一般に、株式ファンドよりもリスクが低いとされる債券ファンドですが、実際には複数のリスクが内在しています。代表的なものには、金利リスク、信用リスク、早期償還リスク、為替リスクなどがあります。それぞれのリスクについて、以下に解説します。
金利リスク #
金利が上昇すると、既存の債券の利回りが相対的に見劣りするため、債券の価格は下落します。債券ファンドにおいても、組み入れ債券の価格が下がることで、ファンドの基準価額が下がることになります。これが「金利リスク」です。
特に長期債は、金利変動の影響を受けやすいため、金利リスクが高くなります。逆に、平均残存期間やデュレーション(※金利感応度の指標)が短いファンドは、金利リスクが低く抑えられます。

信用リスク #
債券を発行した会社が倒産するなどして、債券が債務不履行(デフォルト)に陥って利金収入が滞ったり、元本が返済されなかったりするリスクを信用リスクと言います。ファンドが組み入れている債券が債務不履行になれば、ファンドの基準価額は影響を受けて下落します。
信用リスクには、債券が債務不履行になるリスクだけでなく、債券の信用格付けが引き下げられる(ダウングレードされる)ことにより価格が下落するリスクも含まれます。
新興企業、発展途上国の企業、負債の大きな企業の発行した債券、あるいは発展途上国の国債など、格付けの低い債券に投資するファンドでは、信用リスクが高くなります。ただ、投資信託には、あえてそのような低い格付けの債券に投資することで、高いリターンの獲得を狙うファンドもあります。このようなファンドを一般にハイ・イールド・ボンド・ファンド(ハイ・イールド債券ファンド)と呼びます。
債券ファンドの多くは、ファンドの平均格付け(ファンドが投資する全ての債券の格付の平均)を投資方針として定めているものが多いので、投資する前にはチェックしましょう。ファンドの平均格付けが高いほど、信用リスクは低くなります。ファンドの平均格付けは、運用会社の月次レポートや交付目論見書で確認できます。

早期償還リスク #
早期償還リスクとは債券の発行者があらかじめ決められていた償還期日より前に元本を返済するリスクです。このリスクは、主に米国のモーゲージ担保証券やアセットバック証券を組み入れるファンドでよく見られます。繰上償還リスクとも呼ばれます。例えば、住宅ローン債権を証券化したモーゲージ担保証券は、金利が低下すると住宅ローンの借り換え需要の増加により、早期償還が増えます。組み入れていた債券が早期償還されると、ファンドはその資金を別の債券に投資し直さなければなりませんが、早期償還は低金利の時に行なわれることが多いため、新しい投資先の条件(利率)はそれ以前よりも悪く(低く)なる傾向にあります。
債券の中には、発行者が償還期日前に元本を返済できる条項(コーラブル債など)を持つものがあります。このような債券が市場金利の低下などを背景に早期償還されると、ファンドは償還された資金を再投資する必要があります。
しかし、多くの場合は再投資先の利率が低下しており、ファンドの利回りは下がってしまいます。特に、モーゲージ担保証券(MBS)やアセットバック証券(ABS)などを組み入れたファンドで、このリスクが顕著です。
為替リスク(外貨建て債券に投資する場合に生じるリスク) #
外国の債券(たとえば米国債や新興国債)に投資するファンドでは、「為替リスク」も無視できません。為替レート(例:米ドル/円)の変動により、債券の円換算価値が変動します。たとえば、円高になると外貨建て債券の価値は円ベースで目減りするため、ファンドの基準価額も下落します。一方で、円安になればプラスに働くこともあります。
為替リスクを抑えたい場合は、「為替ヘッジあり」と明記されたファンドを選ぶと良いでしょう。ただし、ヘッジコストが発生する点にも留意が必要です。
その他のリスク #
- 流動性リスク:市場で債券が十分に取引されていない場合、適正価格で売却できず、ファンドの基準価額に悪影響を及ぼすことがあります。特に、経済不安時に高まる傾向があります。
- バリュエーションリスク:債券の理論価格と実際の市場価格との間に乖離が生じ、その結果としてファンドの基準価額に予想外の影響を及ぼすリスクのことを指します。債券の理論価格とは、将来の利息や元本の支払いを現在価値に割り引いて算出される「公正価値」です。一方で、市場価格は実際に市場で取引される価格であり、投資家の需給や市場のセンチメントによって常に変動します。通常は両者がある程度一致するように形成されますが、さまざまな要因によって価格にズレが生じることがあります。これがバリュエーションリスクです。
債券ファンドのリスクのまとめ #
債券ファンドには、金利リスク、信用リスク、早期償還リスク、為替リスクなど、さまざまなリスクがあります。これらは、ファンドの基準価額に直接影響を与える重要な要素です。各リスクの特性を理解し、ファンドの投資対象や運用方針、リスク管理体制を十分に確認したうえで、自身のリスク許容度や投資目的に応じて、慎重かつ適切な投資判断を行うことが求められます。