イラク戦争が始まって数週間。世界各国で戦争反対の声が高まっています。皆さんの中にも戦争に反対している方も多いでしょう。ところが、戦争反対を訴えるあなたが、気づかないうちに実は戦争に加担している・・・そんなこともあるかもしれません。
どういうことが説明しましょう。例えば、あなたはイラク戦争であれ、何であれ、いかなる戦争にも反対している、週末には家族と一緒に反戦デモにもにも積極的に参加している、そんな一人だとしましょう。一方で、あなたはサラリーマンとして年金に加入しています。このお金は、世界各国の株式や債券などで運用されています。その中には、銃や兵器を製造している会社もあれば、それらを製造するために必要となる電機機器や様々な部品を生産している会社もあるでしょう。当然、米国の国防総省をはじめ世界各国の軍隊に様々な物資を販売している会社もあります。この場合、直接的ではないとはいえ、あなたのお金が結果的には戦争に使われている・・・と考えることもできます。ましてや、戦争による特需でそれらの企業の業績が上がり、株価が上昇、あなたの年金の資産も増える、つまり戦争により利益を得た一人になっている・・・。極端な考え方なのかもしれませんが、そんなふうに考える人もいます。
これは、戦争のケースだけではなく、環境問題などでも同じことが言えます。環境問題への関心が高く、環境汚染や破壊に反対しているあなたのお金が、実は、年金や銀行融資という形で、水質汚染を招いている企業の株式や途上国等の環境を破壊している工場を持つ企業の株式に投資されているとしたらどうでしょう。
戦争に反対であり、運用においてもその意思を貫きたい、あるいは少なくとも戦争から利益を得るような投資家ではありたくないと考える投資家は多く存在しているようです。そして、そういう投資家向けのファンドが米国の社会的責任投資(SRI)ファンドの中にはいくつか存在しています。
SRIとは従来の財務諸表、投資尺度を利用したスクリーニングに加えて、個別のファンドの趣旨や運用方針に合致した社会的評価や環境評価を用いて投資対象を決定する投資のことです。
SRIには、道徳的投資、環境投資、株主活動、地域社会貢献活動への投資などが含まれます。これは投資信託に限った話ではありません。例えば、ある地域の緑化を推進するための基金があり、その趣旨に賛同し、その基金に投資(あるいは出資)することもSRIの一つです。あるいは投資信託においては社会的責任ある行動をとっている企業に投資する、環境問題に取り組む企業に投資する、環境改善に貢献する製品を製造している企業に投資するファンドなどがあげられます。日本でも運用・販売されている「エコファンド」と呼ばれるファンドもSRIの一つです。ただし、SRIでも、スクリーニングの方針や個別投資対象の選別方法等はファンドにより異なりますの。したがって、実際に組み入れている銘柄はファンドにより異なってきます。
米国の代表的なSRIファンドとして、「ドミニ・ソーシャル・エクイティ・ファンド」があげられます。同ファンドは、1991年6月3日に設定されたSRIのミューチュアル・ファンド(日本の投資信託にあたります)です。2002年12月末現在の純資産額は9.43億ドル(日本円で約1120億円)です。ファンドの目論見書によると、「ドミニ・ソーシャル・エクイティ・ファンド」は、社会的および環境的観点から投資対象をスクリーニングし、アルコールやたばこ、武器の製造会社、ギャンブル関係の企業、原子力発電関連企業、軍に対する武器納入契約への依存が大きい企業等への投資は行なわないことをその運用方針としています。このファンドのように、兵器や銃の製造関連企業への投資を行なわないことを方針として掲げているSRIファンドは多く見られます。
一方で、イラク戦争後のイラク再建や難民援助に対してより積極的に貢献したい投資家にアピールしているファンドもあります。その一つが、PAX World Balanced Fundです。同ファンドは1971年に設定された米国で最も古いSRIファンドであると言われています。同ファンドは、株式と債券の両者に投資するバランス型のファンドですが、銘柄選択には生活水準の改善に貢献する商品やサービスの提供をおこなっている企業、公平な雇用慣行を実行している企業、環境についての方針が健全な企業、住宅ローンや学生ローンの提供会社、低所得者向け住宅の提供企業に投資を行なうといった社会的責任投資を基本としています。 PAX World Balanced Fundを運用するPAX World Fund社が2003年3月25日に発表したリリースによると、同ファンドの投資家は、自分の自由な意志により、ファンドからの利益の一定の割合(キャピタル・ゲインの5%、25%、50%、100%など)を、PAX World ServiceというPAX World Fundの創始者が設立した非営利団体に寄付する機会が与えられ、ここに寄付された資金が様々な形でイラクの難民支援や復興援助に利用されるということです。
戦争や環境などについての考え方は人それぞれ異なります。ただ、そういうものに対する自分の考え方や信念を普段の生活だけでなく、投資においても貫きたいと考えている投資家にとっては、こういうファンドの存在は不可欠だといえます。日本においては環境という点から投資先をスクリーニングするファンドは増えつつありますが、残念ながら、兵器や軍関係の企業には投資しないという反戦という基準を持ったファンドは登場していません。