5.銀行預金とMMF
以上のようなメカニズムは、丁度銀行に取り付け騒ぎが起きた場合に発生するトラブルと全く同じです。商業銀行は預金という流動性の高い金融商品で資金を調達し、それを融資という非常に流動性の低い資産に投資します。これで資金繰りがうまく行くのは、統計的に非常に多くの預金者が一度に預金を解約しに来ることはめったにないからです…めったに、つまりたまに発生してしまいます。倒産の噂や債務超過の報道やなにかで預金者の不安が高まり、一度に大量の預金解約(取り付け騒ぎなどと呼ばれます)が起きると、当然銀行は資金対応ができなり、本当に倒産においこまれたりします。銀行の主な資産である融資は流動性が低く、現金化が難しいからです。監督官庁が金融機関を中心に風説の流布を嫌ったり、あるいは預金を保護したりするのは主にこうした事情からです。保護されていると知っていれば、銀行がつぶれても政府が足りない分を預金者に支払ってくれるわけですから、安全な資産ということになり、大量解約や取り付け騒ぎは起きにくくなります。なお、最近は生命保険会社の破綻も相次いでいますが、これも同様のメカニズムです。
しかしながら、投資信託に政府による保証や保護はありません。利益がでても損失が出ても、それは必ず受益者のものになります。したがって、取り付け騒ぎを食い止める方策は打たれていません。それだからこそ、通常MMFは普通預金などと非常に近い性質(購入後1ヵ月以上立てばいつでも解約可能)をしていながら、普通預金金利よりも高い分配が可能なのです。ここにも、いわゆるリスクとリターンのトレードオフが働いています: 普通預金は安全性が高いがその分金利は非常に安く、MMFはいざというときにだれも保証してはくれないけれどもその分分配率が高いのです。