ゲノムファンドとは、ゲノム(全遺伝情報)解析や関連技術を活用する企業の株式を主な投資対象とするテーマ型投資信託です。これらのファンドは、医療やバイオテクノロジー分野における革新的な技術進展と、それに伴う市場の成長を捉えることを目的としています。
背景 #
ゲノム(genome)とは、生物がもつすべての遺伝情報の集合体であり、「生命の設計図」とも呼ばれます。2003年に国際共同研究によるヒトゲノム計画が完了して以来、ゲノム解析技術は飛躍的に進化し、がんや希少疾患の治療法開発、個別化医療(プレシジョン・メディシン)などへの応用が進んでいます。
→ヒトゲノム計画についての詳細(米国国立ヒトゲノム研究所)
特に近年は、CRISPR-Cas9などのゲノム編集技術の登場により、従来に比べて効率的・精度の高い遺伝子操作が可能になり、ゲノム関連企業への投資が一層注目を集めています。
過去には、ゲノム関連銘柄として主に米国のバイオ企業の株価が高騰した時期もあり、日本でも「ピクテ・バイオテック・ファンド(愛称:ゲノム)」のような、ゲノム関連企業を投資対象とする投資信託が設定され、個人投資家の関心を集めました。
現在運用されている主なゲノムファンド例 #
グローバル全生物ゲノム株式ファンド(1年決算型/年2回決算型)
- 運用会社:日興アセットマネジメント
- 特徴:ゲノム解析や応用技術を用いた事業を行う企業、またその恩恵を受ける企業の株式に投資
- 投資先例(2025年4月末時点):NATERA INC、CRISPR Therapeutics、Twist Bioscience、Guardant Healthなど
ワールド・ゲノムテクノロジー・オープン Aコース・Bコース
- 運用会社:野村アセットマネジメント
- 特徴:世界のバイオテクノロジー関連企業の中から、医学・薬学的視点で評価した成長期待企業に選別投資
- 投資先例(2025年4月末時点):ARGENX SE-ADR、INSMED INC、AMGEN INC など
グローバルX ゲノム&バイオテクノロジー ETF(GMON)
- 運用会社:Global X
- 上場市場:米国NASDAQ市場
- 特徴:ゲノム編集、遺伝子治療、バイオテクノロジー分野で革新をもたらす企業に分散投資
- 投資先例(2025年5月23日現在):ALNYLAM PHARMACEUTICALS、ILLUMINA INC、NATERA INC など
ゲノムファンドへの投資の留意点 #
- 成長性とリスク:ゲノム関連企業は今後の医療技術革新の中心として期待されている一方で、収益化までの時間軸が長く、技術競争や規制変更などの影響を受けやすいため、価格変動リスクが高い傾向にあります。
- 長期的視点が必要:実用化・商業化に時間を要する分野であるため、短期的な値動きにとらわれず、長期的な成長を見据えた投資が推奨されます。
- 分散投資の重要性:特定企業や技術に依存するリスクを抑えるため、複数企業に分散投資できる投資信託を活用するメリットは大きいといえます。
ゲノムファンドのまとめ #
ゲノムファンドは、がん治療や遺伝性疾患の治療法など、次世代医療の実現に寄与するバイオテクノロジー企業に着目した投資信託です。高い成長性が期待される一方で、規制や技術革新の進展に大きく左右されるため、リスクを理解したうえで、中長期的な視野に立った投資判断が求められます。