日本の投信会社を含む288の金融機関、環境への影響が大きい1,600社以上の非開示企業に対し環境に関するデータの開示を要請


グローバルな環境情報開示プラットフォームを持つ非営利団体 CDPは、日本の金融機関8社(かんぽ生命、住友生命保険、日興アセットマネジメント野村アセットマネジメント三 井住友 DS アセットマネジメント三井住友トラスト・アセットマネジメント、ゆうちょ銀行、および、りそなアセッ トマネジメント)を含めた過去最大規模となる全世界288の金融機関が、世界で最も環境に影響を及ぼして いる1,607社の企業に対して、ノン・ディスクロージャー・キャンペーン (NDC)として、CDP を通じて情報開示するように直接エンゲージメントを行うと2023年5月31日に発表した。このキ ャンペーンは、金融機関がその影響力とマーケットでの立場を活用して、CDP の開示要請に応じなかった企業 の情報開示を促進することを目的としている。

CDPによると、2022年のノン・ディスクロージャー・キャンペーン (NDC) は環境への影響が大きい388社から回答が得られ、 金融機関が直接エンゲージメントすれば企業は全体で2.3倍も多く開示するようになると実証された。今年は住友生命保険、シュローダー、キャセイ、アビバ、マニュライフ、AQR、リーガル&ゼネラル・インベストメント・ マネジメント(LGIM)、PGGM が加わり、31カ国にわたる総額で29兆米ドルという驚異的な資産を持つ金融機関が非開示の企業に対して CDP開示要請に応じるよう促している。2017年にキャンペーンが開始されて以来、金融機関の参加数は4倍以上、前年比平均約33%増加している。

2023年のキャンペーンの対象となる企業には非開示を続けているサウジアラムコ、エクソンモービルコーポレーシ ョン、グレンコア、シェブロン、テスラ、ボルボグループ、ロシュホールディング AG 、キャタピラーなどが含まれる。 全体では51カ国にまたがる環境に及ぼす影響の大きい企業1,607社が対象となり、世界の時価総額21兆米ドル以上(2023年2月現在)をカバーし、年間推定42億トン CO2e 以上を排出している。これは英国、EU、カナダを合わせた温室効果ガス排出量に相当する。*1,2

企業は、気候変動、フォレスト、水セキュリティの主要3テーマのうちの少なくともひとつ、また水セキュリティ質問書に初めて加えられた新たなプラスチックモジュールについて、自社の事業に関連するものとして情報開示を求められており、環境への影響と投資リスクにおける透明性を高め、資本市場の持続可能性に対する行動を強化することを目指している。

これまでのキャンペーンの傾向として気候変動関連データは引き続き金融機関が最も求めているデータであり、 対象企業の72%がこの分野の開示を求められている。気候変動データへの要請率が高いなかで、金融機 関は水セキュリティと森林減少に関する開示と行動も一段と求めるようになっており、今年は対象企業の28% が水セキュリティ関連の影響について、26%が森林減少の影響に関して開示を求められる。CDPによると、森林減少のペ ースは年間1,000万ヘクタール、排出量の22%は土地利用に起因するなか、森林減少の影響に関する開示を求められる企業数が継続的に増加していることは、企業活動による森林への影響と併せて、森林減少に 伴う企業活動へのリスクが大きくなっていると認識されているため。

CDPによると、グレンコア、スウォッチグループ、DTE エナジー、サウス32などの企業は、2022年に気候変動、フォレスト、水セ キュリティの3つの分野で開示しておらず、今年開示要請の対象となる。BP、アマゾン、BMW は昨年気候 変動については開示したが、フォレストと水セキュリティについては無回答だった。これらの企業は2023年の キャンペーンでは3つの分野すべてへの開示が求められる。

CDPによると、水セキュリティ関連の影響は金融機関の優先課題として関心を集めるようになってきた。バイオテクノロジー と医薬品、小売や石油・ガスの開発・生産の各企業は、今年のキャンペーンで水セキュリティの開示について最大のターゲットとなっている業界。CDP のノン・ディスクロージャー・キャンペーン (NDC)に参加している金融機関は、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、TJX、ロッキード・マーティン(この3社は気候変動については開示 しているが水セキュリティへの影響は非開示)、グラクソ・スミスクライン(インド)などの企業に対して開示を求め ている。アパレルや繊維産業も生産プロセス全体における水の多用とその汚染から、このテーマの開示の主 要なターゲットであり、神舟インターナショナルグループ、モンクレール、スケッチャーズ、アルド、サムソナイト、ジオック スなどが、水関連の影響に関する情報開示を求められている。

日本、英国、EU、ブラジル、米国、およびその他の多くの主要経済国で開示義務化の動きが強まっているなか、 急速に進化する市場で機敏性と競争力を維持するために、金融機関と企業への圧力が高まっている。

*1 https://www.wri.org/insights/interactive-chart-shows-changes-worlds-top-10-emitters
*2 https://www.statista.com/statistics/326902/greenhouse-gas-emissions-in-the-united-kingdom-uk/

 

キャンペーンに参加する日本の投信会社は次のように述べている。

三井住友 DS アセットマネジメント株式会社 責任投資オフィサー 坂口 淳一氏

三井住友 DS アセットマネジメントは投資先企業の中長期的な分析において、環境を含む ESG 情報を重 視します。特に、CDP がフォーカスする気候変動、フォレスト、水セキュリティについては、企業活動への波及影 響も大きく投資判断上の重大なリスク要因と捉えています。ノン・ディスクロージャー・キャンペーンを通じて、投 資先企業の環境課題への取り組みや効果的な情報開示を後押しし、地球環境のサステナビリティと同時に 企業のサステナビリティが増進することを期待します。当社はこの取り組みを通じて投資先企業の価値向上へ の貢献を目指します。

野村アセットマネジメント株式会社 常務 CIO(日本株アクティブ) 村尾 祐一氏

気候変動やフォレスト、水セキュリティ等の自然資本は多くの企業の共通する特に重要性の高い ESG 課題 であり、適切なリスク管理を行うことが持続的な企業価値向上と投資リターン拡大に必要不可欠です。CDP のフレームワークは TCFD と整合的な環境データを含み、比較可能で透明性のある情報開示を企業に要請 しており、世界中の多くの金融機関から支持されています。野村アセットマネジメントは2023年も CDP と連携 し続け、投資先企業の環境リスク管理を支援し、持続的な成長を実現していきます。

りそなアセットマネジメント株式会社 常務執行役員 松原 稔氏

りそなアセットマネジメントは、投資先企業との対話等を通じて事業活動に関する温室効果ガス排出量を 2050 年までに実質ゼロとすることや、生物多様性保全への貢献のためパーム油、紙・木材のサプライチェーン に関わる主要投資先企業との対話を更に推進することなどにコミットしています。 当社は、これらの取り組みを行う上で、CDP ノン・ディスクロージャー・キャンペーン(NDC)は大変重要な役 割を果たすものと考えており、その取り組みに大いに期待しています。本キャンペーンへの参加を通じ、投資先 企業をより深く理解し、彼らと協働してよりよい未来の実現に貢献して参ります。

また、CDPキャピタルマーケッツ グローバルディレクター リクエスティングオーソリティ クレア・エルスドン氏は次のように述べている。

財務上の意思決定における ESG の役割に関する議論が続いている中、CDP のノン・ディスクロージャー・キャ ンペーンの署名機関の継続的な増加は、世界中の金融機関がリスク管理慣行をサポートし、ネットゼロ目標 へのポートフォリオの調整を追跡し、持続可能性にリンクされた機会を解き放つためにデータを必要としているこ とを示しています。これらの用途は、長期的な収益性を保護するだけでなく、高めることに役立ちます。

CDP の金融機関主導のノン・ディスクロージャー・キャンペーンは企業の透明性に対する要請をあげ続け、企業 が環境報告と行動を強化する強力なインセンティブを提供しています。キャンペーンに対する前例のない支援は、 強力な移行計画はより高い透明性を環境についてのすべてのセグメントに当てはめ、財務リスクについての全 容を理解し、将来を見据えて運用を改善し、ネットゼロで自然にポジティブな世界経済への道を加速するため に必要であるという認識を示しています。

 

金融機関は CDP の開示期間中に企業とエンゲージメントを行い、その間、非開示企業は CDP オンライン回答システムを通じて回答を提出するよう求められる。プラットフォームは現在オープンしており、企業が質問書 を2023年7月26日までに提出すればスコアリングの対象となる。