マルチ・マネージャー・ファンドとは、複数の運用会社やファンドマネージャーが、それぞれ異なる投資戦略や運用スタイルで資産運用を分担するタイプの投資信託です。
通常、投資信託は一つの運用会社が管理・運用しますが、マルチ・マネージャー・ファンドでは、資産を複数の運用者に分けて運用させることで、分散投資によるリスクの低減と、それぞれの専門性を生かしたリターンの向上を同時に狙います。
このタイプのファンドには主に2つの形態があります。
- ファンド・オブ・ファンズ(FoF):他の投資信託に投資する形式
- マネージャー・オブ・マネージャーズ(MoM):複数のファンドマネージャーに直接運用を委託する形式
いずれの形態でも、優れた運用者を組み合わせることで、多様な市場環境に対応し、安定したパフォーマンスを目指します。
運用会社の役割 #
マルチ・マネージャー・ファンドの設定・募集を行う運用会社は、ファンドの目的に応じて最適な運用者を選定し、運用開始後はその運用状況をモニタリングします。必要に応じて、委託先の変更や資金配分の調整を行い、ファンド全体の運用品質を保つことが重要な役割となります。
ファンド・オブ・ファンズ(FoF) #
ファンド・オブ・ファンズは、複数の投資信託に投資する形式の投資信託です。投資対象のファンドは、自社グループのファンドに限らず、他社が運用するファンドも含まれます。
例:
三菱UFJアセットマネジメントの「ファンド・オブ・オールスター・ファンズ」は、2000年に設定された日本初のファンド・オブ・ファンズであるとされており、異なるスタイルの日本株ファンド5本に分散投資しています。
マネージャー・オブ・マネージャーズ(MoM) #
マネージャー・オブ・マネージャーズ(MoM)は、選任された複数のファンドマネージャーに、それぞれ異なる投資戦略でファンド資産の一部の運用権限を直接委託する仕組みです。通常、ファンドの資産は複数のマザーファンド(実際の運用を行うファンド)に分散され、マザーファンドごとに異なる運用者が担当します。
マザーファンドとは、ファンドの資産を実際に運用するために設けられた基礎となるファンドで、投資家が購入するファンド(ベビーファンド)はマザーファンドに資金を投資する仕組みです。
例:
ラッセル・インベストメントの「国内株式マルチ・マネージャー」は、TOPIX(配当込み)をベンチマークに設定し、中長期的にこれを上回る運用成果を目指しています。2024年12月現在、異なるスタイル(グロース、バリュー、マーケット・オリエンテッド、特性補強型)ごとに選定されたファンドマネージャーによって運用が行われています。
マルチ・マネージャー・ファンドのメリットとデメリット #
マルチ・マネージャー・ファンドのメリットとデメリットとしては次が挙げられます。
メリット #
1. 分散投資によるリスク低減
複数の運用者が異なる戦略・資産クラスに投資するため、単一のマネージャーや投資対象に依存しない分散効果が得られます。
2. 各運用者の専門性を活用できる
運用対象や戦略ごとにその分野に強いマネージャーを選任できるため、全体として高い運用力が期待されます。
3. 柔軟な戦略構成が可能
市場環境に応じて、各運用者の入れ替えや配分調整が可能なため、状況に応じた戦略の最適化がしやすい。
4. 中立的なマネージャー選定が可能
特定の自社ファンドに限定されることなく、外部の優れた運用者を採用できる場合が多く、バイアスがかかりにくい構成となります(特にMoM型)。
デメリット #
1. 運用コストが高くなりがち
ファンド・オブ・ファンズ(FoF)の場合は投資先ファンドの信託報酬も重複してかかるため、コストが割高になる傾向があります。
2. 運用者選定の成否がパフォーマンスに直結
いくら分散されていても、運用者の選定が不適切だとリターンは伸びません。運用会社の目利き力に大きく依存します。
3. 運用構造が複雑でわかりにくい
FoFやMoMの仕組みは一般の投資家にとっては見えにくく理解しづらいことがあり、透明性や納得感に欠ける場合があります。
4. 市場環境の変化に対応が遅れる可能性
運用者の変更や配分見直しには時間がかかるため、急激な相場変動時に対応が遅れるリスクもあります。
マルチ・マネージャー・ファンドのまとめ #
マルチ・マネージャー・ファンドとは、複数の運用会社やファンドマネージャーがそれぞれ異なる戦略で資産を運用する投資信託です。主な形態として、他の投資信託に投資する「ファンド・オブ・ファンズ(FoF)」と、複数の運用者に直接資産の一部を委託する「マネージャー・オブ・マネージャーズ(MoM)」があります。分散によるリスク低減と、専門性によるリターンの向上を同時に目指す仕組みであり、資産の一部の運用権限を外部の運用者に委託する形態が特徴です。