「適合性の原則」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
正式な意味は、googleに聞いていただくとして、ざっくりとした私の理解としては、「客観的に見て、薦めてはいけないような人に、薦めてはダメ。(売ってはいけない人には、いくら本人がOKといっても、売ってはダメ。)」ということ。
金融以外を例にするならば、「ソバアレルギーの人にソバを食べさせようとしてはダメ」、「未成年にアルコールやたばこを販売してはいけない・・・」みたいなことです。
銀行や証券会社などで、証券口座を開設しようとすると、資産の額とかリスク許容度(元本割れする可能性があってもよいかなど)をいちいち聞かれて、面倒な思いをした方も多いと思いますが、あれも、業者の側が、「適合性の原則」に沿った営業活動をするために、必要な情報を収集しているという意義があるのでしょう。
ということで、私を含めた投資家の側は、普段意識をすることはほとんどないでしょうが、売る側の証券会社や銀行などの方は、おそらく、かなりこれを守るために、面倒な手続きが求められているはずです。
しかし、この「薦めてはいけない人には薦めない」、「売ってはいけない人に売らない」というのは、簡単なようで、難しいことなのだと思わされる出来事がありました。
我が家には、80歳を過ぎた祖父がいるのですが、先日、銀行から、「個人向け国債の利子のお知らせ」みたいな手紙が届いており、私にむかって曰く、「字が小さくて読めないから、 大事なものかどうか見てほしい」ということで、それを持ってきたのです。
中身は、上述の通り、利子のお知らせで、別段大した話ではないのですが、そもそも、半年ほど前に、祖父は、どうやら、家族も知らぬ間に、10年物の個人向け国債を買ったらしいのです。
確かに、「郵便貯金が満期になったから、銀行へ預け替えてくる」と出かけたことがあったのですが、どうやら、そこで、個人向け国債を薦められて、購入した模様。
「80代の人間にむかって、10年物国債って、満期で何歳だと思ってるの・・・、それって、売っていいのか?」というのが、私の第一印象でした。(確かに、元本割れのリスクはないかもしれないけれど、80代の高齢者に、10年満期の商品売るというのは、流動性の観点からみて、さすがに、「適合性の原則」に反しているのでは・・・と思ったのです。)
ただ、私は、この銀行を責める気持ちにもなれませんでした。
実は、祖父は、かなり耳が悪く、そして、あまり聞こえなくても、「ああ」とか「うん」などと、いい加減に「返事」をするというのを良く知っていたので、おそらく、銀行の担当者は、商品の説明も、きちんとしたのでしょうが、祖父のほうが、それよく理解しないまま、「それでいい」と言ったのだろうと、容易に想像ができたものですから。
実際、高齢者で、適切な判断ができないようになってくるケースは、我が家に限らず多いと思いますし、それに対して、「成年後見」や「禁治産」といった法律的な手続きまでするケースは稀だと思います。(状況自体が、少しずつ進行し、変化するものだということもありますし、また、なかなか本人の自尊心の問題もあって、そこまでの手続きに踏み込まないケースが多いのではないでしょうか。)
私は、どちらかといえば、昨今の何事も規制強化というような風潮については、あまり好ましくないと思っているのですが、「適合性の原則」だけは、「原則」の名の通り、非常に重要なルールであり、一方で、それを効果的に実現する方法が見いだせていないという点で、今後も取り組まなければならない重要な問題だと思っています。
酔っ払いに、「あなた酔ってますか?」と聞いても、ロレツの回らぬ口で、「酔ってないです。大丈夫。」と答えるのと同じで、「大丈夫ですか?」、「あなたはリスクがとれますか?」と聞いても、正しい答えが返ってこないという点が、この問題の最大の難しさだと思います。
私自身、この問題については、よい解決案を持ち合わせていないのですが、問題自体が存在するということについては、今回の経験を通じて、身をもって感じた次第です。