ステート・ストリート調査、アジア債券に対する世界中の機関投資家の需要が高まる見通し


米ステート・ストリート・コーポレーション(本社:ボストン)の資産運用部門であるステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは2019年5月28日、グリニッチ・アソシエイツ社と協働で、180社以上の機関投資家とプライベートバンクのゲートキーパーを対象に実施した、アジア債券に対するアセットアロケーションについての最新の調査結果*を発表した。

調査の結果、アジア債券市場は今後12カ月間に、成熟するアジア市場とアジア債券の高利回りを活用しようとする世界の機関投資家やプライベートバンクの顧客からの大規模な資金流入が見込まれ得ることが明らかになった。

回答者の半数以上が、現在、アジア債券に投資しており、そのほぼ全員(95%)が今後12カ月間に資産配分を拡大(41%)または維持(54%)することを予定している。また、現在アジア債券に投資していない投資家の4分の1が、今後12カ月間に投資を開始することを計画している。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの債券部門担当アジア太平洋地域責任者であるケン・シアン・ング氏は、次のように述べている。

調査対象の投資家の約4分の3が、今後1年間にアジア債券へのエクスポージャーを拡大する主な理由として、利回りを挙げました。世界中の投資家にとって、アジア債券は数少ない利回りの源泉となっています。過去10年間の大半で金利は世界的に過去最低水準近辺にとどまっており、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内の追加利上げを見送る決定をしたことから、アジア債券投資を通じた利回り獲得機会は一段と魅力が増しています。

■中国国債は投資家にとって最も魅力的

また、調査回答者はアジア債券へのエクスポージャーを引き上げる理由として、アジア債券のグローバル・インデックスへの組み入れ(41%)、市場規模の成長/商品の選択肢の拡大(37%)、市場の流動性向上(24%)を挙げた。

アジア債券に対する需要を牽引しているのは中国資産への選好の高まりで、アジア(日本を除く)の主要国債市場のリストから中国を最も魅力的な投資先に選んだ回答者は、その3分の2に上った。

ケン・シアン・ング氏は、更に次のように述べた。

2019年4月から中国オンショア債券がグローバル債券インデックスに組み入れられたことは、13兆米ドルの中国債券市場がグローバル債券市場、ひいては世界中の投資家のポートフォリオと統合する上で重要な節目となりました。投資家は、中国債券が提供するポートフォリオの分散効果と相対的に高い利回りのメリットをみており、中国債券市場は引き続き成長すると予想されます。

■アジア債券ETFの成長

調査において、世界の機関投資家およびプライベートバンクが保有する債券資産のうち、アジア債券は18%(国債が5%、社債が13%)だった。また、その内訳を見ると、保有債券資産におけるアジア債券への平均配分比率は、アジアのプライベートバンクの顧客の51%**が最も高く、アジア(日本を除く)**の機関投資家の26%、欧州の7%、米国の5%、日本**の3%、オーストラリア**の2%となっている。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズによると、現在、アクティブ運用による直接投資は、アジア債券にエクスポージャーを得るための投資手段として最も人気がある。しかし、「ETFを利用している」または「ETFの利用を検討している」機関投資家とプライベートバンクが増加しており、ETFは現時点で、アジア債券への投資手段として第4位の人気となっている(パッシブ運用による投資手段では第1位)。回答者の多くが、ETFは流動性と分散化を高め、コストを低減する可能性があるとみている。

調査を実施したグリニッチ・アソシエイツ社プリンシパルのパリジャート・バナージ氏は、次のように述べている。

現在の利用状況や比較的多くの投資家がファンドの利用を検討していることを踏まえると、ETFはアジア債券への投資手段として、人気の面でアクティブ運用のミューチュアルファンドと間もなく肩を並べることになるでしょう。

* ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの委託により、グリニッチ・アソシエイツ社が2018年10月から2019年3月の期間中、アジア太平洋、欧州、米国の機関投資家151社と仲介業者36社を対象にグローバル調査を実施。

** 自国の債券を除く。