ハイウォーターマーク #
ハイウォーターマーク方式とは、投資信託の運用会社が受け取る信託報酬(運用報酬)の算出方法の一つで、一定の基準を超えた部分について成功報酬を徴収する方法のことです。成功報酬型や実績報酬型とも呼ばれます。ハイウォーターマーク方式は主にヘッジファンドにおいて利用されている方式で、投資信託での採用はあまり多くはありません。
ほとんどの投資信託では、年率で純資産総額の何パーセントと予めファンドごとに決められた固定の割合で、信託報酬がファンドの信託財産から差し引かれます。例えば、信託報酬率が1%であれば、それに消費税率を加えた1.08%がファンドの信託財産から差し引かれます。具体的には、信託報酬の総額は日々のファンドの純資産総額に信託報酬率を乗じて得た額で、ファンドの毎計算期末または信託終了のときにファンドから支払われることになります。
一方で、ハイウォーターマーク方式では、信託報酬を2段階に分けて、一定の基準を超えなければ、通常の信託報酬が差し引かれ、一定水準を超えた部分について成功報酬を徴収します。設定される基準はファンドにより異なります。基準価額が予め定めた金額を超えた場合に成功報酬の対象となるファンドや基準価額が前回の高値を超えた場合に成功報酬の対象となるファンドなどがあります。この成功報酬を算出するための基準となる水準(ファンドの価格)のことをハイウォーターマークと呼ぶことから、ハイウォーターマーク方式と呼ばれます。ハイウォーターマークに達するまでの信託報酬を基本報酬、ハイウォーターマークを超えた部分を成功報酬や実績報酬と呼ぶこともあります。英語では、 high-water markと書き、直訳すると最高水位線となります。また、運用会社によっては、ハードル価格など、別の呼び名を使うところもあります。
ハイウォーターマーク方式を採用しているファンド例 #
ハイウォーターマーク方式を採用しているファンドの例が、スパークス・アセット・マネジメントが運用している「スパークス・ジャパン・スモール・キャップ・ファンド 愛称 ライジング・サン」や楽天投信投資顧問が運用する「楽天みらいファンド」です。
スパークス・ジャパン・スモール・キャップ・ファンド #
スパークス・ジャパン・スモール・キャップ・ファンドは、日本の中小型の株式を投資対象として、中長期的に高い利益成長が期待される企業、収益力に対して株価が割安に放置され、かつ経営体質の改善等変化の兆しが認められると判断した企業、上記企業の成長、変化を支える優秀な経営陣、技術等を有している企業に投資するファンドとして2000年10月19日に設定されました。設定来の騰落率は2024年7月末現在667.67 % で、ベンチマークである東証グロース市場指数(配当込み) の106.05%を大きく上回る成績を上げています。
同ファンドの信託報酬は年率1.87% (税込)ですが、日々の基準価額が、一定の「ハードル価格」を上回った場合、当該基準価額と当該ハードル価格の差額の13.2%(税抜12%)を、実績報酬として計算し、翌営業日に信託財産の費用として計上します。 このファンドではハイウォーターマークを「ハードル価格」と呼んでいます。
楽天みらいファンド #
楽天みらいファンドは、ETFを利用して、世界の株式に分散投資を行うファンドとして、2013年4月2日に設定されました。
基本報酬は年0.216%(税抜0.20%)で、ハイウォーターマークを超えた場合に、その超過額に12.96%(税抜12.0%)を乗じて得た額が成功報酬となります。楽天みらいファンドの場合は、ファンドの基準価額がそれまでの最高値基準価額を超えた場合に、その超過額の12.96%(税抜12.0%)相当が成功報酬となります。つまり、ハイウォーターマークは固定の基準価額ではなく、変動することになります。また、一計算期間における成功報酬額合計は、最大でも最高値基準価額の1.1%(税抜1.0%)までとされています。楽天みらいファンドでは、成功報酬額は、委託会社と販売会社がそれぞれ70%と30%で按分することになっています。
ハイウォーターマーク方式のまとめ #
ハイウォーターマーク方式とは、投資信託の運用会社が一定基準を超えた成果に対してのみ成功報酬を受け取る仕組みです。この方式は主にヘッジファンドで利用され、投資信託では採用例が少ないものの、スパークスや楽天のファンドなどで採用されています。報酬は基準価額が過去の最高値(ハイウォーターマーク)を超えた部分に基づき計算され、運用成果に連動する公平性が特徴です。