投資信託の目論見書などで「投資助言契約」という言葉を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。たとえば、「当ファンドでは、豊富な専門アナリストを擁する○○アセットマネジメント社と投資助言契約を締結しています。同社のアナリストによる調査を活用して、銘柄の選定を行います」などと記載されることがあります。
投資助言契約とは、ファンドの運用に際し、ファンドの運用会社が外部の投資助言会社から銘柄の選定や投資判断に関する助言や情報提供を受ける契約のことです。特定の地域や資産クラスにおいて専門性を有する助言会社の知見を活用することで、ファンドの運用力を補完し、より高度な運用判断を可能にすることが目的です。助言はあくまで「参考情報」であり、最終的な投資判断および売買の実行は、委託会社(運用会社)が責任を持って行います。
投資助言契約の利用例 #
投資助言契約は、運用会社が十分な調査リソースや専門知識を有していない地域や分野に投資する場合に活用されることが一般的です。たとえば、日本株の運用に強みを持つ運用会社が、中南米の株式市場に投資する場合には、その地域に詳しい海外の投資助言会社から銘柄選定や経済見通しに関する助言を受けることがあります。利用例としては次が挙げられます。
1. 専門的な知見の補完
- 運用会社が自社にない専門性を補うために、外部の助言会社と契約。
- 例:米国ハイイールド債券に投資する投資信託で、海外の運用アドバイザーから市場動向や個別銘柄に関する助言を受ける。
2. 海外市場での情報取得
- 日本の運用会社が外国市場に投資する場合、その国の運用会社やリサーチ会社と投資助言契約を締結。
- 例:インド株ファンドで、現地の証券会社またはアセットマネジメント会社から銘柄選定の助言を受ける。
3. ファンド・オブ・ファンズ型商品での助言
- 他社の投資信託を組み入れるファンド・オブ・ファンズ形式で、その構成ファンドの選定や入替えについて助言を受ける。
- 例:グローバル分散ファンドで、ファンド選定専門の助言会社と連携。
4. 独立系助言会社の活用
- 特定のアナリストチームや独立系リサーチ会社と契約して、中立的な分析を活用。
- 例:ESG(環境・社会・ガバナンス)要素のスクリーニングや評価で助言を受ける。
費用の取り扱い #
投資助言契約に基づく費用は、通常、ファンドの信託報酬の中から支払われます。具体的には、信託報酬のうち委託会社(運用会社)の取り分から投資助言会社に支払われることが多く、結果的にその費用は投資家が間接的に負担することになります。
目論見書における記載例 #
投資助言を受けるファンドでは、目論見書に次のような記載がされています。
- 本ファンドの運用にあたっては、委託会社である○○アセットマネジメント株式会社が、スイスに本拠を置く△△アセットマネジメント社(以下、「助言会社」といいます)と投資助言契約を締結しており、助言会社から提供される投資情報や助言を活用して、銘柄選定および資産配分を行います。
- 外貨建資産の運用にあたっては、○○アセットマネジメントの助言を受けます。
- 株式等への投資にあたっては、株式会社○○より投資助言を受けます。
金融庁への登録 #
助言業務は、金融商品取引法上の「投資助言・代理業」に該当します。助言者が日本国内で業として行う場合は、金融庁(内閣総理大臣)への「投資助言・代理業」登録が必要です。一方で、海外の企業が国外から越境的に日本の運用会社に対して助言を行う場合(日本国内に恒常的拠点がない、または国内で営業活動を行っていない等)は、登録の義務は基本的にありません。
投資助言契約まとめ #
投資助言契約とは、ファンドの運用会社が、特定の地域や資産クラスに専門性を有する投資助言会社などから、投資判断や銘柄選定に関する助言を受ける契約のことです。主に、運用会社が十分な専門性を有していない分野や海外市場などで、外部の専門知見を活用する目的で締結されます。費用は通常、信託報酬の一部から支払われ、投資家が間接的に負担します。契約の概要や助言会社の情報は、目論見書などに記載されています。