますし、各社が優れた技術を持っており、将来、その技術により画期的な製品が開発され、株価が大きく上昇するという可能性もあります。そういうことが期待できるのも、21社とはいえ、分散投資するメリットであると考えています。
2004年8月以降は、グループ会社の株価の寄与が相対的に大きかったということですが、具体的には、どの会社の寄与が大きかったのですか。
いずれの会社も概ね均等に寄与しています。時価総額で見ると、デンソーの寄与は大きくなりますが、他の会社も時価総額に応じて概ね同じようにファンドに寄与しました。
ファンドが比較的新しいので、これまでのところとても順調に見えますが、例えば、過去10年のトヨタ自動車の株価を見ると、2000年にも現在のように5000円を付けた後、2000円台に下落した局面もあります。そういう局面が再び起これば、当然ファンドの基準価額も大きく影響を受けるわけですよね。
当然、投資対象は株式ですから、そういう可能性はあります。しかし、トヨタ自動車及びグループ会社について、1980年以降という長期の株価パフォーマンスを分析してみると、当然、上昇局面や下落局面はありましたが、概ね東証株価指数を上回るパフォーマンスは示してきています。最近は株式市場も業績に対する適正価格というのをかなり意識する傾向にありますので、現在のトヨタ自動車並びにグループ会社の業績を勘案すれば、これらの企業の株価のパフォーマンスが東証株価指数を大きく下回ることにはならないのではないかと考えています。
株式市場ですから、ファンドの基準価額が東証株価指数や日経平均株価と乖離するという意味でのリスクはあると思います。ただ、トヨタ自動車のグループ会社といっても、売上げや利益をトヨタ自動車一社に依存しているわけではありませんから、トヨタ自動車が割安に放置されていても、グループ会社の株価が上昇するケースはありますので、分散効果は十分得られるファンドだと考えています。
追加型株式投資信託の中では、恐らく、組入れ銘柄数が最も少ないファンドの一つだと思いますが、それでも、分散効果は十分得られているというわけですね。
そうですね。
次に純資産総額についてお聞きしたいのですが、設定からわずか1年10ケ月程度しか経過していませんが、9月末現在で457億円と、かなり大型のファンドに育っていますが、これはパフォーマンスによるものと資金流入によるものと、どちらが大きいのですか。
直近で見ると、パフォーマンスによる増加が大きいのですが、資金流入もかなりあります。
直近といいますと、夏以降ですか。
今年の春先以降ですね。ただ、実際には、新規の資金の流入も、運用側が驚く程多くあります。コンスタントに資金の純増が続いています。
どうしてだとお考えですか。
パフォーマンス、純資産の増加により、投資家、メディアなど各方面からの当ファンドへの関心が高まってきているからだと考えます。毎月積立で、投資されているお客様が多いのも要因のひとつではないかと考えます。
ファンドのリスクについては、一つのグループ企業群に集中投資するファンドということで、集中投資によるリスクはあるものの、分散効果が効いているというお話を伺いましたが、その他のリスクについては、どうお考えですか。例えば、自動車産業というと、為替の影響を受けると言われていますが、為替リスクについてはどうでしょうか。
為替の動きとの相関については分析を行なっていますが、マスコミなどで報道される程、影響は受けていません。長期間の相関関係を分析すると、ほとんど相関はありませんでした。80年代のプラザ合意以降は、円高局面で自動車をはじめとする輸出関連銘柄が売られた記憶が残っていて、円高イコール輸出銘柄安ということを連想しがちですが、実際には、ほとんど相関はありません。加えて、現在では、トヨタ自動車をはじめ、自動車産業全体が、海外での生産をかなり増やしていますから、為替の業績への影響はかなり軽減されてきていますし、為替市場そのものも、当時のような変動は見られなくなっています。
確かに、80年代と比較すれば、今のドル円の100円から110円程度の動きというのは安定していると見ることができますね。
そうですね。為替と無関係とは言えませんが、影響はそれほど大きくないと考えています。
トヨタグループ株式ファンドは、ある意味特殊なファンドだと思うのですが、どのような投資家に適したファンドだとお考えですか。
設定の経緯のように、トヨタ自動車に関心のある投資家のために1万円からグループ株式をパッケージで提供するファンドだという位置付けのファンドです。設定当初は、確かに中京地区のお客様を意識しておりましたが、現在では、エリアを特定することもなく、広くトヨタ自動車に関心のあるお客様向けのファンドであると考えています。
本日はありがとうございました。
【本を読もう!】

