インベスコ、ファクター投資家の動向や課題に関する調査結果を発表


インベスコは2021年9月27日、「インベスコ・グローバル・ファクター・インベスティング・スタディ 2021」を発表した。この調査は、世界のファクター投資家の動向や課題に関する分析を提供するもので、 今年で第 6 回目となる。今回の調査では、合計 31 兆ドルを超える資産運用を担う 241 のファクター投資家を対象にインタビューを実施した。

今年の調査では、ファクター投資への資産配分が引き続き増加しており、回答者の 43%が過去 1 年間に配 分の引き上げを実施、また 35%が翌年の引き上げを計画していることが明らかになった。一方、今後 12 カ月間にファクター投資への資産配分を減らす予定であると答えた回答者は、わずか 8%にとどまる結果となった。

資産配分の引き上げは、新規資金(38%)によるものが最も多く、次いで、ファンダメンタル・アクティブ (37%)となった。アジア太平洋地域の投資家の中では、ファンダメンタル・アクティブ(41%)が新規資金 (32%)を上回る結果となっている。

過去 12 カ月間で最も資産配分が引き上げられたのは、バリュー・ファクター(42%)となり、次いでクオリティ (31%)、低ボラティリティ(27%)、モメンタム(26%)となった。投資家の 48%が、パンデミック後の景気 回復に備えて、バリュー・ファクターへの配分を引き上げていると回答している。一方、資産配分が最も減少 したのは、小型株・ファクター(18%)だった。

ファクター戦略を取り入れる理由は、「リスクの最適化」(91%)が最も多く、次いで「リターンの向上」 (85%)となった。多くの投資家がファクター投資の目的は「達成された」あるいは「それを上回った」とする一方、「リターンの向上」の目的は「達成されていない」と回答した投資家も 26%となっている。

インベスコのファクター・インベスティングのグローバル・ディレクターであるスティーブン・クォンス氏は、次のように述べ ている。

欧米の投資家と比較すると、アジア太平洋地域の投資家が時価総額加重インデックスのパッシブ 戦略への資産配分が少ないことを踏まえると、彼らがアクティブ戦略からファクター戦略の採用を増やしていることは合理的です。投資家にとってファクター戦略は、彼らの投資目標を達成するための重要なツールと考えら れています。

投資家の債券運用におけるファクター採用はますます増加。パッシブ運用よりも有効と見なされる

債券投資にファクター戦略を採用している投資家の割合は、昨年の 40%から 55%と大幅に増加した。 半数以上の回答者(52%)がファクター戦略に、バリューやクオリティなどの投資ファクターと、デュレーションやインフレなどのマクロ・ファクターを適用している。

投資家の半数近く(45%)が、現在の低利回りのマクロ環境が債券ポートフォリオ内におけるファクターの適用をより魅力的なものにしていると回答している。パッシブ戦略よりもファクター戦略を選択した理由として、リスク源泉に対する管理(51%)と分散(49%)が「非常に重要」なものとして挙げられた。回答者は、リスク・ プレミアム、投資家の行動バイアス、市場構造を含むアルファの源泉を捉える上で、ファクター戦略は一般的に アクティブ運用と同等であるとみる一方、リスク管理においてはアクティブ運用にある程度優位性があると考えている。

債券のファクター投資の課題としては、運用商品が限定的であること(56%)が最もよく指摘された。ま た、多くの投資家は自らの株式ポートフォリオのファクター・エクスポージャーについて明確に理解をしていると考 えている一方、債券ポートフォリオについてはファクター・エクスポージャーの理解が十分だと答えた投資家は 39%にすぎなかった。

投資家はダイナミック戦略に移行し、マクロ環境に応じてファクターを調整する

調査によると、投資家の 72%がマルチ・ファクター戦略を、30%がダイナミック・ファクター戦略を用いており、投資家はより複 雑なファクター戦略を採用する傾向が高まっている。投資家の 29%が過去 2 年間で自社の戦略がよりダ イナミックにファクターを利用するようになったと回答し、41%が今後 2 年間でさらにダイナミックにファクターを活 用するようになると予想していることから、インベスコは、異なるファクター間で配分を変更するダイナミック戦略の採用が加速すると見ている。半数近く(48%)の投資家は、景気サイクルにおける各局面でのファクターの期待リターンに基づいて資産配 分を長期的かつ戦略的に調整しているが、より短期的な価格形成の収益機会を捉えるために戦術的調整を行っている投資家は、比較的少数(30%)にとどまっている。

ファクター戦略の採用についてはマクロ経済や業界の動向によって変化しうるとの見方が広まっており、回答者 の 82%が、ファクター戦略の採用は状況により変化すると回答している。投資家は一般的に、テクノロジーの台頭(87%)とグローバル化(72%)が様々なファクター戦略の採用に影響を与えていると考えている。気候変動については、すでに影響を与えていると回答した投資家は 48%にとどまったのに対し、将来的に影響を与える可能性が高いと回答した投資家は 86%となった。

ESG のトレンドはファクター投資の追い風となるが、適用には課題も

昨今の市場トレンドと同様、本調査においても、多くの回答者(78%)が ESG をポートフォリオ全体に組み 入れていることが調査で明らかになった。理由としては、投資リターンの向上(75%)が最も多く、次いで、 顧客/受益者の需要(72%)となった。

ESG は回答者のポートフォリオ全体に広く組み込まれている一方で、ESG を採用するためにファクター投資を活用した投資家は 48%にとどまり、ESG 自体が投資ファクターであると回答したのはわずか 30%となった。ファクター・ポートフォリオに ESG を組み入れているもののうち、ファクター戦略を適用する前に ESG スクリーニン グを投資ユニバースに適用したものが 72%であるのに対し、ファクター・モデルに ESG の要素を取り入れたものは 57%だった。

投資家は ESG に相当する運用商品を特定することが、ファクター投資と ESG 投資を並行して採用するにあ たっての大きな課題になると指摘している。例えば、回答者の 46%は、標準的なファクターETF よりも ESG を組み込んだファクターETF に投資する可能性が高いと回答しているが、49%はニーズに適したファクター ETF を見つけることは時として困難であると回答している。また、ESG ファクターETF がどのように運用されて いるかを、顧客や利害関係者に伝えることは容易であるとの意見に同意したのはわずか 26%にとどまった。

スティーブン・クォンス氏は次のようにコメントしている。

多くのアジア太平洋の投資家が、ESG 投資や債券 投資をカバーするアクティブ戦略以外の選択肢を探しています。ファクター戦略は比較的コスト競争力があり、 パッシブ・インデックス戦略の代替であり、アクティブ戦略の補完的役割を果たします。ETF などを利用したファク ター投資により、投資家のニーズを満たす様々なソリューションを提供することができるようになるでしょう。