8) それで?
さて、これまで投資一般のパフォーマンス評価の方法を説明してきましたが、一つ重要なことを議論していません。それは、パフォーマンス評価は何のためにするのか、ということです。一般には、次の2つではないでしょうか。
a) 過去の運用成果について検証する。
b) これから投資をしようというときに、より良い投資対象を選択する。
a)の意味でのパフォーマンス評価は、投資信託の運用会社がファンドマネージャーのボーナスを決めるときに使われますし、また年金基金などの機関投資家が各運用委託先の成績を見るときにも使われます。しかし、個人投資家がパフォーマンス評価を考えるとき、多くの場合その目的はb)であるように思います。では、この目的のために、これまで説明してきた各種のパフォーマンス評価測度は、有効でしょうか?
多くの場合、b)の目的でのパフォーマンス評価も、a)の場合と同じく、過去のデータを用いて行われます。投資信託などの広告や販売用資料、そして投資信託評価機関が与える「星の数」も、過去のパフォーマンスです。この点について、筆者は前から不思議に思っていることがあります。例えば株式や為替なら、最近の(つまり過去の)パフォーマンスを見て単純に順張りで買うか買わないかを決める人は、それほどいません。チャートをやる人は確かに最近の株価の動き、ようするに過去のパフォーマンスを見ますが、彼らも単純に「最近この株は上がっているから、今後も上がるに違いない」という、シンプルな見方はしないようです。しかし、投資信託などの運用に限っては、なぜか過去の運用成績(トラックレコードと呼ばれます)が非常に重視されます。株式投資信託を考えれば簡単に分かるように、保有している株式の過去のパフォーマンスが良かったからこそ、その投資信託の過去のパフォーマンスが良いわけで、投資信託の過去のパフォーマンスで購入するかしないかを決めることは、上がった株だから買う、ということとほぼ同義です。しかし、リスク資産運用の原則からいえば、過去の成果は決して将来の成果を保証するものではありません。そればかりか、「成功した」投資家の多くがいわゆる逆張り屋であることを考えると、むしろ「最近パフォーマンスが悪かった投資信託を買った方がよい」とさえ、言えるかもしれません。90年代は、必ずしもそうではなかったようですが。
確かに、株式の場合、ソニーやNTTドコモのように、今後儲かるとみんなが予想する会社の株価は高くなるのに対し、市場価格で売買されるのではなく、純資産で設定や解約が行われる投資信託(日本の多くの投資信託の多くはそうです)の場合、仮にグレートな運用担当者が運用するファンドでも、設定や解約はあくまでも一口当たり純資産つまり基準価額で行われます。つまり、将来の高いパフォーマンスが、安く買えるわけです。しかし、これは長くは続きません。こうした投資信託には人気があつまり、運用報酬によって利益をあげることが目的の運用会社は、そのうち信託報酬率を上げるでしょう。現に、アクティブ運用を行う投資信託の信託報酬は、過去10年随分上がったように思います。
さらに、過去のデータから将来を予測しようとする場合必ず「過去の結果はたまたまであった」可能性が必ず付きまといます。この場合、過去のデータは将来とは全く無関係でさえあります。イカサマのないサイコロを転がして2回同じ目が出たからといって、3回目も同じ目が出る確率は、1/6でしかないのと同じです。
まとめると、過去のデータは、どのように理論を駆使しても、過去でしかありません。将来の予測に使えるかどうかは、全くわからないのです。
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