短期債券ファンドの基本 #
短期債券ファンドとは、残存期間が1年~3年程度の短期債券を主な投資対象とする投資信託を指します。
国内の短期公社債を対象とするファンド、米国の短期債券に投資するファンド、ユーロ建て短期債券を投資対象とするファンド、さらに世界中の短期債に分散投資するファンドなど、さまざまなタイプがあります。
なお、短期債券ファンドにおける「短期債券」の定義は、ファンドによって若干異なる場合があります。
たとえば、「残存期間3年以内の債券に限定」と明記しているファンドもあれば、「平均残存期間が1年~3年程度となることを目安」として運用しているファンドもあります。
つまり、必ずすべての銘柄が3年以内とは限らず、ポートフォリオ全体の平均で短期となるよう柔軟に運用されている場合もある点には留意が必要です。
短期債券ファンドの位置づけ #
短期債券ファンドは、リスクを大きく取りたくないものの、銀行預金金利や中期国債ファンドなどより高いインカムゲインを求める投資家向けの商品として位置づけられます。
短期債券ファンドの特徴 #
投資対象となる債券の格付け #
短期債券ファンドの多くは、比較的高い格付けの債券を主な投資対象としています。購入時の公社債の格付や、保有債券の平均格付について一定水準以上とすることを投資方針に定めており、一般的にA格相当以上、またはBBB格以上(いわゆる投資適格債)が基準とされています。
→「投資適格債とは?」
エマージング債への投資とリスク制御 #
海外の短期債に投資するファンドの中には、格付けの低いエマージングカントリー債を一部組み入れるものもあります。ただし、これらの組入比率は通常、ファンド全体の5%または10%未満に制限されており、さらにファンド全体の平均格付に下限を設けることで、リスク管理が図られています。
資産担保証券(MBS・ABS)への投資 #
主に海外の短期債券に投資するファンドでは、国債や社債に加え、モーゲージ証券(MBS)やアセットバック証券(ABS)といった資産担保証券にも投資対象を広げているものもあります。これによりリスクを抑えながら、より高いインカムゲインの獲得を目指す運用が行われています。
海外債券投資における為替リスク対応 #
海外債券に投資する短期債券ファンドでは、為替リスクが発生します。ファンドによって為替ヘッジの有無は異なります。為替リスクをフルヘッジし、リスクを抑えながら国内短期金利にプラスアルファのリターンを目指す運用が行われているファンドもあります。
採用されるベンチマーク #
短期債券ファンドでは、投資対象に応じて異なるベンチマークが採用されています。国内短期債券を投資対象とするファンドでは、NOMURA-BPI総合(NOMURAボンド・パフォーマンス・インデックス総合)や日興債券パフォーマンスインデックス(総合・短期)が使われています。
一方、米国短期債を投資対象とするファンドでは、米ドル1カ月物LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)などがベンチマークとして採用されています
短期債券ファンド選びのチェックポイント #
短期債券ファンドを選ぶ際には、次のようなポイントに注目することが重要です。
投資対象の残存期間
- ファンドが投資する債券の残存期間の制限(例:全銘柄3年以内か、ポートフォリオ平均で短期を維持しているか)を確認しましょう。
債券の格付け
- 投資対象となる債券の格付水準(投資適格かどうか)を必ず確認しましょう。
- 格付が高いほど信用リスクは低くなりますが、利回りもやや抑えられる傾向があります。
エマージング債の組入れ比率
- 新興国(エマージング)債の組入れがある場合、その割合や制限ルール(例:5%未満、10%未満)をチェックしましょう。
- エマージング債は高利回りですが、相応にリスクも高まります。
為替リスク対応
- 海外債券に投資するファンドでは、為替ヘッジの有無やヘッジ方針を確認しましょう。
- 「フルヘッジ型」は為替リスクを抑えられますが、ヘッジコストによってリターンが低下する局面もあります。
ベンチマークとの乖離
- ファンドの運用成績が、採用しているベンチマークにどの程度連動しているかを確認しましょう。
- 乖離が大きい場合、ファンドの運用戦略に独自性(アクティブ性)がある可能性もあります。
運用報酬(コスト)
- 信託報酬(運用管理費用)を比較し、コスト負担がリターンに与える影響も考慮しましょう。
- 短期債券ファンドはリターン水準が相対的に低めなので、運用コストが高すぎると実質利回りが目減りするリスクがあります。
短期債券ファンドの例 #
- 世界好利回り短期債券ファンド(毎月決算型)(三菱UFJアセットマネジメント)
- 年金積立日本短期債券オープン(日興アセットマネジメント)
- 日興・ピムコ・グローバル短期債券ファンド(日興アセットマネジメント)
短期債券ファンドのまとめ #
短期債券ファンドは、残存期間が1年〜3年程度の短期債券を主な投資対象とする投資信託です。リスクを抑えつつ、預金やマネーマネジメントファンドより高いインカムゲインを目指す商品として位置づけられます。高格付け債券を中心に運用されることが多く、為替ヘッジやエマージング債の組入比率にも注意が必要です。