FFO(Funds From Operations)とは、不動産投資信託(REIT)が賃料収入などの本業から得た実質的なキャッシュフローを示す指標であり、REITの収益力を測るうえで重要とされています。
FFOは、REITの当期純利益に減価償却費を加え、不動産の売却損益など一時的な要因を控除することで算出されます。
FFO倍率 #
1口あたりのFFOが投資口の価格の何倍であるかを示すのがFFO倍率であり、この値が小さいほど、REITが生み出すキャッシュフローに対して割安に評価されていることを意味します。FFO倍率は、REITがどれだけのキャッシュフローを生み出し、それに対して市場がどれだけの価格をつけているかを示す指標です。PERのREIT版ともいえる指標で、割安・割高の判断や銘柄比較に役立ちます。一般的には、FFO倍率が低い=価格が収益力に対して割安と評価されます。
FFO倍率 = 投資口価格 ÷(年換算 1口当たりFFO)
※1口当たりFFO =(当期純利益+減価償却費 ± 不動産売却損益)÷ 発行口数
FFO倍率の意味と見方 #
値の高さ | 意味 | 判断のヒント |
高い(例:20倍以上) | 投資口価格がFFOに対して割高に評価されている | 将来の成長期待が高い/人気が高い |
低い(例:10倍以下) | 投資口価格がFFOに対して割安と評価されている | 成長性に不安/市場から過小評価されている可能性あり |
FFO倍率の計算 #
FFO倍率を具体的に計算してみましょう。
ABC不動産投資法人の場合、2024年8月期において最終利益等は次のとおりです。
当期純利益:32.84億円
不動産売却損益:0円
減価償却費:16.42億円
投資口数:225,372口
FFO=32.84億円−0円+16.42億円=49.26億円
1口当たりFFO=21,857円
投資口価格(2024年8月30日現在):602,000円
FFO倍率:27.5倍
(本例では、数値はいずれも年換算を前提としています。)
FFOの計算に必要な数字は各投資法人がホームページなどで公表している決算短信などに記載されています。また、1口当たりFFOを公表している投資法人もありますので、不動産投資信託を購入する前に、この数値を比較してみるとよいでしょう。
ただし、不動産投資信託の決算は半年ごととなっており、投資法人によっては、FFOやFFO倍率を年換算したものを公表しているところもあります。比較する際は、同じ期間の数値で比較することが重要です。
FFO倍率だけでは不十分な理由 #
FFO倍率はREITの収益性や割安・割高の判断に役立つ指標ではありますが、この数値だけで投資判断を下すのは適切ではありません。実際の評価にあたっては、他の指標や定性的な要素とあわせて多角的に分析する必要があります。
併せて確認すべき重要な指標や要素
- 分配金利回り(DCF的視点)
将来キャッシュフローの現在価値を意識した利回り指標であり、投資の妙味を測るうえで重要です。 - 稼働率・テナント分散状況
安定した賃料収入が継続するかどうかを判断するうえで、稼働率の高さやテナントの分散は重要です。 - ポートフォリオの立地・用途
REITが保有する不動産の種類や立地条件により、収益の安定性や成長性が左右されます。 - 金利環境との関係
一般に、金利が上昇するとREITの相対的な魅力が低下し、投資口価格が下落する傾向があります。結果として、FFO倍率も変動するため、金利動向の把握は欠かせません。
FFOのまとめ #
FFO(Funds From Operations)とは、不動産投資信託(REIT)が本業である賃貸収益などから得た実質的なキャッシュフローを示す指標です。減価償却費を加え、物件の売却損益などを除外して算出され、REITの安定的な収益力を評価する際に用いられます。