トラッキングエラー #
トラッキングエラー(tracking error)は、ファンドが追随すべき市場指数(ベンチマーク)と、実際のファンドのパフォーマンスとの間に生じる差異のことです。
インデックスファンドは、特定の指数(例: 株価指数や債券指数=ベンチマーク)の動きを追うことを目指して運用されます。投資家は、その指数のパフォーマンスに連動するリターンを期待してインデックスファンドに投資します。
しかし、実際の運用では、いくつかの要因により、インデックスファンドのリターンとベンチマークのリターンが完全に一致することは稀です。インデックスファンドの成績がベンチマークと比べて良かったり悪かったりする場合、それがトラッキングエラーです。
インデックスファンドのトラッキングエラーが非常に小さい場合、それはファンドが概ね正確にベンチマークに連動していることを示します。逆に、トラッキングエラーが大きい場合、インデックスファンドのパフォーマンスがベンチマークと大きく異なっていることを示し、ファンドの運用チームが指数の動きを正確に再現できていないことを意味します。
インデックスファンドの投資家はトラッキングエラーを注意深く観察し、ファンドがどれだけ正確にベンチマークに従って運用されているかを評価することが重要です。トラッキングエラーが小さいファンドは、投資家の期待通りのリターンを提供しやすくなります。
トラッキングエラーの発生要因 #
トラッキングエラーの発生要因には以下の要素が含まれます:
1. 運用費用: 指数には運用費用がかかりませんが、ファンドには運用費用(信託報酬やその他費用)がかかり、この費用は実際のリターンに影響を与えます。運用費用が高い場合、トラッキングエラーが大きくなる可能性があります。
2. キャッシュ比率: ファンドが現金を保持している場合、ベンチマークと比較して異なるリターンを生み出します。キャッシュ比率の高さがトラッキングエラーの要因となることがあります。
3. 取引コスト: ファンドがポートフォリオの銘柄を売買する際の取引コストもトラッキングエラーに影響します。取引手数料やスプレッドなどのコストが高い場合、トラッキングエラーが生じる可能性があります。
4. ポートフォリオの構成: ファンドのポートフォリオがベンチマークと異なる銘柄を保有していたり構成比率が異なったりする場合、トラッキングエラーが生じます。これは、ファンドがベンチマークと同じ銘柄をすべて保有していない場合や、特定の銘柄の構成比率がベンチマークと異なる場合に起こります。
5. 株価指数などの指数は年1回など見直しが実施され、構成銘柄が変更されます。ファンドがこの指数の変更に追従する際、取引のタイミングが完璧に合致することは難しく、これがトラッキングエラーを生じる原因となります。
簡易版のトラッキングエラー計算方法 #
実務でトラッキングエラーを簡易に計算する場合、次のような式を使用することもあります。
ここで、σ(Rp−Rb)はポートフォリオのリターンとベンチマークのリターン差(超過リターン)の標準偏差を意味します。
計算手順:
- 各期間のポートフォリオリターンとベンチマークリターンの差(超過リターン)を計算する。
- その超過リターンの標準偏差を求める。
- その標準偏差がトラッキングエラーとなります。
トラッキングエラーが小さいほど、ポートフォリオはベンチマークに忠実であり、大きいほどベンチマークから乖離している運用が行われていることを意味します。
トラッキングエラーのまとめ #
トラッキングエラーとは、ファンドの実際のパフォーマンスと、追随すべき市場指数(ベンチマーク)との間に生じる差異を指します。インデックスファンドの運用では、この差が小さいほどベンチマークに忠実であることを示し、大きい場合は乖離していることを意味します。トラッキングエラーは、運用費用やキャッシュ比率、取引コスト、ポートフォリオ構成の違い、指数の見直しタイミングのずれなどが要因となります。投資家にとって、トラッキングエラーの小さいファンドは期待通りの運用成果を得やすいとされています。