ファンドの純資産総額 #
ファンドの純資産総額とはファンドが保有する信託財産の合計のことです。ファンドは信託財産を刻々と変化する金融市場で運用していますから、純資産総額が増減することは当然の結果です。しかし、純資産総額が全く増えない、あるいは減少が続いている場合には注意が必要です。
純資産総額が減少する要因 #
純資産総額が減少する大きな要因としては、運用成績の悪化、解約の増加、分配金の支払い、運用コストの支払いによるものが挙げられます。
運用成績の悪化 #
投資信託のポートフォリオに含まれる株式や債券の価格が下落することでファンドの運用成績は悪化します。これに伴い、ファンドの純資産総額は減少します。また、海外の株式や債券に投資するファンドで、為替ヘッジを行わない場合は、円高が進むと、円換算した海外資産の価値が下がるため、これも運用成績の悪化と純資産総額の押し下げ要因になります。
解約 #
投資家がファンドを解約することは純資産総額のマイナス要因となります。ファンドの購入(設定)よりも解約が多ければ、ファンドから資金が流出していることを意味します。資金流出はファンドの純資産総額の低下要因になります。
分配金の支払い #
投資信託は通常年1回、2回、6回、毎月のように、予め定められた分配方針に従って投資家に分配を行います。この分配はファンドの運用財産(純資産総額)からの支払われますので、ファンドの純資産総額を押し下げる要因となります。分配金が支払われて喜んでいる一方で、実はファンドの純資産総額が減少していた、つまり基準価額が下落していたということもあります。
運用コストの支払い #
投資信託は、組み入れた株式や債券を売買する際には、証券会社に売買委託手数料を支払いますし、監査報酬や信託報酬もかかります。これらはファンドの純資産総額から支払われるものですので、純資産総額の低下要因となります。運用コストの増加はファンドのパフォーマンスの悪化要因でもありますので、ファンドの購入の際には、信託報酬率を同類のファンドと比較することが大切です。
純資産総額の減少についての注意点 #
運用成績の悪化とファンドの解約は、全く別の純資産総額減少の要因というよりも、二つが互いに影響しあっていることもあります。運用成績が悪化することで、投資家はより良い成績の運用先を求めてファンドを解約する、すると、今度は解約による資金を確保するために、ファンドマネージャーは思うような運用ができなくなります。ファンドマネージャーは、解約した投資家に払い戻す資金を確保するために、売りたくない銘柄を売却したり、買いたい銘柄を買わなかったりして、資金を現金として保有しておくことになります。解約が増えるほど、ファンドマネージャーにとって運用が難しくなります。そして、これが更なる運用成績の悪化に繋がるという悪循環を招きかねないのです。また、一般に、純資産総額が減少すると、ファンドの経費率が上昇する傾向にあると言われており、これも、更にファンドの運用成績を悪化させる要因になる可能性もあります。
ファンドの純資産総額の減少要因まとめ #
ファンドの純資産総額が減少する主な要因は、運用成績の悪化、解約の増加、分配金の支払い、費用の支払いです。これらの要因は互いに影響を及ぼし、悪循環を招く可能性があります。運用成績が悪化すると解約が増え、資金流出がファンドの効率的な運用を妨げる結果、さらなる成績悪化につながる場合もあります。また、純資産総額の減少は経費率の上昇を招き、運用成績への追加的な悪影響を及ぼす可能性があります。