J.P.モルガン・アセット・マネジメント、サステナブル投資の方向性を発表


J.P.モルガン・アセット・マネジメント(JPMAM)は、2020年3月13日、顧客へ提供するソリューションを深めることを目指し、サステナブル投資に関する取り組 みをより強化する方針(イニシアチブ)を以下のとおり発表した。

  1. JPMAMは、これまでのスチュワードシップ活動を強化する取り組みの一環として、気候変動 を含む5つの優先事項に関する企業との対話(エンゲージメント)により注力してまいります。
  2. JPMAMは、運用チームによるESG (Environment = 環境、Social = 社会、Governance=ガ バナンス)に関するマティリアリティ(重要性)分析に加えて、AIをはじめとするデータサイエン スを活用し、独自のESGスコアリングフレームワークを構築してまいります。データ活用はサ ステナブル投資を推進する上で重要であるとの考えに基づいています。
  3. JPMAMは、気候変動リスクに関する企業、投資家、規制当局との協力関係の高まりに鑑み て、このたびClimate Action 100+ に参画することを決定いたしました。

JPMAMの最高経営責任者(CEO) ジョージ・ガッチ氏は、次のように述べている。

これらの発表は、サステナブル投資に関する継続的なコミットメントを伸長させるものです。ESG要素の考慮はJ.P.モルガンの投資プロセスに不可欠であり、実際に弊社グループの運用部門に 所属する200名以上のリサーチ・アナリストは、ESGを投資判断の要素の一つに組み入れていま す。これらの取り組みから得られる知見を資産クラス全体に体系的に適用することは、私たちのDNAの一部となっています。

また、弊社グループのデータサイエンスチームや先進的な技術を活かすことで、サステナビリ ティ関連の課題が財務上与える影響についてより理解を深め、お客様のサステナビリティへの取 り組みとより強力なポートフォリオの構築を目指しています。

 

リサーチをベースとした運用主導型スチュワードシッププロセスの強化

JPMAMは、企業と日々直接対話を行っている1,000名超の運用部門の専門知識を活用し、長年 にわたる企業とのエンゲージメント基盤を強化する。JPMAMのスチュワードシップに関する哲学に則り、企業価値向上にESGが重要な役割を果たすと考えられる企業に対し、対話を強化する。

今後の年次活動報告では、企業との対話に関して、明確なKPI(評価指標)を組み込み、顧客に対して活動の透明性を高め、また対話を行う投資先企業に対して、JPMAMが持っているサステナビリティに関して望んでいる水準をより明確にする。

JPMAMのインベストメント・スチュワードシップ・モデルでは、以下を優先する。

  • 気候変動リスク・・・JPMAMは、気候変動リスクは企業が長期的に株主価値を生み出す能力に直接影響を与え ると考えており、財務情報に関するタスクフォース(TCFD)で推奨されているように、企業の 基本戦略に気候変動リスクへの対応とその開示を組み込むことを望む。
  • ガバナンス・・・JPMAMは、株主を平等に代表する取締役および多様性のある取締役会を持つことに代表 される企業文化を重視している。
  • 長期戦略に基づいた企業経営・・・JPMAMは、企業および取締役会が、経営幹部への報酬内容を含む、長期戦略に基づいた 企業経営を重視することを望みます。
  • 人的資本の管理・・・JPMAMは、人的資本を効果的に管理すること(例:企業の行動規範、教育や研修、男女平 等を含む多様性などの面において)は、生産的かつ意欲的な労働力を維持するために重要 であると考えている。
  • ステークホルダーとのエンゲージメント・・・JPMAMは、企業の持続性には、すべてのステークホルダーに対する意識、また事業を行っ ているコミュニティに対する影響への考慮が必要だと考えており、長期的な成長を達成する 上で、サイバーセキュリティやプライバシー(データ管理)などの問題を含む取り組みが求め られると考えている。

JPMAMのサステナブル・インベスティング グローバル統括責任者のジェニファー・ウー氏は、次の ように述べている。

私たちのインベストメント・スチュワードシップ活動では、企業の財務面にもっとも影響がある問 題を重視することで企業価値の向上に結びつくよう注力しており、投資先企業の成長軌道に影響 を与える問題に焦点を当てています。

持続可能性と価値の創造に注目することは、企業との対話において常に不可欠な要素です。先 に述べた5つの優先事項に関するJPMAMの持続的成長を促す考えは、エンゲージメントの強化 と、議決権行使を通じて表現されることになります。

 

データサイエンスを活用し独自のESGスコアを開発

PMAMは、運用チームが財務上重要とみなすESG指標に基づいて、複数のESGのデータソースを組み入れた独自のESGスコアを開発している。同社グループ独自のスコアの構築は、JPMAMの運用者が将来の予測を含めたESGのリスクや 機会をより特定しやすくし、リスク調整後のリターンを高めることを目的としてESGを最適な形で 組み入れたポートフォリオを構築することを目的としている。

このフレームワークにより、機械学習アルゴリズムや自然言語からのセンチメントの読み取りなど、 データサイエンス機能を活用して、企業開示情報の域を越えたサステナビリティに関する推測デ ータを収集することが可能となる。

ジェニファー・ウー氏は、次のようにも述べている。

弊社グループ独自のESGスコアは、各セクターの専門知識と新技術を組み合わせることにより、 運用チームの既存フレームワークを補完し、将来発生し得るリスクや機会の予測を含む、データ を裏付けとしたESG投資を可能とします。適切にデータサイエンスやデータを活用するESG投資 は、リスクの軽減とアルファの取り込みの両面において、サステナブル投資を前進させると信じて います。 さらに、これらは私たちのエンゲージメント業務のなかで重要視する分野の周知に役立 っています。

 

JPMAMがClimate Action 100+に参画

JPMAMはClimate Action 100+に参画する。これは、前述のサステナブル投資に関する取り 組みの延長であり、またJPMAMがエンゲージメントにおいて気候変動リスクを重大な問題として捉えているという表れでもある。

ジェニファー・ウー 氏は、次のようにも述べている。

Climate Action 100+に参画することで、エンゲージメントをしている企業に対してリスク・エクス ポージャーの開示を強化し、温室効果ガス排出量の削減対策など、持続可能なビジネスを促す 手段が更に増えると考えています。

JPMAMには、TCFDや責任投資原則(PRI)イニシアチブなど、さまざまな業界擁護活動を通じて 気候変動に対するアクションをとってきた歴史がある。 JPMAMは、2007年からUN PRIに署名している。

JPMAMの最高経営責任者(CEO)ジョージ・ガッチ氏は、最後に以下のように述べている。

私たちは、長期的な視点がより良い結果をもたらし、より持続可能なビジネスモデルへと導き、 その積み重ねが投資成果につながっていくと考えています。そのためには、成長の持続可能性、 そして気候変動がもたらし得る重要な影響を意識することは、ポートフォリオ構築とリスク管理に 不可欠であると考えています。