建築確認とは、建築主が建築物の建築、大規模な修繕や模様替えの工事又は用途変更を行う前に、その計画が建築基準関係規定に適合していることについて建築主事又は指定確認検査機関の確認を受けることを指します。
たとえば、新築のほかにも、住宅の増築、店舗から住宅への用途変更、構造や防火に関わる大規模な修繕・模様替えなど、一定規模以上の工事には建築確認が必要です。
関係規定に適合していることが確認されれば、確認済証が交付されます。確認済証が交付されてはじめて、工事を開始することが可能となるわけです。
また、この検査を行う建築基準法に基づく指定確認検査機関とは、建築基準法に基づき、国土交通大臣又は都道府県知事から指定を受けて建築確認検査を行う民間機関や財団法人のことです。
2025年1月16日現在、26の機関が国土交通大臣指定の指定確認検査機関として指定されています。最新情報は指定機関の一覧は国土交通省のホームページなどで確認できます。また、地方整備局長指定又は都道府県知事指定の指定確認検査機関については、日本建築行政会議のページで確認できます。
建築確認の流れ #
建築確認の基本的な流れは以下のとおりです:
- 建築主が確認申請書を作成し、建築主事または指定確認検査機関に提出
- 法令適合性の審査(建ぺい率、容積率、高さ制限、防火規定など)
- 適合と判断されれば「確認済証」が交付
- 確認済証が交付された後に、建築工事の着工が可能となる
姉歯事件とは #
姉歯事件(あねはじけん)とは、2005年に発覚した建築構造計算書の偽造事件で、建物の耐震性を偽っていたことから、社会に大きな衝撃を与えた事件です。
姉歯事件で構造計算書の偽造という重大な不正行為が明るみに出たことで、建築確認制度や建築士制度に対する信頼を大きく揺るがしました。この事件を受けて、国土交通省は建築基準法および建築士法を改正し、構造設計に関する審査の厳格化、指定確認検査機関への監督強化、さらには構造設計一級建築士制度の創設など、制度全体の見直しを行いました。また、不動産投資市場においても、建物の安全性や設計者・検査機関の信頼性が改めて重要視されるようになり、J-REITを含む投資家の間で「保有資産の建築的なリスク」への関心が高まるきっかけとなりました。
建築確認と不動産投資信託 #
建築確認と不動産投資信託には、直接関係がないようにも思えますが、姉歯事件を受けて、不動産投資法人各社は、投資している物件において、姉歯建築設計事務所の関与がなかったかどうかの確認を急ぎ、その報告をホームページで行いました。
投資家は、自分が投資している不動産投資法人が保有する個別の物件名までは覚えていないことが多いものですが、気づかぬうちに偽造物件の間接的保有者になってしまうというリスクも全くないとは言えません。
REITなどの投資法人では、物件取得時に建築確認済証の有無や設計図書の整合性、建築基準法違反の有無などを含む技術的デューデリジェンスを実施することが一般的です。
不動産投資信託には、価格変動リスクや流動性リスクといった金融商品としてのリスクに加えて、投資法人の運営に関連するリスクも存在します。たとえば、投資法人の役員が不正を行った場合や、運用会社、不動産管理会社、会計監査人などのファンド関係者が不適切な行為を行った場合、投資家に不利益が及ぶ可能性があります。これらは一般に「ファンドの関係人に関するリスク」と呼ばれます。
また、構造設計事務所など外部の委託先による不正も、広義にはこうしたリスクの一つに含まれ、不動産の安全性や価値に直接影響を与える可能性があるため、投資家にとって重要な注意点となります。
建築確認のまとめ #
建築確認とは、建築物の建築や大規模修繕、用途変更などを行う際に、計画が建築基準法に適合しているかどうかを事前に確認する制度です。姉歯事件を契機に制度の厳格化が進められ、不動産投資信託においても物件の法的適合性が重要なリスク要因として認識されるようになりました。建築確認は、建物の安全性確保だけでなく、投資の信頼性にも関わる重要な手続きです。