JPモルガン・アセット・マネジメント、年金基金運用動向サーベイ結果を発表


JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社は、日本の年金基金を対象に、2008年度から2009年度にかけての運用状況の変化、および今後の方向性について聞き取り調査を行い、その調査結果を4月21日に発表した。

JPモルガン・アセット・マネジメントによると、同調査では、運用効率の改善のため、オルタナティブ運用を重視しながら、さらなる分散投資を目指す多様化の流れは、2008年の金融危機を経た後においても基本的には変わっていないことが確認された。一方、サブ・プライム・ショック、リーマン・ショックを契機に市場環境が激変する中、政策アセットミックスと実績資産配分の乖離が拡大する等、その変化を十分吸収しきれていない部分が残されていることも明らかになった。

調査結果の主なポイント

資産配分状況の変化

  • 調査対象先年金基金(以下、「年金基金」)の運用資産額は2008年度通期で20%弱減少
  • 過半数の年金基金で国内債券への配分が増加、6割以上で内外株式への配分が減少(実績ベース)、一方、政策アセットミックスと実績資産配分の乖離も拡大し、リスク回避の傾向が強まっている
  • 約半数の年金基金が何らかの形でリバランスの実施方法を修正

調査結果によると、年金基金の運用資産額は2008年度通期で18.4%減少した。市場環境が激変する中、年金基金の資産配分も大きく変わり、56.5%の年金基金で国内債券への配分が増加、68.1%で国内株式、60.9%で外国株式への配分が各々減少した。また、政策アセットミックス3と実績資産配分との乖離も拡大し、一般勘定、短期資産への配分が各々3.2%ポイント、1.6%ポイントのオーバーウェイト、国内株式、外国株式への配分が各々2.4%、3.0%のアンダーウェイトとなった。このように、2008年における市場の変動性の一時的な急上昇によって、年金基金がリスク回避の姿勢を強め、リスク水準の高い資産からリスク水準の低い資産に資金を退避させる動きが確認された。

また、半数以上の年金基金が、通常であればルール通り機械的に実行するはずのリバランス4において、何らかの修正、変更を加えており、結果的に、市場の変動によって配分が減った内外株式の比率を元に戻す動きが鈍化している。

運用商品の入れ替え状況

  • 2008年度は、アクティブ運用中心に、全資産を通して、解約商品数が新規採用商品数を上回った
  • 今後は、伝統的資産では新規採用と解約が拮抗するものの、オルタナティブでは新規採用が解約を大幅に上回る見込み

このような厳しい環境の中で、2008年度は、全般的に解約が新規採用を上回っており、運用商品数が減少している。しかしながら、こうした環境下においても、国内債券における長期債、外国株式におけるエマージング株式、グローバル株式等、部分的には新規採用商品数が解約商品数を上回っている商品タイプも見られた。また、オルタナティブ運用においては、絶対収益型5のみならず、インフラ投資、不動産、プライベート・エクイティといった幅広い商品タイプにおいて、今後、新規採用商品数が解約商品数を上回ることが見込まれている。このように、運用効率の改善のため、さらなる分散投資を目指す多様化の流れ、オルタナティブ運用を重視する姿勢は、2008年の金融危機を経ても基本的には変わっていないことが伺えた。

同調査を統括した、JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社投資戦略ソリューション室長の鈴木英典氏は、次のように述べている。

「今回の調査では、中長期的な年金資産運用の潮流と、市場環境が激変する中で発生した一時的な『歪み』あるいは『過剰反応』の両方が確認されました。前者としては、伝統的資産内における新たな商品タイプ、および多様なオルタナティブ運用商品の新規採用と配分増が挙げられ、これらは市場環境の変化に関らず、今後も継続するものと考えられます。一方、後者としては、リバランスの停止、短期資産等への資金の滞留、株式への割合の縮小等が挙げられます。これらの一時的と見られる現象は、今後、市場が落ち着きを取り戻すにつれて、年金基金がリバランスを再開し、株式の配分を元に戻す等ポートフォリオの再構築を本格化することで、徐々に正常化されるものと考えられます」。

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