不動産投資信託の稼働率とは、オフィスビル、居住用ビル、商業用テナントビルなどにおいて賃貸可能な面積のうち、契約済で賃料が発生している面積の割合を言います。
不動産投資信託のディスクロージャー資料において、全運用不動産稼働率という言葉が出てきますが、これは物件ごとではなく、不動産投資法人が保有する全物件を合算した数値で、ファンド全体の運用効率を表す代表的な指標の一つです。
当然、この稼働率が高いほど、効率的な運用ができていることになります。いくら新しい物件を次々と入手して賃貸可能な面積が増えても、稼働率が低ければ収益の増加には結びつきません。稼働率の低下は、J-REITの収益力の低下や投資価値の毀損につながる重要なリスク要因といえます。
不動産投資信託の稼働率の現状
最近の稼働率の実績を見てみると、ほとんどの不動産投資法人が95%以上の高い稼働率を記録しています。不動産投資法人では、決算期ごとに稼働率を公表しています。また、月次ベースでホームページにおいて公表しているファンドもありますので、購入前のチェック項目の一つとして確認しておきましょう。
また、不動産投資信託全体の賃貸可能面積と稼働率の推移を見ると、次のグラフのように賃貸可能面積は2020年と2021年に前年比で減少しました。これは、新型コロナ禍に、ホテル系REITが直撃を受けたこと、オフィス特化型REITがテレワークの普及、供給過剰などの影響を受けたことが原因でした。しかし、その後は回復傾向にあります。

(データ出所:投資信託協会)
用途別稼働率 #
以下は、2024年時点でのJ-REITの用途別賃貸可能面積と稼働率です。用途別の稼働率を見ると、全ての用途において稼働率が95%を超える高い水準にあることがわかります。
【2024年の用途別賃貸可能面積と稼働率】
賃貸可能面積(m2) | 稼働率 | |
---|---|---|
オフィス | 6,990,293 | 97.7% |
商業・店舗 | 11,548,693 | 99.5% |
住宅 | 5,264,428 | 96.9% |
ホテル | 3,466,929 | 99.9% |
物流施設 | 15,792,453 | 99.3% |
ヘルスケア | 565,989 | 99.8% |
病院 | 38,290 | 100% |
その他 | 3,205,756 | 99.8% |
(データ:投資信託協会)
不動産投資信託の稼働率のまとめ #
不動産投資信託(J-REIT)における稼働率とは、保有物件の賃貸可能面積のうち、実際に契約が締結され賃料が発生している面積の割合を指します。この指標は、ファンドの運用効率や収益性を示す重要な指標であり、一般に稼働率が高いほど、安定した賃料収入と健全な運営がなされていると評価されます。J-REITでは決算資料や月次レポートで稼働率が定期的に開示されており、投資家が物件の収益力やファンドの安定性を判断するうえで、欠かせないチェックポイントの一つです。また、稼働率の低下は分配金や資産価値に影響を及ぼすおそれがあるため、その推移を継続的に確認することが重要です。