インデックス・サンプリング法 #
インデックス・サンプリング法は、インデックスファンドの運用成績を特定の指数(インデックス)に連動させるための手法の一つです。
一般に、インデックスファンドでは、連動の対象とする指数を構成する銘柄を指数と同じ構成比率で保有します。例えば、日経平均株価への連動を目指すインデックスファンドは、日経平均株価を構成する225銘柄を日経平均株価と同じ構成比率で組み入れます。指数を完全に模倣(コピー)するということです。これを完全法あるいはレプリケーション手法と呼びます。レプリケーション(replication)は複製・複写という意味の英語です。
⇨レプリケーション手法とは?
一方、インデックス・サンプリング法を使う投資信託では、指数を完全にコピーするのではなく、連動の対象とする指数の業種配分、配当利回り、リスクといった指数の特性に適合するような代表的な銘柄(サンプル)を選択して投資信託を構築し、指数に連動するようにそれらの構成比率を決定します。したがって、インデックス・サンプリング法を採用しているファンドでは、ファンドの構成銘柄数は、指数の構成銘柄数より少なくなります。
サンプリング法を採用している株式ファンドの場合であれば、時価総額の中央値、株価収益率、株価純資産倍率、利益の成長率、標準偏差、業種配分などが指数の特性と同じようになるように構築します。
一方、債券ファンドであれば、平均デュレーションや平均実行残存期間などの特性が指数と同じになるように構築されます。
インデックス・サンプリング法を採用している投資信託では、運用会社は、高度な統計学や計算式を使って、指数と同じ特性を持ったポートフォリオとなるようにファンドを構築します。なお、サンプリング法(sampling method)はサンプル抽出法とも呼ばれます。
インデックス・サンプリングの例 #
インデックス・サンプリング法を採用しているファンドの一例が、バンガード・トータル・インターナショナル債券ETF(米ドルヘッジあり)(ティッカーコード:BNDX)です。同ETFはバークレイズ・グローバル総合(米ドル除く)浮動調整RIC基準インデックス(米ドルヘッジベース)のパフォーマンスに連動した成果を目指すETFです。ベンチマークは13,368銘柄で構成されていますが、同ETFの構成銘柄は6,817銘柄となっています(2024年7月31日現在)。
どんな場合にサンプリング法を使うのか #
インデックスファンドを構築する場合に、レプリケーション手法とサンプリング法のどちらを採用するかは運用会社が決定します。同じ指数への連動を目指すインデックスファンドであっても、レプリケーション手法を採用している投資信託もあれば、サンプリング法を採用している投資信託もあります。一般的には、次のような理由に該当する場合に、サンプリング手法が採用されます。
- 流動性が低い市場を対象とする指数の場合・・・流動性が低い市場では取引が成立しし難いことがあります。そのため、組み入れる証券を購入できない、あるいは、効率的な価格で証券を購入・売却できないこともあるため、全ての銘柄を組み込むのでなく、代表的な銘柄を選別した方が効率的な場合があります。
- 流動性が低い銘柄を対象とする場合・・・指数に取引頻度が低い債券などが含まれている場合、合理的な価格での購入が困難な場合があり、サンプリング法が利用されます。
- 規模の大きな指数の場合・・・世界中の数千銘柄の証券で構成される指数の場合、ファンドにおいてそれらすべてを組み込むには費用や時間など経済的コストがかかりすぎる、効率的ではない、あるいは実質的に不可能である等と判断される場合があり、そのような理由でサンプリング法が採用されることがあります。
インデックス・サンプリング法のまとめ #
インデックス・サンプリング法は、指数の構成銘柄をすべて保有するのではなく、指数の特性に合う代表的な銘柄を選んで構築する手法です。流動性が低い市場や銘柄、規模の大きい指数を対象とする場合に採用され、効率的な運用が可能となる点が特徴です。これにより、コスト削減や運用の柔軟性が図られます。