インベスコ、第 2回インベスコ グローバル・ファクター・インベスティング・スタディを発表


インベスコは、2017年10月2日に第2回インベスコ グローバル・ファクター・インベスティング・スタディ (IGFIS 2017)を発表した。これによれば、ファクターを用いた債券やマルチアセット運用戦略への需要が 増加するなか、ファクター投資への配分は今後 5 年間で大幅に増加すると予想されている。

IGFIS 2017 では、19 カ国における 108 の世界的な投資家(年金基金、保険会社、ソブリンウェルスファンド)や 投資アドバイザー、運用コンサルタント、プライベートバンクおよび運用商品販売会社に、定性・定量両面の調 査を実施した。同調査によれば、7 兆米ドルを超える資産を運用するこれら投資家が、ファクター関連のプ ロダクトを採用し、資金配分を増やしたことが明らかになった。今後 5 年を見据えると、投資家のファクター 投資への関心はさらに高まると予想されている。リテール投資家は、2022 年までにファクター投資への配分を 17%まで大幅に増やすと予想され、この比率は、同期間にファクター投資への配分を 18%まで増やすと予想さ れている機関投資家とほぼ同水準となる。

前回(IGFIS 2016)から調査対象となっている投資家の回答によれば、ファクター投資全般への配分は過去 1 年間に 12%から 14%に増えた。機関投資家もリテール投資家も、世界的にファクター投資の採用を続け ており、2017 年におけるその配分は、それぞれ 17%、6%と、いずれも前年時点の 15%と 4%から増加している。

インベスコ・アジア・パシフィックにてファクター投資担当ディレクターを務めるスティーブン・クアンス氏は次のようにコメントしている。

ファク ター投資を採用する動きは、アジア太平洋地域では依然として一部の洗練された先進的な投資家に限定され ています。しかしながら、多くの地域で、ファクター投資は一般的な認知を獲得する転換点に差し掛かっている との確証が得られています。ファクター投資の複雑さは、依然として全ての投資家が克服すべき課題と言えま すが、IGFIS 2017 によれば、アジア太平洋地域では機関投資家もリテール投資家も、当面はファクター投資へ の配分増を継続する姿勢が示されています。市場はファクターの概念について理解を深めており、抵抗感は 大きく低下しています。ファクター投資は資産運用業界による適切なサポートを得て、他の恒久的な運用手法 に並び立つ存在としての地位を獲得しつつあるようです。

アジア地域におけるファクター投資

アジア太平洋地域の機関投資家の運用資産に占めるファクター投資への配分は、2017 年は前年より 3%上 昇して 10%となった。なお、欧米におけるこの比率は 19%。

IGFIS 2017 によれば、ファクター投資への配分を増やす傾向は明らかに世界的に強まっているが、その動 機には地域ごとにかなりの違いが見られる。欧米の投資家が主としてリスクの圧縮とコスト抑制を主目的にフ ァクター投資を採用しているのに対して、アジア太平洋地域の投資家は、リスクの圧縮よりもリターンの引き上 げをファクター投資に期待している。

アジア太平洋地域の機関投資家は、ファクター投資への配分が現在の 11%から 2022 年には 16%に高まると予想している。一方、同地域のリテール投資家のファクター投資への配分は、現在は小さいものの、今後 5 年で 3 倍近くへと、機関投資家をかなり上回る速さで拡大する見込み。

アジア太平洋地域の投資家には、ファクター投資に踏み出す上で大きな障壁がある。IGFIS 2017 に参加したアジアの投資アドバイザーは、多くのリテール投資家にとってファクターの概念は複雑で、彼らがファクター 投資に踏み切るには多くのサポートが必要だと考えている。世界的にも、そして特にアジア太平洋地域では、 運用会社による知識の共有や啓発活動の必要性が強く意識されている。

世界的なファクター投資の採用とその原動力

ファクター投資への需要は世界的に高まってはいるものの、機関投資家、リテール投資家双方のチャネルにお いて、同手法の採用でトップを走っているのは北米である。北米の機関投資家は、保険会社や州の年金基金を 中心に、ファクター投資への配分を、2016 年の 16%から 2017 年は 19%に増やた。

北米の機関投資家の回答によれば、ファクター投資に期待する最大のメリットはリスク削減効果であり、次にそ れを若干下回ってアルファ改善の可能性が挙げられており、コストもやはり重視されている。既存のファクタ ー運用戦略の中では、3 分の 2(66%)の回答者が引き続きスマートベータ戦略を支持しており、ファンダメンタ ル・アクティブ運用戦略からの資金シフトが続いている。

欧州では、機関投資家がファクター投資の最大の採用者で、その配分比率は、2016 年の 17%に対し、2017 年は 19%となっている。同地域でファクター投資を最も増やしているのは保険会社とソブリンウェルスファン ドで、北米と同じようにリスク・リターン効率の改善メリットが最大の理由となっているが、コストについては北米ほど重視されているわけではない。

投資家の種別を問わず、ファクター投資は、ファンダメンタル・アクティブ運用戦略とパッシブ運用戦略に次ぐ ポートフォリオの第3の柱としての役割が期待され、配分の増加につながっている。

ファクター投資の実践

ファクター投資を採用した投資家のうち、半数近く(49%)が、現在の一連のファクターの中で最も実践しやす いファクターの一つとしてバリューを挙げている。その他には、サイズやボラティリティなどが挙がっている。

一方、最も実践が難しいファクターについては、42%の投資家がモメンタムだと回答している。その理由とし ては、取引コストやリバランスの頻度などがとりわけ問題とされている。ボラティリティやクオリティなどのファク ターについても実践が難しいとの声が上がっている。

需要と拡張

IGFIS2017 では、世界的にファクター投資の採用が増えるにつれ、債券やマルチアセット運用戦略にファクタ ー投資を拡張することへの関心も高まっていることが判明している。これまで、ファクター投資への資金流入 は専らシングル・ファクターもしくはマルチ・ファクターの株式運用に対してだったが、IGFIS 2017 では新たなフ ァクター・プロダクトへの需要が示されている。インベスコでは、「半数を超える投資家(68%)が好みのタイプの運用戦略に投 資できていないことを踏まえると、ファクター投資の新たな方向性を見出すことの重要性は増していると言えま す」とコメントしている。

回答者はまた、債券ファクター投資戦略への需要を表明し、3 分の 2(68%)が、ファクター理論が債券にも応 用可能だと考えているものの、既に自らの債券ポートフォリオでファクター投資を実践している回答者は 3 分の 1(32%)にとどまった。投資家の関心はマルチアセット・プロダクトにも拡がっており、とりわけ北米では 52%、 欧州では 47%が、マルチアセットへのマルチ・ファクター投資こそがファクター・プロダクトの望ましい仕組みだ と回答した。