相場のこころ(5)


引き続きミクロの面についてです。 アメリカの心理学者フェスティンガーは、1950年代に認知的不協和ということを言っています。これはいやなものは受け付けたくないという心理が人間には働くのだと言うことです。へビースモーカーは煙草と癌との因果関係を認めたがらないが、喫煙者でない人は煙草が身体には良くないということを認めている――こういうことです。われわれが車を買う場合、A社がいいか、B社にするか、それともC社にするかと迷います。そして悩んだあげくB社の車を買うことに決めたとたんに、A社やC社の車はだめなものだと思い始めます。これを認知的不協和といいます。協和しないものを認めたがらないということです。

これは相場にも起こります。アメリカの金利が上がると思ったからドルを買います。そしてドルを買った後でドルを買ったという事実に大変影響を受けるのです。

そこでこれから相場に入る時に際に、どのような教訓を得られるかと言いますと「ノートをつけましょう」ということです。自分がどういう考え方でポジションを取ったかということをノートに記録しておくのです。どうしてかというと、たとえば、自分がアメリカの金利が上がると思ったのでドルを買ったことが、その後アメリカが金利が下がった時に、ドルを買った理由を他のことにすりかえてしまうということをしているからです。人間は認知的不協和を受けやすいということです。

もう一つ違う側面からの話しですが、サンスポットという用語があります。これは経済学で2つの使い方があります。一つは文字通り太陽黒点という意味です。サンスポットセオリーとは太陽黒点で景気が循環するという説です。もう一つは太陽黒点は景気循環に全く関係ないが、関係があると思えばそうなるのだという太陽黒点論者を馬鹿にしたような意味です。経済学ではこの2つの使い方をしています。マーケットでみんながそう思えばそうなるのだということを経済学ではサンスポットというのです。これもマーケットと心理の係わり合いと言えます。為替心理説もある意味ではサンスポットと言えるのです。すなわち購買力平価の逆を動いたということです。そしてこれらのものが重なり合ってマーケットが成立しているということが言えます。前にアッシュの同調の話しをしましたがマーケットは心理的な影響がマクロやミクロ面で相場に影響を及ぼしているのです。